ベル君が【アポロン・ファミリア】に入団するのは間違っているだろうか   作:七篠ロキ

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アポロン「あれ、なぜか胃が痛い…」





今回の話から、後書きは基本的に空欄とさせていただきます。予めご了承ください。

 後書きが書かれるようなことがあるのは、
 アンケート
 前書きの話のオチ
 新章予告

 ぐらいだと考えてください。


【ロキ・ファミリア】

 『ミノタウロス』に襲われ、危機一髪だったところ、ヒュアキントスさんの参戦でどうにか切り抜けたけど、その後【ロキ・ファミリア】の幹部らしき人物が現れた。

 

 

「け、【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインに、【凶狼】、ベート・ローガ!?」

 

「二人ともLv.5の第一級冒険者じゃねえか!?」

 

「【ロキ・ファミリア】の幹部二人がなぜここに…!? 遠征中じゃなかったの!?」

 

 

 ま、まさか、世界の中心であるオラリオの中でも最前線を誇る一握りの内に入る二人が、ど、どうして5階層に…!?

 

 もしかして、『ミノタウロス』がダンジョンの5階層に現れたことと関係があるのかな…?

 

 

「あぁん? アイズ、どうしたぁ?」

 

「あ、うん。私たちが討伐しそこねた『ミノタウロス』は、あの人たちが倒したみたい…」

 

「倒しただぁ?」

 

 

 そう言うと、ガラの悪そうな狼人の冒険者は、僕たちを見まわす。

 

 

「…はっ! Lv.3が一人、Lv.2が二人、Lv.1が二人ってところか! それにしちゃ、Lv.2の短髪のやつと、返り血でトマトっぽくなっているLv.1のトマト野郎が妙にボロボロなのは気になるなぁ!」

 

「あ、あのっ!! ど、どうして『ミノタウロス』が5階層にいたのか、知っているのですか!?」

 

「あぁ? なんだ? トマト野郎?」

 

「…っ」

 

 

 質問してきた僕に、睨み付けてくる。

 

 こ、怖い…!?

 

 ほかのみんなもその眼力で委縮していると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ一人だけ、その狼人に反論してきた。

 

 

「ふん…がさつな。やはり【ロキ・ファミリア】は粗雑と見える。飼い犬の首に首輪をつけらえないとは」

 

「あぁ? 蹴り殺すぞ、変態野郎?」

 

 

 こんな中で、あのヒュアキントスさんだけは、鼻を鳴らす。

 

 億劫そうに狼人は顔を向け、ヒュアキントスさんと狼人の視線が交差する。

 

 張り詰める場の雰囲気。

 

 しばし彼らが見据え合っていて、狼人と同じ幹部の金髪の女人は少し戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、デットヒートが始まってしまった。

 

 

「ふん、そもそもこの惨状は、『ミノタウロス』を討伐しそこねた貴様らの落ち度が原因だ。」

 

「はっ! 仲間が傷ついたから責任とれってか! くくくっ、それは滑稽だな! 冒険者が命張ってる職業っつーのは承知のはずだぜ?」

 

「…何が言いたい?」

 

「わからねぇのか? それはてめえらの失敗をてめえらで誤魔化すための、ただの自己満足だろ? そんな救えねえ奴を擁護して何になるってんだ?」

 

「その失敗の原因となった貴様らに責任の追及があるぞ?」

 

「はっ、よくゆうぜ! ダンジョンっつーのは『イレギュラー』が存在している! そういうのは、ランクアップを果たした奴ほど身に染みているはずだぜ?」

 

「ふっ…その『イレギュラー』にうまく対処できていなかったのが、貴様らの現状だと思えるぞ?」

 

「はっ、周りをよく見ろ! 俺達の体には『ミノタウロス』からの傷を一つついちゃいねぇ。対して、おめーのお仲間さんたちはお前を除いて、魔法やポーションで傷をふさいだとしても、精神的にボロボロ! どう考えても今回の『イレギュラー』に対処できていなかったのはてめーらの方じゃねえか」

 

「ふん。『イレギュラー』に対処することでも、二次被害をいかに出さないかでも非常に重要な事柄だと思えるぞ?」

 

「自分自身は何もできず、泣き喚くことしかできない冒険者にか? 胸糞悪いぜ。ゴミをゴミといって何が悪い」

 

「それは、まさか自分らの手からこのような被害を出して、現実逃避するために言っているようなものだぞ」

 

「そういうふうに言い訳して、目の前で震え上がるだけの、冒険者と名乗っている情け野郎達が、俺たちの品位を下がるっていうのか? 勘弁してほしいぜ」

 

「そういうふうに喚きだすしか能のない飼い犬風情に、社会の理を理解しろといっても意味のないことだったな」

 

「はっ、事実を言われても目を背けて自己正当化している変態野郎に言っても、意味はねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デットヒートが始まってから10分が経過した。

 

 場の緊張感は既にピークに達しかけている。

 

 

(や、ヤバい…!!! もう二人とも限界に近い…!! お互い相手の顔面に殴ろうとしている…!!)

 

(い、いつ爆発してもおかしくない!! 下手したら、何かの音一つで戦いが始まってしまう…!?)

 

(しかも、第二級冒険者以上の戦いに巻き込まれては、僕たちはただでは済まない…!!)

 

(と、というか、下手したら、【ロキ・ファミリア】に喧嘩を売ったとみなされ、後々【ファミリア】総出で襲い掛かってくるかも…!?)

 

 

 僕たちはそれぞれの思いを抱きながら、誰かどうにかしてくれとその場を見守っていた。

 

ここはダンジョンのはずだ。まだ僕たちにモンスターが襲ってこないのは、奇跡に近い。

 

僕たちは今この場にいる中で、一番場を治められそうな金髪の女人に視線を送ると、女性の人は全くこっちに気づいておらず、どうしようかとオロオロしている。

 

 も、もはや僕たちの命運はここまでか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、ダメだ。折角『ミノタウロス』から生き延びたのに、こんな形で散るなんて。

 

 天国でおじいちゃんに会ったら、「ベルよ、男の浪漫はどうした?」と、物凄く残念な目で僕を見るだろう。

 

 折角の再会にそんな形で水を差されるのはダメだ…!

 

 僕はルアンたちに視線を向けると、ルアン達もこの状況をどうするかと目配せをしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな僕らに、助け船が来た。それに一番気が付いたのは、ルアンだった。

 

 

「……っ、う、あ…っ!?」

 

「アイズ、ベート。戻ってくるのが遅いと思ったら、何をしている?」

 

 

 そこには、ルアンと同じ小人族で、ピエロのシンボルマークをつけた冒険者が立っていた。

 

 

「ぶ、ぶぶ、【勇者】っ、フィ、フィン・ディムナまで…!? Lv.6の、一族のあこがれが今、目の前に…っ! オ、オイラ、遂に目がおかしくなったのか…っ!?」

 

「……よう、フィン」

 

「フィン……」

 

「全く、他派閥間との揉めあいを出来るだけ避けるように対処しろと言ったのに…。聞けなかったのか? 特にベート」

 

「はっ、相手様がこっちに喧嘩を吹っかけてきたから、俺は優しく対処しようとしたんだぜ?」

 

 

 ぜ、絶対嘘だ。今でも殴り飛ばす気満々だったぞ、あの狼人!?

 

 小人族の冒険者はそれを聞くと、あきれたのか、今度はヒュアキントスさんに視線を移しす。

 

 

「……はぁ。ひとまず僕は【ロキ・ファミリア】のリーダー、フィン・ディムナだ。」

 

「フン…。【アポロン・ファミリア】のリーダー、ヒュアキントス・クリオだ。」

 

「見た所、とりあえず君たちが『ミノタウロス』を倒したと思うけど、違うかな?」

 

「ほお。貴様はあの飼い犬とは違い、まだ礼儀を持っているようだな」

 

 

 ヒュ、ヒュアキントスさん。お願いだから、【ロキ・ファミリア】をこれ以上怒らせるようなことは言わないで欲しい。

 

 それを聞いた【ロキ・ファミリア】のリーダーのフィンさんは、鮮やかにいわれた言葉をスルーした。

 

 

「どうやら、ベートが非常に失礼なことを言ったみたいだね。」

 

「俺のせいかよ!」

 

「ベートさん、今は黙ってて下さい」

 

「ア、アイズまで…」

 

「…ひとまず『ミノタウロス』の件なんだけど、遠征の帰りに、17階層で『ミノタウロス』の大群に遭遇しちゃってね。返り討ちにしたんだけど、そのうちの何体か逃げ出しちゃって、上の階層に登って行ってしまったんだ。」

 

「…それで、その最後の一体が、5階層まで逃げ出したということか」

 

「そういうこと。迷惑をかけて申し訳なかったね」

 

「…ふん。最初からそう説明すれば、無駄な時間を過ごせずに済んだ。あの飼い犬に鎖でも繋いで置け」

 

 

 そう言い、ヒュアキントスさんは身を翻し、僕たちに「行くぞ」と声をかけ、その場を立ち去った。

 

 僕たちは、はっとして、急いで荷物をまとめ、フィンさんたちに頭を下げ、その場を立ち去ろうとしする。

 

 ただ…、

 

 

「……?」

 

「「……」」

 

 

 フィンさんとアイズさんが僕らの状態を見て、何か少し考えことをしている。

 

 最初は何か用があったのかなと思った。

 

 けれど、僕の今の状態が『ミノタウロス』の返り血で頭から腹の所まで真っ赤であったことを確認して、皆もそれに気づき、タオルを出してもらい、急いで拭いて、その場を去った。

 

 僕たちは【ロキ・ファミリア】との遺恨が残ってしまったけれど、最強派閥との全面戦争を回避し、修羅場を切り抜けることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ティオナさん! アイズさんが戻ってきました!」

 

「あ、ほんとだ。おーい、アイズ~! 『ミノタウロス』、どうなったの?」

 

「ティオナ…。結局、最後の一体は、他の冒険者が倒しちゃったみたい…」

 

「そうなんだ。ベートの鼻も、今一使えないね。」

 

「んだとゴラァ!!」

 

「…なんかあいつ、機嫌すごく悪くない?」

 

「どうやら、僕が様子を見に来るまで、【アポロン・ファミリア】と揉め事を起こしていたみたいでね。」

 

「団長の命令も守れないなんて…! あの狼…!」

 

「落ち着けティオネ。あの様子だと、フィンの命令の「手を出すな」というものは、守っていたようだぞ?」

 

「片方だけじゃ、意味ありません!」

 

「だから少し落ち着け。ベートもじゃ。どうやら、少し長く、言い合っていたようじゃな。」

 

「けっ! 折角の遠征の帰りだっつうのに、胸糞悪くなっちまった!」

 

「宴会の前までに機嫌を直さないと、ベートの分だけ、酒がなくなるぞ?」

 

「おい、ジジイ。脅すな」

 

「……」

 

(ベートと言い合っていたチーム……状況から考えて、Lv.2とLv.1の二人一組で囮役と救援要請役に分けたのか…。そして、救援要請されたLv.3が間一髪助けたってところか。ただ、囮役にされたLv.1の少年…。けがをした箇所や状態、さらに床に血を流していた所や落ちていた天然武器の状態から、Lv. の差をもろともせずに、かなり踏ん張っていたことがうかがえる。もしそうだとすると、それはまるで…)

 

「…? どうしたの、フィン?」

 

「ん、あ、いや、何でもないよ、アイズ」

 

「とにかく、早くダンジョンから出て、遠征で得た情報を、ロキに伝えないとな」

 

「ああ、そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンから出て、【ディアンケヒト・ファミリア】にけがの治療をしてもらい、すぐに全快になった。

 

 そして、その帰り道の事。

 

 僕たちは『ミノタウロス』に襲われるまでに手に入れた魔石やドロップアイテムを換金しにギルド本部に寄ることになった。

 

 僕もまた、シャワーを浴びたくて、ギルド本部から借りて、シャワーを浴びた。

 

 ただ、更衣室に事情を聞いたミィシャさんが慌てて飛び込んできて、お互い悲鳴を上げるという事態が発展してしまったけれど…。

 

 このことで、「私の同僚で、友達で、教えることも上手くて、説教のプロだ」とミィシャさんから聞いていたエイナさんという、眼鏡をかけたエルフの女性に二人とも説教されることになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 説教から解放され、談話室でミィシャさんから話をすることになった僕は、より詳しい事情が求められた。

 

 恐らく、【ロキ・ファミリア】もまたあとから事情の説明をすると思うけれど、今僕たちが分かっていることを話した。

 

 それを聞いたミィシャさんは、「うう、ごめんよ~」と言いながら、報告書を書いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、【アポロン・ファミリア】のホームである館に帰ってきた僕たちは、ヒュアキントスさんを除いて、へとへとだった。

 

 『ミノタウロス』からの逃避行でも十分体力が削られたのに、そこからヒュアキントスさんとベートさんの言い合いによる修羅場も間近に見せられ、精神的にだいぶ応えていた。

 

 リッソスさんにも事情を話して、今日のダンジョン探索は打ち切りになったことを伝え、夕飯を食べる時まで寝ようと考えていたのは、僕だけじゃなく、他の三人も同じ考えだった。

 

 そう思って、それぞれ部屋に戻ろうとすると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに、アポロン様がやってきた。

 

 

「やあやあ、君たち! 今日は随分と早いおかえりではないか! ヒュアキントス以外、大変疲れているように見えるけど、ダンジョンで何かあったのかな?」

 

「ア、アポロン様…」

 

「悪いけど、今あんたにツッコミを入れる余裕もないんだから」

 

「む、そうか…。じゃなくて、君達! 6日後、予定空いているかい!?」

 

「当然、空いています」

 

「え、はい。今の所は…」

 

「オイラも大丈夫だ」

 

「ウチも」

 

「わ、私も…」

 

 

 な、何だろう…?

 

 

「フハハハハハハハッ!! 実は、その日は『怪物祭』をやる日でな! 我が【ファミリア】総出で見に行こうと考えているのだ!」

 

 

も、『怪物祭』? き、聞いたことない…。

 

 

「ああ…。もうその時期かぁ」

 

「あれ、実際にやってみろって言われても、今の実力じゃあ無理だけどね」

 

「う、うん。そうだよねぇ…」

 

「おい、貴様ら。アポロン様が我々の【ファミリア】のために考案したのだ。欠席する奴は許さん」

 

 

 ヒュ、ヒュアキントスさん、すごい気合が入っている…。

 

 

「あ、あの…。『怪物祭』ってなんですか?」

 

「は? 貴様、何を言って…そうか、そういえば、オラリオに来たのは2週間前だったな」

 

「ベル。『怪物祭』っていうのは、年に一回開かれる【ガネーシャ・ファミリア】主催の祭りでね。闘技場を丸一日占領して、ダンジョンから持ってきたモンスターを調教するの」

 

「え、ちょ、調教!?」

 

 

え、それって、モンスターを飼いならすって意味なの? あの凶暴なモンスターを?

 

 

「調教という技術自体は確立されているからな。素質にもよるが、モンスターを従順させることができる」

 

「まあ、普通は地上のモンスターを手懐ける程度なんだけど、【ガネーシャ・ファミリア】の実力は半端じゃねーから、ダンジョン育ちのモンスター相手でも成功しちまうんだよな」

 

 

 【ガネーシャ・ファミリア】の名前は僕でも聞いたことがある。構成員が多く、僕が最初オラリオに来た時に、荷物検査をしたハシャーナさんもその一人だ。

 

 

「えっと、つまり、モンスターが大人しくさせる所を見世物にしているってこと?」

 

「そういうこと」

 

「まあ、サーカスみたいなものだ! それに一年に一回しかやらないし、中々貴重だからね!」

 

「な、長い時を生きられるアポロン様がそれを言っちゃうと、有難みが薄くなっちぃますけど…」

 

「はは…」

 

「とにかく、6日後の朝、この館のロビーに集合! そしてそこから闘技場にみんなで行くぞ!」

 

「かしこまりました、アポロン様。まだ伝えてない方にも、私めが教え申し上げます」

 

「うむ、感謝する。あ、後、ルアン。3日後の夕飯なんだが、私の分は作らなくていい」

 

「えっ、またどうして…」

 

「その日は、ガネーシャ主催の神のみ参加できるパーティがあるらしくてね。私はそこに行って来るよ」

 

「はい、わかりました」

 

「うむ! では、皆の衆、忘れるでないぞ!」

 

 

 そう言い、アポロン様は館の中庭に出て、他の人にも教える。

 

 ヒュアキントスさんもアポロン様に付き添い、中庭に出て、6日後の事を伝えに行く。

 

 

「とりあえず、リッソスも6日後の事は知らないと思うから、今日のダンジョン探索は打ち切りになったことを伝えるついでに、このことも教えるか」

 

「そうですね。その後、僕は一休みします。」

 

「私も~」

 

「オイラは、3日後のことを同じ日の当番のやつらに伝えに行くよ」

 

 

 そんな感じで、僕たちはルアンと別れ、リッソスさんに事情を伝え、部屋に戻り、一休みすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は部屋に戻り、一応寝間着に着替えて、ベットに横になった。

 

 (とりあえず、明日はミィシャさんの座学を受けた後、装備品をまた買わないと)

 

 そう考え、僕は眠りについた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ギィ……、バタン……………

 

 

 

 

 

 

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