ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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いきなり報告。というより感想に近い。

前話の後編。

折角何人かのキャラにドレスを自然な感じで着せれたのに!(ただしリューは男装)
肝心の絵心が全くない!
畜生ォオオオオオオオ!! おのれ自分!! 誰か代わりに描いてくれ!!(無茶ブリ)


そして今回の話はメッチャ長いです。


JACKPOT!

 太陽が山脈の彼方に消え、東の空から夜がやってきた。

 

 メインストリートはすっかり夜の顔に移っており、冒険者達の笑い声が飛んでいる。

 

 そんなオラリオのとある一角、繁華街。

 

 そこには装飾を富み、目を見張るほどの上等な作りをしている多くの箱馬車から亜人達がおりてくる。皆、都市外から来た多くの異邦の財産家達であり、高級酒場や優等宿泊施設、そして娯楽施設の一つである大劇場などの方向へ散らばって行く。

 

 そんな多くの豪華な箱馬車の中から1台、扉が開かれる。

 

 まず下車したのは、燕尾服を身に包み、巨大な眼帯をつけている薄緑色の髪をしているエルフ(男装をしている女エルフ)だった。

 

 貴婦人達で賑わっている繁華街の中でも不可思議な魅力を放っており、当たりにいた貴婦人達をうっとりとさせている。

 

 その次に下車したのは薄茶色のドレスを着ている女人間であった。

 

 始めて来る街に慣れておらず緊張しているのか、足取りが不器用のまま下車しそうになるが、先に降りていたエルフが手を差し出して、その手を取りどうにか形を保てたまま下車する。近くにいた貴婦人達はリューの方に気を取られてそちらの方を余り目にかけていなかった。

 

 

「サンキュー、リュー。やっぱりここは慣れないわぁ」

 

「…それなりの演技をしていませんと周りにばれてしまいますよ、ルノア。私は男装までしていますのに」

 

「いや、その節はどうも…! やば、また笑いそうになってきた!」

 

「何故ですか…!」

 

 

 小声で喋っている2人に対して、次に下車したのは黒の服を纏っており、サングラスをかけている黒髪の女猫人であった。

 

 前の人とは別に、ここを慣れているのか貴婦人達の注目をよそに堂々とジャンプして降りたため、周囲の貴婦人達にどよめきが走る。

 

 

「ニャフフ、今日も来たニャ! そしていざ、カジノへ!」

 

「…あなたはもう少しまともに降りてください、クロエ…」

 

「私なんかリューにフォローされてまで降りたのに…!」

 

「そんなもん、私ではなく他の人に任せているニャ!」

 

 

 3人が言い争いをしようとする所で次に下車したのは、最初に降りたエルフが纏っていた服と同格の白の燕尾服を身に包み込んでいる白髪赤目の少年だった。

 

 ただし貴人のような形には全く慣れておらず、とても緊張した足取りの形で下車をしたため、周囲の貴婦人達が田舎者じゃないかと訝しそうな目でその少年を見つめる。

 

 

「ここが繁華街…! 僕、初めて来ました!」

 

「クラネルさん、あなたはもう少し周りの目に気をつけて下さい。でないと、早くも足元が掬われてしまいます」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

 リューさん達は何か事情があって正体が『豊饒の女主人』の店員だとばれないようにしたいと頼まれていて、ダフネさんたちをボディーガードとして雇った資産家だと装っている。

 

 ただし、僕の場合はオラリオに来てから日は浅く、また二つ名を持っていないため、場合によっては冒険者ではないと判断される事もあるため、なるべく同じ資産家だと装わなければならないが、早速出鼻をくじいてしまった。

 

 貴婦人達が僕達に疑念の目を向けられてしまい、その事でリューさんから注意を受け、僕は気落ちしてしまった。

 

 そのベル達の光景も周囲の貴婦人たちは見ており、そしてベルは眼帯をしているエルフの紹介から来たのだろうと結論する。

 

 そんな様子の中で次に下車したのは、花柄があるドレスを身に纏った鈍赤色の短髪をしている女人であった。

 

 ベルが事前に馬車の中でリューに教えられた通りに手を差し伸べ、それを手に取って貴婦人かのように降りてそのまま合流したため、周囲の貴婦人達は、ベルは田舎者だと思っていたためか動作の基本ができていることに驚愕する。また、降りて来た者も見慣れない顔であったため、ベル達の集団は何者なのかと考え始める。

 

 そしてその一部の人は、今馬車から降りて来た者は【アポロン・ファミリア】の幹部の1人の【月桂の遁走者】に似ているのではないかと怪しげな目で見る。

 

 

「とりあえず、こんなもんかしら? ベルの行動に疑問を持っていた人達はウチの方を注目し始めているし」

 

「ありがとうございます、ダフネさん」

 

「最初は何で降りる順番をどうするかって話を馬車でしたのか疑問だったけど、こういうことだったんだ…」

 

 

 ベルのミスを上手くリカバリーしたダフネは成功したことで内心ほっとしている。また、ルノアは降りる順番すらここでは重要になりかねないという事に頭を痛める。

 

 そして、最後の1人が下車する。

 

 降りてきたのは白いドレスを着た白銀の髪の女人であった。

 

 再びベルが手を差し伸べ、それを妙に愛おしそうな雰囲気で手に取って美しく降りる。周りにいた貴婦人達は降りて来た者の手本になるような動作に感服し、そして一部の人は【ディアンケヒト・ファミリア】の団長の【戦場の聖女】ではないかと驚愕する。

 

 

「ありがとうございます、ベルさん」

 

「え、いや僕はリューさんの手本通りに行ったぐらいなんですけど…」

 

「クラネルさん。ここの社会では大分重要ですので、その動作を忘れない方がよろしいです。一般女性の方も喜びますので」

 

 

 アミッドに感謝の言葉を言われて困惑するベルだが、リューの助言により納得する。

 

 そんな僕達の集団に対して、服装も相まって一緒にいる僕と男装しているリューさんには嫉妬を、それ以外の皆には欲情的な目線を送る人達がいたが、リューさん達がすぐに鋭い目線を送って牽制してくれている。

 

 そんな中でベル達はカジノがある方へと足を進め、そして、その目的の建物がある敷地の入り口に辿り着く。

 

 そこには【ガネーシャ・ファミリア】の団員が配備されており、その中には団長のシャクティの姿があった。

 

 その事に真っ先にルノアが気づく。

 

 

「うげっ! ねえ、ちょっと悪いんだけどさ、あの女に見られないように私を隠してくれない?こっちに色々あって、顔を合わせたくないんだよね」

 

「え? あ、はい、わかりました」

 

 

 ルノアさんにそう言われ、僕とダフネさん、アミッドさんでシャクティさんの視線からルノアさんが見られないように配置する。

 

 リューはシャクティの事を一瞥するが、すぐに視線を切った。

 

 そして向こうは近づいて来るベル達に気づき、一人が近づいてきたが、ベル達に対応してきたのはシャクティではなく、以前【アポロン・ファミリア】の館が襲撃された時に駆けつけてくれた1人、モダーカであった。そして、至近距離まで近づいて、ようやくベルとダフネ、アミッドである事に気が付く。

 

 

「では、次の方。許可証か紹介状の書簡をお見せくださ……ん? 【アポロン・ファミリア】の人達じゃないですか! お久しぶりです。【戦場の聖女】もいますし、中々見ない組み合わせですね」

 

「あ、モダーカさん! あの時はありがとうございました!」

 

「こっちは色々あってね。ベルが持っている許可証の連れという形でいるから」

 

「私もそうです。付け加えて、一緒にいます3人も私達の顔見知りでして。また、その内1人がベルさんと同じ許可証を持っていますから、残り2人も同じくその人の連れ、という形です」

 

「持っているのは私ニャ。何回かここに来ているけど、とりあえずこれが証拠ニャ」

 

「えっと、ちょっと待ってくれ。………確かに2つとも本物の許可証のカード…だな。間違いない」

 

 

 モダーカの確認により、ベル達は入れる事になった。

 

 その事でモダーカはすぐに入らせようと持ち場の所に戻ろうとしたが、ダフネに止められる。

 

 

「あ、ちょっと待って。通らせるもらう事には変わりはないんだけどさ、私達がここの区域に足を踏み入れたっていう事をあまり言いふらさないでくれるかしら? ちょっと色々と面倒なことがあってね」

 

「…? まあ、はい、わかりました…?」

 

 

 モダーカは疑問に思ったが、とりあえず名前を伏せるという形でベル達を通らせる。

 

 そして、施設の役人や【ガネーシャ・ファミリア】の団員の横を通り過ぎ、僕達はそこへ足を踏み入れる。

 

 そこは複数の賭博施設が点在している大賭博場区域であり、わが物顔で闊歩している富豪の中に僕達は自然な感じで紛れるのであった。

 

 

「…こんなに沢山賭博場があるんだ…」

 

「その通りだニャ! 確かにこの中にアルベラ商会とやらと繋がっているオーナーは居そうではあるし、もう少年のお仲間は売られてしまってここにいるかもしれないけども、調べるのは骨が折れるニャ!」

 

「これは長期線を覚悟しなければいけませんね。ベルさん、最初に調べるのはどれにしますか?」

 

 

 ルノアの一言に反応して、クロエは一苦労をする事になると吐くが、内心その分カジノに行けると細く微笑んでいる。一方アミッドはまずどのカジノに入るかベルに尋ね、ベルは何処から行くか周りを見回している。

 

 

「そう、ですね…。まさかこんなに賭博場があるとは思っていませんでしたし……、あの一番大きい建物から入ってみます!」

 

 

 人が一番大きい所で集まって、その分情報とか入っていそうだから、と僕は何となくそう思いながら指を差した。

 

 指した方向には、区域の中でも一際目を引く建物であり、見る者を高揚とさせるような魅力がある、金塊を彷彿させる黄金色の外観をしていた。

 

 僕が指を差した方向を皆が見て、リューさんは目を細めていて、クロエさんは嬉しそうにしている。

 

 

「あれは…、『エルドラド・リゾート』ですか」

 

「ほほう、少年は中々目の付け所が良いニャ。まさかこの区域の中でも随一の大賭博場を選ぶとはニャ!」

 

 

 ダフネさん達もそこに行くのに異論はないと頷き、僕達はその最大賭博場に行き、扉を開ける。

 

 目の前に広がる光景は、大盛況の一言である。

 

 巨大なシャンデリア型の魔石灯、色と模様に富んだ大絨毯、トランプ、ダイス、ルーレットなど様々な形状のテーブルの上で行われるゲームの数々があり、大量のチップが卓上の上で山を築き、支払われ、配当されていき、テーブルの周囲にいる客の失意と喝采が飛び交じりあっていた。

 

 

「すごい…! 賭博場って、こんな雰囲気をしているんですか!」

 

「その通りニャ! ここの『エルドラド・リゾート』程の熱狂は他では滅多に見られないけど、興奮という物が出まくりの場所ニャ!」

 

「あまりクロエに同意したくないのですが…、そうですね。賭博場に紛れ込むことは何回かありましたが、ここまでのものは私も初めてです」

 

「ウチもそうね。そもそも、ここに入るには相当のお金がないと無理だけど」

 

 

 賭博を経験している人達からここの迫力はすさまじいものであると教えてもらい、アミッドさんやルノアさんもまたは僕と同様にここの熱狂にのめり込まれそうになるけど、僕たちの目的を思い出し、すぐに持ち直す。

 

 

「そういえばクロエさん、リューさん。VIPルームに行けるようにするにはどうしたらいいですか?」

 

「はっきり言えば目立つことニャ! 羽振りの言い客だと思われれば、向こうから呼び出されて上客扱いにしてくれるニャ!」

 

「要するにクラネルさん、チップを消費しまくるか、もしくはゲームに勝ちまくる事です。それが一番の近道です」

 

 

 クロエさんとリューさんの説明により、僕達が行うことは2つとなるが、チップの数が元から少ない僕達はやるべきことは実質1つ。

 

 ゲームに勝ちまくって、チップの山を大量に築き上げることだ。

 

 そうと決まれば、早速僕らは取り掛かろうとしたところで、クロエさんからある勝負が提案される。

 

 

「ねえ少年。ちょっとチームで私達と勝負しないかニャ?」

 

「え、勝負ですか?」

 

「ちょっと、いきなり喧嘩はやめてよね。ウチらは来た目的は…」

 

「まあ話を聞くニャ。勝負の内容はチップをどれだけ稼げるかという事で、負けた方は勝った方にチーム内のメンバーに限る内容で命令を一つ聞くという事ニャ。情報収集の事もあるし、こんな感じでリラックスしないと逆に運が流れてしまう事もあるから、これは大切な事ニャ! あと、向こうからどちらか一方のチームが呼ばれたら、もう一方のチームも勿論一緒に行くから安心するニャ」

 

 

 クロエさんからの理由を聞き、僕とダフネさんは少し離れた所で話し合う。

 

 

「もしかしたら、向こうは『怪物祭』の時にウチらに負けた事が悔しかったんだろうね」

 

「でも僕らが1つの所に集まったら、確かに情報収集とかがはかどれないかもしれませんし」

 

「そうなのよね…。この際アルベラ商会の事でもいいから、カサンドラ達の情報がここに出て来ればいいんだけど」

 

「じゃあ、クロエさんからの勝負は受けるという事ですね」

 

「ええ。その方がよさそうね」

 

 

 そしてクロエさん達の所に戻り、結論を出す。

 

 

「わかりました、受けます」

 

「じゃあ、チーム分けは許可証の内訳と同じニャ。こっちは『豊饒の女主人』のメンバーのチームニャ」

 

「となると、僕とダフネさんとアミッドさん、という事ですね」

 

「そういう事ニャ」

 

 

 他の皆もそれに承諾して、僕達は2つのチームに分かれてカジノのゲームに挑むこととなった。

 

 そして、リューさん、クロエさん、ルノアさんは離れていき、残った僕とダフネさんとアミッドさんは、どのゲームに挑むか話し合う。

 

 

「ダフネさん。稼ぎやすいゲームって何かありますか?」

 

「カジノで比較的稼ぎやすいと言ったらブラックジャックみたいなトランプゲームだけど…。最大2.5倍と他のゲームに比べて配当は低いとはいえ、見る限り席が全部埋まっているわね」

 

「なら、他のゲームにしましょう。出来れば初心者にも分かりやすいゲームならありがたいのですが」

 

「分かりやすいゲーム、ね…」

 

 

 アミッドさんにそう言われ、ダフネさんは少し悩んで辺りを見渡し、そして人が全くいないテーブルを見つける

 

 そのテーブルの上に乗っている道具を見て、そしてベル達の方に向き直り、テーブルの方に指を指す。

 

 

「そうね、あそこのテーブルのルーレットならいいんじゃないかしら。ボールがどの数字に落ちるかを予測するゲームだから、初心者向きでもあるわ」

 

「じゃあ、それにします!」

 

 

 僕らはどれにするか決定し、ルーレットのゲームをできるテーブルへと早速向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、クロエ達はカジノ側と戦うゲームを避け、客同士で争うポーカーに挑んでいた。

 

 そして、一番手にクロエが挑み、早くもチップは増えていく一方であって、チップを毟り取られている他の客は悲鳴が飛び交わっている。

 

 

「フォーカードニャ! また私の勝ちニャ!」

 

「「「「「畜生ォオオオオオ!?」」」」」

 

「調子は良さそうですね、クロエ」

 

「当たり前ニャ! こうやって店をさぼれ…じゃなくて、皆でカジノに行けて遊べているし、最初の1戦で波に乗れたし、お金もたまっていくし、いいことだらけニャ! これでテンションが高くないとかおかしいニャ!」

 

 

 店長のミアに事情を説明して、どうにか行けた事でテンションがただ上がりのクロエはリューの予想以上に勝ちを拾いまくり、チップの枚数が山隅へと変わっていく。

 

 そんな絶好調のクロエに、ルノアは疑問に思っていたことを聞く。

 

 

「そういや、何でこのメンバーのチームにしたの? 折角あいつらと一緒にいてもおかしくないようにしたのに、1人も現冒険者がこっちにいないじゃん。まあ、その方がここのオーナーが私達に声をかけやすいかもしれないけど」

 

「それもあるけど、正確にはこれは教育という物ニャ。冒険者といえども、カジノの初心者が2人もいる向こうのチームは引き際を誤ってしまうと思うから、残念ながら、というより下手したらチップが0になる可能性が高いニャ。ルノアが初めてポーカーをやって、脳筋を発揮した時と一緒になるニャ。そして、私達が勝負に勝った報酬で、あの少年のお尻をほぼ毎日…! ニャフフ…! あ、やべ、涎が出てきたニャ」

 

「とりあえず、私に喧嘩を売っているということはわかったよこの陰湿猫!」

 

「やめなさい2人共。クロエ、あまり調子に乗り過ぎませんように。もし向こうにチップがなくなってもこちらから分けますので。そしてルノアも簡単に挑発に乗らないで下さい」

 

 

 クロエとルノアが睨み合いをしようとする所でリューが諫め、場を落ちつかせる。

 

 

「まあ情報の方は全然出回って来ないからあれだけど、とにかく少年のお尻は今度こそもらったニャ!」

 

 

 

 

 

 

 一方、ベル達がいるルーレット場。

 

 そこでクロエの予想通りに、ベル達はチップを減らしていた。

 

 わずか30枚しかなかったため、3人で分けて10枚ずつとして挑んだが、合計枚数が残り17枚となっている。

 

 

「ごめん、ベル。中々当たらなくて…」

 

「私もです。ベルさん、折角分けて下さったのにもう残り2枚になってしまって…」

 

「あ、いえ大丈夫です。まだ僕の分のチップがありますから!」

 

 

 ベルはそう意気込んでいるが、状況は変わらない。

 

 チップ1枚最大5万ヴァリスという超高レートのカジノにおいて、【アポロン・ファミリア】の中では腕が強いダフネも流石に緊張しており、初めてやるアミッドもまた中々数字が当たらなかった。

 

 ただし、ベルは何とか数字を当てており、ベルのみはまだチップをプラスとして残っている。

 

 

(まずいわね…。他のカジノにも潜入しないといけないのに、ここで使い果たしたら流石にもう…!)

 

 

 ダフネがそんな気持ちを抱いている中、アミッドが何かを思いついてベルの元に近づき、そして後ろからベルを抱き付く。

 

 

「!? ア、アミッドさん!?」

 

 

 ベルは思わず悲鳴を出しそうになるが、アミッドはそのままベルの耳元で囁く。

 

 

『ベルさん、もしここからいっぱいチップを獲得できましたら、私から何かご褒美でもあげますよ』

 

「えっ……、えええ!?」

 

『ええ、ご褒美です。どれだけ獲得したのかによって内容は変わりますけど』

 

 

 近くに座っているダフネにも聞こえないように、ベルのやる気をより引き出すためにアミッドがそう言い、ベルは驚愕して一回後ろを振り向き、アミッドの顔をまじまじと見る。

 

 アミッドは本気であるという笑みを見せた後、そんなベルに思わず照れてしまい、手に持っていた扇子で顔を隠す。

 

 

「ベルさん、そんな至近距離で見られたらさすがの私でも照れてしまいます」

 

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

 

 そんなアミッドを見て、ベルは本気であると理解して、前の方に向き直す。

 

 

(ご褒美って何だ…!? そのままの意味だと何か貰えるという事になるけど、数日前に冒険者依頼の報酬でハイ・ポーションをもらったばかりだし、それ以外となると…!? あっ! もしかしてフィンさん達がメレンに持っていたエクリサーの事かな? 確かあれって数十万ヴァリスするって言っていましたから!)

 

 

 僕はそう結論したことで、僕の中のやる気がより一層出てくる感じがしてくる。

 

 ベルのやる気がより一層上がった事が、見ただけでもわかったため、ダフネは疑問を覚える。

 

 

「……? アミッドから何言われたの、ベル?」

 

「いえ何でもありませんでしたよダフネさん!」

 

「そ、そう……?」

 

「……ふふっ♪」

 

 

 ベルが力強い返答をしたことで、ダフネは首を傾げ、そうさせた張本人であるアミッドは嬉しさがこみ上げ、さらに照れ隠しをする。

 

 そして、迎えた次のゲーム。

 

 そこでは3人とも共通で賭けていた数字がたまたま当たり、チップを少し取り戻す。

 

 さらに次のゲーム。

 

 ベル達はどの数字に賭けようかとしている所で、ベルの隣に座り直していたアミッドは椅子ごとベルのすぐ傍まで近づき、そしてそのままベルの肩に寄り添う。

 

 

「? アミッドさん、どうかしたんですか?」

 

「いえ、何か気分が悪いわけではなく、ただ単にこうしたいだけですのでお気に召さらずに。出来ればベルさんが私の肩にまで手を回してより一層押し寄せるようにして下されば嬉しいのですけれど」

 

「? こうですか?」

 

 

 僕はアミッドさんに言われたとおりにアミッドさんの肩に手を回し、僕の方に押し寄せる。

 

 そうすると、アミッドさんの顔が何か赤くなった様な気がして、雰囲気も何か熱いような感じがした。

 

 

「はぅ…。じ、実際にやられますと、何かこう、来るものがありますね」

 

「あの…、何か変な気がするんですけど…!?」

 

「い、いえ、特に変なものはありません。私の部屋に泊まって下さった時の事に、ベルさんが、わ、私の肩に手を回してくださっていることが追加したぐらいです」

 

「ちょっ、何やってんの2人共!?」

 

 

 盤面に集中していたダフネがベル達の様子に気づき、思わず絶句しかけるが、踏みとどまる。カジノのディーラーは微笑ましい顔でベル達の様子を見ている。

 

 

「そんなにベルにひっつかなくても大丈夫でしょう普通!?」

 

「いえ、これは、そう、あれです。私はもうベルさんと同じ所に賭けようと思っていまして、残った私のチップをベルさんにあげて、賭けさせてもらおうと思っていまして。それで私の運が少しでもベルさんに分けてあげられないかと思ってこうしているのです」

 

「そんな迷信どこで聞いたのよ!? そしてそんなに顔を赤くした所で説得力はないわよ!?」

 

「あ、あの、ダフネさん。アミッドさんがこう言っていますから…」

 

「ベル、アンタも落ち着いているように見えて、少し顔が赤くなっているわよ!! カサンドラがこの光景を見たら涙目になるわよ!?」

 

 

 ダフネはただでさえベルが照れているあまり、ベルの精神が恥ずかしさで飛びそうになるなと思い始める。放心される前に、どうにかしてアミッドを引き剥がそうと席から立ち上がった所で、アミッドから提案が出た。

 

 

「じゃあこうしましょう。ベルさんがここから1回でも外れたら、私の運が助けにならなかったという事なので、私は離れましょう。それでいいでしょうか?」

 

「……………………………まあ、それならいいでしょう」

 

「ではベルさん、思う存分に楽しみましょう。それと、私の肩に手を回したままでお願いします」

 

「……何か今、ダフネさんからもの凄い葛藤を感じましたけど…」

 

 

 そう言いながらベルはそのまま賭けを再開させるのだった。

 

 ダフネもまたしぶしぶ席に座り、ベルはすぐに外れるだろうと思いながら赤に賭ける。

 

 そしてルーレットが回り、二人とも的中する。

 

 

「ベルさん。当てたので約束通り、ご褒美をあげます。受け取って下さい」

 

「え? …ぬへぇ!?」

 

「ブッ……!?」

 

 

ベルが見事的中して一気に30枚近く獲得したことで、アミッドは離れずにそのまま続行するどころか、的中したベルにハグをする。

 

 ベルはまさかのそっちのご褒美なの!? と驚愕しながら顔を赤く染め、ダフネはその光景を見て思わず吹き出しかける。

 

 

「ちょっと待って!? 流石にそれはいくら何でも見過ごせないわよ!?」

 

 

 ダフネがアミッドに物申して、アミッドはベルをハグしたまま、ベルの耳を手で抑え、そしてダフネに反論する。

 

 

「何故ですか? 確かに私は『1回でも外れたら離れる』と言いましたけど、外れるまでの私達の体勢については何も挙述していないのですが? 私をベルさんから引き剥がしてルールを破るのは、冒険者たるもの、そちらの方がまずいのではないでしょうか?」

 

「いや、でもそれは…」

 

「交渉というのはこういう物です。こちらは伊達に冒険者の人達のみならず、商会の会長などにも相手をしていますので。そういうわけですので有り難く…ではなく、申し訳ないですが、こうさせていただきます」

 

 

 そして十分に堪能した後、ベルを解放させた。先程と同じくベルの肩に寄り添い、再びベルがアミッドの肩に手を回すという態勢となる。

 

 

(お、お願いだから早くベルを外させて、ルーレット! じゃないと、もうカサンドラの情報を聞き出すどころか、ベルの精神が持たなくなってしまうから!)

 

 

 ダフネは内心でそう願い、そして、次のゲームが始まる。

 

 だが、ダフネの願いは聞き取られることはなかった。

 

 この後からベルは1回も外さずに的中し続け、その度にアミッドからのご褒美を受けまくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、50分後。

 

 ポーカーの勝負場。

 

 

「はい、私の勝ち~」

 

「「「「ぐおおおおおお!?」」」」

 

「…ルノアも調子が上がっていますね」

 

「そう言っても、まだ私がこの3人の中で一番稼ぎが下だけど」

 

「私の次に入ったリューも滅茶苦茶稼いでいたからニャ」

 

「これでも私は何度かカジノに来ていますし、嫌というほど元派閥の団員から技術を教えられましたから」

 

 

 クロエ達3人は時には大敗を喫したりしているが、それでもチップの数は手元から未だに尽きず、尽く稼いでいた。

 

 そのチップの数は箱に入れる許容量の1千枚があり、周りから注目されている。

 

 

「しっかし、情報の方は全く入っていないわね」

 

「私達が『エルドラド・リゾート』入る直前にギルド長のロイマンがVIPルームに入った事や、ラキア王国では戦争準備のための資金がなかなか集まっていない事とか、【ヘファイストス・ファミリア】の出店で盗難があったなど色々ありましたけど、肝心のカサンドラさん達の情報がありませんね」

 

「うーん、もしかしたらここはハズレかニャー?」

 

「その可能性が高いですね。とりあえずここら辺で辞めて、クラネルさん達を呼びますか?」

 

「そうだね。何か少し風向きが変わりそうだったから、ここら辺で切り上げだね」

 

 

 クロエ達は手に入れた情報をまとめて結論し、ポーカーをやめてベル達を探すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ルーレット場。

 

 

「ベルさん、また当たりましたね。それではご褒美です」

 

「アミッドさーん!? もう充分ですから!? 流石にもうこんな人前でやるのは恥ずかしいですから!?」

 

「駄目です。ともかく、これで1度に2万枚も稼ぎましたから、そうですね…。膝枕も4千枚獲得した時にしましたし、私の耳元に息を吹きかけるのも7千枚獲得した時にしましたし、1万枚獲得した時はベルさんの方から私にハグという事になりましたし…。では、ベルさんに免じて、カジノから出た後でお互いの都合の日に合わせて私とのデートということにしましょうか」

 

「もうベルへのご褒美じゃなくて、自分へのご褒美になっていない!?」

 

 

 湯水の如くチップが舞い降りてくるベルはあれから一度も外れず、大幅にプラスとしており、チップも大量の山が築き上げられている。

 

 始めてからたったの1時間である。

 

 最初はチップの枚数が30枚しかなかったのが、少し大きい箱がいっぱいになるぐらいとなり、さらにその箱も次第に増えていき、ついに移動するためには台車を使って運ばなければならない程にまで稼いでいた。そして、その台車の数も8台目に突入しようとしている。

 

 一応自力でプラスという形になっていたダフネは、ベルは一体どれほどまでに稼いでいるのか想像を絶している。

 

 そこで、遂にリュー達が合流する。

 

 

「ニャフフ、ルーレットの所にいたニャ。少年、そっちの方はどうニャ? まさか初日で踏ん張れるとは予想が外れたけども、こっちは箱がいっぱいになるほど勝ちまくったから、勝負は流石に私達の勝ち…ニャニャ!!?」

 

「そっちはどんな感じー? …て、嘘っ!? 何このチップの山!? 台車の数もおかしくない!?」

 

「妙に騒がしいと思っていましたけれども、これ程とは…!」

 

 

 リュー達がベル達のえげつないほどの稼ぎっぷりを見て絶句する。

 

 

「ニャ、ニャ!? ちょっ、ダフネちゃんニャ! これは一体何があったニャ!?」

 

「見ての通り、ベルが稼ぎまくった結果よ」

 

「マジですか…!?」

 

 

 最早ダフネは台車を持ってくる係と化しており、クロエとルノアは信じられない表情でアミッドに寄り添られているベルの後ろ姿を見る。リューもまた自分たちが稼いだチップの数を見比べている。

 

 そして、ダフネの戻りが遅い事で後ろを見たアミッドは、クロエ達が戻ってきたことをベルに伝え、そしてベルもまたルーレットをやめて、クロエ達と合流する。

 

 

「クロエさん! そっちの方はどうでしたか!?」

 

「えっ!? ま、まあ、情報の方はやっぱり駄目だったニャ。少年の方はどうニャ?」

 

「ダフネさんやアミッドさんが耳を澄ませて話し声とかを聞いていたんですけど、やっぱり有益な情報はなくて…」

 

 

 やはり情報が出回っていない。僕達は諦めて他の所に行くか、今日は踏ん張ってここにい続けるか皆で話し合う。

 

 そして決定的だったのはリューさんの一言だった。

 

 

「クラネルさん。もしかしたら、他のカジノの所では情報があるかもしれませんから他を当たりましょう。ここまで稼いでいれば、軍資金はもう怖いとこ無しですから」

 

「…わかりました、そうしましょう」

 

 

 僕らはここから切り上げようとした所で、ダフネさんが止める。

 

 

「ストップ。所で、ウチらは確か勝負してなかったかしら、クロエさん?」

 

「ギックゥッ!」

 

「…そういえばそうですね。クロエさん達はどれくらい稼いだのですか?」

 

「……この箱1つ分です」

 

 

 リューさんは観念して自白する。

 

 僕達は台車8台分あるから、つまり僕達の圧勝という事だ。

 

 ダフネさんは少し悪い顔で笑みを浮かべる。

 

 

「さて、どんな命令をしようかしらね~」

 

「ど、どうか御堪忍をニャ…!」

 

 

 クロエさんが子猫みたいに震えながら慈悲を乞いている。

 

 リューさんとルノアさんは観念しており、僕とアミッドさんは苦笑いをする。

 

 

 

 

 そんな時、僕達に仕立てのいい服を着た年配のヒューマンが僕達の所に現れた。

 

 

「お客様方。経営者のセルバンティスが、ぜひ皆さんにお会いしたいと」

 

 

 遂にかかった! 僕はそう心の中で唱える。

 

 僕達がカジノから出るギリギリで、遂に向こうから接触してきたのだった。

 

 一番の大当たりが出て、すぐに対応するのは男装をしているリューさんだった。

 

 これは、大賭博場区域に入る前から皆で決めていた事である。

 

 

「……私達のような吾輩者達に、オーナー自らそう言っていただけるのは光栄です。どちらに向かえば?」

 

「どうぞこちらに」

 

 

 そう案内されて向かった先にいたのは、高級な黒の衣装が太い手足や厚い胸板を押さえつけられず膨れていた、味方によっては用心棒にも見える大柄なドワーフだった。

 

 

「おお、皆様方、改めてようこそいらっしゃいました。私はテリー・セルバンティス、このカジノの経営者を務めている者です」

 

「私は…、マクシミリアン。アリュード・マクシミリアンです」

 

 

 リューは咄嗟に思いついた偽名を名乗り、この場を乗り切る。

 

 そして、カジノのオーナー、テリーは他の者たちの名前を求める。

 

 

「ほほう、マクシミリアン殿ですか。それで、他の者たちの名前は…?」

 

「私は…、ルノア・マクシミリアンです。アリュードとは直接の血筋はないのですが、養子の関係でこの家名を名乗らせてもらっています」

「私はクロエ・クロロルだニャ。マクシミリアン家であるこの2名をこのカジノに招待した者ニャ」

 

 

 ルノアとクロエもリューと同様に偽名を名乗り、特にルノアはリューと同じ家名を名乗る。

 

 リューは適当に考えた家名が採用されてしまったため、鉄の仮面で貴族を演じているが、内心細く笑っている。

 

 この後ベル達はそのまま本名を名乗り、冒険者依頼として3人を警護するために招待されたという事にする。

 

 

「なるほど…。所で皆さんは今日はかなりツイているご様子…。それでご提案なのですが、あちらのVIPルームに来られませんか?」

 

「VIPルーム、ですか…」

 

「あぁ、どうかそう構えずに。要はより高額なゲームを楽しもうというわけです。最高級の奉仕やあの部屋でしかできないゲームは勿論、あなた方のような金満家のような方々もいらっしゃいますし同じ境遇者でしかわからない話もあるでしょう。お気に召してもらえるかと」

 

 

 テリーはそう締めくくり、リューはベル達の方を一瞬見て、結論を出す。

 

 

「皆さんも行きたいみたいですのでよろしければ」

 

「がはははっ、決まりですな!」

 

 

 そうして、僕らは引率され、ホールの奥へ向かうのだった。

 

 その最中。

 

 テリーはリューに疑問に思っていたことを質問する。

 

 

「ところで、その物々しい眼帯…何があったか、お聞きしても?」

 

「構いません。実はモンスターに襲われた、今日一緒にいるルノアを助ける際に…傷は『魔法』で塞がっていますが奪っていった眼球は戻らなかった」

 

「なるほど、名誉の負傷という事ですな」

 

 

 リューが大体考えていた話に、テリーは称賛の言葉を口にする。

 

 しかし、何かを探るようにリューの横顔をうかがっていた。

 

 

「…まだ何か?」

 

「先程から、どこかでお会いしたような気がしているのですが……、いや、こちらの勘違いですな。申し訳ない、お気になさらずに」

 

 

 何か引っかかる表情をしているテリーだったが、すぐに笑い飛ばす。

 

 そして、ついにVIPルーム前に辿り着く。

 

 

「どうぞ、こちらへ」

 

 

 カジノのオーナーの後にリューさんを先頭にして続き、僕達はカジノの奥の懐へ足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ベル達の一番の大当たりは今ではなく、既に起きていたのだった。

 

 ベル達が『エルドラド・リゾート』に入って、オーナーの使いから声をかけられる少し前の頃。

 

 『エルドラド・リゾート』の裏方。

 

 そこではカジノのオーナーであるテリーと、アルベラ商会の会長であるアルベラが密会をしていた。

 

 

「では、お買い上げありがとうございます。商品はこちらです」

 

「おお、これが…! 中々こういうのは手に入らないから、大金をはたいた甲斐がありましたな!」

 

「喜んでいただきなりよりです。それと、今日はこちらにギルド長の方がいらっしゃると聞きましたが…?」

 

「ああ、来ているぞ。それより、そっちはどうだ?」

 

 

 後にリュー達と会話した時とは別人のように、テリーは言葉使いを崩して、ぶっきらぼうに会話をしている

 

 

「いやいや大変なものでしたよ。折角『殺生石』が届いたのに、【凶狼】に破壊されたらしくて。それでイシュタル様は怒りが収まらなくて、何人かが腹いせに骨の髄まで魅了されていましたよ。私も巻き添えに食らいそうでしたので、隙を見てすぐに退散しましたけど」

 

「…なるほどな。それで裏ルートを使ってここで売りに来たというわけか」

 

「ええ。予想金額よりも高く買い取ってもらいまして、こちらは嬉しい限りですよ」

 

 

 アルベラとテリーは悪い笑みをお互い浮かべる。

 

 

「ここの経由でギルド長直々に会って、ちょっと情報を流して弱い冒険者に依頼させて、気絶したそいつらを誘拐…。全く、手の込んだ悪い作戦だな」

 

「ただ、その内容が思っていたのと少々異なっていましたから、ギルド長に説明をもらおうと思いまして。場合によっては報酬金額を下げることも考えておりますから」

 

「多分そうするだろうと思ってもう既にVIPルームに呼んである。行って来い」

 

「では、そうさせてもらいます」

 

 

 アルベラはそう言い、テリーに別れを告げた後、そのまますぐに裏方からVIPルームへと向かうのだった。

 

 残されたテリーは、買い取った商品を見て、高笑いをする。

 

 

「がははははっ! 最近俺のツキもついているぞ! 昨日はアンナという娘を手に入れたし、今日は冒険者の女まで手に入れた! 早速2人を同時に楽しむか…!?」

 

 

 テリーはそう言い、今にも興奮がして襲い掛かろうとするが、流石に場所がアレなのですぐに自制する。

 

 テリーは買い上げたモノをベッドに運ばせようとした所で、何か慌てている使いから声をかけられる。

 

 

「おい、どうしたこんな時に。俺は今から忙しくなるんだ、後にしろ」

 

「そ、それが…」

 

 

 使いの者はテリーの耳元に顔を寄せて小声で知らせ、テリーはその内容に驚愕する。

 

 

「……はあ!? ルーレットで12万枚のチップが放出されている!? 60億ヴァリスの支出だと!? ふざけてんのか!!」

 

「い、いえ、事実です。そして何かもう切り上げそうな雰囲気ですし、他の客の注目も浴びていますから出禁にはとてもしづらくて…。他にも仲間がいて、そちらは他の客から巻き上げた物ですが、こちらでも5千万ヴァリス相当かと…」

 

 

 支配人は流石に支出額が大きいと頭を抱える。

 

 そして、すぐに排除しようと決断した。

 

 

「…そいつらの人数は?」

 

「6人組です。冒険者2人、外からの貴婦人あろう者が3人、1人は不明です。男女比は2 : 4で、男が2です。女の方は全員別嬪だと判別できていますが…」

 

「…おい、そいつらをVIPルームに通せ。俺の楽しみを邪魔させた事を後悔させてやる…!」

 

 

 すぐに行動を開始しろと、部下に命令を下す。

 

 テリー自身は買い取った商品を自分の部屋のベットの上まで運び、そのまま放置した。

 

 

「お前はまだ後だ。ちょっと仕事をやり終えるまで、俺を楽しませてくれるように準備しておくんだな!」

 

「ンーーー! ンーー!」

 

 

 テリーは興奮した目でそれを見て、部屋の扉を閉める。

 

 部屋の中にはただ一人、女性がいた。

 

 ミスリル製の鎖で縛られており、口に猿轡をつけてられて涙を流している。

 

 その者の名は、カサンドラ・イリオン。

 

 ベル達は見事、彼女がいる場所を的中していた。

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