ママでありながら配信者にもなりまして   作:八月朔日

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誤字報告ありがとうございます修正しましたー

高校生組の年齢を修正しました。


3 娘には愛情をささげましょう

「ママすごかったね!」

「いや、あれすごいとかそういうレベル超えてるから。ちょっと怖かったんですけど」

「絵描く人みんなあんな感じなんですかね」

「……」

「さつきはん、見るのに夢中やね」

 

 自己紹介が終わった後みんなから要望を聞き出してラフを描き起こす作業をしてる。持ってきていたiPadでひたすら描いては消し描いては消しをしているところを見守るように見られてる。一部、というかさつきちゃんは真横の席に座ってじーっと見てきてるけども。

 挙動不審といった感じだったのに今では真横でじっくりと見てきているものだからかわいらしい。ちょっと撫でてみたい欲求にかられるけど撫でたら野良猫のごとく逃げ出しそう。

 まあそれはそうと今回の6人分の絵。普通というかソシャゲーみたいな膨大なキャラがいる分に関してなら1人で複数のキャラ絵を描くことも多々あるんだろうけど、個性色を出していく場合だと1人ひとキャラが普通な所。絵柄も固定されるし各キャラの設定やVtuberとしての個性の確立にも影響が出てくる。俗にいうハンコ絵とかいう奴、髪型が違うだけとか目の色が違うだけといった感じの。

 それを踏まえて私がするべき作画。私、アシュリーとしての匂いを残しつつ絵柄はすべて違うものにする。同じだけれど同じじゃない、6人個別で1人ひとりが別人として確立した物を描く。

 今回描くのは今までの単なるイラストじゃない。そこに魂が入って確立された個となって動き、喋り、愛される。凛ちゃんがさっき言ったみたいに本当の親のごとく愛情をこめて生み出さないといけない。

 つま先から髪の端に至るすべてに愛情を。広大に広がるネットの世界で力強く全力でやりたいことを何でもできる体を。

 

「……なんか雰囲気変わってない?」

「恐ろしいまでの集中力だねー、これうちらの声とか聞こえてない奴じゃない?」

「そこまでして出来上がる絵は楽しみですね」

「そない集中しとるんならうちらここおったら邪魔かいね」

「じゃあ皆でご飯食べ行こーよ!」

「それもそうね、お昼食べ行くのにちょうどいい時間帯だし。ほら、さつき? いつまでも張り付いてないで行くわよ」

「っあ」

「お昼買いに行くついでにアシュリーさんにも色々買ってきてあげましょう?」

「うん」

 

*** *** ***

 

「んっんん~……うん?」

 

 初期案という形で1人目を描き上げて伸びをしたら窓際のソファで団らんをしていた6人と目があった。なんかすっごい不思議な生き物を見る目で見られてるんだけれども。私絵を描いてただけだよ?

 あ、私の周りになんかコンビニスイーツとかいっぱい置いてある……ついでにな感じで買ってきてくれたのかな。おいしいんだよね、このチーズケーキ。

 

「やっと戻ってきたわね」

「あれから4時間ぶっ通しとかマジやばいわ」

「あれ……、でも配信と比べたら、まだ短い方だよ」

「さっきさっちゃんに教えてもらってYouTubeの動画見たけど短くても全部5時間はあったもんね」

 

 えーと、あれか。描き始めてから4時間ぶっ通しでやってた感じかなこれは。普段配信以外で人前で描くとかしないからあんま意識してないけど、はたからみたらやっぱ異様なのかこれ。家だとフィーも似たような感じで機材いじったりしてるから気にしたことあんまなかったけども。

 

「それよりも! ねえねえ、手止めたって事は描けたって事よね!」

「初期案だしまだ1人しか描けてないけどね、ほら」

「わぁぁっ、ねえ!! これって凛だよね! すっごい可愛い!!!!」

 正面、後ろ、横、衣装、アクセアリー、目といった部位ごとのカット絵に全身図での正面と後ろの絵。描き上げたのは凛ちゃんの要望通りの絵。可愛く元気な猫娘、猫が好きだから猫になりたいというストレートな要望。

 

「……これで完成でいいんじゃいないですか? もう十分なレベルで描けてませんかこれ」

「んー、まだまだかなー。基本ベースはこれでいいとしてもね」

「ねえさつき、あたしこういうのあんまり詳しくないんだけどこれってまだまだとかいう段階なわけ? 全然そうは見えないんだけど」

「他の絵師ならこれで十分完成だしTwitterやpixivにあげたり仕事絵なら納品するレベルだけどこれはまだ違うここからまだ描きこんで着色して完成状態にしてから全体バランスを見て細部修正までやってそこに合わせる背景を描いて初めて完成するからこれはまだ……ぁぅ」

 

 目がこぼれるんじゃないかってくらいに見開いて私の絵をみながら早口でまくしたてたさつきちゃん。ヲタク特有の自分の領分の事になると早口でまくしたてる奴をやっちゃったのに気づいて今は顔を真っ赤っかにしてうつむいてるけど。

 

「まあ、さつきはんがここまで言うんやったらまだまだなんやろうねえ」

「マネさんがドヤ顔で紹介してた理由がわかった気がするわ」

「ねえねえ、YouTubeのアーカイブのコメントに出てくるマジキチって何!?」

「マジキチって……まあ、言いたいことはわかるけど」

「ただ絵を描いてるだけなんだけどねー、配信するとマジキチってコメントが来るんだよねー。うちの妹も配信したらマジキチってくるって言ってたし」

 

 なんだっけ、機材いじりながら同時進行で1人バンドやっただけなのにって言ってたっけ。左手で電子キーボード操作して右手で2個目の電子キーボード操作して両足でなんだっけ、音いじる機械操作して歌って配信してたらしいんだけどその時のコメントがマジキチであふれてたようで。

 

「姉妹そろってハイスペックなんやねえ。2期生にスカウトされるぐらいやしすごいんやろうねえ」

「仮に2期に入ってたらくるみ先輩の枠だったのかな」

「卍先輩ですか」

「卍先輩? 名前くるみじゃなかったかしら」

「あの人苗字画狂でしょ? 北斎の最後らへんの雅号が画狂老人卍だから卍って呼ばれてるらしいよー」

「海里はんずいぶん詳しいんやねー」

「まあねー」

「まあいいわ、話がだいぶ脱線したけどママがマジキチであたしらのVtuberとしての体がとんでもなくぶっ飛んだものになるのはわかったわ。それで、今日はこの後どうするの? 一応ママが絵を描いてる間にミーティングは終わったし集まった要件は終わってるわけだけど」

 

 あー、そういえば今日ミーティングでここに来たんだっけ。私それそっちのけで凛ちゃんの絵描いてたから全然内容知らないや。昼頃についてそっから4時間描いてたから時刻的には17時近い。

 

「明日日曜だしどっか行って遊ぶとかでもいいよー」

「そうやね、うちも特に用事とかもないしこのまま遊びに行くのもええかもね。そやけど、凛ちゃんにさつきはんにエリサはんにありさはんは未成年やさかいそこまで遅く遊ぶ訳にもいかへんやろ?」

 

 そういえば自己紹介の時に歳とか聞いてなかったっけ。今ので海里や紅葉が成人ってのはわかったけど他の4人は何歳なんだろ。高校生くらい? でも凛ちゃんは中学生っぽいんだよねー。

 

「一応言っとくけど凛、これでも高校生よ」

「……iskapes?」

「なんて言ったのかわかんないけど高校1年生だよ!!!」

 

 ついイギリス英語で返してしまった。というか凛ちゃん高校生だったんだ、しかも3年生。

 

「あたしは2年17歳でエリサとさつきが1年で16歳よ」

「うちは21で海里はんが20やね、ママさんは何歳なん?」

「20だけどみんなして私の呼び方ママなのね……」

「だってママだし」

 

 いや、うん。そうだけどね? なんかもう修正できる気もしてないけどさあ……。

 高校生組はちゃん呼びでいいかな……。

 

「皆さんそろそろお帰りですか?」

「はい、このまま帰るか遊びに行くか話してたところです」

「遊びにですか。凛さんが補導されなければいいと思いますよ?」

「ちっちゃいもんねー、凛は」

 

 いわれないと中学生にしか見えないもんね、凛ちゃん。

 

「ちっちゃくないもん! 補導なんてされたこと……何回かあるけどちっちゃくないもん!」

「凛はちっちゃかわいい」

「さっちゃん!!!!」

「凛ちゃんちっちゃかわいい」

「ママまで!!!!」

「皆さんと打ち解けられたようで何よりです、アシュリーさん。それと、こちらが正式なIDカードになりますので、次回から受付で見せていただければ大丈夫ですよ」

 

 受け取ったのは朝貰ったのと同じデザインだけど何時撮ったのかわからない私の顔写真がついてる。正面から撮った顔だけどこれ何時撮ったの??

 

「あとアシュリーさんに1つお話をと思ったんですが……また次の機会の方がよさそうですね」

 

 朱音さんの目線を追うとものすごく残念そうな表情をしてる3期生が。あ、私も遊び行くメンバーのカウントされてるのね。

 

「それでは今日はお疲れさまでした。次回ミーティングはディスコードでお知らせしますね」

 

 そして私は流されるがままに朱音さんと3期生が入ってるディスコードに入れられて社外に出ると、なんか長い車が止まってた。やっぱ大きい会社だとこのくらいの社用車? は持ってるもんなんだねーとか思ってたんだけど、ありさちゃんがそれに向かって歩いて行ったら中から人が出てきてドア開けたからちょっと意味わからないよね。

 

「ん? 止まってないで乗りなさいよ」

「……あー、ありさがお嬢ってのは聞いてたけどここまでかあ」

「運転手付きのリムジンとか初めて見ました」

「ちょっと引いた……」

 

 散々な物言いをしつつもリムジンに乗り込んで内装のシートの座り心地に驚いたり、備え付けの小型冷蔵庫とかいう意味わからないものから出てきた飲み物をのんだりしてわいわい喋りながらリムジンに乗せられて言った場所はこれまたよくわからない豪邸だった。というかここテレビで見たことある家だわ……。

 

「よく考えたら門限とか未成年とかめんどくさい事考えるなら最初から家で遊べばいいじゃないってことで、我が家に連れてきたわ。みんな予定ないって言ってたし泊まりで遊びましょ」

「ねえさつきちゃん息してる?」

「……」

「ママ、さつきはリムジン乗ったあたりから生気なくなってます」

「お泊りなんて久しぶりやわあ、楽しそうやね」

 

 まあ、うん……今日泊まるって連絡入れようかな。

 




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