ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
ベート「わかってるよ」
ティオネ「わかりました団長!では早速、私の水着姿を見て下さい!」
僕達は二手に分かれ、【ニョルズ・ファミリア】の調査を開始した。
ダフネさんとルアンはメレンにあるギルド支部に向かって話を聞きに行って、僕とカサンドラさんは、まずはメレンの市民の人達から【ニョルズ・ファミリア】の様子などを聞いてみた。
「【ニョルズ・ファミリア】について、最近何か変わったこととかはありませんでしたか?」
「変わったことか…。特にないな」
「じゃあ、【ニョルズ・ファミリア】の事で、何か怪しいと感じたことはありましたか」
「それもないな。むしろ、【ニョルズ・ファミリア】の主神ニョルズ様はいい人だし、それに団員の人達も活気あふれている」
「そうですか…。ありがとうございます」
しかし、何人かの人達に聞いても、何も成果は得られず、むしろ好印象に思えるくらいの回答しか返って来なかった。
本当に何かあるのかな…? それとも、船の方にいる【ファミリア】の方なのかな…。むしろギルドの方が何か間違っているんじゃ…。
市民の人達からの印象の話を聞いて、僕の中ではこれ以上ないくらい白である。
「ベル。今度は【ニョルズ・ファミリア】の人達の方に聞いてみよう。本人達からの話だと、何か口を滑らすかもしれないし」
「うん、そうしよう。…でも、本当に何かあるのかな? 仮に本当に何かあったとしても、ギルドが『強制任務』を出すほどの物じゃないと思うんだけど…」
「ギルドも『怪物祭』の事があったから、それだけ神経質になっていると思うよ。きっと」
「そういう話かな…」
「多分…」
どうやらカサンドラさんの方も聞き込み調査をしていると、段々と【ニョルズ・ファミリア】の信用が大きくなっていたみたいだった。
とりあえず【ニョルズ・ファミリア】の団員本人たちの話を聞いてみようと足を向けようとすると、カサンドラさんが何か深刻そうな顔で僕に話しかけてきた。
「と、ところでさ、ベル…。その、アミッドさんの部屋に泊まっていたことがあったよね…。その時でさ、な、何かアミッドさんとやましい事とかなかった?」
「ギクリッ!?」
「……その反応ってことは、『怪物祭』が中止という形に終わって、【ロキ・ファミリア】と別れた後に、本当に…」
まずい! 一瞬でばれた!?
風呂の件を話すのは本当にまずい! どうか聞かれませんように…!
「…じゃあ、ベル。アミッドさんの部屋に泊まっていたとき、どんな生活をしていたの?」
ベルが内心祈る形でいると、カサンドラはアミッドの部屋でどんな生活をしていたのかを聞いてくる。
良かった…。それなら特にやましいことはなかった筈だ。そういうことなら風呂の件を話さなければ答えられる!
「そうですね…。『怪物祭』が始まるまでは、アミッドさんも帰宅してこなかったですし、そもそも泊まる代わりに掃除とか片づけを任されていたのですけど、元々アミッドさんの部屋は綺麗だったし、すぐにやることがなくなってしまって…。暇な時は本があったのでそれを読んでいました。」
「…『怪物祭』が終わった後は?」
カサンドラが何かに祈るような顔になって、ベルに再び尋ねる。
しかし、ベルはそんな状態のカサンドラに気づかず、『怪物祭』後の生活内容を答えてしまった。
「終わった後は、アミッドさんはその日からずっと帰宅していて、部屋にはベッドが一つしかなかったので、その日からずっと同じベッドで寝ていました」
「……えっ!?」
カサンドラが衝撃的な顔をしたが、ベルはそれに気づかないまま話が続く。
「それと、時々晩御飯は一緒じゃなかったですけど、朝御飯は一緒に食べていて、料理は交代で作っていて、寝る前に本の読み聞かせもしてもらいました。そして、仕事につかれていたのか、僕に抱き付いたりするときもありましたね。どうしてか、部屋にいるときはアミッドさんの笑顔が多かったです」
「え、え!?」
カサンドラにさらなる衝撃が走るが、ベルはさらに話を続かせる。
「あ、買い物もアミッドさんが出かけている間にしていましたし、洗濯も行っていました」
「えっ、洗濯って…ちょっ、えっ!?」
「それに、同時に僕の経過観察を行っていたんですけど、僕とアミッドさんの体がお互い凝っていたことがわかったので、1日中休みだった事もあって、お互いの体にマッサージをやりました」
「マ、マッサージ!? お、お互いがお互いの体を!?」
「あとはそうですね…。アミッドさんに頼まれたことですけど、仕事で出かけるときに「いってらっしゃい」を言ったこととか、「お帰りなさいあなた」とか言われたことがあるぐらいですかね」
「……そ、そんな…」
このぐらいかな? とりあえず、風呂の件を除けばだいたい話したかな? やましいことを話していないから大丈夫なはず。
そう思いながら僕はカサンドラさんの顔を見ると、とても顔色が青く、涙目になっていた。
あ、あれ…?
「あ、あの、カサンドラさん…?」
「……べ、ベル…。そ、そんな、そんな生活を送っていたんだね…」
「は、はい」
「………ど、どうすればいいの、私…?」
カサンドラさんは最初と同じ状態の深刻そうな顔で何かを考え込んでいる。
な、何かまずい話をしてしまったのかな…?
ベルがそう考え込んでいるよそに、カサンドラの中であまりやりたくなかった事ではあるが、あることを思いついた。
「……いや、もう、こうでもしないと本当に…!」
「カ、カサンドラさん?」
「べ、ベル…!」
「は、はい」
何かを決心したような顔で、ベルに話しかける。
「こ、今回の任務の間、宿を取っている私の部屋で一緒に泊まって欲しい…!」
僕の中でアミッドさんの時と同じぐらいの衝撃が再び起きた。
「え、えええええ!?」
「せ、折角だから一緒にと…!」
「い、いやいやいや! 僕達一緒の宿ですよね!? 一人部屋しかなかったですよ!?」
「つ、詰めれば何とか!」
「そういう問題ですか!?」
「ベルはつい最近まで女性の部屋に泊まっていたから、こういうのはもう大丈夫だよねぇ!?」
「カサンドラさん!? やけくそになっていませんか!?」
「と、とにかく任務が終わるまでは私と一緒の部屋~!」
「いや、もう僕、宿の部屋は取ってありますから!? 荷物も置いていますから!?」
「今からキャンセルしてきて~~~!」
「えええええええ!?」
どうにかなだめようとするも、カサンドラさんが余計に泣きそうになり、周りの人達もどうしたといわんばかりの状況になってしまう。
僕はカサンドラさんを連れて急いでその場を離れようとするも、動いてもらえず、むしろこのまま泣き叫びそうな勢いであったため、僕はカサンドラさんの言う通りし、今日から任務中の間、今度はカサンドラさん部屋に泊まることが決定的となった。
ただし、宿をキャンセルした時のロビーの人から何か妙な視線を感じていたが、僕はそれを必死に考えないことにした。
一方、ダフネとルアンはメレンにあるギルド支部に向かっていた。
「今なんか、街の方からベル達の叫び声か何か聞こえなかったか?」
「気のせいじゃないの?」
「そうかなぁ」
ルアンは「確かに聞こえた気がしたんだよなぁ」と頭をかくが、ダフネはある思惑を考えている。
(カサンドラ、ファイトよ! ウチらは出来るだけアンタ達から離れて行動するわ! アンタがベルと二人きりになりたいって言ってきたんだから、それで弱音を吐いたら承知しないわよ! 正直言って、余程の事をしない限り、進展できるとは思っていないけど!)
「とにかく今はギルド支部に行くわよ!」
「あ、ああ…。何かやけに張り切っているな…?」
そしてダフネとルアンはギルド支部に着いた。
そこのロビーは石造りであり、オラリオのギルド本部に比べれば狭く、職員も窓口の対応のみならず、入港手続きや貿易品の照合表作りなど事務活動の方に追われている者もいる。
大元のギルド本部がオラリオの外に置く拠点の一つで、地域によって役割は異なるが、ここは港の監督、都市の輸入品の管轄が主の役割である。
ダフネ達はそこの支部長で総責任者でもあるルバートという男を呼んで、話を伺った。
「【ニョルズ・ファミリア】について怪しい動きをしているか知らないかって? ふむぅ、存じませんな」
「ほんと? むしろアンタらの方が知っていると思うんだけど」
「何を疑っているのやら。ギルド本部からもそのようなことは伝わっておりません」
ルバートはダフネの質問を嫌そうな口調で告げた。
(ギルド本部はここに『強制任務』の事を伝えていないって事…? でもどうして…?)
ダフネが考え事をしている傍に、ルバートはすぐに話を別の方に切り替える。
「それよりも、あの異国のアマゾネス共を何とかして頂きたい」
「…異国のアマゾネス?」
「目立った騒ぎは起こしていませんが、恐ろしく近寄りがたいと住民から苦情が来ています。言葉が通じないものが多くて、品物を無断で奪われたという内容まで…」
「入港を許可したんじゃないのか?」
「ここの港町はややこしく、自治権がギルドと街側で二分しています。迎え入れたのは街側のいけ好かないマードック当主です」
罰が悪い顔でルバートは悪態とともに締めくくる。
そして、【ニョルズ・ファミリア】が懇意にしているのはあくまで港街側であった。そのようなこともあって、オラリオに所属しておらず、ギルド傘下に入る必要のない【ニョルズ・ファミリア】とギルド支部は犬猿の仲である。
「とにかく今のメレンは猛獣がうろついているようなものです」
「ふーん。何だか大変そうだな」
「むしろ、今回貴方達はそのためにいるのではないですか? 是非とも主である我々ギルドに協力してほしいものですな」
「……」
上からものを言うルバートにダフネ達は黙りこくり、異国のアマゾネスについて考え始めるのだった。
一方、カサンドラが落ち着いたところで再開し、ベル達は【ニョルズ・ファミリア】の人達から話を聞こうとしていた。
そいて、たまたま最初に聞いた人がその【ファミリア】の団長であるロッドであった。
「俺達の【ファミリア】に何かおかしなことはなかったかって? いや、特にはないな」
「そうですか…。やっぱり、別の【ファミリア】の方なのかな…?」
「俺達【ニョルズ・ファミリア】は漁のためだけの派閥だ。ロログ湖は勿論、海まで出て漁をしている。海のいる時間の方が長いし、腕っぷしには自信はあるが、他派閥と抗争してまで勢力拡大とか狙っていないからな。俺達もニョルズ様も」
「あの、ロッドさん達はモンスター退治もしているんですか?」
「そうだな。街の連中に頼まれて、漁のついでに仕留めることもあるな。何十年もやっていて、これでも俺はLv.2だし。死んだ俺の親父が言うには、ずっと昔から【ポセイドン・ファミリア】がそう言うのを担っていたらしいけど、俺も漁に出て、そして今から15年前ぐらいに『海竜の封印』ができて、【ポセイドン・ファミリア】の主神と団員たちは皆ここから旅立っちまったけどな」
僕達はその話を聞いて、あとはニョルズ様にも聞いて、何もなかったら白だと考え始める。
そして、まさかの情報を聞いた。
「最後に、最近何か変わったこととかはありましたか?」
「変わったことか…。そういや、俺達の話じゃなくなるが、昨日ロログ湖で初めて見るモンスターを見たっていう団員がいたな。そいつが言うには、何か植物みたいで、頭に花があったとか…」
「「…ッ!?」」
僕とカサンドラさんは衝撃を受けた。
植物みたくて、頭に花…!? それって、もしかして僕達の館に襲撃した時に出た食人花じゃ…!?
「あ、あの、そのモンスターはどうなったんですか!?」
「あ、ああ。客船を襲ったらしいんだが、そこから跳び出した奴一人に蹴られて、その一撃で灰になったって言ってたな」
僕達はさらに衝撃を受けた。
僕達があんなに苦戦した食人花を、魔石の誘導なしであっさり倒した!?
「そ、その客船は!?」
「今向こうに泊まっている巨大なガオレン船がそうだ。でも気をつけなよ。そいつら全員アマゾネスだが、言葉が通じない上に気が荒いらしくて、今ここでは厄介者扱いになっているぜ」
「…ベル、それってもしかして、【ファミリア】で来たものなんじゃ…」
「…恐らくそうだと思う」
僕達は調査することがさらに増えたとこの時確信した。
でも、どうやって接触しよう…?
ベル達の視線がガオレン船に向いていたため、ロッドさんはもう大丈夫だろうとその場を離れようとする。
「おーい。俺はそろそろいいか?」
「あ、ちょっ、ちょっと待って下さい。その、い、今さっき言っていたモンスターを、今まで見たことはなかったんですか?」
「ああ、ないな。俺たちに襲い掛かってきたことは今まで一度もないぜ。そう言うのは報告が入るから、団長の俺の耳には入るはずだし」
その話を聞いて、ベル達は腑に落ちない表情を浮かべる。
それはあり得るのかな…。いくら魔石や魔力関連の方を優先に襲う食人花でも難しいんじゃ…。
そう考えていた僕は、ふとロッドさんの腰に何か袋があったことに気が付いた。
「あの、ロッドさん。その袋は一体何ですか?」
「ああ、これか? これは魔法の粉でな、これを水面にばらまけばモンスターは寄って来ないっていう代物よ!」
「「ええ!?」」
自信満々に言い放つロッドに、僕達は仰天する。
そんなアイテムがあるのか!? オラリオにもあったっけ?
「あの、その袋の中を見てもいいですか?」
「いいぞ。ただ気をつけろよ。開けた瞬間滅茶苦茶臭うから」
ベル達は袋を受け取り、慎重に開けると、刺激臭が漂う。
ベル達はその臭さに思わず仰け反った。
そして涙目になりながらもベル達が袋の中身をのぞき込むと、その中には赤、黄色、黒など様々な色合いが混ざっており、またその粉はきらきらと細かな光も放っていた。
「ベル。これって、撒き餌みたいなものかな?」
「でも、それだと、逆にモンスターを発見しやすくなんじゃ…」
「なにを考え込んでいるのか知らないけど、この粉はオラリオ発明って聞いたぜ? 他の団員達も持っているし」
「「えっ!?」」
ベル達はこの粉が何なのかを考えていた時、ロッドさんがこの粉がオラリオを差し置いてこのメレンに出回っていることを伝えられ、衝撃を隠せなかった。
「あ、あの、ロッドさん達はこの粉をどこで入手したんですか?」
「ボルクの親父…マードックの家からだ。都市から買い取っているらしくて、俺達に無料で配ってくれている。もう6年ぐらい前からで、メレンに良く出入りする船にも配っているぜ。まあ、これでも完璧じゃなくて、ばらまいても『レイダーフィッシュ』とかは襲ってくるけどな。だが、モンスターの被害はこの粉のおかげでかなり減ったんだぜ」
そう言われ、ベル達はその粉をゆっくり見下ろし、凝視した。
その粉はそれに応えるかのように、うっすらと光り輝いている。
一方、ダフネとルアンはマードック家の屋敷に来ていた。
「帰れ。ギルドと繋がっているお前らと話すものはない」
だが、ダフネ達は話を聞こうにも、応対する初老ボルクは全く相手にしてくれなかった。
「ちょっと。話ぐらい聞いても…」
「そうだよ。オイラ達はギルドの奴らの企図でここにいるわけじゃねえし。【ニョルズ・ファミリア】についての事と、異国のアマゾネスについてだな…」
「帰れ」
背を向けて屋敷の奥に引っ込むボルグに、途方に暮れたダフネとルアンは引き返すことになった。
「なんだよあいつ! こっちの話ぐらい聞いてもいいじゃん!」
「メレンの街とギルド支部は不仲だって聞いているけど、あれ程とはね…」
ルアンは不満を表し、ダフネは溜息をつきながら、二人は屋敷を後にする。
「……」
屋敷から離れていく二人を、ボルグは屋敷の窓から険しく睨み付けていた。
そして、場面は戻り、ロッドから話を聞いたベル達は、【ニョルズ・ファミリア】の主神ニョルズに話を聞くことになった。
「ふーん、なるほどねぇ。だが言っちゃあなんだが、俺の所はこのあたりの漁を仕切っているぐらいだからな。ギルド支部とは仲が折り合いつかないとはいえ、そこまでの悪事は何一つやってないぞ。というかむしろ、俺たちの方が足元を見られている。それに、俺の所は別にポセイドンたちの後釜ってわけでもないし」
「そうですか…。じゃあ、その、昨日ニョルズ様の団員が見たという食人花、もといモンスターは…?」
「ああ、あの気味の悪いやつか…。俺も昨日見たが確かにアレには驚いたぞ。ここ数年、メレンは大した事故もなく平和だったんだよ。だが、その一件には久しぶりに港に冷たい空気が流れた。しかし、俺の所はきな臭い話には縁がなくてだな」
「……わかりました。ありがとうございます」
神ニョルズと会い、話を聞いたベル達だが、【ニョルズ・ファミリア】については全くの空振りに終わった。むしろ【ニョルズ・ファミリア】が全くの白であるだろうと結論する。
だが、食人花が昨日出現したことや、【ファミリア】らしき一団がメレンに来ていることが分かり、ベル達はそちらの方を考えることになった。
「お話をありがとうございます、ニョルズ様」
「いや、俺達の疑惑が晴れたんだったら別に構わないさ。それにしても、『強制任務』が来るほどとなると、むしろ【カーリー・ファミリア】関連の方じゃないか?」
「「【カーリー・ファミリア】?」」
「知らないのか? 今港に泊まっている巨大なガオレン船がそうだ。アマゾネスの人達のみで構成されていて、今メレンの猛獣みたいな扱いになっているけど」
「あ、あれがそうだったんですか!」
「むしろ納得したけどね。やっぱり、【カーリー・ファミリア】についての調査だったのね」
「オラリオの方も大変だな。ギルドの人達も、ちゃんと連絡しろって言いたいよ」
「大変さに比べたら、【ニョルズ・ファミリア】も大概ですけどね…」
「ありゃりゃ。一本取られたな」
話は終わり、ニョルズ様とそう談笑していると、そんな中、息を切らした【ニョルズ・ファミリア】の獣人の漁師が僕らの方に駆けこんでくる。
ニョルズ様がどうしたんだと問う前に、獣人の青年は矢次早に叫んだ。
「ニョルズ様、大変です! 大通りでアマゾネス達が騒ぎを起こして、今大暴れ中です!」
「何ぃ、またかよ!?」
「えええ!?」
「嘘っ!?」
僕らはその内容に驚倒し、瞳を見張らされることになった。
時は少しさかのぼり、ベートはメレンの街を散歩していた。
「たくっ…。任務だっつーのに、あんな速攻で遊びに行くかっつーの。…いや、もしかしたら、俺も便乗するべきだったか? アイズももしかしたら水着を着ている可能性が高いんじゃ…」
フィンたちと解散した直後、すぐに散歩に出かけたベートは、己の起こした行動を若干後悔していた。
あまり意味のない散歩より、そちらの方が有意義であった。
ベートがそう考えていると、少し離れた所で反対側の道からアマゾネスの集団が、ベートがいる方向に向かって歩いてくる。
ベートはそれをすぐに確認し、事を起こすなという忠告もあったため、店の中に入ってやり過ごそうと考える。近くでドドバスや海老など、汽水湖や海原で釣れた魚を焼いている料理店があり、同時に早めに昼飯でも食べるかと思い、その店の中に入った。
だが、ベートの後ろには先程マードック家の屋敷に訪れ、そして引き返してきたダフネとルアンが少し離れた所にいて、まだ二人ともその事に気づいていない。
店の中に入ったベートもまた、自分の後ろに二人がいたことに気が付いていなかった。
そして、ダフネとルアン、そしてアマゾネスの集団が、丁度ベートが入った店の前に対面する事になる。
お互いその距離になると相手に気づき、店に入ったベートもまた、オラリオ出身の冒険者がいたことに気づいた。
(…ん? あの二人、少し前にどこかで見たことあるような…?)
その二人に対して何か既視感を感じたベートだが、アマゾネスの集団もまた、オラリオ出身の冒険者だと気づいたのか、二人の行く手を阻むような形で道を塞ぐ。
その行動に何となく察知したダフネは溜息をつき、ルアンは怯え始める。
「…ウチらに何の用?」
「オラリオの、冒険者、だな?」
アマゾネスの集団のトップらしき人物から、拙い共通語でダフネ達に笑みを浮かべながら問い出す。
その者は、先程ベル達が話していた食人花を一撃で倒した、【カーリー・ファミリア】のLv.6の頭領、アルガナ・カリフであった。
その実力に気づいたのか、ダフネは少し気圧されていた。ルアンに至っては気絶寸前である。ベートは店の中で様子を見守り続けている。
そして、アルガナは二人にある要求をした。
「お前ら、もし、ティオナと、ティオネ、連れて来たら、ここは、見逃す」
「…!」「…えっ!?」
【ロキ・ファミリア】の幹部である二人の名前が呼ばれ、ダフネとルアンは困惑する。
一方、それを聞いたベートは、それとなく予感していたことが的中してしまった。
(あいつら、やっぱりあのアマゾネスコンビが目的だったのか! いや、正確にはそれも入っていると言う感じか? そして、あのアマゾネスコンビもこいつらと話があるような感じだったし、ここはどうする…!?)
ベートがどうするか葛藤している時、ティオナとティオネがここにいることを知らないルアンとダフネは、こう答えるしかなかった。
「…流石に無理よ。その二人がここに来ているのかわからないし、第一、ウチらはその二人とは違う【ファミリア】だからね」
「…オイラも同意見だ」
「そうか」
それを聞いたアルガナはアマゾネス語で二人を阻んでいた他のアマゾネスたちにその事を伝える。
そしてその瞬間、暴動が始まった。
「ガハッ!?」
まず、小人族で男でもあったルアンが狙われ、腹を蹴られた。
Lv.1でもあったルアンは、他のアマゾネスの攻撃でも反応できず、そのままのたうち回る。
アマゾネスの集団はその光景を笑い、再びルアンに蹴りを何発か喰らわせる。そしてアルガナはそれを見て、一言吐いた。
「やっぱり、男は、弱い」
「いっでぇ!? グオォ!? ブッ!?」
「ルアン!? アンタら、よくも!」
ルアンがリンチにあい、止めようとすると、今度はアルガナがダフネの前に立ち塞がった。
「お前の、相手は、私だ」
「なっ…!?」
実力差が非常にあり、一矢報いるイメージすらわかなかったダフネは、思わず足を止めてしまう。
そしてそのままアルガナはダフネに蹴りをお見舞いした。
「ヅッ!?」
「お前も、弱い」
脇腹を蹴られ、吹っ飛ばされるダフネ。
そしてそのまま壁に激突し、崩れ落ちる。
ダフネは意識をかろうじて保っているが、脇腹に激痛が走り、簡単に立ち上がる事ができなかった。
「オラリオの、冒険者は、この程度、なのか」
アルガナはダフネに興味をなくし、皆を連れてこの場を去ろうとすると、肩がぶつかった。
「…!」
「よう、てめぇら。散々いたぶってくれているじゃねえか。ちょっと全員ツラァ貸せ」
そこには、静かな怒気を面に出したベートが立ち塞がっていた。