ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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ベート、ティオネ、アルガナ「「「まだまだぁ!」」」
ニョルズ「もうやめてくれ!? 俺達の街が!!」

そして今回の文字数は多い方。


密会

 【カーリー・ファミリア】と離れ、僕達はその場で同様な状況でああなってしまったのか説明を受け、ダフネさんとルアンはベートさんに感謝の言葉を送ったが、ベートさんは「いるかそんなもん!」と突っぱねていた。

 

 僕達も『怪物祭』に会った人も含め、【ロキ・ファミリア】の人達と挨拶をしたけれど、レフィーヤさんから僕に「あー!! あの時の不遜な人間が何故ここに!? あなたもこの『強制任務』に参加したのですか!?」と大声で言われた。その後すぐに事情を話したら、こちらも何故か納得したような顔をされたけど。

 

 また、ベートさんから「思い出した! こいつら『ミノタウロス』の時にいた雑魚共じゃねえか!」と言われたけど、アイズさんがすぐにフォローしてくれた。

 

 そして、今回の件でフィンさんはベートさんとティオネさんに極東に伝わる土下座をさせ、説教をしていた。アイズさんやティオナさん、レフィーヤさんもその光景を見て、何かを連想したのか、非常に青ざめている。

 

 ニョルズ様はベートさんやティオネさん、そしてここに到着するまでに、事前にニョルズ様から聞いた【カーリー・ファミリア】の頭領であるアルガナさんという人物たちの戦闘の影響で、一部建物が崩壊したメレンの港街の有様を見て、嘆いている。

 

 そしてそのまま僕たち【アポロン・ファミリア】はその場を後にし、夜近くとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 晩食を食べながら、僕達は報告会をして、今日それぞれ情報を得てきた事を話し合っている。

 

 

「…ふーん、なるほどね。昨日、食人花が初めてここのメレンにも出たのね」

 

「うん…。でも、すぐに【カーリー・ファミリア】の人達に一撃で倒されちゃったけどね…」

 

「オイラ達の方はほとんど情報がなかったという感じだな。強いて言えば、この街は勢力関係が複雑な事と、今回の『強制任務』をギルド支部の連中が知らないという所だな。あと、マードックやらなんかの奴は冷たいやつだったな! オイラ達に話もしないで帰らせようとしていたんだぜ! その帰り道に【カーリー・ファミリア】の奴らと出くわしてしまったし!」

 

「その傷も、カサンドラさんの魔法で癒しましたけどね」

 

「えへへ…」

 

「それに関しちゃあ、マジで感謝しているよ」

 

「そういえば、他にも僕達の方で変な粉みたいなのがマードック家の人から、ここのメレンに出回っているみたいです。それ以外だと、近年漁が順調になっているとか…」

 

「…変な粉?」

 

 

 燻し気な顔を見せたダフネさんが、僕達の方に見せて疑問を持つ。

 

 

「どういう効果があるの、それ?」

 

「【ニョルズ・ファミリア】の団長さんが言うには、モンスターをある程度寄せ付けない効果があるみたいです」

 

「…なんでオラリオの方に出回ってないの?」

 

「分からないです…」

 

 

 ダフネさんが疑問に思い、僕とカサンドラさんも疑問に思っていたことが再発し、考えたが、ルアンがすぐに今後の事について話題を切り替える。

 

 

「なんにしても、【ニョルズ・ファミリア】の方は白っぽいし、今後は【カーリー・ファミリア】について調査しないとな!」

 

「ルアンの言う通りなんだけど…、う~ん?」

 

 

 カサンドラさんが悩んでいて、何か違和感があるような気がしたのだろう。

 

 その様子を見た僕は、このまま【ニョルズ・ファミリア】の方を切り上げて良いのか疑問に思い始める。

 

 僕達が今後の方針にどうするか考え始めると、【ロキ・ファミリア】の人達とヘルメス様、アスフィさんが来た。

 

 

「おや、【アポロン・ファミリア】の人達もここにいたのか」

 

「そうみたいだな。事が大きくなりそうだし、俺達の情報も共有するか」

 

「あれ、皆さんもお揃い…というわけではないですね。ルルネさんは?」

 

「ルルネは今【カーリー・ファミリア】の船の方を見張っているよ。それよりも、君達が得た情報と俺達の情報を交換しないか?」

 

「そうね。何かややこしいことが起こりそうだしね」

 

 

 ダフネさんがそう言い、僕達の情報と【ロキ・ファミリア】の人達、【ヘルメス・ファミリア】の人達が得た情報を交換した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!? じゃあ、【カーリー・ファミリア】の人達と、ティオネさんやティオナさんは同じ出身だったのですか!?」

 

「しかも、頭領姉妹になっているアルガナとバーチェに師範してもらっていたわ」

 

「あの時はぶん殴られまくっていたよねー」

 

「俺が聞いた話では、こいつら馬鹿アマゾネスコンビも、あいつらは狙っていたな」

 

「オイラ達、それで出会い頭で襲われたんだ…」

 

 

 【カーリー・ファミリア】の人達と、ティオネさんやティオナさんが既に知り合っていたことが分かり、ルアン達が納得していると、フィンさんやヘルメス様、アスフィさん達が深刻そうな顔で別の事を相談している。

 

 

「ただ、今回の任務で【カーリー・ファミリア】の事を専念するかと思っていたが、事態は複雑になりそうだね」

 

「そうだな。アスフィ、ベル君達が言っていた粉の事について、何か知っているか?」

 

「いいえ、知りません。治療関連や鍛冶関連にはオラリオ随一とは言いませんが、それ以外の道具関連では私が一番詳しいはずです。ですが、その粉にはついては何も情報が得ていません」

 

 

 アスフィさんの言葉で、僕とカサンドラさんは驚愕する。

 

 

「えっ、そうなんですか!? オラリオ発明って聞いたから、てっきりアスフィさんが作製したものだと…」

 

「となると、闇ルートで手に入れた物か、もしくはその情報自体が嘘だな」

 

「嘘!? でも、一から作製したとしたら、一体どうやって…。窓越しで見た感じではあったけど、マードック家の人、ボルクだっけ? その人は恩恵を得ているわけじゃなさそうだったわ…」

 

 

 ダフネさんが更に疑問を持ち始め、皆が考え込んでいると、アイズさんが僕とカサンドラさんに質問してきた。

 

 

「ねえ、ベル、カサンドラ。その粉の見た目は、どうだったの…?」

 

「そうですね…。においはかなり臭くて、色は赤とか黄色とか黒とか、とにかく様々な色合いが混ざっていました」

 

「あ、あとは、何か少しキラキラと光っていたような…」

 

「……」

 

 

 僕は粉に関して見た目からでも奇妙だったなと思い、アイズさんもまた少し考え込み始める。

 

 アスフィさんもまた僕らの話を聞いて、「少し光っていた…?」と小さく呟く。

 

 皆それを聞いて、ベル達含めまた考え込みはじめると、フィンは少し嫌な予感がしたのか、ダフネ達にギルド支部に関して質問した。

 

 

「なあ、君達の方はギルド支部に行っていたんらしいのだけど、その時、向こうから、『強制任務』の事から【カーリー・ファミリア】の事に話題が切り替わったのかな?」

 

「…言われてみればそうね。支部長のルバートが出てきて、そうなったわね。でも、それがどうしたの?」

 

 

 フィンは益々顔を顰め始め、ヘルメスはその様子に疑問を持つ。

 

 

「…【勇者】? 何か気がかりなことがあるのか?」

 

「ああ。先程ベル達が話していた食人花は、実は魔石や魔力を持つ者の方を優先して襲う習性があるんだ」

 

「で、でも、逆にそれを使えば、Lv.1のベルでも頑張れば倒せるけどね…。というか、倒したけどね」

 

「はっ! 雑魚でも倒せるようじゃ、そのモンスターもたいした事はねぇな」

 

「ははは…」

 

「まあ、ともかくそのような習性があるんだ。そして、一昨日まで食人花が現れなくて、昨日食人花が先程話した粉を持っていない【カーリー・ファミリア】の船に襲ってきた」

 

 

 フィンさんが説明始めると、ヘルメス様とアスフィさんも、この現状がどういうものなのかすぐに理解したのか、顔を顰め始めた。

 

 

「おいおい。まさかだが、ベル君達が言っていた粉って…!」

 

「ああ。魔石だ。魔石を分解して漁師たちに持たせて、その粉を湖にばらまく事で、食人花がそちらの方を優先して、一昨日まで船が襲われなかったんだ」

 

「ええっ!? 話し合っていた粉って、魔石が分解したものだったんですか!? で、でも、どうして食人花の事をオラリオに知らせなかったんですか? いくら何でも危ないから、討伐の話が出てくると思いますけど…」

 

「レフィーヤちゃんの言い分はそうだろう。だが、それは食人花が誰にも知られずに、いつの間にか湖に住み着いてしまった場合の話だ」

 

「え、ヘルメス様、今回のとは違うの? どうして?」

 

「ここの漁は近年魚が獲れているだろう。メレンの街にとって、それはいい事だ。だがそれは、恐らくだけど湖にいた食人花が、魚を食ってしまう海のモンスター達を捕獲しまくっていたからだと思うぜ」

 

「魔石の方を優先するという事は、自分らとは異なるモンスターの方を先に襲うと同意義だからね」

 

「な、え、じゃあ、この街は…!」

 

 

 僕らはフィンさんとヘルメス様のこの街の現状の解説を聞いて、絶句する。

 

 そして、まだまだ解説が続く。

 

 

「今ベル君が想像した通りだ。君達【アポロン・ファミリア】を襲ってきた時、そこでも食人花は使われていたんだろう? 今でもそうなのかはわからないが、この街は『闇派閥』と繋がっているんだ」

 

「しかし、ヘルメス様。いくら何でもニョルズ様はこの事を知らないのではないですか? 良い神格者でもあると聞いていますし、彼らと話していたときもそれが現れていたはずです」

 

「いや、アスフィ。ニョルズもこの事は知っていた筈だぞ。むしろ当事者の一人でもあるはずだ。何せ、正体が分からない粉を自分の眷属達に持たせるんだ。これが当事者じゃなければ、不安で仕方がないと思うはずだ」

 

 

 確かに。今思えば、僕達はあの粉を初めて見た時不気味に思っていたが、ニョルズ様は落ち着いていた。長い年月を持たせていたから慣れたのだと考えていたが、粉を持たせた最初の頃は、反発していたようなことは聞いていない。

 

 

「じゃあ食人花の件は、【ニョルズ・ファミリア】と、魔石を砕いて漁師たちに持たせているボルクという人物が黒幕という事になるのですか?」

 

「いやティオネ、それは少し違う。正確に言うならば、神ニョルズ様とボルク、そしてギルド支部長ルバートの3人が黒幕で、共犯者だ」

 

「【ニョルズ・ファミリア】の団員たちは、違うのですか?」

 

「ああ。聞いたところによれば、ニョルズ様に対してかなりの信頼があるみたいだから、この件もそれのおかげで嘘の説明をすることができて、皆納得してくれただろう」

 

「でもフィン。逆にどうしてギルド支部長の方も黒幕なの?」

 

「だからお前は馬鹿なんだよ。どうやって魔石を大量に手に入れるんだっつーの。ギルド支部の協力がなけりゃ、どう考えたって数が足りねぇだろ」

 

「あ、そっか、なるほどねー。まさかベートに解説してもらう日が来るとは、明日は大変な目に合うのかな?」

 

「んだとこの馬鹿ゾネスが!」

 

 

 ベートさんが解説して、ティオナさんが明日の心配をしてしまい、ベートさんは食ってかかるが、フィンさんがそれを止める。

 

 

「二人とも喧嘩は止めろ。さて、とりあえずこんな形の推理になったが、まだまだ問題が残っている」

 

「…【カーリー・ファミリア】の事ですか…」

 

「いや、それもあるが、まだこの件が片付いていない」

 

「証拠とか見つけないとね」

 

「ん…」

 

 

 確かに、それらを見つけないとまだこの件に関しては解決していない。恐らくその事を話そうと思っていたけど、フィンさんの口から別のことが出た。

 

 

「もちろんそれもあるが、この件の延長、つまり予備の食人花がある」

 

「「「「「…!?」」」」」

 

「えっ、予備の食人花!?」

 

「ど、どういう事ですか団長!?」

 

「そのままの意味だ。このまま食人花がいなくなってしまっては、モンスターの数が余り減らず、漁もはかどらないだろう。つまり、また食人花を湖に放つはずだ。その保管庫がこのメレンのどこかにある。それを見つけないとね」

 

「なるほどね…。ウチらはそれを見つけることが先決だね」

 

「ああ。先程ティオナとティオネが湖の中に潜ったけど、食人花はいなかったから、まだ放たれていない。もしかしたら明日放つ可能性が高いから、ニョルズ様を見張って欲しい。僕らは【カーリー・ファミリア】の方を見張る」

 

「わかりました」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「じゃあ俺ら【ヘルメス・ファミリア】はその両方をサポートするという形で」

 

「その方がこちらにとっても都合がいいですしね」

 

「では報告会は以上で、各自解散!」

 

 

 報告会はそう締めくくり、僕達は皆、店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、【ロキ・ファミリア】の人達もこっちの道ですか?」

 

「うん…」

 

「という事は…」

 

「まさか…」

 

 

 そして宿に辿り着き、まさかの【ロキ・ファミリア】の人達は、僕達と同じ宿だった。

 

 レフィーヤさんが言うには、誰か一人が部屋をキャンセルしたことで、丁度6人分空いていたらしい。

 

 

「部屋を覗き見しないで下さいよね!」

 

「しませんよ!?」

 

 

 ただ、今僕がカサンドラさんの宿の部屋に泊まることになっているのは、言わないでおこう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中になって、あたりもすっかり暗くなっている。

 

 僕はカサンドラさんの部屋に泊まることになっているが、やはり二人だと狭く感じる。

 

 先にカサンドラさんが風呂に入っている。というか、部屋の中にシャワーの音が普通に聞こえているのだけど、僕は必死に考えないようにした。

 

 そして何を思い詰めていたのか、一回カサンドラさんがタオルを巻いたまま出たとき、僕は驚愕の声をあげそうになったけど、ここは宿であり、防音対策はそこまでしっかりしていなかったので、僕は何とか口を抑えて大声を出さずにいた。

 

 一応これでもなんとかだけど。

 

 

「あの、カサンドラさん!? そ、その格好は…!?」

 

「べ、ベル…。こ、こうでもしないと、もう、私は…!」

 

「あ、あの、目が怖いですよ!? どうしたんですか!?」

 

「い、いいから、こっちに…!!」

 

「いや、無理ですって!? せめて何か着てください!」

 

 

 僕の必死の抵抗の言葉で、カサンドラさんに抵抗すると今の僕の言葉でカサンドラさんが何かを閃く。

 

 

「…! それよっ!」

 

「…えっ?」

 

「み、水着を着て一緒にお風呂に入る! こ、これなら、大丈夫だよねぇ!?」

 

 

 おかしい。カサンドラさんが何を言っているのかわからない。

 

 

 

「さ、さあベル。解決策が出来たから一緒に入ろうよ~!」

 

「……………えっ、いや、あの、宿の風呂では二人だと狭いですし!」

 

「こっちも詰めれば何とかなるから~~~!」

 

「そういう問題ですか!?」

 

「と、とにかく、水着を着て入っているから、ベルも水着を着て入ってきて~! いいね!?」

 

「は、はい……あ!」

 

「今了承の返事をもらったからね~!」

 

「え、いや、ちょっ、カサンドラさん!?」

 

 

 僕の言葉はむなしく水着を持ってすぐに風呂の方に入って行った。

 

 取り残された僕は、水着が入っている荷物の方をゆっくり見る。

 

 

「…………え、本当に着替えて入るの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、僕は水着に着替え、カサンドラさんが先に待っている風呂の部屋の方に入って行った。

 

 僕は白い水着であるが、カサンドラさんの水着は上が白で下が黒く、また水着の上からでもわかる谷間があり、さらに脇などはそのまま見えている。

 

 

「し、失礼します…」

 

「ど、どうぞ…」

 

 

 お互いは顔を赤く染めながら会話をし、一緒にシャワーを浴びた。

 

 ただし、シャワーがかかる範囲は非常に狭いので、僕らはかなり密着になってしまっている状態である。

 

 

「は、はうぅ~~」

 

「…ど、どうしよう…」

 

 

 アミッドさんの時はベッドの上で寝ている時は抱き付かれていたけど、今回は布で覆われていない部分の肌にそのままくるので、とても意識してしまう。

 

 しかし、まだまだ続く。

 

 

「あ、ベル。せ、背中を洗うね~」

 

「え、あの…」

 

 

 僕が何かを言う間にカサンドラさんが僕の背中を洗い始める。

 

 こうして僕の背中を洗われるのは非常に幼い時以来である。

 

 そして背中を洗ってもらうと、カサンドラさんが僕に頼み込んできた。

 

 

「ね、ねえ、ベル…。わ、私の背中の方も洗って…?」

 

「あの……カサンドラさん。流石にそれは…」

 

「い、今ベルの背中を私が洗ったから大丈夫だよ~」

 

「いや、それとこれとはまた…」

 

「いいから早く~!」

 

 

 そう言われるがまま、僕は手に泡をつけてカサンドラさんの背中を洗う。

 

 カサンドラさんの水着の構造上、上の水着の布は背中の方も一部覆われているが、その背中の水着下の方も洗う。

 

 時々カサンドラさんが「はう!」とか妙な声を上げるが、僕は何か見たのかと思い、そのまま聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 カサンドラさんの背中も洗い、お互い自分で前の方を洗って、いよいよ一緒に湯船に入る事になった。

 

 カサンドラさんと一緒には行ってみたものの、やはり湯船が小さいため、二人では非常に狭い。

 

 流石に僕の方が出ようとしたが、カサンドラさんが「あ、そ、そうだ!」と言い、体の向きを変えて僕と同じ方向にして、僕の上に座る形で入った。

 

 僕の上に座られてしまった事で、僕の身動きが取れなくなってしまった。

 

 

「カ、カサンドラさん? あの、そうされると僕、動けないんですけど…」

 

「…え、えい!」

 

「え、ちょ、カサンドラさん!?」

 

「はう~~! な、なんかベルの肌って、背中を洗った時もそうだけど、妙に触り心地が良いよね~~!」

 

「あの、そう背中に寄られますと、僕の方が窮屈になってしまうんですけど!?」

 

「今はこうさせて~~!」

 

 

カサンドラさんが僕の方に背中から寄りかかり、僕の肌の触り心地が良いのかを楽しんでいる。

 

 そして、今度は僕の方に向き、抱き付いてきて、頬を擦りつけている。

 

 

「ちょっ、あの、カサンドラさん!?」

 

「~~~~♪」

 

 

 そしてそのまま湯船で楽しまされ、僕がのぼせそうになるまで行われ、カサンドラさんが十分堪能したのかようやく解放してくれた。

 

 そしてすっかりカサンドラさんが上機嫌となり、僕の方はのぼせる寸前だったので、意識が何とかある状態だった。

 

 今日はもう寝ようと先に着替えて水着を干し、歯を磨いてそのままベッドの上で横になる。

 

 カサンドラさんの方も同じく着替えて水着を干して、歯を磨いていた。

 

 僕はもうすぐ眠りに入ろうとしたところで、その寸前にある事に気づく。

 

 

(…あれ? そういえば、ベッドって一つしかないんじゃ…)

 

 

 カサンドラさんは寝間着に着替えており、胸元が空いているが、部屋の明かりを落として、そしてお互いベッドから落ちないように僕を上から覆いかぶさるように抱き付いて、そのまま寝てしまった。

 

 カサンドラさんは至近距離でもあって、明かりが薄暗くてもわかるくらいとても幸せそうな顔で寝ている。

 

 僕はその顔を見て、明日僕の方が早く起きても動けないと思いながらも、そのまま僕の方も眠気が誘われて、眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、【カーリー・ファミリア】の停泊宿の周辺。

 

 そこでルルネ、合流したアスフィとヘルメスは、物陰から【カーリー・ファミリア】の事を見張っていた。

 

 

「さて、まずは1日目だが、そんなすぐに相手は来ないか…」

 

「向こうにとっても2日目ですもんね」

 

「ちなみに、ヘルメス様はオラリオのどこの【ファミリア】が繋がっていると思っていますか?」

 

「俺の予想か? そうだなぁ…。【イシュタル・ファミリア】あたりかな?」

 

「ああ、やっぱり? 都市外の顔の広さを考えたら、そことか【フレイヤ・ファミリア】とか、そういう大手の【ファミリア】しか思いつかないからね」

 

「まあ、何にせよ…! 静かに。何かフードを被ってきた人が何人か、ガオレン船に近づいています」

 

 

 アスフィが宿に怪しい人影が近づいているのを発見して、恐らく【カーリー・ファミリア】の取引相手だと3人は確信する。

 

 そして、その中には褐色肌の女神の姿もあった。

 

 

「おお、本当だ。意外に早かったな。そしてその中心にいるのは…、やっぱりイシュタルか」

 

「他にもその【ファミリア】の団長のフリュネ・ジャミールの姿もありますね…」

 

 

 ヘルメスとアスフィが近づいている人物の名前をあげると、ルルネはあるものを目に留まる。

 

 

「…? ねえ、ヘルメス様? あのアマゾネスの何人かが担いでいる箱籠は何ですか?」

 

「…何だろうな? やけに厳重に守られているから、だれか入っているのかな? それとも、【カーリー・ファミリア】と取引したものなのかな?」

 

「……?」

 

 

 【イシュタル・ファミリア】の団員であるアマゾネスの複数人がやけにその箱籠の周囲を警戒していたため、3人は疑問に思い始める。

 

 だが、本来の任務を遂行するため、ヘルメスはアスフィにある魔道具を使う事を命令する。

 

 

「そうだな…。それらを調べるにも潜入する必要があるな。アスフィ。例の道具を使って、あのガオレン船内に潜入しろ!」

 

「…そうですね。どちらにせよ、そうしないと詳しい話が聞けることが出来ないですもんね…」

 

 

 アスフィが愚痴を出しながら、装備者の姿を透明状態にする魔道具『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【カーリー・ファミリア】の停泊宿内。

 

 魔石灯の光が抑えられた室内は、絨毯から壺、ソファーまで置かれており、窓は一つもない広間であった。

 

 その室内には大勢の【カーリー・ファミリア】のアマゾネスがいて、アルガナを始めくつろいでいた。カーリーもまたソファーに寝転がっており退屈そうにしている。

 

 そして、アルガナとバーチェは不意に一つしかない部屋の扉を見た。

 

 それに呼応するかのように、その扉が開かれる。

 

 まず現れたのは、褐色肌の女神だった。

 

 

「集まっているようだな」

 

 

 彼女はいかなるものよりも美しく、現れた瞬間、【カーリー・ファミリア】のアマゾネス達が見惚れてしまう。アルガナは興味津々で眺め、バーチェは耐えるように眉間にしわを寄せ、顔を背ける。

 

 ただし、カーリーのみは普段と変わらなかった。

 

 

「やっと来おったか。待ちくたびれたぞ。確認するが、お主がイシュタルで間違いないか?」

 

「いかにも」

 

 

 カーリーの問いに『美の神』イシュタルは肯定する。

 

 【イシュタル・ファミリア】はオラリオの中でも群を抜いた戦力を保有する大派閥であり、都市南東に存在する『歓楽街』を領域に持ち、勢力圏はオラリオ随一である。

 

 その戦闘員のアマゾネス達もまた娼婦であるが、その力は冒険者たちにも恐れられている。

 

 

「辺境の地にいる妾達に依頼を出すとは、お主も酔狂よのう」

 

「それは文を使って何度も説明しただろうが。私は忌々しいフレイヤを倒すためならば、何でも使う」

 

 

 イシュタルは、地位と名声のみならず、自分を差し置いて美しいと賛美される自分と同じ『美の神』フレイヤを誰よりも妬んでいた。

 

 だが、【フレイヤ・ファミリア】の戦力は都市最強であり、自派閥のみでは打倒出来ないと判断しており、【カーリー・ファミリア】の協力を得ようと取引していた。闘争に飢えた【カーリー・ファミリア】もまたとない機会であったため、すぐに利害が合致したのだ。

 

 

「先に開戦の手筈を伝えておく。好き放題暴れたら堪ったものではないからな」

 

 

 イシュタルがそういうと、【イシュタル・ファミリア】の眷属達がぞろぞろ入り、その中の一人であるサミラがオラリオの地図を広げる。

 

 

「私達の領域はここ、南東の歓楽街。対してフレイヤ達の本拠は南の繁華街の中心。そして今いるメレンは、オラリオから見て南西の位置にある」

 

「ふむふむ、なるほど。既に敵の陣地を挟んでいるのか。となると双撃か?」

 

「その通り。開戦早々決着をつける。敵が私達に気を取られている内に、お前たちは都市に侵入してその背後を討て」

 

「…あの馬鹿でかい市街はどうするのじゃ?」

 

「その点に関しては問題ない。こいつらの力を借りる」

 

 

 イシュタルがそう言うと、未だにフードを被っていた二人がカーリーの前に出てくる。

 

 そして、二人はフードを外し、自己紹介をする。

 

 

 

 

 

 

 

「私はアルベラ商会会長のアルベラと申します。今回の作戦において、検問の突破の手伝いをさせていただくものです」

 

「私は【ソーマ・ファミリア】団長のザニス・ルストラと申します。今回の作戦において、検問突破後の敵本陣への誘導をさせていただくものです」

 

 

 男の出現に【カーリー・ファミリア】は驚愕したものの、カーリーがすぐにその場を静めた。

 

 そして、イシュタルは二人を下がらせ、カーリーに向かって笑みを浮かべる。

 

 

「まあ、こいつらの仲間が今回の作戦をより確実にするための役割を担っている。不満なら、私自ら出向いて『魅了』を使って門を開けさせ、お前らを出迎えてやろうか?」

 

「いや、不満はない。が、やはり女神の嫉妬ほど醜いものはない。こうなってしまえば、やはり醜悪に成り下がるわ」

 

「何とでも言え。あの忌々しい女神を墜とすことが出来るなら、私は何だって犯してみせる。そして、計画に関してはこれで終わりだ。抗争の始まりが合図だ」

 

 

 フレイヤはそう締めくくり、カーリーも承諾する。そして、質問を投げかけた。

 

 

「…して、期日は?」

 

「その話をする前に、私達がもう一つ依頼したものを持ってきているのか?」

 

 

 イシュタルは逆にカーリーに質問する。

 

 カーリーはすぐに眷属達にそれを持ってこさせようとし、イシュタルに依頼されたものの正体を聞こうとする。

 

 

「ああ、あれか。しかし、あれは一体何なのじゃ? おかげで、それの取り合いで一つの【ファミリア】を潰してしまったぞ」

 

「ああ、こっちの切り札になる物だ。お前らに依頼した理由は、本来ある運び屋に依頼しようとしていたが、そいつは中々オラリオに帰って来なくてね。それで、お前らが時期的にも何とかメレンに着くのが間に合うだろうと考えて、依頼したのさ」

 

「ほーん、なるほどのう」

 

 

 カーリーは依頼された理由を聞いていると、まずは鎖につながれて囚われたヴィーザルがアマゾネス達に連れて来られ、姿を現した。

 

 

「…! イシュタル!?」

 

「…ああ、なるほど。潰された【ファミリア】ってのは、ヴィーザル。お前の所だったのか」

 

「そうじゃ。中々抵抗してきてな。思わず妾の眷属達が殺しつくしてしまったのじゃ」

 

「そいつは不運だったな」

 

「グウッ……!」

 

 

 神ヴィーザルはイシュタルがこの場にいたことに驚くものの、【カーリー・ファミリア】と手を組んでいることを察し、憎しみ気な視線を送る。

 

 イシュタルはそれを、キセルを拭いてスルーしている。

 

 カーリーは依頼されたものがここに持ち込まれるまで、別の件について話す。

 

 

「なあ、イシュタルよ。先に報酬の件について済まないか?」

 

「報酬の財宝ならいくらでも…」

 

「金はいらん。別の報酬が欲しくなった。そしてそれを先にもらいたい」

 

「…言ってみろ」

 

 

 イシュタルは顔を顰め、カーリーの顔をうかがう。

 

 

「今、【ロキ・ファミリア】の団員の一部がここに来ておる。もしかしたら、妾と関係あるかもしれんし、食人花とやらのモンスターの方を追っていたのかはわからないがな」

 

「食人花…? ああ、あれか」

 

 

 イシュタルは思い至ったように一瞬せせら笑いし、そしてすぐに両の眉を吊り上げた。

 

 

「…まさか、貴様」

 

「ご明察の通りじゃ。あの者たちと戦いたい」

 

「ふざけるなっ! あそこの連中も大概だ! 大事になるに決まっている!」

 

 

 取り返しのつかない被害になると反論するがカーリーはそれを両手で制す。

 

 

「元妾の子がおる。そやつらアマゾネス姉妹と、このアルガナとバーチェを戦わせたいのじゃ。闘争、血の両方が見たい。そして、それで妾から飛び出た子、妾の元に残った子のどちらかが強いのか、拝みたいのじゃ」

 

 

 カーリーが下界した目的は『闘争そのもの』。

 

 図り損ねていた戦神の本質に、美の神は舌打ちした。

 

 

「お主等には姉妹以外の足止めをしてほしい。他にも面倒そうな子がおったからな。妾が望むのは姉妹同士の決闘よ」

 

 

 そして、イシュタルはこれ拒否しようとするも、フリュネ、ザニスに止められ、皆の相談をした結果、協力することに決まった。

 

 

「ただし、分が悪いようなら私達は切り上げる。後の事はお前たちがやれ」

 

「勿論だとも。闘争と殺戮こそが、子の真理じゃ。闘争の行く末、それが見たいのじゃ」

 

 

 カーリーがそう締めくくった途端、ついに依頼されたものが届いた。

 

 イシュタルはそれを見て歓喜し、一部を除いた【イシュタル・ファミリア】のアマゾネス達は、早くも【フレイヤ・ファミリア】に対しての闘争心が出始める。

 

 ザニスもまた、それを見て喜ぶ。

 

 長脚を持つ一際美しいアマゾネスの娼婦は顔を顰める。

 

 ヴィーザルは苦々しい顔をする。

 

 カーリーは【イシュタル・ファミリア】の様子を見て、一体それは何なのか尋ねる。

 

 

「なあ、イシュタルよ。それは一体何なのだ? いい加減教えてもらおうか」

 

「ああ、いいぞ。よくやってくれた、カーリー! これは、『殺生石』と呼ばれるものだ!」

 

 

 そして、最も当事者である布を被る獣人の少女はそれを見て、より一層、すべてが諦めたような顔をした。

 

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