ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
前話に出てきた神ですが、オリキャラではなく、『ソード・オラトリア』の方に出てきています。
アポロン「私の出番ある?」
しばらくないです。(多分)
次の日。
僕達は『強制任務』を受け、早朝にオラリオを出て、メレンへ向かおうとした。
オラリオから出る途中、出るための手続きをした時、再びハシャーナさんと出会った。
「あ、ハシャーナさん、お久し振りです。あの館の騒動以来ですね」
「お、いつぞやの面白れぇガキじゃないか! あの時は話す機会はなかったが、しっかり冒険者になっているじゃないか! しかも、こんな早くも『強制任務』を受けることになるとはな!」
「まあ、これは投票で押し付けられた形ですけど…」
「まあ、何にしても『強制任務』だ。しっかりやれよ!」
と、内心緊張していた僕を励ましてくれた。
ハシャーナさんに見送られ、そしてそのまま僕達はオラリオを出た。
そして僕がオラリオの外の光景を見るのは、実に2ヶ月ぶりだった。
メレンへ向かい、もうすぐ着く時、僕はどんな港街なのか想像していた。
実はメレンについて、僕の担当官であるミィシャさんから聞いた話しか知らない。
「メレンかぁ…どんな所だろう?」
「あれ? ベルはメレンの方向からオラリオに来てないんだ」
「うん。僕は陸地の方から馬車で来た」
「こればっかりは人ぞれぞれだからね」
「ふーん。そういうもんなんだねぇ」
「お、着いたぞ!」
そして僕達はメレンに着いた。
そこは汽水湖の形状に沿って弧を描いている港はオラリオに負けないほど賑わっていた。屈強な水夫達が港に泊まっている無数の船から積荷を降ろし、荷台を乗せた馬車がいずこかへ走って行く。客船と思う所から身なりのいい格好をした人から旅人らしきエルフまで、多くの亜人が看板から通じて降りていた。
また、港の先に広がるロログ湖は壮観で、対岸が見えず、白い雲の下で霞む水平線はまさに海原そのもので、照り付ける太陽の光が反射して美しく輝いていており、そこに出港したであろう大型船が突き進んでいた。
潮の香りや水鳥の声、水夫達の喧騒もあり、目を閉じていても水と陸の境界を感じさせ、心を穏やかにさせる光景に僕は言葉を忘れていた。
「さて、ベル。初めて見て言葉をなくすのはわかるけど、まずはこの『強制任務』を受けた他の【ファミリア】の人達との合流が先よ」
「あ、はい。わかりました」
そして、事前に『強制任務』の内容に書いてあった集合場所を探すと、そこには先に到着した【ヘルメス・ファミリア】と思われし人達がいた。そして、こちらに気づいたのか、犬人の女性がこっちに手を振ってきた。
「あ、来た来た。こっちだよー」
「お待たせ。ウチらは【アポロン・ファミリア】の団員で、ダフネ・ラウロスよ」
「カサンドラ・イリオンです…」
「ルアン・エスペルだ!」
「ベル・クラネルです」
僕ら【アポロン・ファミリア】がまずは挨拶として各自自己紹介すると、【ヘルメス・ファミリア】の主神らしき人から僕の名前に反応した。
「ベル・クラネル…?」
「はい、なんでしょうか?」
「いや、何でもない。聞きなれない名前だったからつい読み上げちゃっただけだ。気にしないでくれよ、ベル君!」
「は、はあ…?」
そう言うとこの話をすぐに切り替え、今度は【ヘルメス・ファミリア】の人達が自己紹介をした。
「俺は【ヘルメス・ファミリア】の主神、ヘルメスだ! よろしく!」
「その団長のアスフィ・アル・アンドロメダです」
「私はルルネ・ルーイ。よろしく」
「さて、早速だが、君達の強制任務の内容について教えてくれないか?」
「ええ、いいわよ」
そうダフネさんが承諾し、僕達の『強制任務』の依頼内容を伝えた。
すると、その内容を聞いたヘルメス様を筆頭に【ヘルメス・ファミリア】の人達は何か考えことをした。
「……?」
「ふむ…。『メレンの港に滞在している【ファミリア】を調査』か…。その【ファミリア】の名前までは知らされていないんだね」
「そうだけど…そっちはどうだったの?」
「俺達も一緒さ! しかし、メレンの港に滞在している【ファミリア】となると、普段そこにいるのは【ニョルズ・ファミリア】になるな。後は今船で来ているどこかの【ファミリア】ぐらいになるかな」
「じゃあ僕達は一先ず、その【ニョルズ・ファミリア】の事について調べればいいんですね」
「まあ、そうなるな! そっちの事は君達に任せるから、俺達は船の方を調べてみるさ! なあに、こっちはLv.2が二人いるんだ。何とかなるさ! 【ロキ・ファミリア】の人達も人数的に俺達と同じ、船の方になりそうだしね」
「分かったわ。早速ウチらは探ってみるから、【ロキ・ファミリア】の人達に会ったらそう伝えといて」
「わかった。では健闘を祈る!」
そう言い、僕達はその場を離れ、一先ず宿を探し、【ニョルズ・ファミリア】の事について調べることにした。
ベル達と別れた後、ヘルメスとその団員達は今回の事で話し合いをしていた。
「私達の『強制任務』の依頼内容は『【カーリー・ファミリア】とつながっているオラリオ内の【ファミリア】を探る。また、【カーリー・ファミリア】が持ち込んできたものを探る』というものの筈です。【アポロン・ファミリア】の内容とは似ているようで異なります」
「ヘルメス様。これは一体…?」
「ああ。恐らくだけど、ギルドの人達はそのまま【ニョルズ・ファミリア】がつながっているという可能性も考慮して、他の【ファミリア】の人たちも呼んだのだろう。もしくは、あの子達を囮にしろという意味かな?」
「【カーリー・ファミリア】は最低でもLv.5がいる派閥ですから、【ロキ・ファミリア】を呼んだのは抗争になる可能性も考慮しての事ですけど、【アポロン・ファミリア】では全く歯が立ちませんから、そうなのでしょう」
「うへー。もし後者だったらえげつねぇー」
「…そういえば話は変わりますけど、先程の自己紹介の時の反応は…?」
「ああ、あれは個人的なものだ。気にしないでくれ。さて、俺たちの今後の行動は【ロキ・ファミリア】の人達の内容次第だな。…おっと、噂をすれば来たみたいだ。しかも、【勇者】もいるな」
そこには、フィン・ディムナ率いる『強制任務』を受託した【ロキ・ファミリア】のメンバー6人が姿を見せ、ヘルメス達がいる所に来ようとしていた。
一方、ベル達は宿を借りて荷物を置き、そこから出て、この後の方針を話しこんでいた。
まず、どうやって調べていくかを話し合っていた。
「順当にやるとすれば、【ニョルズ・ファミリア】の人達に聞き込み調査かなぁ?」
「後は、ここにもあるギルド支部に聞いてみるか、メレンの長を含めた市民の人達に聞き込み調査だな」
「それか、ロログ湖の中を調べるとか?」
「それはちょっと厳しいわね…。水着は一応持ってきてはあるけど、戦闘向けというわけじゃないし、それ以前にロログ湖は結構水深があるから、それ専用の対策をしないと」
「Lv.2の私やダフネちゃんでも水中で戦闘はまずないからねぇ」
「じゃあ、聞き込みを中心に捜査するか!」
「そうだね」
調べる方針が決まり、それから細かなことについても決定していった。
「一人だとまずいから、二人組にしましょう。そうね…、組み分けはどうする?」
「じゃあ、Lv.2の私達は別れた方が良いから、私とベルで、ダフネちゃんとルアンかな?」
「そんな感じかね。じゃあ、夕方にここで集合して報告会よ。それじゃあ、聞き込みを始めよっか」
「はい!」「わかった~」「了かーい」
こうしてベル達は別れ、【ニョルズ・ファミリア】について聞き込み調査を開始した。
一方、ヘルメスとフィンは『強制任務』の内容について教え合い、今後の方針を話しこんでいた。
「ふむ…。とりあえず、僕たちの方は【カーリー・ファミリア】を見張って、それとつながっている【ファミリア】が現れるまでおとなしく待機かな?」
「ああ、そうだな。俺達【ヘルメス・ファミリア】の方は【カーリー・ファミリア】が何を持ってきたのか上手く探ってみるよ。後、こっちも向こうの出方を見張るぐらいかな」
「【アポロン・ファミリア】の人達は?」
「内容が似ているようで異なっていたから、【ニョルズ・ファミリア】の事を探っているよ。最悪の場合、その子達を囮になってもらう事にもなりそうだ」
「…わかった。一先ず向こうにも会って、なるべく調査を続かせるようにと言いくるめてくるよ」
「ああ、お願いするぜ」
そう締めくくり、二人は別れ、【ファミリア】のいる所に戻って行った。
「どうでした、団長?」
「やはりギルドは何かを隠していたけど、その正体までは知らなかったみたいだ」
「正体? 他にも何かあるの?」
「ああ。だがこれは僕達の任務ではなく、【ヘルメス・ファミリア】の方の任務だ。出来るだけ彼らの邪魔をしないように。後はだいたい一緒かな」
フィンはそう伝え、後の人達も納得したが、レフィーヤが疑問に思っていたことを質問した。
「あの…。【アポロン・ファミリア】の人達はどうしたんですか?」
「どうやら僕達の任務とは異なるらしい。だけど事によっては彼らの方にも仕事をしてもらう事になりそうだけどね」
「ハッ! そんな雑魚共の奴らがいなくても、こっちでなんとかしてやるよ!」
「まあ相手が【カーリー・ファミリア】だから、今は事を起こさない方が良いけどね」
ベートをなだめ、一先ず今は解散しようとしたところで、フィンはティオネが思いつめた表情をしていたことに気づいた。
「……あいつら、本当に何しに来たんだ…」
「…ティオネ、今は落ち着くんだ。君とティオナが強くここに来ることを主張したんだ。そして僕達の任務はあくまで『【カーリー・ファミリア】とつながっているオラリオ内の【ファミリア】を探る』ことだ。【カーリー・ファミリア】と争うことが目的じゃない」
「……わかりました」
ティオネは渋々納得し、ティオナもそれを見て笑みを浮かべ、フィンは今度こそ解散を命じた。
そしてその瞬間自由時間となり、ティオナはアイズとレフィーヤを引っ張った。
「いやっほー! 海だー! 遊ぶぞー!」
「ちょ、ティオナさん!? 私まだ着替えて…」
「あ……」
そして荷物を持ったまま、浜の方に走って行った。
ティオネはその光景を見て唖然としていた。
「…ちょっ、ティオナ!? あの馬鹿! なんでこんな時にでも…」
「こんな時だからこそじゃないの? 今は楽しんだらどうだ?」
「……団長」
「水着とか持ってきたんだろう? 折角ここまで来たのに、勿体無いんじゃないのか?」
「……そうですね! では早速団長も御一緒に!」
「え、いや僕は」
「そう遠慮なさらず! 団長に見せるように水着もちゃんと選びましたから!」
そう言い、ティオネはフィンを強引に引っ張り、ティオナと同じく浜の方に走って行った。
ちなみにベートはもう既に散歩に行った。
一方【ヘルメス・ファミリア】の方は。
「とりあえず、日ごとで【ロキ・ファミリア】と交代に【カーリー・ファミリア】を見張ることになった」
「まあ、そうなるかー。今日は私達からか」
「【ロキ・ファミリア】の方はだいたい一緒だったのですね」
「ああ。ただ、『【カーリー・ファミリア】が持ち込んできたものを探る』という依頼はなかったから、ここは俺達で頑張るしかなさそうだな」
「うげっ!? むしろそっちの方が大変じゃん!?」
「はははっ、どうしよ?」
「………はぁ」
任務内容の中で一番重いものが棚上げ状態だったため、ルルネは悲鳴をあげ、先が思いやられることを予感したアスフィは溜息を吐くしかなかった。
そしてヘルメスはある思惑を考えていた。
(さて…。どうにかして、あの置土産の実力を確かめたいな)