ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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アミッドのご褒美。※ベル限定
一度に獲得した時の枚数によって内容は変わります。

1枚~:アミッドからのハグ
200枚~:アミッドからのナデナデ
500枚~:ベルの耳に息を吹きかける
800枚~:アミッドからの摺り寄せ
2000枚~:アミッドとの体勢を逆にする
4000枚~:膝枕
7000枚~:アミッドの耳に息を吹きかける
1万枚~:ベルからのハグ
2万枚~:アミッドとデート(1日)
3万枚~:???

注意! 公衆の面前です!くれぐれも悪用しないようにしてください!
   また、必ずしもその内容のご褒美が貰えるわけではありません!
例)1万枚獲得したが、アミッドからのハグだった。
   要するに気分次第です。

そして報告! 今回の話も長いです!


VIPルーム

 僕達は『エルドラド・リゾート』のカジノに入り、計12万1千枚(60億5千万ヴァリス相当)のチップを手にしながら、遂にVIPルームへ辿り着くのであった。

 

 そこには外の富者よりも仕草や身だしなみが上の招待者がいて、テーブルの数は1桁ぐらいしかないが、ホールの騒音は分厚い扉によって聞こえる事はない。

 

 種族はバラバラで男性給士もいるが、綺麗な女性の方が非常に多く、アミッドさん達が着ている(借りている)よりも豪華なドレスを着ており、神々でも称賛の声が上がる程である。

 

 ただし、皆何故かチョーカーをつけており、人によってチョーカーの色は青だったり赤だったりと、様々であった。

 

 僕の目には、その人達は何か覇気がなく、全てを諦めている瞳をしているように見えるのは気のせいだろうか…?

 

 ベルがそんな疑問を持ちながら周りを見渡していると、リューがテリーに質問する。

 

 

「オーナー、先程から見かけるこの麗しい方々は…」

 

「彼女たちは、まぁ聞こえは悪いかもしれませんが、私の愛人です。自分で言うのもなんですが、多情な私めの求愛に、真摯に答えてくれました」

 

 

 自尊心を隠さずにテリーは答え、そしてリュー達をテーブルに案内する。

 

 

「さて皆様方、こちらのテーブルへ」

 

 

 案内されたテーブルには4人の人達が座っており、既にゲームを楽しんでいた。その中にはダフネ達が見られた姿をしている者も含まれている。

 

 

「…!? あれってギルド長のロイマンじゃない!?」

 

「……確かにそうですね」

 

 

 その人物は丸々と太ったエルフであり、誰かとゲームをしながら言い争いをしている。

 

 

「どういう事ですかな、【ロキ・ファミリア】がメレンにいたという事は? 私の要望とは全く異なっているじゃないですか?」

 

「ですから【カーリー・ファミリア】が相手となると、流石にオラリオの戦力も要望より増やしませんと………ん!? 【アポロン・ファミリア】の【月桂の遁走者】に、【ディアンケヒト・ファミリア】の団長の【戦場の聖女】ではないか!? なぜこんな所に…!?」

 

 

 そのテーブルにいた者は全員ベル達の方に視線を向け、その内の一人、ロイマンは驚愕する。そしてもう一人、ロイマンと言い争っていた者は別の意味で驚愕して、その人物の正体に気づいたアミッドは、ベル達に小声で教える。

 

 

『ベルさん、ダフネさん、間違いありません。ギルド長のすぐ傍に、アルベラ商会の会長がいます』

 

「「…!」」

 

 

 カサンドラさん達をさらった張本人の一人が今ここにいる。

 

 それってつまり、カサンドラさん達がここに売られたんじゃ…!?

 

 ベル達は怨敵を見つけ、怒りの前にカサンドラ達の居場所がここではないかと期待を持つ。

 

 ダフネとベルは周囲をくまなく見渡すが、カサンドラらしき人物は見当たらなかった。

 

 そんな中、テリーは空いている席にどっしりと座り、テーブルにいた者の一人がテリーに待ちきれないとばかりにせがめる。

 

 

「オーナー殿聞きましたぞ! つい最近新たに美女を手に入れたかと!」

 

「おや、耳が早いですな。新たに新しい愛人として迎えたのです。では、期待に応えて紹介しましょう! 名はアンナ・クレーズという者ですよ」

 

 

 最初から見せる気でいたのか、すぐに奥から呼び出されたのは、純白のドレスを着たヒューマンの少女である。

 

 

「初め、まして…アンナと申します」

 

 

 アンナは隠しきれない怯えを持っており、他の者と同様に首にチョーカーをつけられている。

 

 下手な女神とも張り合える程の美貌を持つアンナに見惚れている富豪たちは、感嘆の息をつきながら、少女のむき出しの肌に不躾な視線を送る。

 

 

(なんか…というよりもしかして、この人も攫われてしまったのかな…?)

 

 

 ベル達は好奇の目に晒される中で異なる視線を送り、それに気づいたアンナは顔を上げ、ベル達の集団の事を不思議そうに見る。

 

 ベル達の様子に気づいたテリーは内心で嗤い、ある提案をする。

 

 

「そんなにこのアンナが気になさるのなら、我々とゲームをしませんか? 緊張感をあふれさせるため、勝者は敗者に願いを聞き入れてもらう。勝者は求める者を手に入れることが出来るのです。我々が負けたらアンナを渡しましょう」

 

 

 テリーは指を鳴らして、男性給士にあるものを運ばせる。まるで狙っていたかのように、ベル達の前に出されたのは先程のホールでは見ていない、色が異なるチップ。

 

 

「さらに、ゲームに用いるのはVIPルーム専用の最高額チップ。貴殿達ではせいぜい60枚程度しかならないですので、我々の望むゲームは成り立たない。それをお貸ししましょう」

 

 

 1枚チップを手に取って、書かれている数字をよく見ると、最初の1の後ろに0が8つ並んでいる。

 

 1枚1億ヴァリス。そしてそれが300枚。

 

 つまり、僕達に300億ヴァリスを貸してきた。

 

 もはや強要とばかりに、僕らの周りを何人もの屈強な男たちが取り囲む。

 

 

「なっ!?」

 

「こいつら…!」

 

「2人共、今はこらえて」

 

「ふーん、なるほどニャー。私達を逃がす気はないという事だニャこれは」

 

 

 僕とダフネさんはすぐに戦闘態勢に入ろうとした所でルノアさんに止められ、クロエさんは呑気に眺めている。

 

 アミッドさんは無言で睨み付け、リューさんは上等と言うばかりに席に座る。

 

 クロエとルノアはホールで運を使い果たしたと感じていたため、そのままリューに勝負を譲る。ベル達もまた無言で譲り、リューの勝負を見る。

 

 

「どうやら『合意』という事ですかな」

 

「ええ、私が相手です」

 

「では、ポーカー勝負と行きましょうか。場代は20枚です」

 

 

 無言でチップを置き、勝負が始まる。

 

カードが配られてめくると、リューの手は6のスリーカード。

 

 カード交換しても変わらないが、レイズして相手達にプレッシャーを与える。

 

 4人降りたが、アルベラは更にレイズして、リューもそれにコールする。

 

 お互いのカードを開けると、アルベラは7~10のストレート。

 

 リューの負けとなり、いきなり50枚が持っていかれてしまう。

 

 

「……これはまずいかもニャ」

 

「いや、まだ最初に負けてしまっただけですから!」

 

「そういう意味でクロエは言ったんじゃないよ。私達の勝利条件を考えてみな」

 

「え?」

 

 

 ルノアさんに言われて、僕はそのままこの勝負内容の事を思い返す。

 

 確か、勝つ方法は自分たちのチップをなくさずに相手のチップをすべて失わせる事だから、相手も…………あ! まさか!?

 

 

「こ、これって…!」

 

「今思った通りの事ニャ。相手はグルだニャ」

 

「私達は1 vs 5で戦わなくちゃいけないという事。これだと流石にこっちが不利だね」

 

「がははははっ! 勝負を乗ったのはそっち側からだ! 今更やめようだって、今の負け分の借金が残るだけだ! こっちの楽しみを邪魔させた事を後悔させてやる!」

 

 

 テリーは本性を出し、ベル達を見下し笑いながら吐き捨てる。

 

 僕はその表情を見ると、その目には欲情的な目線を僕とリューさん以外に送っていた。

 

 その視線を受けたダフネさん達は何かこう、気持ち悪そうな顔をしており、僕を盾にして死角を作り、その視線から逃れようとしている。

 

 

『ねえ、あいつぶん殴っていい?』

 

『ウチの分もお願いするわ』

 

『私の分もお願いします』

 

『私の分もニャ! 私が隙を作るから、その間に…』

 

 

 というより、作戦会議をしている。

 

 小声でルノアさんに頼んで計4発分の拳をあのオーナーに浴びせようと仕立てていた。

 

 一番近くにいたベルにぎりぎりその会話内容が聞こえたため、苦笑いをしている。

 

 しかし、その間にもリューが負けてしまい(手は5~9のストレートだった)、更に70枚減らされてしまい、じわじわと負けが重なって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 20分後。

 

 リューは2回勝てたが負けの回数が多く、チップの数は残り30枚前後となっている。

 

 

(このままでは…!)

 

 

 流石のリューも少し顔色が悪くなり始めており、テリーの方はニヤついており、完全にペースを持っていかれている。

 

 テリーはむしろこいつらをどのように楽しむかと考えており、テーブルにいる者たちもロイマンを除いて同じことを考えていた。

 

 ルノア達は準備が出来次第暴れようとしており、リューもまた同じことを考えている。

 

 ただ、ここにロイマンがいるためやりにくいという事もあり、尚且つベル達3人は冒険者であるため顔が割れており、すぐに報復が【ファミリア】事襲い掛かる事が予想できるため、出来ればリューに頑張ってほしいとも考えている。

 

 テリーは調子に乗り、ベル達にある提案をする。

 

 

「そうそう、冒険者の方達も一緒にどうですか? アリュードさんとのペアとして、このゲームに御参加を」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 

 恐らくベル達冒険者3人の方も逃がさないための口実作りなのか、ベル達の誰かの参加を促し、席もまた一つ用意する。

 

 ダフネ達はリューも含めて顔を見合わせ、そしてすぐにベルの方に視線を向ける。

 

 

「…そうだね、ウチらもやるか。というわけで、ベル! アンタがやりなさい! そしてこいつらに見せつけなさい!」

 

「ベルさん、お願いします」

 

「わ、わかりました!」

 

 

 ベルはそう意気込み、リューの隣の余っている席に座る。

 

 

「クラネルさん、申し訳ございません。私の力不足ばかりに…」

 

「いえ、僕カードの駆け引きとかあまりやった事ないので、引く方はやりますから、そっちの方をお願いします」

 

「わかりました」

 

「決まったようですな。では、勝負再開と行きましょうか」

 

 

 ベルがカードを引き、リューが駆け引きを行う。

 

 そんなベルとリューのタッグで、テリー達に勝負を挑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして50分後。

 

 

「あ、また僕達の勝ちですね」

 

「……は?」

 

 

 ベルとリューのペアは自分の手札をオープンする。

 

 その役は、オールインをしたテリーが出した9のフォーカードの、さらに上。

 

 ♣のA~10のロイヤルストレートフラッシュ。

 

 つまりベル達の逆転勝ちで、テリー達の持ちチップはすべて失うことになった。

 

 

「ふぅ…。クラネルさんが入ってから負けなしですね、流石です」

 

「いや、リュ…あ、アリュードさんの駆け引きがあったからです! 実際向こうも簡単に乗ってくれませんでしたし!」

 

「でも23連勝って…!? ベル、アンタやっぱり運が上がるみたいな『スキル』とか持ってない? いくら何でも役が全てストレート以上って流石におかしいわよ?」

 

「僕『スキル』とか1つもありませんから!?」

 

 

 リューのフォローもあったからこその勝利だとベルは思い、またポカを起こしかけるが踏みとどまり、ダフネはカードの引きの良さからベルが『スキル』とかないのかと疑い始めてしまう。

 

 

「少年! そんな強運があったら、もしかしたらカジノでは最強かニャ!? 今度他にも行くつもりだから、その時は一緒に行くニャ!」

 

「もう勘弁してください!? これ以上は無理ですから!?」

 

「お前もこっそりカジノに行こうとするな!」

 

「所で、このチップの山はどうしましょうか?」

 

 

 クロエはベル達の勝ちっぷりを見て、目を輝かしながら「タッグを組もうニャ!」とばかりベルを誘うがルノアがそれを止める。アミッドはベルとリューが獲ったチップの山はどうなるのかと疑問に思い始める。

 

 

「オ、オーナー…!?」

 

 

 一方、圧倒的な引きの良さによって圧倒され(むしろテリー達側は途中からイカサマをしていた)、テリーは茫然自失となり、男性給士から心配されてしまう。

 

 

「では約束通り、そのアンナという人をもらい受けます」

 

「クッソォ…!」

 

 

 ゲームの公約に従い、アンナのチョーカーを外し、アンナは戸惑いながらベル達側の所に向かうのだった。

 

 

「あ、あの、貴方達は…?」

 

「いえ、貴方は気にする必要はありません」

 

 

 リューの言葉に戸惑いながらアンナは付き従い、大人しくするのであった。

 

 一方、テリーはアンナを奪われたことで憎悪を滾らせ、後日報復を行おうと企てている。

 

 

(こいつら…! 買ったばかりで愉しんでさえいないのに! 俺に幾度となく喧嘩を売った事を後悔させてやる! そして、目の前で女を抱いて絶望と後悔させながら殺してやる!)

 

 

 事実上の手放しとなったことでテリーはそんな事を心の中で留めながら、リュー達に吐き捨てる。

 

 

「これでよろしいかですか、マクシミリアン殿?」

 

 

 今に見ていろとばかり睨み付けるがリューは華麗に受け流し、口を開く。

 

 

「いや、まだだ」

 

「…何ですかな、このアンナだけではご満足して頂けないと?」

 

 

 テリーは更なる怒りで目元が痙攣しており、対峙しているリューは勿論、何人かがそれに気づく。

 

 だが、リューはそれを無視して次の一言を告げる。

 

 

「全員だ」

 

 

 その発言に、数瞬VIPルームから音が消えた。

 

 ベル、ダフネ、アミッド、アンナの4人はもしかしてと思い始め、ルノアとクロエはそりゃそうかとばかり納得をしている。

 

 

「貴方が金に物を言わせて奪い取った、全ての女性を開放してもらう」

 

 

 室内にいた美姫達が弾かれた様に振り向いて、驚きの眼差しを向ける。

 

 テリーは最早怒りでどうにかなりそうとなり、テーブルにいた富豪たちは察してテーブルから離れる。

 

 

「ま、そういう事だから…」

 

「おとなしく従うニャ!」

 

「ふざけるなよお前ら! たかが一度勝ったぐらいで何様のつもりだ! 俺を敵に回して生きて行けると思ったか! ギルドが守ってくれるなら大間違いだ! 現にここにギルドの豚がいた所で、オラリオとはまた別の、娯楽都市から出向している俺は――――」

 

「違う」

 

 

 テリーの恫喝をリューは静かな一声で遮る。

 

 

「貴方は娯楽都市の人間ではない。そもそも、テリー・セルバンティスという名前ですらない」

 

 

 その言葉に、ドワーフのオーナーは固まる。

 

 

「貴方の名前はテッド。過去、このオラリオで違法の賭博を繰り返していた店の胴元…都市から追放された主神が天界に送還されたとしても、その背には封印された【ステイタス】が残っている」

 

 

 リューは懐から小瓶に入っている『神血』を突き出す。

 

 【ステイタス】を暴くためだけの道具が出た事で、オーナーの顔は激変する。

 

 VIPルームには異様な空気が支配しており、予想外の状況によって置き去りにされたベル達やロイマン含む富豪達、アンナを含む美姫達や店の給士達まで何が何だかわからない顔で対峙するエルフとドワーフの顔を交互に見やった。

 

 そして、アルベラは「ばれた!」とばかりの顔をしてその場から逃走し、ドワーフは動揺しながらリュー達を発言や勝負事までもみ消そうとするため、金で雇われた用心棒に命令を下し、リュー達を取り囲む。

 

 

「ふ、ふふ…。これは飛んだいいかがりをつけられたものですな。生きてここから出られると思うな! 男は殺して、女は烈辱を浴びせてやる!」

 

「オ、オーナー殿!? まさか貴方は本当に…!?」

 

 

 ロイマンのどよめきの声にも耳を傾けず、オーナー、―――――テッドは用心棒に始末するよう命令する。

 

 

「やれ! お前達! ギルドの豚ごとやってしまえ!!」

 

「ぼ、冒険者達! こいつらをどうにかしろぉ!?」

 

 

 一斉に僕達に襲い掛かり、美姫達や給士達の悲鳴声が交ざりながら交戦することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「オラァ!」」」

 

「フッ!」

 

「す、すごい…」

 

 

 僕達はカジノ側の用心棒達と戦っており、ダフネさんはすぐにその場を離脱してどこかに行ってしまった。

 

 僕とアミッドさんはVIPルームの入り口付近にいて外に逃がさないように、尚且つうまく連携を取りながらアンナさんやギルド長を守り、クロエさん達がフォローしてくれるまでの時間稼ぎをしている。

 

 クロエさんとルノアさんは暴れまくっており、むしろ用心棒側に悲鳴がこぼれていた。

 

 リューさんもまた、直ぐに襲い掛かってきた者達を返り討ちしていき、用心棒の数がみるみると減っていく。

 

 アンナさんは一連の戦闘の光景に恐れながらも感嘆している。

 

 その様子を見たテッドは逃げ出し、リューはすぐにそれを追い駆ける。ベルもまたここが一段落しそうであるためアミッドに任し、リューについて行こうと駆け出すが、リューとベルの2人の前に、2人の屈強な男たちが立ちはだかる。

 

 テッドは汗を拭いながらベル達側に顔を向けて獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

「そっちが冒険者を雇ったように、俺にもより屈強なボディーガードがいる! 名前は冒険者たちが聞いたことがあるだろう! あの『黒猫』と『黒拳』だ!」

 

「「あ?」」

 

 

 カジノ側の用心棒の通り名を聞いた瞬間、クロエとルノアの雰囲気が物凄く殺気立つ。

 

 周囲にいた者たちはリューを除いて皆震えあがり、中には失神する者もいた。

 

 そして、手に持っている失神した用心棒を放り投げ、騙った者たちの元に近づく。

 

 

「その名を騙るなら…」

 

「覚悟はできているんだろうね…!」

 

「「……!?」」

 

 

 殺気を向けられている二人の男たちは思わず身をすくむ。

 

 テッドは「何なんだあいつら!?」とばかりすぐに背を向けて逃げ、リューとベルは直ぐに「「はっ!」」として追いかける。

 

 そしてベル達が見えなくなったすぐ後に、男2人分のとてつもない悲鳴が、本来聞こえない筈のホールにまで聞こえたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、いち早く逃げ出したアルベラは息を切らしながら『エルドラド・リゾート』の裏方の通路を走っていた。

 

 テッドがこの『エルドラド・リゾート』を乗っ取る前から手を組んでいたアルベラは、テッドの正体がばれた事で見限り、そしてどうしてこの状況になってしまったのか、その発端に罵倒を繰り出す。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ…。ちぃ! あのギルドの豚め! 黙ってこっちの要望を聞けばよかったものを! 最初から誘拐するつもりだったのに! こっちはザニス様からの良い案があったからいいが、【ロキ・ファミリア】なんかメレンによこすからこんな目に…!」

 

「あら、それはどうかしらね?」

 

 

 自らの事を棚に上げるアルベラに、明らかに冷ややかな声がかけられる。

 

 アルベラは冷や汗を出しながらゆっくりと視線を向けると、そこにはダフネが待ち受けていた。

 

 

「なぁ…!? 【月桂の遁走者】!? 何故私の所に…!?」

 

「そんなもん決まっているでしょ。ウチはね……、アンタには随分と鬱憤がたまっているんだよ!」

 

 

 怒髪天のダフネの声に、アルベラは思わず身をすくめる。

 

 恐らくダフネと1番一緒にいるカサンドラも見たことがない程の、ダフネがガチギレをしていた。

 

 そして、ダフネの拳が上がる。アルベラに打ち込もうと。

 

 その事にアルベラは顔を青ざめ、命乞いをする。

 

 

「ま、待て!? か、金ならいくらでも…!?」

 

「そんなもんいるかぁああああああ!!!」

 

 

 ダフネの強烈な怒りの拳はアルベラのテンプルに叩き込まれる。

 

 

「ぶべえぇ!?」

 

 

 アルベラは醜い悲鳴を出しながらぶっ飛ばされ、歯が折れたりと顔面が崩壊した。

 

 それを確認したダフネは気が晴れ、ベル達の所に向かおうとする。

 

 そして、背を向けながら意識のないアルベラに吐き捨てた。

 

 

「ウチの親友を誘拐した罪は、金より重いわよ!」

 

 

 そしてダフネはホールに戻ろうとすると、目の前の通路の先でテッドが一瞬駆けている姿が見え、それを追い駆けるベルとリューの姿も見えた。

 

 

「今のは!? ウチも追い駆けなくちゃ!」

 

 

 そしてベル達に合流し、ダフネも一緒にテッドを追い駆けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テッドは入り組んだ道を利用してリュー達から逃れようとするが、中々距離が開いていないと実感しており、とうとう自分の部屋の前に辿り着くのであった。

 

 

(クソッ、こうなったら…!)

 

 

 テッドはドアを開け、部屋の中にいたカサンドラは思わず身をすくめるが、テッドはそのまま部屋の中にある隠しドアを開き、身動きの取れないカサンドラを抱えて逃げ出して行く。

 

 リュー達も部屋の中に入り、隠しドアが閉じられる瞬間を目撃したため、すぐにダフネがそこを蹴り破って中に入って行く。

 

 そのドアの先には隠し通路となっており、地下に進む。

 

 そして、アダマンタイトの扉、『エルドラド・リゾート』の金庫の前に辿り着く。

 

 そこには分厚い扉を開けて入り、閉めようとするテッドと、それに抱えられているカサンドラがいた。

 

 

「あ! カサンドラさん!?」

 

「カサンドラ! やっぱりここにいたのね!」

 

「ンー!? ンーーーーー!」

 

「が、ははははははっ! 一歩遅かったな! このまま籠城して、鬱憤晴らしとしてこいつで愉しんでやるぜ!」

 

 

 ガコンッ、と音を立て、カサンドラさんの悲鳴声もむなしく、僕らが滑り込む前に扉が閉められ、金城鉄壁の封印をされてしまった。

 

 ダフネさんは隠し持っていた剣を突き立てて破壊しようとするが、びくともせず、かすり傷しかつけられずに金庫の扉は拒む。

 

 

「カ、カサンドラ……」

 

「すぐに鍵を探してきます!」

 

 

 ダフネはカサンドラの身がもう絶望的という事になり、思わず座り込んでしまい、ベルは他にも鍵がないかとすぐにその場から離れて探そうとする。

 

 

「いえ、その必要はありません。二人共下がっていてください」

 

 

 だがリューはベルを止め、ダフネを立ち上がらせて金庫の扉から少しだけ離させる。

 

 ベルとダフネは一体何をするつもりなのかと困惑し、そして僅かな希望に縋る思いでリューを見る。

 

 

「【―――今は遠き森の空。無窮の夜点に鏤む無限の星々】」

 

 

 そしてリューは扉の前に立ち、詠唱を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンーーー!? ンーーー!」

 

「クソッ、抵抗すんじゃねえ! 大人しくしろ!」

 

 

 金庫の中。

 

そこは無数の金貨や財宝が点在しており、ヴァリス換算すれば兆を超えるのではないかとぐらいの量である。『エルドラド・リゾート』の全財貨がここに集められている。

 

 まさに黄金卿と呼ぶに相応しい光景の中で、カサンドラは必死にテッドから抵抗していた。カサンドラの服は所々破れており、最低の事態になるまで最早時間の問題であった。

 

 

「この金庫を開けられるのはこの俺だけだ! あいつらには一生開かない!」

 

 

 マスターキーを持つテッドしか開けることが出来ない金庫に籠城して、テッドは救援が来ることに望みをかけていた。

 

 

「ここに籠って、後はアルベラが上手く逃げ出してくれていれば、『闇派閥』の連中は必ず来る! 何せ、あいつらは何か資金に困っているから、外にいる奴らを始末して俺に恩を売ってくるはずだからなぁ!」

 

 

 他力本願の作戦が既に破綻している事を知らないテッドは、その時間つぶしという意味でも今まさにカサンドラの体に手をかけようとしている。

 

 

「奴らにお前の泣き叫ぶ声を聞かせてやれないのは残念だが、奴らにコケにされた分まで可愛がってやる!」

 

「ンーーーー!! ンーーーーーーー!!」

 

 

 鎖で縛られて、尚且つ轡をはめられているカサンドラは涙を流しながら、扉の外にいるベル達に必死に助けを求めるが、返事はこない。

 

 ただし、その声に応えてくれたのは、膨大な『魔力』の反応であった。

 

 

「あ? 『魔力』?」

 

 

 大惨事まで5秒前という所でテッドはその反応に思わず手を止め、扉の方を見る。

 

 テッドは嘲笑しようとしたが、その『魔力』の量はさらに大きくなっていき、顔が引きつり始める。

 

 最早服の部分がほとんどないカサンドラもその『魔力』の量に気づき、目を見開く。

 

 

「お、おい…、まさか……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉の外。

 

 ベルとダフネが見守る中、リューは詠唱を終了とともに右腕を前方に突き出し、己の最強の必殺を唱えた。

 

 

「【ルミノス・ウィンド】」

 

 

 風を纏う星光の砲撃が解き放たれ、扉に着弾する。

 

 

「「~~~~~~~~~っ!?」」

 

 

 ベルとダフネはその威力の大きさに顔を覆い、凄まじい轟音に必死に耐えている。

 

 そしてそれは内側にも響いており、テッドとカサンドラに浴びせかける。

 

 身を竦ませる彼らの視線の先で、アダマンタイトの大扉は内側に向かってひしゃげ、亀裂が生じた。

 

 凍り付くテッドをよそにカサンドラは咄嗟に衝撃から備え、そして金庫の扉は爆砕する。

 

 

「なぁああああああああああ!?」

 

 

 視界を白く埋める閃光が弾け、棒立ちになっていたテッドの体は吹き飛んだ。

 

 金庫の中にあった金貨や財宝もまた爆風によって舞い散り、甲高い音を立てて床へ散らばる。

 

 ベル、ダフネ、カサンドラは顔を上げると、視界に広がるのは扉を失い半壊した地下金庫の光景だった。

 

 ベル達が唖然としている中、リューは金庫内に足を踏み入れながら説明をする。

 

 

「アダマンタイトには、硬度に直結する純度が存在する。『深層』で採掘されたアダマンタイトなら破壊を困難に極めますが…この金庫の素材を見るに『上層』や『中層』で採掘されたもの。その証拠に、先程ラウロスさんが剣で扉にわずかながら傷を付けてくれました。強度がそれ程ないアダマンタイトであれば、私の『魔法』でも貫ける」

 

 

「粗悪品を掴まされたようですね」と、リューは声を失うテッドを一瞥する。

 

 目利きがないとわからない違いに、本物のテリーなら気付けたかもしれないが、偽物にはわからずに、恨みを持った商人達からささやかな『意趣返し』をされていたのであった。

 

 

「お、お前は一体…!?」

 

 

 テッドの問答に、リューはスルーして手袋を嵌め、拳を握る。

 

 

「言い忘れていましたが、お前に免罪の余地はない。そして―――容赦はしない」

 

「は? ―――ぐべえっ!?」

 

 

 視認を許さない疾風の一撃が、テッドの頬面に叩き込まれた。

 

 リューの拳に殴り飛ばされたドワーフは凄まじい勢いで後方に飛び、崩れた金貨の山の中に激突する。

 

 金貨が舞い散り、半身が金の中に埋もれた格好で悪漢はぴくぴくと痙攣を繰り返した。

 

 

「さて、そちらの方は――――、もう終わっていますね」

 

 

 リューがテッドに制裁を下している間に、ベルとダフネはカサンドラに付けられている鎖と轡を外し、解放していた。

 

 

「ぷはぁっ―――、うわぁあああああん! ベル~~~~! ダフネちゃん~~~~~!」

 

「はいはい、ギリギリだったけど、本当によかったわ…、カサンドラ…!」

 

「はい、本当にそうですね…!」

 

 

 カサンドラは喜びのあまりベルとダフネに抱き付き、2人共その衝撃に耐えきれずに後ろに倒れ込む。だがその事で怒ったりせず、むしろ笑いあって、ベルとダフネはよしよしと、子供のように泣くカサンドラの頭を撫でている。

 

 リューはその光景に水を差さないように見守り、カサンドラ達が落ち着くまで待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、カサンドラがようやく落ち着いて、ベル達は気絶したテッドを引きづりながらVIPルームにまで戻るのだった。

 

 ただ、カサンドラが落ち着いた理由は服がボロボロで、ほぼ素っ裸のままベルに抱き付いた事を認知したからである。リューは最初に気づいたが指摘せず、その後ベルが気づき、その反応によって2人も気づき、すぐに我に返ったからであった。

 

 ベルは羽織っていた白の燕尾服をカサンドラに着せてその場を凌ぎさせ、また向かう道の途中で服を手に入れたため、カサンドラの格好は今ドレス姿である。

 

 そして、僕らはVIPルームに辿り着くのであった。

 

 そこはもう、用心棒達は皆地面に附して気絶しており、店の給士達はその場にへたり込んでいて、富豪達もまた同じようにしている。さらに美姫達はアンナさんを中心に集まっていて、僕らが現れたことで、アンナさんが代表で僕らに話し込んできた。

 

 

「あ、あの…、私達は…?」

 

「大丈夫です。皆さん、もう自由です」

 

 

 リューはその証拠とばかり気絶したテッドを見せつけ、アンナを含めて皆歓喜する。

 

 そして、ホール側への出口を抑えて外に出られないようにしていたルノア達も合流する。

 

 

「おお、やったじゃん!」

 

「少年達もお手柄だったニャ!」

 

「まあ、本来これはウチらが主軸の問題だったけどね」

 

「はい…。本当に協力してくれて、ありがとうございます!」

 

 

 僕とダフネさんは自分たちのみではカサンドラさんの救出が出来なかった事で改めて感謝を述べて、ルノアさん達は気にしなくていいよとばかり苦笑いをしている。

 

 

「あの、ベル、ダフネちゃん? そう言えば思っていたんだけど、この人達は…?」

 

「ああ、ウチらに協力してくれた……マクシミリアン家の人達よ」

 

「あ、そういえばそうですね」

 

「……? あれ、でもどこかで会ったことがあるような…?」

 

 

 謎の貴婦人達がベル達に協力をしていたことで、余り状況をよく理解していなかったカサンドラは首を傾げる。

 

 そしてもう一人、協力してくれた人にカサンドラは目を見張る。

 

 

「ベルさん、お怪我はありませんでしたか?」

 

「はい、無事にこうして…」

 

「…あれ!? ね、ねえ、【戦場の聖女】、アミッド・テアサナーレさんがここにいるように見えるんだけど…!?」

 

「あ、はい。アミッドさんも僕らに協力してくれました」

 

「そういえば、カサンドラさんとは病院や回復薬系の販売以外でこうしてお会いするのは初めてですね。改めまして、私はアミッド・テアサナーレと言います。以後御贔屓を」

 

 

 カサンドラは内心勝手に(ベル関連の意味で)ライバル視をしていたアミッドに助けられていた事実に、どこか精神的なショックを受けた。

 

 

「…………そう、なんだ…」

 

「…? あの、私に何か?」

 

「い、いえ、何でもありません! 助けていただいてありがとうございます!」

 

 

 アミッドは首を傾げながらカサンドラの様子を見る。カサンドラは助けてくれた人に対してこれは失礼だと内心思い、必死に心の中で謝っている。

 

 ベルはそんな2人に首を傾げ、ダフネは無言を徹している。

 

 そんな中に、ロイマンが来た。

 

 

「おお、よくやってくれた! 流石はオラリオの冒険者だな! わっはっはっは!」

 

 

 ロイマンはすっかり上機嫌になっており、今すぐにでも外に出て【ガネーシャ・ファミリア】に知らせに行こうじゃないかと促すが、ダフネは拒否する。

 

 

「待って。ちょっとアンタに聞きたいことがあるんだけど」

 

「ん? 何かな?」

 

「ウチら【アポロン・ファミリア】や【ヘルメス・ファミリア】、【ロキ・ファミリア】が受けた『強制任務』の件、詳しく話してくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、大体あのアルベラのせいって事ね?」

 

「そうなるな。こちらが認知する前から【カーリー・ファミリア】が来ることを知っていたから、それを利用していたんだろう。こちら側にしても対応を考えないといけないから、アルベラの案に【ロキ・ファミリア】を追加したが」

 

「…もう一発ぶん殴っとければよかった」

 

 

 ダフネは勿体無い事をしたなと思い、頭を少し搔く。

 

 

「あの、フィンさんからの、【ロキ・ファミリア】のホーム当ての手紙は…?」

 

「ああ、クビになったメレン支部の元支部長のせいだったな。その事がこっちには夕方前に報告が上がっていた」

 

「そうだったんですか…」

 

 

 恐らく食人花の件にあまり触れさせたくはないという事で、フィンさんの手紙をもみ消したという事が調査によってすぐに露見したらしい。

 

 それをやった当の本人は【ニョルズ・ファミリア】の人達に地獄の肉体労働を行われているが。

 

 

「う、ぐ…!」

 

 

 そこに、気絶したテッドが遂に目を覚ます。

 

 体は動けないが口だけは動くため、ベル達に向かって喚き散らす。

 

 

「お前等! こんなことをして、ただで済むとは思うなよ! いずれ『闇派閥』の連中が俺を助けに「うるさいんだよ!」ぶへえぇ!?」

 

 

 言い終わる前に、ルノアから一発強烈な右拳がテッドの顔面に沈む。

 

 テッドの意識が飛ぶ寸前にクロエは悪い顔で何か凶悪なことを小声で喋り恐怖させ、ルノアがさらにそこから3発すべての拳をテッドの顔面に浴びせ、ぶっ飛ばす。

 

 その後ロイマン曰く、テッドが次に目を覚ましたら全身が震えてろくに口がきいていなかったと語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュー達と話し合いの元、あまりこの事を詳しく知らせたら大賭博場区域全体に混乱を巻き起こしかねいと判断する。そのため、アルベラとテッドの分を除いた勝ち金をロイマン含む負けた富豪達に返す代わりに、ここの口止めや手に入れた奴隷の解放、さらにオラリオ外で『闇派閥』と繋がっている者の情報提供を約束させた。

 

 その後、ロイマンが証人の元、テッドはカジノ内に突入した【ガネーシャ・ファミリア】に連行されて行く。

 

 ベル達はその間に裏口から脱出し、『エルドラド・リゾート』を後にしようとするが、その直前に【ガネーシャ・ファミリア】に任せようとしていた大勢の美姫達に止められてしまう。

 

 

「待ってください!? せめてお名前を…!」

 

「今後の生活費用と言って、私達にお金もこんなに下さっていただいたのに…!」

 

「特に、眼帯のエルフのお方!」

 

「これから言う事に貴方を困らせてしまいますけど、でも…!」

 

「もし奥さんがいらっしゃらないでしたら、私を…!」

 

 

 ベル達はきょとんとする。

 

 皆何故か胸に両手を添えていて、リューに向かって意を決し、身を乗り出しているからだ。

 

 リューは瞬きを繰り返し、そして致命的な誤解をされている事に理解した。

 

 アンナを含む美姫達は『恋する乙女』のようにリューへ熱い眼差しを注いでいたのである。

 

 

「「「「「「「「私は、貴方に恋を――――」」」」」」」」

 

「待ってください」

 

「え?」

 

「どうしてですか?」

 

「貴方達は、勘違いをしている」

 

 

 とてつもなく感情を押し殺した声を出しながら、リューは眼帯を外す。それと同時に変装用の髪もまた、普段の髪型に戻す。

 

 唖然とする美姫達に、リューは宣う。

 

 

「私は、貴方達と同じ女性です」

 

 

 一瞬の硬直。そして、美姫達の大声が重なった。

 

 

「「「「「「「「え、えええええええぇぇ~~~~~!?」」」」」」」」

 

 

 身の危険を顧みずに自分たちを助けてくれた騎士が、実は男装した麗人、歴とした同性。

 

 胸をときめかしてしまった少女達の恋物語はこの瞬間をもって崩れ去った。

 

 茫然自失となって足取りが皆ふらつき、その場に座り込んでしまう。

 

 

「私の初恋………、女の人…」

 

「そんな………」

 

「う、うううう…!」

 

「フフ、フ、フフフ、フフフフフフ………」

 

「…い、いや、いっそのこと同性でも…!」

 

 

 美姫達の頭上には傷心の風が吹いており(何人か別の風が吹いているが)、リューは居た堪れなくてすぐにその場を離れた。

 

 クロエとルノアの爆笑の声を響かせながらベル達も慌ててついて行き、そして、『エルドラド・リゾート』から遂に脱出する。

 

 しかし、僕達はさらにそこから大賭博場区域を抜け出す途中、モダーカさんやシャクティさんに出くわしてしまった。しかし、ロイマンさんがすぐに僕らの身の保証をしてくれていたので、事を起こさずに済んだ。ルノアさんはすぐに身を隠していたけど。クロエさんも持ち運んでいる大きい袋を隠したけど。

 

 また、リューさんとシャクティさんが何か親しい感じやりとりがあったけど、すぐに話を打ち切って僕らを人気のない通路に案内してくれて、大賭博場区域を抜け出してくれた。

 

 

「ありがとうございます! シャクティさん! モダーカさん!」

 

「後始末の方は我々に任せてもらいたい!」

 

「そっちも気を付けて下さい!」

 

 

 そのままシャクティさん達と別れた後、僕達は【アポロン・ファミリア】の人達が用意しておいた馬車に乗り、繁華街から脱出するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、この日の出来事はカジノの夢物語として後世にまで語られたという。

 

 そしてベル達一向、特にリーダー格として振る舞い、数多の美女のときめきをかっさらってしまったリューの事は、『伝説のギャンブラー』と畏怖を込めて呼ばれるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、アルベラはダフネからの怒りの拳を喰らって気絶していたが、【ガネーシャ・ファミリア】に見つかる前に意識を取り戻し、隠し通路から脱出していた。ダフネに殴られた痕は残っており、服も少し乱れているが。

 

 そして、そのまま自分の持つアルベラ商会の隠れ家を目指している。

 

 

「あいつら、覚えていろよ…! まだまだ私には商会そのものが…!?」

 

「やあ、随分と遅い帰宅だね」

 

 

 到着したと思ったら、そこはフィンを中心とした【ロキ・ファミリア】が立ち並んでいた。

 

 アルベラは商会の力を最大限に使って復讐しようとして戻ってみたら、既に【ロキ・ファミリア】によって壊滅されていた事に衝撃を受ける。

 

 

「ど、どうしてここが!?」

 

「私から奪った杖の匂いを辿ってここに着きました」

 

 

 レフィーヤは取り戻した自分の杖をアルベラに見せつける。

 

 レフィーヤの杖の匂いをベートが辿り、アルベラ商会の隠れ場に辿り着き、総員で襲撃したのであった。

 

 ただし、その会長がいなかったのでこうして待ち伏せていたのである。

 

 

「聞いてるぜ。てめえが世間に疎い【カーリー・ファミリア】を騙して【ヴィーザル・ファミリア】を潰したってな! 随分と回りくどい事をやってくれたじゃねえか!」

 

「ひぃいいいいいいい!?」

 

「おかしいと思ったんだよねぇ。任務上の衝突とはいえ、闘争に忠実なカーリーがヴィーザル様に謝っていたって。そんな心があったらテルスキュラで殺し合い何かしないし」

 

「ベートの話からも、【月桂の遁走者】とルアン・エスペルがアルガナ達に襲撃された際、最初は謝ってはいなかったが、殺す所まではしていなかったからね。恐らく、向こうも殺る相手を選んでいたんだろう。後腐れもない相手、例えば身内とか犯罪者とか」

 

「という事は、こやつが【ヴィーザル・ファミリア】は犯罪系の【ファミリア】だと嘘を言って襲わせたのか。なんて最低な奴じゃのう」

 

「私とガレスはメレンに行っていないからそこまで詳しい事情は聴いていないが、それでもここに証拠となる書類は手に入れている」

 

 

 次々と証拠が並ばれていき、尚且つフィン達の推測も完全に正解だったため、アルベラは後ろに下がり始めるがベートの眼光によって体が反射的に止められてしまう。

 

 

「後は君に売った場所の情報を吐かせなくちゃいけないけど……その身だしなみを見るに、どうやら【アポロン・ファミリア】の人達が上手くいったみたいだね。というわけベート、後始末は君に任せるよ。手加減はしなくていいみたいだから」

 

「ああ、そうさせてもらうぜ!!」

 

「私の杖を奪った分もやっちゃってください!」

 

「な、が……ぎゃあああああああああああああああ!?」

 

 

 フィンからのOKをもらったため、ベートは遠慮なくアルベラをサンドバック代わりにする。その後ろに、レフィーヤは思いっきり拳を上げてベートを応援していたらしい。

 

 その後、【ロキ・ファミリア】に連行されて檻の中に入れられた時は、アルベラは外に怯えている様だったと言われている。

 

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