ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか 作:七篠ロキ
この目論見は意外な形で崩れることになった。
武器を買った帰り道の話だった。
「ここら辺、やっぱ毎日にぎやかね」
「そうだな」
「……?」
蒼くなった宵闇に、数えきれない笑い声。
仕事を終えた労働者や冒険者たちが酒盛りにふけっている。
中には、いくつもの人影が道の真ん中に踊っていた。
亜人達や小人族、ドワーフやアマゾネス達が肩を組んで歌を歌い、笑いあっている。
メインストリートは、夜の顔に移っていた。
「ぎゃあああ!?」
「!?」
そんな時、酒場のお店から三人組の男たちが放り出される。
「『豊穣の女主人』の所からか…」
「大方、店員にちょっかいでも出そうとしたんじゃない?」
「え、でも放り出された方は冒険者っぽいんですけど!?」
僕は唖然としていた。もしかして、他の客からやられたのかなと考えたけど、すぐに否定される。
「『豊穣の女主人』はね。店員と店長、両方普通の冒険者より強いって聞いたことがあるわよ」
「ええっ!?」
ソンナニ!? いや、でも確かに、一瞬だけ外に出たエルフの店員の目付きが確かにただ者じゃなかった気が…。
「シルに手を出そうとしたことを一生後悔しろ」と聞こえたし。真剣も持ってたし。
「まあ、あの店に行ったことは、実はウチ、一度もないんだよね」
「ダ、ダフネちゃんも!? じ、実は私もぉ。料理もおいしいって聞いたことがあるけどぉ。」
「そういえばそうだな。実は私も行ったことがないな」
あ、あれ? これは…?
「そういえば、前にアポロン様がここを通ろうとした時、何故か「ここは通りたくなーい」って毛嫌いしてたわね」
「え、そうなのぉ?」
「ええ。最初は何か裏があるのか疑ったけど、もしかしてここの『豊穣の女主人』の店員にちょっかい出そうとして、返り討ちにあったんじゃない?」
「その可能性は高いな」
「それだったら確かにつじつまが合いますね…」
何か容易に想像出来た気がするけど、気のせいだよね。
「で、どうする? せっかくだからここで夕飯を済ます?」
「え」
「まあ、確かに。もう館の夕食会には間に合わないし、我々だけでも食べ
ますか?」
「じゃあ、それに賛成ぇ~」
「じゃ、じゃあ僕も…」
「よし、じゃあ決まりね!」
そんな感じで、僕らは『豊穣の女主人』の店に入るのであった。
「いらっしゃいませー! 何名様でしょうか!」
「4名だ」
「かしこまりましたー! お客様4名入りまーす! こちらのテーブルにどうぞ!」
鈍色髪のウェイトレスに案内させ、テーブルに座る。しかし、
「……!?」
「さて、注文を決めるか……ん、ベル、どうした?」
「い、いえ……何か、嫌な感じが」
視られてる。しかも、普通ではなく、値踏みするような視線が。初めて入った客を見るような視線では決してない。
「そう? 別に変わったところは特にないような気がするけど…」
「べ、ベル…?」
当たりを見まわしたが、特に変わったところが見つからない。
僕の勘違い…?
「あ、あの。お客様? ご注文は…?」
「あ、はい。とりあえずおすすめを人数分で」
「ご注文承りました!」
腑に落ちないけど、とりあえず注文を頼み、料理を食べることにした。
料理が来るのを待つまで、談笑すると、他の客の話が聞こえてきた。
「【アポロン・ファミリア】か。珍しいな」
「そういや、この店で見るのは初めてだな」
「おいおい、もしかしてこの店の店員にちょっかいでも出そうに来たんじゃないのか?」
「ははは、まさか。来たメンバーに女性が含まれているぜ」
「【月桂の遁走者】に【悲観者】か。あれ、あのエルフの二つ名って何だっけ?」
「ああ…あれ、確かに何だっけ?」
「そういや、それといる白髪の小僧は見た顔じゃねえな。駆け出しか?」
「ん? あれ? 俺つい最近どっかで見たことがあるぞ!?」
「え、まじで!? じゃあ、あいつも二つ名があるのか?」
「いやそうじゃなくて…どこだったか…」
「ん? あいつは確か、俺らの【ファミリア】に入団申し込みに来たガキだ!」
「っ!」
ついに、僕の事がばれてしまった!
「ベル。あまり気を留めないで。ここから先成長して、やつらに吠え面を描かせてやるのよ!」
「そうだ、まだお前の冒険はまだ始まっていないからな」
「べ、ベル。わ、私は応援するよ!」
み、皆…! そ、そうだ! 僕はもう【ファミリア】に入団できたんだ!
入団出来た理由はどうであれ、今はもう頼もしい仲間もいるしこれから何とかなる!
「なあ、今の話って…」
「ああ、確かあのガキが来た時、なんか殴られたような跡があったが、
「入団させてください」って言っててな」
「で、そんな状態のやつをお前は断ったのか」
「ああ。まあ、サポーターだったら考えてやってもいいが、冒険者と来たもんだ。あんな田舎丸出しのやつを入団させた【ファミリア】があること自体信じられねえよ」
「そんなにひどかったのか?」
「ああ、あの時のあいつの恰好、ひどいもんだったぜ。なんかはぎ取られた跡があるわ、傷つけられた跡はあるわで、ひどかったんたぜ?」
「お、おう。そ、それは、たしかに、ひどかったな」
「だろ! 身分をわきまえろって、一発ぶん殴ったけど」
「おい、お前…」
「ね、ねえ、ベル。今の話、ほんとなの?」
「……ええ、本当です」
正直、すぐに出るべきだった。しかし、料理の値段が少し高かったこともあって、頼んだ手前、店を飛び出す自信がなかった。仲間にも申し訳ないし…。
そんなことを考えていると、僕の話題をしていた冒険者たちが「飯がまずくなるニャー!」「他の客の迷惑なんだよ!」って黒色の猫人や薄茶色の髪をした女人の店員達に殴られたり蹴られたりとしばかれていて……って、えええ!?
「よくやった! クロエさん! ルノアさん!」
「正直胸がスカッとした!」
「料理の追加の注文を!」
「え、えええ!?」
な、何か周りの客から称賛されている……!?
「ショタの平和は守るニャ!!」って聞こえた気がするんですけど!?
「…ウチらがやる前に終わっちゃったね」
「ま、おかげさまで胸がスカッとしたが」
「あ、もう一発重いのが入った」
「よし、そこだ! 目を狙え!」
「……」
い、いつの間にか戦闘態勢に入っていた…!?
でも、店員達が先に片づけたから、武器をしまっていたけど…。というか、リッソスさん、やる気満々だったし。応援しているし。
「あ、ちょ、丁度料理が来たみたい!」
「よし、じゃあ早速食べますか!」
「ええ! あ、あと、酒も追加で!」
「あ、あはは……」
ぼ、僕の決意は一体…。
『豊穣の女主人』で夕食を済ませ、館に戻っていると、ダフネさんから話があった。
「ベル、明日の事なんだが、早速ダンジョンに入ろうと思うの。実戦を積んだ方が何かと経験値も早く貯まるし」
「はい、わかりました」
「あ、あと。何でも一人で抱え込まないこと。ウチらはもう同じ【ファミリア】なんだから。悩んでいる時は必ず相談すること!」
「……はい! ありがとうございます!」
そうして、僕らは【アポロン・ファミリア】の館の中に帰って行く。
「遅いぞ、皆! 心配したじゃないか!」
「あ、アポロン様」
「全く、早く風呂でも済ましなさい。特にベルきゅ、じゃない、ベル君」
「え、あ、はい」
「安心しろ、ベルよ。ダフネやヒュアキントスがこの館にいる限り、お前の貞操は守られる……はずだ」
いや、何の話!?
「今は私がアポロン様を見張るから早く風呂に入れ」
「え、あ、はい。リッソスさん、ありがとうございます…?」
こうして僕は一人風呂を済ませ、同居人であるルアンと談笑した後、就寝することになった。
そして夜中にアポロン様の悲鳴が聞こえた気がするけど、ぼくはそのままベットに横になった。
そして僕はついに明日、ダンジョンに踏み入れることになった!
…なんか最近、ヒュアキントスやルアンよりもリッソスさんが結構前に出ている気がする。
ていうか、このベル君、他の冒険者達にいじめられすぎの気が…
予想以上にひどい目に合わせているので、マジで申し訳ございませんでした(土下座)
後々、こういうやつらに報復が来るので、お楽しみにして下さい。
アポロン「わ、私の扱いにも!」
ダフネ「貞操を奪おうとする変態に扱いの悪さなどあるか!」