ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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※ アルガナを示す【女神の分身(カーリマー)】ですが、これは正確には二つ名ではなく、勝手にそう呼ばれている異名です。


前哨戦 【凶狼(ヴァルナガンド)】 vs 【女神の分身(カーリマー)】

 一方、ベートを除いた【ロキ・ファミリア】の人達はフィンが知っていた穴場の浜辺で海水浴を楽しんでいた。

 

 女性陣全員は水着に着替えており、フィンもまたちゃっかり水着に着替えている。

 

 女性陣の水着姿を見たら、その【ファミリア】の主神は「最高やー! ここは楽園か!?」と叫ぶのは間違いなしである。

 

 

「海って程じゃないけど、それー!」

 

「ちょっ、ティオナさん、危な…わぷっ!」

 

「あ……!!」

 

 

 ティオナは水面に走り込んで大きな水しぶきを上げ、レフィーヤはそれを見て驚き、浜辺にいたアイズにもそれがかかりそうで絶句していた。

 

 

「団長…! ちょっとこちら来て頂きませんか…?」

 

「いや、ティオネ。そんな恐ろしい顔で言われても、僕はそちらには行かないから」

 

 

 ティオネの方は水着姿を団長に見せようとするも、フィンの水着姿を見て「団長…、セクシーです!」と言いながら鼻血を出し、そのままフィンを岩場に連れ込もうとしている。

 

 フィンはそれから逃げ、必死に抵抗している。

 

 そしてそのまま、フィンは別のことを考えていた。

 

 

(今回の調査の相手は【カーリー・ファミリア】…。ティオネやティオナが育った男子禁制の『テレスキュラ』の国に君臨している【ファミリア】が相手か…。しかも、その頭領姉妹は近年Lv.6に至ったという噂が囁かれているから、一筋縄じゃいけないな。【ヘルメス・ファミリア】の人達と上手くやれる相手かな?)

 

 

 フィンはそちらの方を考えており、恐らくあの船で来ただろうと巨大なガオレン船に視線を移して、眼光が少し鋭くなる。

 

 それを見たティオネは言いそびれた言葉を送り、フィンに感謝した。

 

 

「団長…。私、もし団長が来てくれなかったら、下手したら一人であのガオレン船に殴り込んでいました…」

 

「それは流石に無いんじゃないかな?」

 

「でも、やっぱりそうです。今でも団長がこの場にいなかったら、【カーリー・ファミリア】のやつらとにらみ合いを間違いなくしていましたし…」

 

「でも、それは僕がいることでやれていない。だから今は落ち着いても大丈夫だ」

 

「…団長! やっぱりそこの岩場で!」

 

「いや、行かないから」

 

 

 ティオネは感激して隙あらば岩場に連れ込もうとするが、フィンは固くお断りしている。

 

 ティオネが獲物を狙うかの如く少しばかり目が危なくなってきたが、フィンは別の事で少し嫌な予感をしていた。

 

 

(ベートは恐らく散歩に行っていると思うけど、向こうの方は大丈夫かな?)

 

 

 そう。今『強制任務』できているメンバーの中でLv.6なのは、フィンとアイズのみである。

 

 しかもアイズがLv.6に昇格したのはつい3週間ほど前である。武器の修理代稼ぎのためにリヴェリアや僕達と一緒に37階層に行き、そこでリヴェリアと共に別れてから階層主『ウダイオス』を1 vs 1で倒したのである。その戦いで昇格に至ったのであった。

 

 遠征で他の人も昇格すると思っていたが、『怪物祭』の影響で行けなくなり、ベート、ティオナ、ティオネはLv.5のままで、レフィーヤはLv.3のままであった。

 

 そのためフィンは今回の『強制任務』で、その4人の昇格を促そうと考えていた。

 

 だが相手もまた僕達の名声を聞いていて警戒をしているだろうと、フィンは推測している。

 

 

(忠告したとはいえ、今は事を争わないでくれよ。ベート)

 

 

 そう思っていたのも束の間、少し浜辺の周りが騒がしくなってきた。

 

 何事かと耳を傾けると、嫌な予感が的中したようだ。

 

 

「おい、聞いたか!? 大通りでまた連中が暴れているって!」

 

「ああ! しかも、相手はオラリオから来た冒険者なんだろ!?」

 

「…ッ! 総員、直ちに着替えて騒動を起こしている場に行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 だが、フィンとティオナは直ぐに誰かいないことに気づいた。

 

 

「あれ、フィン。ティオネは?」

 

「……先に行ってしまったのか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大通りでアマゾネスの集団がルアンとダフネをリンチしていたが、それを見かねたベートが参戦し、アルガナとベートは睨み合いをしていた。

 

 

「ワタシの国では、戦士にカタをぶつけるというのは…殺し合いの合図だ」

 

「はっ、知るかよ。だが、丁度良かったみてぇじゃねえか!」

 

 

 ベートがそう言うと、アルガナはベートの顔面を殴ろうとする。

 

 ベートはそれを躱し、今度はカウンターという形でアルガナに蹴りを入れようとした。

 

 だがそれをアルガナは躱し、お互い距離を取る。

 

 今の一連の動きで、お互いが強敵であることを確認した。

 

 

「…はっ! どうやら、口だけじゃねえみたいだな!」

 

「……どうやら、今程叩きのめしたヤツラとは、違うみたいだな」

 

 

 お互い減らず口をたたき、再び対峙した。

 

 叩きのめされたダフネやルアンはその一連の流れが見えず唖然とし、街の周りの人も、何事かと集まり始めた。アルガナ以外のアマゾネスの集団達も盛り上がっている。

 

 

「そういう事なら、遠慮なくぶちのめせるぜ!」

 

「オマエの血を、見せろ!」

 

 

 両者は再び激突した。

 

 

「「ッッ!!」」

 

 

 互いの蹴りが相手の体に叩き込まれる。

 

 ベートの上段蹴りが左腕で防がれ、同じくアルガナの上段蹴りを左腕で防いだ。

 

 そこから互いに拳を振るい、互いがそれを躱す。

 

 ベートは左足を蹴り上げてアルガナのバランスを崩そうとするも、アルガナは簡単には崩さず、むしろベートにそのまま回し蹴りを叩き込んだ。

 

 

「…何!?」

 

 

 だが簡単に喰らわずに右腕で防ぎ、左手でアルガナの脚をつかみ、ベートは蹴り上げる。

 

 

「ハッ、こんなもんか!」

 

「グッ…!」

 

 

 アルガナはそのまま喰らうがすぐに空中で体勢を取り戻して着地し、ベートのことを睨み付ける。

 

 

「……よくもやってくれたな」

 

「はぁ? 何を言ってやがるんだ。テメェらの方から吹っかけてきたじゃねえか!」

 

「あんなの、ただのアイサツ代わりだ」

 

「なにがどう違ぇのか、俺の目にはわからなかったがなぁ!」

 

 

 そう言いながらベートはアルガナに接近し、拳を繰り出す。

 

 アルガナはその攻撃を防御して、そして僅かな隙を見逃さずにアマゾネス独自の武術をカウンターという形でベートにたたき込む。

 

 

「グオッ!?」

 

「もっと、オマエの力を、見せて見ろ!」

 

「…ッ! オラリオの冒険者を舐めんなぁ!」

 

 

 ベートは負けじと蹴りを繰り出してアルガナを揺らがせるも、すぐにまたベートに反撃する。だがそれでもベートは倒れず、それどころか重い一撃をアルガナに見舞わせる。

 

 

「オラァ!」

 

「グウッ!?」

 

 

 アルガナは踏張り切れず、街の壁に激突した。

 

 だがアルガナはすぐに立ち上がり、ベートに襲い掛かる。

 

 

「まだまだぁ! もっとワタシを楽しませろ!」

 

「こいつ…!」

 

 

 壮絶な肉弾戦が始まり、常人なら容易く体が粉砕する拳や蹴りが互いに打ち合いし、防御の上から鳴る鈍重音は周囲の人々の鼓膜を慄かせた。

 

 人々は巻き添えを食らうまいと悲鳴をあげてそこから逃げ、ダフネやルアンもまたそこから必死で逃げるのだった。アルガナ以外のアマゾネスの集団達もまた、ひっそりとその場を後にする。

 

 ベートとアルガナは重い一撃を互いに喰らい、何度も壁に衝突するまで飛ばされる。だがまたすぐに立ち上がり、相手がいる所まで走り込んで拳を交わし、再び乱打の闘舞が繰り広げられる。

 

 白銀のメタルブーツが何度も防御を超えて直撃しているが、アルガナはすぐに立ち上がり、そして果敢にベートに攻めかかり、何度もベートに拳や蹴りを喰らわせて同じように吹き飛ばしている。

 

 何度も、何度も、何度も。

 

 だがLv.の壁は大きく、少しずつベートが押され始めていく。

 

 長い四肢が蛇のようにうなり、ベートに連撃を浴びせる。

 

 ベートもまた連撃を繰り広げるもアルガナの読みが早まり始め、反撃に移す前から行動に移られ、Lv.6のアルガナの方に軍配が挙げられていく。

 

 瞳を爛々とするアルガナに対し、ベートは徐々に顔を歪み始める。

 

 

「こ、のぉ、糞野郎が!」

 

「グッ!? …まだまだ、いきがイイナ!」

 

 

 必死に蹴り上げ、アルガナを再び壁まで吹き飛ばすが再三立ち上がり、ベートの方に向かう。

 

 両者の傷跡を比べるとベートの方が深くなりつつあり、Lv.の残酷さが見せつけられている。

 

 だがベートは倒れず、真正面でアルガナに対抗する。

 

 互いに敵を血祭にあげようと苛烈に攻めかかる。

 

 

「ガッ、この、オラァアアアアアア!」

 

「ぐは、ハハハハハハハ! まだまだぁ!」

 

 

 もはやどちらかが限界に達して動けなくなるまで続くであろう、壮絶な戦い。

 

 そこに、乱入者が現れた。

 

 

「アルガナァアアアアア!」

 

「…! ティオネか!」

 

「邪魔すんじゃねえ! ここは俺の戦いだ!」

 

「てめえこそ邪魔すんな!! この糞狼!!」

 

「テメェからしばき倒してやろうか!?」

 

 

 ティオネの参戦でアルガナが驚き、ベートはこっちに来るなと言わんばかりの怒号でティオネを離そうとするが、ティオネはお構いなしに殴りつける勢いでベートに怒鳴りつけ、口喧嘩する。

 

 アルガナは一瞬呆気に取られるがすぐに気を取り直し、それどころか余裕すら見せつけてきた。

 

 

「この際、オマエら二人、まとめてかかって来い!」

 

「ほらぁ! まだまだ元気じゃねえか! アルガナは私の相手だ! 糞狼は引っ込んでいろ!」

 

「んだとこの馬鹿アマゾネスが!」

 

「お前から殺す!」

 

「そっちから来ないなら、ワタシから行くぞ!」

 

 

 ベートとティオネが口喧嘩している時、アルガナはお構いなしに襲撃してくる。

 

 ベートは蹴り上げ、ティオネが拳を振るい、アルガナは飛び蹴りをかます。

 

 三者はそれらが交わろうとして衝突し、三者同様後方に吹っ飛ばされた。

 

 

「ガアッ!?」「ぐっっ!?」「ガッ!?」

 

 

 壁に激突して、もはや周辺には崩壊した店や宿などの建物が崩壊していて無事なものはなく、その残骸から出てきた三者は互いを見据える。

 

 

「「「……」」」

 

 

 そして、何かが動けばこちらも動くという膠着状態となった。

 

 ベートは静かに集中し、ティオネは怒りを面に出し、アルガナは恣意行為のつもりか、血を啜ぐ。

 

 そして動くのは今かと牽制しやっていた時、それぞれの方向から、駆けつけた人達が来た。

 

 

「ニョルズ様、ベル、カサンドラ! 来ちゃまずいって! 巻き込まれちまうから!」

 

「いいからここは引いた方が身のためだから!」

 

「うわあああ!? 俺達の街が!?」

 

「あれって、【ロキ・ファミリア】の人達!?」

 

「まさか、もう動いていた何て…」

 

 

 一つの方向にはルアン、ダフネ、ニョルズ、ベル、カサンドラが。

 

 

「ベート、ティオネ。後で話がある」

 

「ベート、ティオネ…」

 

「ベートさん、ティオネさん…」

 

「ティオネ…」

 

 

 一つの方向にはフィン、アイズ、レフィーヤ、ティオナが。

 

 

「ほれほれ、お主らは辞めじゃ。特にアルガナ」

 

「…! あれは、ティオネ…。そして、ティオナ!」

 

 

 一つの方向にはカーリー、バーチェとその他大勢のアマゾネスの集団が。

 

 複数の方向から声を投げられ、三者は戦闘態勢を解いた。

 

 やれやれと、どこかわざとらしくぼやくカーリーは周囲を見渡す。

 

 

「さて、ここは痛み分けでよいか? そちらの代表と話をしたいんじゃが」

 

「代表は僕だ。【ロキ・ファミリア】団長のフィン・ディムナだ。さて、痛み分けというのはどういう事で?」

 

 

 代表は誰だと探していたカーリーに、フィンは即座に答えて逆に質問する。

 

 

「アルガナもそちらの狼人とティオネも相当痛み付けられておるからな。これ以上戦闘を繰り広げられたら、ここの街は持たんじゃろう」

 

「確かにもう無理だ! ここではもう暴れないでくれー!」

 

 

 カーリーの言い分にニョルズはどうにかこの場は別れさせてくれと言わんばかりに必死で賛同して、フィンもまた考え、それに賛同したが条件を加える。

 

 

「…分かった。ただし、教えてもらいたい事がある。君達【カーリー・ファミリア】は何故、遥々ここメレンの都市に? オラリオの中のどこかの【ファミリア】から、何か依頼されたのか?」

 

 

 それを聞いたカーリーは手に顎の下にやり、「ふむ」と少し考えて頷く。

 

 

「そうじゃな。だが、聞いてどうする? 少なくとも、そちらの【ロキ・ファミリア】には無縁の話じゃぞ?」

 

「いいや、無縁ではない。僕らはオラリオからの指令で、【カーリー・ファミリア】について知らなければならないんでね。それが聞ければ、少なくとも君らと僕らは争うことがなくなるよ」

 

「ふむぅ、なるほどのう。さて、どうするか…。そうじゃな、妾達は闘争を望むものだとしか今のところは言えないな」

 

「闘争? どこかの【ファミリア】と争うのか?」

 

「今の所はそこまでしか言えないな。ではこれにて失礼」

 

「じゃあな、ティオネ」

 

 

 そう言ってこの話を強引に締め、【カーリー・ファミリア】は主神の後に従い、来た道に戻って行く。

 

 僕を含めた全員が、遠くなって行くアマゾネスの後姿を消えるまで見つめ続けた。

 

 そんなベル達から離れている所に、三つの影。

 

 

「思った以上に深刻なことになったなぁ」

 

「ヘルメス様、もうこれやめましょうよ。私達が受けて良かった事案じゃないって」

 

「ルルネ。気持ちはわかりますが、『強制任務』なのでしっかりやりませんと。ペナルティが出ますから」

 

 

 【ヘルメス・ファミリア】主神と眷属2人がその光景を眺め、先が思いやられることを予想されてしまった。

 

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