ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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誤字報告ありがとうございます。


今回の話に出てくる道具は、ちゃんと原作にあります。


不吉な前兆

 次の日。

 

 僕が朝目覚めると、カサンドラさんはまだ覆いかぶさるように僕の上に乗ったまま眠っており、やはり身動きが取れなかった。

 

 ただ、カサンドラさんが何か湿っぽく、また何かにうなされていた。

 

 

(あれ…? カサンドラさん、汗をかいている…?)

 

 

 確かにこの暑い中で、しかも二人で密着しているから、そうなったことだと思ったけれど、それにしても尋常じゃない汗をかいていた。

 

 僕はカサンドラさんが何か悪い夢でも見ているのではないかと思い、カサンドラさんが僕に抱き付いている手をそっと、優しく握ると、少しだけカサンドラさんの顔色が良くなった気がした。

 

 そして数分後、カサンドラさんの目がうっすらと開いた。

 

 カサンドラさんがまだ完全に目が覚めてないのか、少し体をあげ、横になっている僕の上で四つん這いとなり、僕の顔を見つめた。

 

 

「………」

 

「……あの、カサンドラさん…?」

 

「………」

 

 

 僕の問いかけにも答えてもらえず、そのまま僕の顔を見つめていた。

 

 そしてカサンドラさんがうっすらしか開いていなかった目が徐々に開き始め、完全に目を開いたと思うと、今度は僕の顔に抱き付いてきた。

 

 

「もご、もががごがが!? もぐもがへぐご!? もぐふごげもひんげふでご!?(あの、カサンドラさん!? もう朝ですよ!? 僕動けないんですけど!?)」

 

「今は堪能させて~~~!」

 

 

 そう言い、カサンドラさんは僕の顔に胸を押しあて、僕の頭をもふもふさせてきた。

 

 いや、あの、これはさすがに息が…! てか、カサンドラさんの服が乱れているし!? 胸元が大胆に開いていますから!!

 

 

「ひ、ひぎが…!? (い、息が…!?)」

 

「はうう~~~~~…、あ、ご、ごめん、ベル!」

 

 

 僕の顔が青くなり始めたことを気付いて、カサンドラさんが僕を開放して、謝罪してきた。

 

 どうやら、かなり不穏な夢を見て、怖くなったらしくて、それであのような行動をとってらしい。

 

 いや、でも、元気になるのかな…? 元気になるんだったら別にいいんだけど…。

 

 

 

 

 

 

 そして落ち着いた後、カサンドラさんは深刻そうな顔で僕に相談してきた。

 

 やはり夢のお告げが出たらしい。

 

 その内容は人の影であり、オラリオに帰還する時、外壁に到着した影の数が全部で12つ。

 

 僕やカサンドラさんを含め、今回の『強制任務』に参加した人数は【アポロン・ファミリア】、【ヘルメス・ファミリア】、【ロキ・ファミリア】で、全部で12人と1神。

 

 つまり、数が1つ合わない。

 

 もし、夢のお告げの通りだったら、カサンドラさんが言うには、誰か1人が帰らぬ身となるという暗示であるらしい。

 

 そしてその者は、僕やカサンドラさんである可能性もあるらしい。

 

 

「「……」」

 

 

 部屋の中は静寂になった。

 

 誰かに相談しようにも、僕以外では誰も信用されないため、打てる手が少ない。

 

 それでもこの夢のお告げ通りにはならないように、僕らは頑張るしかないとカサンドラさんを励ました。

 

 カサンドラさんもそれに頷き、出来るだけ慎重に行動することを決めた。

 

 この後、朝御飯を食べ、歯を磨き、着替えて、僕達は部屋を出た。勿論、同じ宿に停泊した他人に気づかれずに。

 

 こうして、僕は非常に刺激的な朝から一日が始めった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてダフネさんやルアンを含めて皆が集まっている時、見張りをしているルルネさんを除いて、ヘルメス様とアスフィさんの姿があったが、【ロキ・ファミリア】のベートさん、ティオナさん、ティオネさんの姿がなかった。

 

 レフィーヤさん達が部屋を確認したところ、もぬけの殻だったらしい。

 

 

「……どうやら僕らのホームに帰ったら、3人とも本家(リヴェリア)の説教を味わいたいみたいだね」

 

「「…ヒュ!?」」

 

 

 フィンさんが静かにそう呟くと、アイズさんが非常に怯えた顔になっていて、戻ってきたレフィーヤさんも恐怖が顔に出ていた。その人が怒ったら、どんだけ怖いんだろう…。

 

 しかし、ヘルメス様は逆に好都合だったとばかりに、昨日の夜の【カーリー・ファミリア】の様子を教えてきた。

 

 

「いや、むしろ3人がこの場にいないのは好都合だ」

 

「…? どういう事だ、神ヘルメス?」

 

「昨日の夜、早速【カーリー・ファミリア】と、それに繋がっている【ファミリア】が密会していた」

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

「その密会の内容は!?」

 

「それについては、実際に頑張って潜入して、それを聞いたアスフィから聞いてもらおうか」

 

 

 ヘルメス様がそう言い、アスフィさんに密会の内容の説明をバトンタッチした。

 

 

「はぁ…。とにかく、皆さんに教えておきましょう。早速ですが、【カーリー・ファミリア】と繋がっている【ファミリア】は【イシュタル・ファミリア】でした。取引をした目的は、イシュタル側は【フレイヤ・ファミリア】を倒すためであり、その戦力確保を狙っていました。そして、カーリー側はその【フレイヤ・ファミリア】と戦いたいためで、闘争そのものが目的でありました」

 

「闘争そのものが、目的…!?」

 

「はい。何でもカーリー様は、闘争と殺戮こそが真理であるという考えを持っており、闘争の行く末を見たいという未知を欲したのでしょう。そして取引を応じる報酬に、ティオネさんとティオナさんに向こうの頭領姉妹であるアルガナとバーチェを戦わせるようです」

 

「「「「「な…!?」」」」」

 

 

 なんだそれは!?

 

僕らが予想していたものは薄っぺら過ぎると言われたかのように、かなり破天荒な【ファミリア】であることが知らされた。

 

 ティオナさんとティオネさんはそんな【ファミリア】に嫌気がさして飛び出し、ここのオラリオまで流れ着いたのかな…?

 

 フィンさんは何かを考えていて、そしてアスフィさんに話の続きを聞かせるよう促した。

 

 

「【万能者】。まだこれで話が終わりというわけではないのだろう? その続きを聞かせてくれ。ティオナとティオネに、アルガナとバーチェを戦わせて? それでその戦いには邪魔ものでしかない僕らには何を?」

 

「はい。【イシュタル・ファミリア】が協力をするらしいですが、まだその内容までははっきりと決まっていませんでした」

 

 

 アスフィさんがそう話し、僕らは向こうの出方に対して対応するしかないと考えた。

 

 しかし、フィンさんはまだ何かあるとにらんでいたのか、さらに話の続きを聞かせるよう促したが、ヘルメス様が割って入った。

 

 

「そうか…。それで?」

 

「おいおい【勇者】、もうこれで話は終わりだよ。協力関係だったのは【イシュタル・ファミリア】だったんだ。そして向こうから接触される前にティオナちゃんとティオネちゃんを早く探さないと…」

 

「いや、まだ話には続きがある。この話の中には、ベートがいなくて好都合という理由がない。つまり、まだ何かあるのだろう? ベートに関する何かが」

 

 

 フィンさんにそう言われ、ヘルメス様は珍しい失言をしていたことに思わず自分の口を手で抑えようと動作したが、すぐに止めた。

 

 

「…やれやれ。俺もこんな簡単なミスをしてしまうとはね」

 

「つまり、それだけ衝撃的なことだったのだろ? 話してくれ」

 

 

 ヘルメス様はまいったという顔で、先程の密会の話の続きを皆に話した。そして、注意事項を述べながら。

 

 

「こればかりはベート君の耳に入れないでくれよ。実は、ベート君が【ロキ・ファミリア】に入団する前、かつて【ヴィーザル・ファミリア】に入団していた筈だ。その【ファミリア】がオラリオを出た後、神ヴィーザルを残して眷属達が【カーリー・ファミリア】によって全滅されていて、ヴィーザルは今でも【カーリー・ファミリア】に囚われているんだ」

 

「「「「「「「……ッ!?」」」」」」」

 

 

 僕らは衝撃的な話を聞き、フィンさんも含めて言葉を失ってしまった。【ヘルメス・ファミリア】の人達も少し気まずいとばかりに僕らから視線をそらした。

 

 フィンさんはすぐに気を持ちなおして、詳しい話を聞こうとヘルメス様とアスフィさんに尋ねた。

 

 

「【ヴィーザル・ファミリア】が【カーリー・ファミリア】と争った理由は…?」

 

「少なくとも【ヴィーザル・ファミリア】から手を出したわけではないらしいです。むしろ【カーリー・ファミリア】に対して最後まで抵抗していたらしい言葉を聞きました」

 

「……そこまでの決意をした理由は何だ…?」

 

「まず間違いなく、イシュタル様が切り札と称して、【カーリー・ファミリア】に持ってくるようにもう一つ依頼していた『殺生石』が絡んでいます」

 

 

 アスフィさんがそう説明している時に、聞きなれない単語があった。

 

 『殺生石』…? どういう物何だろう…?

 

 ヘルメス様やアスフィさんを除いて、フィンさんやダフネさんも含めて首を傾げた。

 

 僕はヘルメス様に質問した。

 

 

「あの、話を遮ってすみません。『殺生石』ってどういうもの何ですか?」

 

「…あまり聞くのはお勧めしないが、聞かれたからには答えよう。『殺生石』という物は、獣人の種族である狐人専用の道具だ。材料は『玉藻の石』と『鳥羽の石』を素材にして生成する禁忌の魔道具だ」

 

 

 さらに聞きなれない言葉を聞いた。僕は少し話について行けなくなりそうだった。

 

 フィンさんやダフネさんを除いて、他の皆も頭に疑問符を浮かべ始めた表情をしていた。

 

 フィンさんは僕らの状態を察したのか、話を巻くように頼んだ。

 

 

「神ヘルメス。材料の話は置いといて、どういう効果があるのかを話してくれ」

 

「ん? まあ、そうだな…。『殺生石』を作り上げたのが、同じ狐人だというのが驚きだが、その石の効果は、満月が出ている時が最大限発せられて、相応の設備も併用しなければできないが、生きたままの使用者の狐人の『魂』をその石に封じ込める。そして、その石は狐人特有の魔法、『妖術』の力を第三者に与えられることが出来るようになる。代償として、生贄にされた狐人の魂の抜け殻に変えてね」

 

「「「「「「「…!!?」」」」」」」

 

 

 ヘルメス様が薄く笑って話して、『殺生石』が人類の先人たちが生み出した負の魔道具であったと同時に、禁忌と称される由縁が判明した。

 

 僕らはそれを聞いて、背筋が凍るような感覚がした。

 

 カサンドラさんはその状態になりながらも、ヘルメス様に尋ねた。

 

 

「魂が奪われた狐人は、どうなるんですか?」

 

「『殺生石』を肉体に注入すれば、魂を奪われた狐人は肉体が無事なら、目を覚まして、生活も問題なくできるだろう」

 

 僕らはそれを聞いて安堵した。しかし、フィンさんやアスフィさん、ヘルメス様の顔は険しいままだった。

 

 話はこれで終わらなかったのだ。

 

 ヘルメス様はさらに顔が険しくなり、説明を続けた。

 

 

「むしろ、『殺生石』の本領を発揮するのはこの後だ。この石は砕けるんだ」

 

「…砕けたら、どうなる?」

 

「砕けた『殺生石』はそのかけら一つ一つが『妖術』を発動できるものとなる。効果は元とは威力や効果時間すら変わらず、詠唱の必要すらもなくなり、しかも何度でも使える」

 

 

 石の恩恵を受けたら、『妖術』と呼ばれる魔法を繰り出す軍団と化し、その効果の力は絶大である。

 

 僕らはそう認識され、開いた口が塞がらなかった。

 

 

「……もし、砕けた『殺生石』を魂の奪われた狐人に戻したら…?」

 

「少なくとも元通りとはいかず、赤子のような精神状態になるか、廃人になるかだな」

 

「そして、密会していた【イシュタル・ファミリア】の中に、狐人らしき人物の姿もありました」

 

 

 アスフィさんに補足説明がされて、僕ら全員が苦々しい表情を浮かべた。

 

 【イシュタル・ファミリア】は、その狐人の『妖術』を使って、【ファミリア】全員に使わせるつもりなのだ。

 

 狐人の魂を犠牲として。

 

 その狐人は覚悟の上で承認しているのか? だとしても…。

 

 僕がそう葛藤していると、フィンさんとヘルメス様は僕らに忠告した。

 

 

「いいか。君らはまずすべきなのはニョルズ、ギルド支部、マードック家を見張って予備の食人花のありかを探ることと、ベート君、ティオネちゃん、ティオナちゃんを見つけることだ」

 

「神ヘルメスの言う通りだ。間違っても、『殺生石』の事を構えないでくれ。ティオネやティオナに関しての妨害もあると思うしね」

 

 

 フィンさんとヘルメス様に釘を刺されてしまい、僕らはおとなしくそれに従うのだった。

 

 

「さて、僕ら【ロキ・ファミリア】はベート、ティオネ、ティオナを探しながら【カーリー・ファミリア】を見張っている。そっちも頑張ってくれよ」

 

「わかりました!」

 

 

 そして、僕らは行動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、【カーリー・ファミリア】の計画説明のため、連れて来られたアルベラ商会会長のアルベラと【ソーマ・ファミリア】団長のザニスは、印象を与えようと、ティオナ達の闘争の邪魔をしないように他の人の足止めの手伝いを考えていた。

 

 しかし、あまり期待されていなかったので、「敵を削ればよい」と言われてしまった。

 

 そのため、むきになったザニスはアルベラ商会の武器や道具を見て、選見していた。

 

 

「これは我々でもステイタスを見れるための『神血』です。これはかつて『黒猫』という暗殺者が使っていたとされる『眠りの香』です」

 

「ほう…。いいのもありますな…」

 

「なら、これはどうですか?」

 

 

 そうしてザニスはアルベラ商会の道具に興味を示していた。

 

 

(どれか上手く使えませんかね…)

 

 

 そして、ザニスはあるものとアルベラを交互に見て、作戦を思いついた。

 

 

「…私達は、敵を削ればいいのですよね?」

 

「そうなのですが…、どうなされました?」

 

 

 ザニスは、思いついた作戦をアルベラに伝えた。

 

 アルベラはそれを聞き、にやりと悪い顔をし、感想を述べた。

 

 

「あなたもワルですね」

 

「ははは。そう褒めるな」

 

 

 そして、作戦遂行のため、つい先ほど報告が入ったのを二人で確認した。

 

 

「執行日は今日の夜。つい先ほど目標のアマゾネス達を見つけたみたいです。我々を見張りしていた犬人を捕らえて利用したみたいですが、上手くいったようですから」

 

「はははっ! 楽しみだな!」

 

 

 二人はその場で悪い顔を出しながら笑い続けていた。

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