ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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アポロン「ふっふっふ。ベルきゅんの教育係を3人にすれば、いくら何でもダンジョン内は大丈夫のはず! そして、恐らくベルきゅんはプレッシャーに非常に弱いと思うし、館に帰還して戻って疲れ切ったところを襲えばそのまま…」
ダフネ「(深く考えた私が馬鹿だった)させると思う?」

ベル「もっと強くなって、技を磨かないと…!」

…アポロンの考えは浅はかだった…。


怪物祭
ヒロイン登場


 拝啓 おじいちゃんへ

 

 

 

 こんにちは。ベル・クラネルです。天国で元気にしていますか?

 

 僕は無事に【ファミリア】に入ることが出来ました。

 

 そして、おじいちゃんが言っていた通り、オラリオには何でもありました。

 

 うまく立ち回れば、富や名声を手に入れるけど、そこに足を踏み入れた者は否応なく時代のうねりに飲まれていく所でした。

 

 でも、子供から成長して、英雄の冒険譚にあこがれる男が考えそうなこと。

 

 可愛い女の子と仲良くしたい。異種族の女性と交流したい。

 

 ダンジョンに出会いを、訂正、ハーレムを求めるのは間違っているだろうか?

 

 おじいちゃん、僕は――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が間違っていました!

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「「「「ほぁあああああああああああああっ!?」」」」

 

 

 現在地、ダンジョン5階層。

 

 僕たちは今、ミノタウロスに追われています!

 

 

 

 

 

 

 

 始まりはこうだった。

 

 まず、普段通り僕のアドバイザーであるミィシャさんの座学を学び、その後ダンジョンに行こうとする。だけど、僕の教育係の一人であるリッソスさんは用事があるらしくて、遅れて来ると事前に連絡をもらった。

 

 さらに、この時すでにダンジョンに足を踏み入ってから2週間が経っている。ミィシャさんからも「教育係2人以上いれば、5階層まで進出してもよし!」と承諾をもらっていた。

 

 また、ルアンも「5階層まで行こうぜ!!」といい、ダフネさんも容認していたけど、カサンドラさんは「夢のお告げで、地面から這い出た闘牛に襲われる夢を見たの~」と言い、非常に反対していた。

 

 しかし、「5階層にミノタウロスが出現するわけねぇだろ!」というルアンの一言が決定打となり、しぶしぶ承諾してくれる。

 

 いや、僕もミィシャさんとの座学の効果なのか、ちょっと流石に5階層にはいないんじゃ…と思っていた。

 

 こうして、僕たちは5階層に進出する事となった。

 

 ただ油断があったのは、ダフネさんの装備が最低限しかなかった事。

 

 そして、普段中層にいるはずの『ミノタウロス』とまさかの遭遇を果たし、今に至る!

 

 

 

 

 

「な、なんで中層にいるはずの『ミノタウロス』が5階層にいるの~~ぉっ!?」

 

「つべこべ言わずに走るのよカサンドラっ!!」

 

「うわぁああああああっ!?」

 

「ひぃいいいいいいいっ!?」

 

 

 少し前までいかにも青臭い考えをしていた僕は、いや僕らは今、死にかけている。

 

 駆け出し冒険者のLv.1の僕やサポーターのルアンの攻撃では一切ダメージが与えられない。

 

 また、Lv.2のカサンドラさんも回復など後方支援がメインであり、有効打は期待できず、さらに、ダフネさんも装備の関係上連携があったとしてもあまり攻撃が通らないらしい。

 

 詰んだ。追い付かれた瞬間、間違いなく終わる。

 

 日々数えきれない死者を出すダンジョンに出会いなんかを求めた時点で、僕はどうかしていたんだ。

 

 分かれ道が見え、スキル【鉛矢受難】が発動していたダフネさんを先頭に、左に行こうとする。

 

 しかし、その直前で背後から『ミノタウロス』が持っていた天然武器を投げつけられてしまった。

 

 

『ヴゥムゥン!!』

 

「きゃああ!?」

 

「うわあっ!?」

 

「カ、カサンドラさん!? ルアン!?」

 

 

 全員当たりはしなかったものの、土の地面を砕き、カサンドラさんの足場を巻き込み、また体格の小さいルアンがバランスを崩してしまう。二人ともこけて、僕らと離れてしまう。

 

 しかも、よりにもよって、行き止まりである右の方向に。

 

 

『フーッ、フーッ!』

 

「ひ、ひぃいいいいっ!?」

 

「た、助けて…!?」

 

「こ、この! こっちだ!」

 

 

 僕は二人を逃がすため、短刀を『ミノタウロス』に投げつけた。狙いとしては、こちらに誘き寄せて囮になるためである。

 

 しかし、

 

 

『ヴォン!』

 

 

 と、簡単に弾き飛ばされ、僕の事を完全にスルーされてしまう。

 

 

「こぉんの、どうよっ!」

 

 

 今度はダフネさんが『ミノタウロス』に細剣で切りつけようとする。Lv.2の身体能力を持ってスピードが増し、胴体に命中した。

 

 

「……っ!?」

 

『……?』

 

 

 所が、傷一つつけるどころか、細剣の方が折れてしまった。

 

 『ミノタウロス』は疑問符を浮かべているみたいだけど、一応足止めには成功している。

 

 ダフネさんはすぐに予備の短刀の方に持ち替えたけど、冷や汗を流している。僕も急いで投げつけた短刀を拾い、どうにかしてまだ道があるこちら側に誘き寄せるかと考えた。

 

 そして、『ミノタウロス』は分かれ道中央に投げつけた天然武器を再び手中に収めて―――――。

 

 

 

 

 

 

 『ミノタウロス』に近づいていた僕に、襲いかかってきた。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

僕は何とか回避しようとしたが、脇腹に天然武器がかすってしまった。

 

 

「べ、ベル!?」

 

「だ、大丈夫! まだ何とか動ける!」

 

 

 とは言っても、すごく痛い。

 

 痛みをこらえて声が挙げたけど、余計に痛くなった。

 

 脇腹を抑えながらどうにかこの状況を抜け出さないと考えていると、ルアンとカサンドラさんが僕らがここに来た道に逃げ込めている。

 

 どうやらミノタウロスが僕のいた方向に向かったから、逆にルアンとカサンドラさんが行き止まりの道から脱出できたみたいだった。

 

 それを確認した僕とダフネさんは逃げ出し、『ミノタウロス』も僕らの方に追って来る。

 

 ルアンとカサンドラさんはすぐに救援を呼びにそこから離れ、ダンジョンから脱出へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

「う、ぐぐぐ…っ!!」

 

「ちょっ、ベル、本当に大丈夫なの!?」

 

 

 逃げている途中、ダフネさんが僕の状態を心配してきた。

 

 傷から流れ出る血が、『ミノタウロス』に僕らが逃げた方向を教えてしまう。そのため止血しようとしているけど、上手くできない。

 

 どうにかしようと考えたとき、再び『ミノタウロス』が持っていた天然武器を投げつけられ、足場に着弾した。

 

 

「うわぁっ!?」

 

「ッ!? まずい!」

 

 

 今度は僕がバランスを崩し、こけてしまった。

 

 ダフネさんがすぐに僕を抱えようとするも、『ミノタウロス』がすぐさま僕たちに追いつく。

 

 そして、僕のことで気を取られていたダフネさんに拳をふるった。

 

 防御も間に合わず、顔を蒼白させている。だけど、それが当たる寸前で僕が力いっぱい彼女の腕を引っ張り、ギリギリで躱させた。

 

 しかし、躱せたとしてもそこまで。

 

 今度は蹴りを見舞われ、僕たちはダンジョンの壁に叩き付けられた。

 

 

「がはぁ…っ!」

 

「が…っ!」

 

『ヴォオオオォ…ッ!』

 

 

今度は左腕が折られる。それでもどうにか意識を手放さず、僕らの状況を一瞬確認すると、ダフネさんの片足が折れていた。また、僕が身に着けていた鎧も全損している。

 

 絶体絶命だ。もう僕らでは、この状況をひっくり返せない。

 

 さらに、拾われ、それを僕らに向けて振りかざしている。

 

 近づけられ、それが振り下ろされる前に、僕はどうにかダフネさんごと身を投げた。

 

 後ろで爆音が聞こえ、その強烈な一撃を躱してみせる。

 

 それでも、ここが限界。

 

 すぐさま立ち上がってダフネさんを抱えて逃げようとする僕を、『ミノタウロス』は片手で捕まえた。

 

 

「う、あ、ああ…」

 

 

 振り解けず、簡単に持ち上げられる。暴れても、全く意味がない。

 

 ここが僕の死に場所? 墓場?

 

 走馬灯が過ぎろうと、頭が働いてくる。

 

 顔を近づけられ、『ミノタウロス』の目に恐怖と絶望をしている僕の顔が映った。

 

 天然武器を振りあげ、僕に打ち下ろそうとしている。

 

 

『ブォオオオ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ブォオ!?』

 

 

その時、『ミノタウロス』の体に重い一撃が入る。

 

至近距離でそれを見た僕は、その返り血を顔から浴びた。

 

 その攻撃により、『ミノタウロス』の手から解放されて尻餅をつく。何があったのか見ると、そこに立っていたのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさかの、ヒュアキントスさんだった。

 

 

「全く、Lv.2が二人もいるのに、何て様なんだ…」

 

『ブ、ブォオオオオオ!!』

 

「動きが重いぞ! 牛風情がっ!!」

 

 

そう言いながら、波状剣を斬り上げる。

 

 『ミノタウロス』の肉体を簡単に斬り、またそこから連続攻撃を浴びせた。

 

 『ミノタウロス』はたまらず距離を取り、突進の構えを取る。

 

 

「その構えはもう見飽きた。すぐに終わらせてやる!」

 

 

そして『ミノタウロス』は、ヒュアキントスさんに向けて突進した。それを横に避けてきれいに躱し、がら空きとなった背中に向け波状剣を突き刺した。

 

 魔石ごと貫かれた『ミノタウロス』は灰となって消滅した。

 

 

 

 

「あ、あんなあっさりと…!?」

 

「ベル! カサンドラ! 大丈夫!?」

 

「おい! お前たち! 大丈夫かっ!?」

 

 

唖然としている僕の側に、カサンドラさんやルアンが到着した。カサンドラさんが魔法で、ルアンがポーションで傷を癒し、体の痛みが引いた。

 

 

「な、何とか、おかげさまで助かった…」

 

「まあ、今回、ダンジョンに対して楽観視していたウチの完全なミスだ。あんたらは気にしなくていいよ」

 

 

 僕と同じく傷を癒したダフネさんは責任を背負い込む。「いや、流石にそれは」と、責任の取り合いになりそうな所で。

 

 

「全く、兎風情が。こんなに軟弱とはな。一体何を教わったんだ?」

 

 

 そこで、ヒュアキントスさんが来た。

 

 かなり棘がある言い方だけど、流石に慣れてきた。

 

 

「…そういえば、ヒュアキントスさんはどうしてここに…?」

 

「リッソスから聞いていないのか? やつが来るまでの代わりに俺が貴様の教育係をするよう頼まれたのだ」

 

「それにしちゃあ、助けに来るの遅すぎじゃない、団長さん?」

 

「まさかLv.2にもなったお前がここまで軟弱だったとは思わなかったからだ」

 

 

 ん? あれ…今の言葉…まさか…!

 

 

「あ、あの! 一体、いつからこの状況に気が付いていたのですか?」

 

「もちろん、ルアンとカサンドラが5階層で私を見つけた時にだ」

 

「あ、さすがに最初からじゃなかったのね…」

 

「遠くで見つけた時、お前が取り乱して兎を助けようとした時、逆に兎に救われるところからは見たな。しかも二度も」

 

「ねぇ、忘れて! そして見つけた瞬間すぐにウチらを助けて!」

 

「これでも遠くで見つけてから全速力で来たんだがな」

 

「あ、あはは…」

 

 

 なにがどうあれ、僕たちは『ミノタウロス』の強襲から生還することが出来た。

 

 ダンジョンに出会いを求めるのは必ずしも間違いというわけじゃなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 だけど、今回の件はまだ片付いていない。

 

 

「そういえば、どうして5階層に『ミノタウロス』がいたのだ? 貴様ら、何か知らないのか?」

 

「いや、全く…」

 

 

 見当が付かない…。ま、まさか…

 

 

「も、もしかして、ダンジョン自体にイ、イレギュラーがっ!?」

 

「いや、その可能性も考えたが…。結局私が見たのは、貴前らを見つけた時のあの1体のみだ」

 

 

 簡単に否定され、もう少し現実的な事を考えようとする。

 

 じゃあ、どうして…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、もう、終わっているの…?」

 

「おい、アイズ! そっちは見つかったのか?」

 

「?」

 

 

 話し声が聞こえ振り向くと、そこには雰囲気からして、第一級冒険者らしき人物が立っていた。

 

 

「え、おい、あれって…っ!」

 

「ロ、【ロキ・ファミリア】…!?」

 

「え、ええええ!?」

 

 

 まさかの超有名な【ファミリア】の幹部たちと出会うことになった!

 

…あと、返り血を拭きたいから、誰かタオルを…。

 




 早速本文の話をさせていただきます。

 ベル君が冒険者になって2週間。
 遂にヒロインが登場しました。
 え、どれがヒロインだって?
 まあ、どれをヒロインとして見立てるかは、人それぞれですので。



 あ、次回は修羅場になりますのであらかじめご了承ください。
 (ヒュアキントスとベートって絶対仲悪いし)
 
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