君は初めて捕まえたポケモンを覚えているか? 作:がんばリーリエ
そもそも小学生とか分かるのだろうか?
レジロック レジアイス レジスチルというポケモンをご存知だろうか。
俺は点字ポケモンと呼んでいるが、ゲームしていた当時いきなり点字が出てくるもんだから「点字とか分かるわけねぇだろ!」とゲームに向かってつっこんでいた記憶がある。
読んだら読んだで、何分もじっとさせられたりそらをとぶを洞窟内でさせられたりと正直そんなんする必要あった?と言わざるをえないイベントだった気がする。
てっきり俺は次回作の伏線でも書いてあるのかなって思ってたんだが、そういう事も一切なかった。
まぁエンテイ ライコウ スイクンみたいに逃げたりしないだけマシなのかもしれないが。
「ヒセキさん、これなんて書いてあるんですか?」
「右に2歩、下に2歩のところでかいりきって書いてあるな」
「ほへー、こんな文字が読めるなんてヒセキさん凄いですね!」
そして何故かハルカちゃんが付いてきている。
あのポケモンバトルが終わった後に、別れるつもりであったのだが今もこうして付いてきている。
理由はそうだな。
「で、そろそろ考え直してくれましたか?」
「.......まだそれ続いてるのか?」
「当たり前じゃないですか!私を弟子にしてくれるまで離れるつもりはありませんから」
こんな感じである。
鬱陶しいまではいかないが、それでも女の子と2人というのは精神衛生上宜しくない。
周りからの目も少々痛いし、どうにか出来ないものかと。
肩に止まっているバタフリーがやれやれ、と言いたげに俺を見ている。
いやお前も俺が目立ってる要因の1つだからな?
この辺りじゃバタフリーは珍しいポケモンだから仕方がないっちゃ仕方がないが。
何せこれからこの自覚のないハルカちゃんは、巻き込まれはしないが伝説ポケモンを止める為に動く主人公の前に現れ意味深な言葉だけ残して何処かに行くという役目がある。
正直それは割とどうでもいい。
ハルカちゃんが主人公との違いや差に思う所があるような事を匂わせるシーンだが重要なのはそこじゃない。
このままでは何だか主人公等の主要人物に認知されてしまう事が問題なのだ。
一身上の都合で特に四天王関係の方々とはお近付きになりたくないというのもあるが、ある事情で面倒臭い事になるのが分かり切っているのでどうしても会いたくない。
ジムを荒らした後なので、俺がホウエンに来ているのはバレている。
このままハルカちゃんと一緒にいると絶対バレる、そしてそのまま拉致られる。
「どうしたんですか?」
「い、いや何でもないんだ」
う、悪寒がしてきた.......
取り敢えずレジロック達は捕獲されていない事が確認出来た。
殆どの場合が伝説や幻、準伝説と呼ばれるポケモンは存在はしているが捕まえられるという事はない。
これまで色々な地方を回ってきたが殆どのポケモンが野生だった、勿論主人公に捕獲されていたポケモンもいたがホウエン地方のポケモンはまだ捕まえられていないだろう。
もしそれらのポケモンを捕まえる可能性があるとすれば主人公級のトレーナーでなければまず有り得ない。
何故断言できるのかというと、まず伝説ポケモンは異次元に強い。
ゲームではあんな扱いだが良く考えて欲しい。
時を越えたり、大地を作ったり、世界を作ったりするポケモンが弱いと思うだろうか?
そんな天地を揺るがし超常現象を起こすポケモンが弱いはずがなく、まともに対面すればそれこそ俺たち人間の命が危ない。
もちろんポケモンもだがそもそもが、相手が神に等しい力を持っているのだ。
だからこそ主人公のようなトンデモ才能で相手を力でねじ伏せれたり、それこそ伝説ポケモンに気に入られたりしない限り捕獲なんて不可能と言っていい。
「取り敢えず今日は色々回ったからこの辺で今日は休むかぁ」
「.......あの、そろそろポケモンセンターに行きませんか?」
「あー.......俺は野宿でいいからハルカちゃんだけ行ってきたら?」
まぁ行ったら行ったでそのままトンズラするんだけどな!
「むっ、そんな事したらヒセキさん逃げちゃうじゃないですか」
うわ、ばれてーら。
この子なんだかその辺の勘が異様に鋭いんだよなぁ、ちゃっかりバシャーモかオオスバメに俺を見張らせる程度には信頼がない。
「フリ、フリ!」
ばしばし、とバタフリーに羽でしばかれる始末。
「でも何でポケモンセンターに行きたいなんて言い出すんだ?」
「えっとそれは..............です」
純粋に気になった事を聞くと、ハルカちゃんはぷいっと目線を横に逸らしほんのりと頬を朱に染めながらぼそぼそと呟く。
最後の方なんて全く聞き取れない。
「ごめん、もっと大きい声で言ってくれないか?」
「だから.......ぉ.......ろ.......ないし.......」
「え、なんだって?」
「だぁかぁらぁ!最近ずっとお風呂入ってないから入りたいのっ!」
「お、おう」
突然大きい声を上げ俺を睨み付けるハルカちゃん。
おいバタフリー、なんだその目は。
お前ご飯抜きな。
確かにそろそろ手持ちの食料も心許ない、でもあと2日は野宿でも行けるとは思うのだが。
ん?あぁ、そういうことか。
俺は立ち上がりハルカちゃんの近くまで歩いて行く、そんな俺を首を傾げて見上げているハルカちゃんの首元にぐいっと顔を近付けた。
「なっ!?」
「すんすん、うん臭くないし寧ろいいにお.......」
「バカっ!」
バチン!
と良い音がこだまする。
そして回る世界。
やれやれだぜ、そう言いたげなバタフリーが降りてきてバシッと羽で俺を叩いた。