ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
1週間前に、ようやくダンまち16巻を入手しました。読みました。
あんなにデートスポットがオラリオにあったのかよ!?
そしてベル君の女たらし!
………第一声と第二声がそれでした。
午後。
『戦争遊戯』の詳細は瞬く間に広まり、【アポロン・ファミリア】もまた準備を始める事となった。
資金もカジノの出来事によって、たんまりあるため、装備や食料の買い出し、馬車の手配など、総員が動き、準備していく。
僕は回復薬などの補充のために、ルアンやカサンドラさん、ダフネさんと一緒に【ディアンケヒト・ファミリア】の店の近くまで来た。
「ん? 何だ、この人の数は…?」
「わからない…。何かあったのかな…?」
「…ねえ、多分これって…」
「うん。そうだと思う」
店の中の様子は人盛りでいっぱいとなっていた。しかも、全員男性。
ルアンが疑問に思い、ベルもまた首を傾げていたが、ダフネとカサンドラは察した。
丁度カウンターには、噂の中心人物になっているアミッドが、少し疲れているような顔で対応している。
客や同じ【ファミリア】の人からも質問されまくっていて、喧騒が外まで聞こえてきた。
ベルは大勢の声を聞いてみると…。
「なあ!? 本当にあの噂は本当なのか!?」
「カジノでデートをしてたって嘘ですよね!?」
「相手は誰なんだ!?」
「俺の主神から、特徴は白髪をして冴えない顔をした、どこかの富豪という話を聞いたんだが!?」
「眼帯をしたエルフが相手という話も聞いた!」
「とりあえずその男達を見つけたら、絶対に首の骨をへし折ってやる…!」
「俺達の聖域、【戦場の聖女】に手を出して、タダで生きていけると思うなよ…!」
それらを聞いた途端、僕は来た道に戻ろうと足を向けた。
「あ、おい!? どこ行くんだベル!?」
「ごめん皆! 後は任せ「はい、ベルは逃げない事」…」
逃げようとしたら、既に先回りしていたダフネさんにあっさり捕まってしまった。
全く振り解けず、力業では行けない。
「ダフネさん!? お願いですから放してください!?」
「向かう先に、何やら見た事があるエルフの少女が見えるのに?」
「――――ひっ…」
視線の先には、長髪のエルフの女性と金髪の人間の女性―――レフィーヤさんとアイズさんがいた。しかも丁度、この噂について人から何か聞いているように見える。
思わず口から怯えきった悲鳴がこぼれてしまう。
僕はこちらに気づかれていないうちに、ダフネさんで死角を作り、そのままルアン達がいる所に戻る。
そして丁度、ディアンケヒト様がこの喧騒に気づいて怒鳴り散らかし、客の中にいた人達はぞろぞろと外に出てきた。
慌てて僕はカサンドラさんの後ろに隠れ込み、その場をやり切るのだった。何人かダフネさんに声をかけて噂の事を聞いてきたけど、僕の方には気づいてなかった。
その後、ベル達は人気が少なくなった店の中に入り、買い物を始めようとした時、少し疲れているアミッドがようやく気づく。
「フゥ……あ、いらっしゃいませ、皆さんご一緒で。『戦争遊戯』の事は聞きました。頑張って下さい」
「ありがとうございます」
「アンタの方はお疲れみたいだね」
『戦争遊戯』の事で応援され、感謝の言葉を告げるベル。
ダフネもまたアミッドに「少し休んだら?」と言うが、昨日休暇を取ったアミッドはそういうわけにはいかなかった。
とりあえず、予備の分まで含めて人数分を用意してもらい、その代金を支払った時。
アミッドはベルに相談事を持ちかける。
「ところでベルさん。昨日話したデートの件ですけど、日時は10日後の朝6時にオラリオ西南城壁出入り口前にしましょう。そこからメレンに出発です」
「えええ!? もう決めたんですか!? とりあえず大丈夫ですけど…。というより、どうやって対処するんですか!? 何かオラリオ中にカジノの話が飛びまわっているんですけど!?」
「もう観念して制裁を受けるしかないじゃない?」
「受けたら多分僕死にます!?」
「つーかベル、オイラが捕まっていた時にそんなやり取りがあったのかよ!?」
明らかに殺意があったあの集団に正体がばれたら、血祭りにされるまで追い駆けられるだろう。
ルアンに「事情を詳しく聞かせろ!?」と言われ、カサンドラは「噂には絶対に肯定しないで~!?」とアミッドに懇願している傍ら、ベルはそんな恐怖に身を震わせた矢先。
美少女二人―――――レフィーヤとアイズがこの店に入ってきた。
「アミッドさん、あの噂についてですけど…。あ、ダフネさんも丁度―――――何故この男がここに!?」
「あ、ベル達だ」
「ど、どどどどどど、どうも…。ボボ、僕達は『戦争遊戯』の時に使うだろう回復薬を買いに…」
「……何か隠していません?」
ベルの動揺に勘付いたレフィーヤは、アイズが首を傾げている時に、「まさか!?」と何かに辿り着いた。
「そういえばですけど、この男とダフネさんってカジノに行きましたよね?」
「ええ、そうだけど」
「…その時、アミッドさんも一緒でしたか?」
「ええ、その通りです」
ダフネとアミッドが肯定し、顔を青ざめるベル。
その事を聞いた時、レフィーヤは顔を伏せたまま、まっすぐベルの所に向かう。
冷や汗を掻きまくるベルの前に立つと、拳を握りしめて…。
「こぉんの、ケダモノヒュウマァアアアアアアアン!」
「ゴハァ!?」
ドゴォッ! と、見事なボディブローが決まり、ベルはそのまま沈んだ。
当の本人達を除き、その場にいた全員が唖然とする中、ダフネは「ま、そうなるよねー」と、カサンドラは「ああ、やっぱり…」と、両者は前から予想していた。
「最低です! 救出しなければいけない事態でしたのに、デートですか!? ふざけないで下さい!」
「ま、待って下さい…。僕はそんなつもりは…」
「そうです。デートは10日後にするつもりです」
火に油を注いだアミッドのまさかの爆弾発言に、ベルとレフィーヤは唖然とした。
「えええええええええ!? この男は駄目ですって!? アミッドさん、この男はメレンでカサンドラさんと同じ部屋に泊まっていたんですよ!?」
「すみません、その話を詳しくお願いいたします」
「待って!? 暴露しないで~!? というか、何で知っているの~~~!?」
「あーー、まあ、ちょっと、ね…」
レフィーヤもまた暴露して、アミッドは喰い付き、カサンドラは顔を赤く染め、ダフネはやれやれという様になっている。
ルアンもまた「うおおおい!? どういう事だよベル!?」と、腹を抑えて悶絶しているベルを揺さぶり、余計苦しくなるベル。アイズはよしよしと、頭をポンポンと撫ででいる。
そして、レフィーヤは顔が怒りでおかしくなり始め、詠唱を始めた。
「はっ!? アイズさんにも頭を撫でられて…!? 何て羨ましい事を! どいて下さい皆さん! この男の存在を抹消します! 【解き放つ一条の光―――】」
「待って!? それ以上はストップ!?」
「お店が壊れちゃうから~!?」
「それ以上は駄目、レフィーヤ」
ダフネやカサンドラに止められ、さらにアイズの一言でレフィーヤの【魔法】は止められた。
【魔法】の攻撃対象だった白い少年は代わりにアミッドから回復魔法を受け、光の粒子が包まれる。レフィーヤに「覚えておきなさーい!」と言われたが。
気分が良くなったベルは立ち上がるが、その時アイズに別の質問をされる。
「ねぇ、…昨日カジノにいた、『伝説のギャンブラー』って、誰だったの?」
「で、『伝説のギャンブラー』?」
ベルはアミッドやダフネ、カサンドラにも顔を向けるが、知らないというばかりに首を横に振った。
「あの、その人の特徴とかは…?」
「昨日『エルドラド・リゾート』に現れた、って聞いたんだけど…。眼帯をしたエルフの男としか…。養子とか、友人とかいたとか」
「なんだそりゃ? 観光で来ていたのか?」
「「「「…………」」」」
そ、それって…。僕とアミッドさん、ダフネさんや救出したカサンドラさんと一緒にいた…、そして今日の朝修行してもらった…。
アイズが首を傾げており、ルアンやレフィーヤを除いた、ベル達はその正体をすぐに判別できた。
きっと、あの場にいた神様達や客たちが面白がって、『二つ名』もどきを付けたのだろう。
そしてさらに聞いてみたら、アミッドさんの噂で陰に隠れていたが、カジノの方ではこちらが話題になっているらしい。
その噂はもしかしたら、後世にまで伝わるかもしれない。
そんな考えを抱いた後、僕らが獲得したお金に関しては金額をぼかして伝え、アイズさんは納得してもらった。
「あと…『戦争遊戯』、頑張ってね。向こうは何をしてくるか、予想できないから」
「はい、頑張ります!」
「【戦場の聖女】や【剣姫】に言われちゃあ、オイラ達は頑張るしかないな!」
「まあ、元から負ける気なんてないけどね」
「あと、アルベラ商会は一晩で潰しておきました」
「そんなあっさり!?」
そんなやり取りがあったが、『戦争遊戯』の事で応援の言葉を告げられ、ベル達はより気合が入り、店を出るのだった。
ベル達は買った回復薬を持ったが、数がさすがに多いため、借りた荷台に乗せて引きながら帰宅するのだった。
その帰り道。
人気が少なくなった道を通り、僕らが談笑していた時。
リリと、鉢合わせした。
「あっ…」
「リリルカ!?」
「……」
何やらすごく睨み付けてくるリリ。
いくら『戦争遊戯』の相手とは言えど、パーティーを組んでいる時とは比べものにならない程の濁った眼で見られている気がする。
「ね、ねぇリリ。『戦争遊戯』が終わっても、またパーティーを組んでダンジョンに行こう?」
「…そうだぜ。オイラ達は『戦争遊戯』では敵同士となっても、そんな事で気にしないぜ」
ルアンもまた僕に便乗して、恐らくリリの中で葛藤があるんじゃないかと思っていた矢先。
「随分とお気楽ですね、ベル様達は」
随分と低い声で返答が帰って来た。
「リ、リリ?」
「な、何か怖いよ~?」
「アンタ達、あの子とパーティー組んでいた時、何やっていたの? まさかひどい事をしていた……て、いうのはないか。ベルがいるし」
「そ、そうだぜ! となると…、て、ちょっと待て!? オイラは!?」
リリの雰囲気の変貌に怖気つくベル達。ただ、その心当たりがない。
『――――』
「え?」
リリが小声で呟いた言葉に、その言葉が聞こえたダフネは疑問の声が出る。
そして、リリは後ろを向いて去って行った。
「あ、おい! 待てよ! どうしちまったんだ、リリルカ!?」
「別にどうとでもないですよ。ただ、何が何でも勝たないといけない理由が出来ただけです」
そう言い残し、リリの姿が遠ざかって行く。
取り残されたベル達は、呆然としながら見送る事となった。
「…ダフネちゃん。さっき、あの子は何て言ってたの?」
「ぼ、僕にも教えてください! 何て言ったのか聞き取れなくて…」
「オ、オイラも!」
去る前に小声で言った内容が聞き取れたダフネに、教えてもらうよう懇願するベル達。
ダフネもよく意味が分からなかったが、そのまま教えた。
「……『運が良いですね…、【アポロン・ファミリア】』、って言ってたわ」
その後。
出発準備が大体終わり、晩御飯を『豊饒の女主人』で食べ、その時に「明日の朝から出発しますから、数日間朝の修行はありません」という事を伝えた。『伝説のギャンブラー』という噂の件も伝えたら、リューさんは盆を落としてしまったけど。
そして帰っていた後、『戦争遊戯』前でもあって、ステイタス更新するためにアポロン様に頼もうとしていたが、長蛇の列が並んでいた。
僕もその列に並んで、後ろにダフネさんやカサンドラさんが続いている。
少し話したら、一応監視役としてダフネさんとカサンドラさんが僕の時に一緒に入る事になった。
そしてそのまま談笑している内に、ようやく僕の番になった。
部屋に入ると、すごく疲れ切っているアポロン様が待ち受けている。
「ぐおおおお…。つ、次は……おお、ベルきゅ~ん! こうなったらベルきゅんで癒してもらってグオォ!?」
「させると思う?」
「うう~~~」
ベルにダイブしたアポロンだったが、ダフネの蹴りに沈められ、カサンドラもまた威嚇する。
そして、ベルは上着を脱ぎ、ダフネとカサンドラの監視の元、すぐさま復活したアポロンにステイタス更新がされる。
ベル・クラネル
Lv.1
力 :H159 → H172
耐久:H115 → H140
器用:H179 → H190
敏捷:G259 → G287
魔力:I0
≪魔法≫
【】
≪スキル≫
【】
僕は更新結果の紙をジー、と見る。
ここ数日激闘をした筈だから、相当ステイタスが上がっていると思っていた。その結果がこれである。耐久は25、敏捷は28も上がっているけど。
何で!? と思ったけど、よくよく考えたら戦闘という意味ではそこまでなかった気がする。
メレンでは食人花と戦ったけど、途中でアマゾネスの大群に追いかけられたし。瀕死のバーチェさんには相打ちに近い形でトドメを刺したぐらい。カジノでも最後向こう側の用心棒達と戦って、途中でそこから抜け出しちゃったし。後は朝の訓練。
カサンドラさん達にも僕の結果を見せて、あれ? という顔をしたけど、すぐに納得の顔に変わった。
そんな僕らに、アポロン様がいつになく真剣そうな顔で話しかけた。
「さて、ベルきゅん達。話があるんだが…」
「? 何でしょうか?」
「実はロキから聞いた話でな…。アルベラ商会を潰したというのもある」
「あ、それは昼間に聞きました」
「いや、それだけじゃない。ソーマはともかく、【ソーマ・ファミリア】の団長が『闇派閥』と手を組んでいる事が確定した。【イシュタル・ファミリア】もそうらしい」
「あ、それも昼間に聞きました。アイズさん達が教えてくれました」
「まあ、大体こっちが予想していた通りだったってわけね」
「情報仕入れるの早いな!?」
ほとんどが僕らが昼間聞いたような内容だった。もしかしたら、ステイタス更新の時に団員一人一人に言っているのかな…?
僕はそんな考えを思っている時、アポロン様から改めて応援のエールが送られた。
「ま、まあ元より、『戦争遊戯』は頑張っておくれよ、ベルきゅん達! 向こうの『代表』を倒せなくとも、最悪ヒュアキントスを3日間守り抜けば勝ちだから!」
「ま、そうなるよね。こういうのって、大体最終日、つまり3日目が本番だから」
「少しでも消耗させようとすれば、そうなっちゃうよね~」
「でもわかりました! 絶対に勝ちます!」
「うむ! その心意気だぞ、ベルきゅん! ならば今夜私の元にブベッ!?」
上半身裸のベルに抱き付こうとするアポロンに、蹴りを入れるダフネ。その間にベルは服を着て、部屋から出るのだった。
その後、ベルは(アポロンはまだ他の人のステイタス更新があった隙に)風呂にも入り、歯を磨いて、自分の部屋に入った。
ルアンもまた寝る準備をしており、談笑した後、ベッドの上に横になった時、ベルは不意に疑問に思っていたことを口にする。
「……ねえ、あのさ。どうしてルアンは【ソーマ・ファミリア】の調査に名乗り出たの?」
「…どうしたんだ、突然?」
ルアンは素気なく返答して、ベルはそのまま質問を続ける。
「いや、だって…。あの時リリやチャンドラさんに聞くもんだと思っていたけど、よくよく考えたらその二人だけじゃ、流石に心許ないと思って…」
「……」
「い、嫌、ごめん! 何となくそう思っちゃっただけで…。ルアンの善良にケチを付けるようなもんだし。理由がなくともそれが立派だから! 僕もそれが…」
「嫌、気にしなくていいぜ。言わなかったオイラも責任があるから」
ルアンはそのままもう一つのベッドの上に横になって話を続ける。
「……なあ、ベル。オイラさ、実は一回だけ、ザニスとパーティーを組んでいたことがあるんだ」
「……え!?」
ルアンの衝撃的な暴露で、思わず目を見開いてガバッ! と、起き上がるベル。
ルアンの方を見て、開いた口が塞がっていない。
「言ったろ、サポーター業は大変だって。その頃は【ファミリア】も多忙だったし、どこかのパーティーに入れなければ、ダンジョンに行けないから。稼ぐためには外の【ファミリア】のグループに入らないと」
「それが【ソーマ・ファミリア】なんだ…」
今のリリのように、他の派閥メンバーとダンジョンに潜っていたルアン。
そして、それが一回で辞めたというのは…。
「ま、案の定稼いだ金の分配の時に揉めてな。金は貰えなかったから、オイラはすぐに抜けたってわけ」
「そうだったんだ…」
「だから今回、オイラは負けたくないんだ。小人族っていうだけで馬鹿にされるあの【ファミリア】には特に」
パーティーを組んで、一番失敗した所という事も付け加えて。
これって、もしかしたらその【ソーマ・ファミリア】に所属しているリリはもっとひどい事されているんじゃ…。
僕は昼間に会ったリリの事を思い出す。
でも、急にあそこまで変貌するかな…?
「ま、そういうわけだ。だから今回の『戦争遊戯』、絶対に勝とうぜ」
「うん、そうだね…」
「……どうしたんだベル?」
「いや、ルアンが話してくれたし、僕も話さないといけないと思って…」
「何の事だよ?」
ルアンがベルの方に顔を向ける。
ベルもまた、ルアンと同様に自分の話を暴露した。
「【アポロン・ファミリア】に入る前、色んな所に入団申し込みをしていたでしょ」
「ああ、いっぱい断られたって。それが一体…」
「実は僕…、その時に【ソーマ・ファミリア】の所にも行っていたんだ」
「…はぁ!? そうなのかよ!?」
思わずベットから起き上がりそうになったルアン。
先程のベル同様に、開いた口が塞がらない。
「な、なあ、聞いちゃあれだと思うんだけどさ……どうだったんだ、その時?」
「うん、断られた。しかも、丁度その時対応してきたチャンドラさんに」
「え、あいつにか!? ……いや、多分それは、あいつなりの優しさだとオイラは思うぜ」
「うん。【ソーマ・ファミリア】の話を聞いていたら、そう思ってきたんだ」
主神としての仕事をしていないソーマ様。暴走する団長。そして団長の言いなりになる眷属達。簡単にソーマ様本人に会えず、ステイタス更新も出来ずにいる。ザニスさん以外でLv.が上がったのはチャンドラさんだけ。
最初断られたとき、僕が冒険者向きではないからだと思っていたけど、【ファミリア】そのものに問題があったから断ったんだろう。
ルアンは「そんな事があったんだ…!」と驚いているが、ベルの話はまだまだ終わらない。
「でもまだ話が続くんだ…。僕、そこから離れた後、後ろから【ソーマ・ファミリア】の人達に後をつけられていたんだ。僕自身気づかなかったけど」
「…は? 何でベルの後を?」
「多分腹いせだと思う。殴られて、お金まで奪われちゃって…」
「……ひでぇな」
ベルの話を聞いたルアンは、同情する。
「その後、宿に戻ったら受付のおじさんに傷の手当てをしてもらって…。めげずに他の【ファミリア】の所にも行ったんだ。さらにそこから惨敗しまくったけど」
「…やっぱりお前も大変だったんだな」
ベルの話を聞いたルアンは、そのまま起き上がり、励ました。
「こんな暗い話を聞いてちゃあ、満足して寝れないな!」
「ご、ごめん。そうだよね」
「リリルカの事もある! あいつにもちゃんと前を向いてもらおうぜ!」
リリの話となり、どうやって説得させるのか考えたが、結局すぐに思いつかなかったけど。
だが、段々と暗い気持ちが薄れていく。
「勝とうぜ、ベル! あいつらに見返してやるんだ!」
「うん!」
僕とルアンは夜中、個室で意気込み合っていた。
その後、隣の部屋から静かにしろと苦情が出たけど。
怒られた後、僕らは就寝するのだった。
しかしながら、意気込みで簡単に勝てるなら、人は英雄なんか求めたりしない。
運命は、時には恐ろしい牙を見せてくるのだから。
その晩。
『シュリーム城』で色々と準備をしなければならないため、明日の朝早くから出発する。そのため、全員既に就寝していた頃。
カサンドラは夢を見ていた。
いつもの予知夢。そして、悪夢であった。
――――― 『戦争遊戯』の、『敗北』の預言。そして、『死』の宣告。
――― 傷ついた太陽の城が、泥棒の三日月によって落ちる。
――― 小人と一人の男によって翻弄され、最後は寵童が凶刃によって亡き者となる。
――― 倒れる者達の努力は報われない。
――― 動けない悲劇の預言者は決着を見れず、泣き崩れる。
――― 太陽達は全てを奪われ、光を失くして彷徨い続ける。
――― この結末を回避したくば、白き少年を犠牲にしろ。