藤和高校との試合では完全にオリジナル展開で
やりますのでご了承下さい
楽しかった三泊四日の合宿も
あっという間に過ぎていって
迎えた合宿最終日は電車に乗って
大鷲高校と藤和高校と試合を行う
球場へ意気揚々と向かっていった
球場に到着すると対戦相手である
大鷲高校と藤和高校も球場に到着
互いに挨拶を交わしてから試合の
準備に向かっていった
今日の練習試合は3校が各々
2試合ずつ試合をすることになっている
因みに試合の順番は……
第1試合 = 大鷲vs新越谷
第2試合 = 新越谷vs藤和
第3試合 = 藤和vs大鷲
のスケジュールになっている
そして始まった第1試合は
大鷲先攻、新越谷後攻で開始された
因みに打順とポジションは……(数字は背番号)
【1】 中村 希 (一塁手・3)
【2】 藤田 菫 (二塁手・4)
【3】 山崎 珠姫 (捕手・2)
【4】 岡田 怜 (中堅手・8)
【5】 川崎 稜 (遊撃手・6)
【6】 上杉 真深 (三塁手・7)
【7】 藤原 理沙 (投手・5)
【8】 大村 白菊 (右翼手・9)
【9】 川口 息吹 (左翼手・10)
この試合は合宿の成果を試す意味もあるために
大鷲戦は詠深は投げずにベンチスタートとなり
先発は理沙で途中から息吹が投げることになり
理沙が投げる時は息吹がレフトの守備に入って
真深がサードに……息吹が投げる時には真深は
レフトに戻り詠深が理沙と交代をしてサードの
守備に入ることとなった
一方で藤和との試合では芳乃と藤井先生が
合宿での調子などから話し合って判断して
決めた打順とポジションで組むことになり
その打順とポジションで今後の練習試合や
夏の大会に挑むことが出発前に藤井先生が
メンバーに告げられている
つまり大鷲戦は負け覚悟の試合で藤和との
試合は本気で勝ちを狙いに行くという訳だ
そして開始された大鷲高校との試合……
「あっ!? すいません、理沙先輩!」
「いいのよ……
というかインプレー中に謝罪しない!」
開始早々に稜がエラーをしてしまった
それでも理沙は大崩れすることもなく
安定していて淡々と投げていくのだが
その後も白菊や息吹の初心者の二人は
勿論、経験不足を露呈するかのように
新越谷の守備陣はエラーを積み重ねて
結果、理沙の初登板は5回を6失点の
結果であったが殆どかエラー絡みでの
失点だったので、スコアこそ3-6だが
上々の結果であろう
「ふぅ~~」
「初登板、お疲れ様」
「6失点なら十分ですよ」
5回を投げきりベンチで
汗を拭う理沙を怜と芳乃が励ましている
「さあ、6回からは息吹ちゃんの番だよ
真深ちゃんはレフトに戻って詠深ちゃんは
理沙先輩と交代して、サードの守備に入ってね」
「がっ、頑張るわ!」
「「了解」」
芳乃からの指示に息吹と真深と詠深が答え
6回の守備につくと息吹は緊張しながらも
コンパクトに投げ込んでいき詠深も初めて
サードの守備にも関わらず軽快な守備を
披露して見事、無失策を記録した
しかし大鷲高校は強打が売りのチームで
あったこともあり7回には次第に息吹の
投球に対応してきた為に息吹は7回表に
3失点を喫して4-9となってしまった
エラーが重なったこともあって9失点を
喫した一方で攻撃の方は成果が出ていた
1回に安打で出塁した希を菫がバントで
2塁に送ると珠姫が二塁打を放ち1点を
先制すると続く4番の怜が安打で珠姫を
返し更に1点を加えて2点を追加すると
3回には怜が6回には珠姫が1打点ずつ
取ると7回裏には真深が2ラン本塁打を
打って6-9とし3点差に積めよるなど
それなりの成果や手応えを得ることの
出来る内容となった
しかし反撃も及ばず大鷲に逃げ切られて
6-9で初黒星を喫してしまった
「「…………」」
「凄いって!
私なんて10失点が普通だったし!」
試合後9失点したことで肩を落としていた
理沙と息吹を詠深が自分の過去の成績を
引き合いにし励ましていたが理沙も息吹も
失点の半分はエラーが絡んでいたもので
初登板であることを考えれば上出来であり
詠深に至っては知っての通り不真面目な
チームメイトに足を引っ張られた為なので
気にする必要はないと真深は確信していた
「さあ、凹んでいる暇ないよ
直ぐに次の試合ができるんだからね」
芳乃も明るい声でメンバー達を鼓舞すると
藤和高校との練習試合の打順が発表される
今後の練習試合はおろか夏の大会における
新越谷のベストオーダーということなので
全員が芳乃から発表される打順に注目する
そして発表された打順は……
【1】 中村 希 (一塁手・3)
【2】 藤田 菫 (二塁手・4)
【3】 山崎 珠姫 (捕手・2)
【4】 上杉 真深 (左翼手・7)
【5】 岡田 怜 (中堅手・8)
【6】 川崎 稜 (遊撃手・6)
【7】 藤原 理沙 (三塁手・5)
【8】 武田 詠深 (投手・1)
【9】 大村 白菊 (右翼手・9)
そして芳乃から打順が発表された瞬間
「えっ……私が4番!?」
「うん……そうだけど?」
芳乃から発表された打順に真深が戸惑う
「4番は怜先輩でしょ!?」
大鷲高校との試合では怜が4番で
試合でも怜は2打点の活躍だったので
真深はチームの4番は怜を置いて他に
いないと思っていたので驚いてしまう
「でも真深ちゃんも4打席で
2安打と2四球で、2ラン本塁打も打ったし
合宿でも打力、調子、共に上向きだったからね」
「だとしても、1年生の私が4番なんて……」
「真深ちゃんの言うことも分かるけど
やっぱり打率と長打力の両方を考慮すると
真深ちゃんが4番の方が良いと思ったから」
そう言って説明をする芳乃の隣で藤井先生も
腕を組ながら真面目な表情で真深を見つめる
「…………」
それでも真深は主将で上級生の怜を差し置いて
1年生である自分が4番だなんてと思っていた
すると……
「学年なんて関係ないぞ、真深」
「怜先輩……?」
逆に納得したような表情の怜が真深に声をかけた
「さっきの大鷲戦でも真深は全打席で出塁したし
柳大川越戦に続いてホームランも打ってるからな
私は真深がチームの4番に相応しいと思うぞ」
「私も真深ちゃんが4番に相応しいと思うわ」
「理沙先輩まで……」
怜の言葉に理沙も加わってきた
「それに……もう去年の新越谷じゃないのよ」
「理沙の言うとおりだ
これからの新越谷野球部は学年に関係なく
実力のある者が使われるようになるべきだ」
「…………」
上下関係の最悪だった昨年の新越谷の野球部を
経験している2人から説得力のある話しだった
「私も理沙も長打力では真深には及ばないんだ
それに真深の方が経験も実績も申し分ないんだ」
2年前はボストフ、ジータパーラー、モウラーと
クリーンナップを組み昨年は自分たちのような
辛い思いをしながらも4番で結果を出し続けた
真深が4番で問題ないと怜は言い聞かせる
「頼んだぞ! 我らがスラッガー」
「…………」
最後に怜は、そう言って
期待を込めて真深の肩に触れた
「上杉さん、お願いできますか?」
そして真深と怜のやり取りを見守っていた
藤井先生が改めて真深に4番を依頼すると
「怜先輩も言ってるし、やろうよ真深ちゃん」
「真深ちゃんなら、大丈夫だよ」
それに続いて珠姫と詠深が真深を鼓舞すると
他のメンバーも真深に期待の眼差しを向ける
「分かりました……期待に応えて見せます」
真深は迷いを捨てて決心した表情で頷いた
「よし、決まりだ!」
「うんうん!
次の試合でこそ合宿の成果を出そう」
「「「「「「「「オーーっ!」」」」」」」」
芳乃の掛け声に全員が気合いの声を上げる
「因みに大鷲高校は強打が売りだったけど
藤和高校の戦術は"セーフティバント"とか
盗塁を初め足を使って相手を撹乱する野球が
売りのチームだから走者が出たら注意してね」
最後に芳乃が対戦相手の特徴を伝えると
藤和高校の選手が守備に向かって行って
新越谷が1回表の攻撃に入る
「お願いします」
希がいつもように一礼してから打席に入ると
相手の初球を捉えて柳大川越や大鷲高校との
試合から3試合連続で先頭打者で出塁すると
菫がキッチリ希を2塁に送って3番の珠姫が
打席に入ると初球をヒットにして希を返して
大鷲との試合と同じ形で先制した
「初回先取点はウチのパターンになったね」
芳乃が珠姫の安打でホームに生還した
希とハイタッチをしながら嬉しそうに
微笑みあっていると続く4番の真深が
ゆっくりと打席に入る
「真深ちゃん! かっ飛ばせーーー!!」
「頼んだよ、真深ちゃん!」
詠深が打席に向かって声を上げると
1塁上の珠姫も真深を鼓舞している
そんな真深に対して藤和の投手は
内角にストレートを投げるが真深は
相手の球筋を見るために1球見逃す
すると藤和の捕手は……
(この打者に棒球はダメよ!?
さっきの大鷲戦では当たっていたし
ホームランも打ってるから慎重にいくわよ)
(うん)
先程の新越谷と大鷲高校の試合を観戦し
真深の長打を警戒していた藤和の捕手が
投手に直球は極力控えて変化球を中心で
攻めで行こうとサインを送り会う
(取り敢えず、外いっぱいにスライダーを!)
(分かった)
捕手のサインに頷いた投手が
外角いっぱいにスライダーを投げる
(オッケー! ナイス、コントロー……)
グワキィィィィィィィィィィィィン
((えっ!?))
投手も投じたスライダーに納得し
捕手もコントロールとコースの良さに心の中で
ナイスコントロールと呟こうとしたのだが鋭い
スイングと打球音によって阻止されてしまった
真深は外角低めギリギリという難しいコースに
投げられたスライダーをバットの芯で捉えると
打球は右中間へと舞い上がって見事スタンドの
1番奥へ飛び込む2ラン本塁打になった
「ホームラン!」
「前の試合から数えて2打席連続よ!」
「さすがーー!」
新越谷のベンチで詠深、息吹、芳乃が興奮している
(嘘……)
(外角低め一杯の球を
何で、あそこまで飛ばせるのよ!?)
一方で藤和の投手と捕手は真深の桁違いの
打撃力を見て度肝う抜かれてしまっていた
「やったね、真深ちゃん」
「よくやった、真深」
「ありがとうございます」
真深のホームランで先に一塁から
ホームを踏んだ珠姫と次の打者の
怜がダイヤモンドを一周した真深を出迎える
「真深ちゃん、ナイバッチ」
「外角低めの難しい球を……素晴らしいね!」
珠姫とベンチに戻ってきた真深を
詠深も芳乃が真っ先に出迎えて祝福する
その後、怜がヒットで出塁したが続く稜が
変化球を引っ掻けさせられ併殺打となった
そして、1回裏の藤和高校の攻撃
「よーし! なげるぞーーー!」
大鷲高校との試合では控えだった詠深が
マウンド上で何度か飛び跳ねて気合いを入れる
「詠深ちゃん!
柳大川越との試合の反省点を生かして行くよ」
「うん!」
「ランナーを出しても、いつも通りにね」
「大丈夫! もう柳大川越の時みたいに
ランナーを出しても怖がったりしないよ
今の私には珠ちゃんが居るし私の後ろでは
真深ちゃんや皆が守っていてくれてるから
私は珠ちゃんのリードと皆を信じて投げる」
「うん! 今日こそ勝とうね」
歩み寄ってきた珠姫の励ましに
詠深が迷いのない力強い表情で頷いた
そして詠深は直球と"あの球"を巧みに
投げ分けて三振か内野ゴロで1回裏は
三者凡退に打ち取っていった
一方で2回表の新越谷の攻撃は先頭の
理沙がヒットで出塁すると続く詠深が
送りバントで理沙を2塁に進めて続く
白菊がライトに大きなフライを打って
理沙を3塁に進め希に回すが惜しくも
希は内野ゴロに打ち取られて無得点に
そして2回裏の守備も詠深はあっさり
相手打線を三者凡退に打ち取った
ーーそして続く3回表の新越谷の攻撃ーー
この回は2番の菫からの打順……
当然ランナーが居ない場面なので
芳乃から強攻のサインが出ている
「回の頭で回ってくるのは初めてね……
次の次は真深だからチャンスで回したいわね」
菫は、当たっている4番の真深に
チャンスで回そうと、いつもより
集中力を高めて打席に入る
「来なさい!」
そして菫は柳大川越戦の時のように
自分に渇を入れる意味も含め相手の
投手に向け気合いの隠った声を出す
キィィィィィン
すると菫は初球の直球を見事に弾き返した
「やった!」
理想通りの打撃が出来たらしく
1塁上で両手の拳を握りしめる
そして菫が出塁したので芳乃も
迷わず珠姫にバントのサインを
出すと珠姫は1発で決めて菫を
2塁に進め狙い通りチャンスで
真深に回すことができた
「真深ちゃん、もう1本お願ーーい!」
ベンチで詠深が真深に声を送ると
追加点を期待し他のメンバー達も
声を送るが藤和のバッテリーが
ベンチからのサインに頷いたと
思った瞬間に溜め息に変わった
「!?」
「捕手がたった!?」
「ということは……」
捕手が立ち上がる……それの意味することは
「敬遠!?」
「マジかよ……」
詠深と稜が愕然としながら呟いた
「まあ、相手の立場で考えれば」
「妥当よね……」
逆に冷静な様子で呟く珠姫と息吹
「大鷲戦から全打席出塁してるからね」
「加えて第1打席では外角の難しい
スライダーを完璧に打たれていますからね」
理沙と藤井先生は冷静で納得した表情で呟く
「でも次は怜だからまだ期待できるわよ」
「第1打席もヒットを打ってくれたけん」
「だね! 怜先輩、お願いしまーーす!」
理沙が期待の眼差して怜を見ながら言うと
希と詠深も怜に期待の眼差しを向けながら
声援を送ると他のメンバーもそれに続いた
(主将……お願いします!)
(あぁ、任せてくれ)
そんな中で芳乃は真剣な眼差しを怜に
向けて何やらアイコンタクトをしている
「ボールフォア」
芳乃と怜がアイコンタクトをしている内に
真深は敬遠で1塁に歩かされて怜が打席に
ゆっくりと向かっていく
ーー実は昨夜ーー
「主将……打順のことなんですが」
芳乃は言いずらそうに打順の要件を告げた
なんと芳乃は藤和高校との練習試合の前に
発表する予定の打順を怜にだけは前もって
知らせていたのである
「真深が新越谷で最も優れた打者であることは
私を含め全員が認めているから納得しているぞ」
先程、試合前に真深に告げたように
怜も十分に納得した上で承諾していた
「すみません……
主将の打力だと4番以外なら1番か3番が
妥当なんですけど5番にしたのは勝負所で
真深ちゃんに回った時に敬遠されることを
防ぐためか若しくはチャンスで敬遠されて
貯まったランナーを返してほしいからです」
「つまり強打者アピールをするんだな」
「はい! 是非とも相手が怯む打球を!」
「あぁ、任せてくれ!
というか4番の仕事と内容は変わらないな」
「それも、そうですね」
こうして怜に予め打順の要件を告げた後に
芳乃と藤井先生は先程の打順を決めたのだ
ーーそして場面は試合に戻るーー
(芳乃……そのオーダー、確かに受け取ったぞ)
怜は心の中で再度了承してバットを構えると
初球の内角の直球を1球見逃して続く2球目
外へと逃げるスライダーが来ると目を見開き
鋭くバットを振り抜いた
カキィィィィィィィン
怜はスライダーを完璧に芯で捉えると
打球が鋭いライナーでライトを破った
それにより2塁から菫は余裕で生還し
真深は俊足を飛ばして一気に1塁から
生還して新越谷が更に2点を追加した
そして打った怜も2塁へ進み二塁打になって
これで新越谷が5-0とリードを更に広げた
「「ナイバッチ、キャップ!!」」
怜のバッティングに芳乃と詠深が
興奮しながら2塁にいる怜に向け
声を送ると怜も拳を突き上げて答えた
「真深、ナイスラン!」
「菫ちゃんも、ナイバッチ!」
そしてホームに生還した菫と真深が
ハイタッチをしながらベンチに戻る
「菫ちゃん、真深ちゃん、ありがとうーー!」
詠深はチャンスを作ってくれた菫と真深に
感謝の言葉を送りながら出迎えて祝福する
「私は歩かされただけだけどね……」
「ううん!
敬遠されることは悪いことじゃないよ
その分チャンスが増えるってことだし」
敬遠されただけだと言う真深に芳乃が
敬遠がデメリットだけではないことを
明るい声と表情で伝えたのだった
「よーーし! 私も続くぞ」
こうなると流れに乗りやすい稜が
柳大川越戦の時のようにポテンヒットで
ワンアウト1塁・3塁になるチャンスが広がる
するとここで堪らず藤和高校が守備のタイムを
取って捕手と内野陣が集まり話し合いを始める
タイムは1分ほどで終わり試合が再開されると
なんと続く7番の理沙まで真深に続いて敬遠で
歩かされたのだ
「理沙先輩まで敬遠!?」
「多分、併殺狙いの満塁策だね……
理沙先輩の次は投手の詠深ちゃんだから
無理して理沙先輩と勝負するより満塁にして
詠深ちゃんと勝負することにしたんだと思う」
理沙が敬遠され驚くメンバーに対し
芳乃が冷静に相手の作戦を分析した
「よーーし! 満塁ホームラン打つぞーー!」
相手から打力が低いと見なされてるとは知らず
詠深は意気揚々と笑顔で打席に向かっていった
そして結果は……
ゴキン
「あっ!?」
相手の思惑通りに詠深は初球のスライダーを
引っ掻けさせられて投手ゴロになってしまい
1・6・3のダブルプレイになってしまった
「…………」
「ドッ、ドンマイ詠深!」
「スイングは悪くなかったぞ!」
一転して落胆した表情でベンチに戻ってきた
詠深を息吹と稜が励まして守備に向かわせる
「さあ! 5点リードしたし、守備も頑張ろう!」
そして芳乃も明るい声で
詠深と他のメンバーを鼓舞して送り出す
しかし3回裏の藤和高校の攻撃は
流石に詠深の投球にも慣れたのか
先頭の打者が"あの球"が来る前の
詠深の初球の直球を打ち返し藤和が
初めてのランナーを出すと急かさず
盗塁を仕掛けノーアウト2塁になり
更に送りバントで3塁に進まれると
続く打者にはスクイズを決められて
1点を返され5-1になってしまう
なんとか次の打者は"あの球"で三振に
仕留めてスリーアウトにしたが藤和の
足を使った揺さぶりによる戦術の前に
すっかり翻弄されてしまった
「見ての通りランナーを出したら
盗塁やバントを多用するチームだから
次からは牽制を交えた方がいいかもね」
「そうだね……
下位打線でもあんなに足が早いからね」
実際に藤和の選手の足の早さを
目の当たりにした芳乃と珠姫が
ランナーが出た際の警戒を更に
強めることにした
その後の4回表の新越谷の攻撃は先頭の白菊が
ライトにもう少しでホームランになるかという
大きなフライを花ってワンアウトとなる
「スゲー、飛んだな……」
「ホームランが出るのも時間の問題ね」
白菊の打球を見た稜と菫が唖然として呟いた
それでも表情には白菊に対する期待が見える
「白菊ちゃんには負けんけん!」
すると白菊の長打力に対し対抗心を持つ
希が気を引き閉めながら打席に向かった
(ストレートは逃さんけんね!)
心の中で自らを鼓舞すると初球の
ストレートを見事ライト前へと弾き返した
「希ちゃん、ナイバッチ!」
ベンチから芳乃が希の打撃に喜ぶ声が響くと
それに希も嬉しそうに微笑みなから手を振る
そして続く打者は2番の菫だったがサインは
バントではなく強攻だった
(えっ……バントなし?)
1点を返されたのでチャンスを広げ
真深に回す為にも此処はバントだと
思っていた菫は予想外な表情になる
それは次の打者の珠姫も同じだった
(ワンアウトだし仮に希ちゃんをバントで
2塁に送った後に珠姫ちゃんが繋いでチャンスで
真深ちゃんに回しても歩かされる可能性が高いし
ここは菫ちゃんと珠姫ちゃんで点を取りに行こう)
(了解!)
芳乃からのサインに菫が頷くと
菫は初球のストレートを完璧に捉えて
打球が鋭いライナーでライトへ飛んでいく
それを見た希は1塁から一気3塁へ向かう
しかし!!
「希ちゃん、戻ってーーー!!」
「えっ!?」
ベンチから芳乃の声がして希が見てみると
菫の打球をライトがダイビングキャッチで
捕球してしまっていた
「嘘やん!?」
希は慌てて1塁に戻ろうとしたが既に2塁すら
過ぎていてヘッドダイビングで手を伸ばしたが
及ばずにダブルプレイになってしまった
「ごめん、芳乃……」
「芳乃ちゃん、ごめん……」
「2人ともドンマイ……今のは仕方ないよ」
チェンジになってベンチに戻って謝る
菫と希を芳乃が急かさず励ましていた
しかし4回裏の藤和高校の攻撃は
運悪く先程ダイビングキャッチで
チームを救ったライトからの打順
するとファインプレイの勢いのまま
セーフティバントによる内野安打で
出塁を許してしまうと続く打者には
ヒットエンドランを決められてしまい
ノーアウト1塁・3塁にされて堪らず
新越谷は守りのタイムを取って芳乃と
珠姫と内野陣がマウンドに集まってくる
「詠深ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫……でも簡単にはいかないね」
「うん……やっぱりBチームでも強いね」
2軍とはいえど都内の名門校の強さを前に
芳乃、詠深、珠姫の順に溜め息混じりに呟く
「詠深ちゃん……
一か八か"ツーシーム"を使って攻めていこう」
「でも、アレって覚えたばかりだけど大丈夫?」
珠姫の提案に不安そうにする詠深
「大丈夫だよ!
昨日練習した時も切れが良かったし
この前にも言ったけど詠深ちゃんの
"ツーシーム"は直球と同じ早さだし
藤和高校相手でも通用すると思うよ」
「芳乃ちゃんの言う通り!
それにここは1点を取られてでも
"ダブルプレイ"を狙った方がいいからね」
「幸い5-1で4点リードしているしね」
「……うん! 分かった、やってみるよ」
芳乃と珠姫に説得され考え込んだ後に
詠深は"ツーシーム"を使う決意をする
「後ろは任せてよね」
「しっかり守って見せるぜ」
「サード打たせて大丈夫よ」
「詠深ちゃんなら抑えられるけん」
菫、稜、理沙、希も詠深を励まし鼓舞する
「ありがとう、皆!」
それに勇気付けられた詠深が内野陣に
感謝の言葉を送ると芳乃はベンチに戻り
内野陣と珠姫も自身の守備位置に戻っていく
その様子をレフトを守る真深も見守っていた
「プレイ!」
タイムが終わり主審が再開を告げる
(直球を外に1球、外した後で
内角の厳しいコースに"ツーシーム"でいくよ!)
(うん!)
珠姫からのサインに詠深はしっかり頷くと
珠姫のリード通りに投げ1点を返されたが
5-4-3の"ダブルプレイ"に打ち取ると
次の打者には3球続けて"あの球"を投じて
見事三球三振に仕留めた
「詠深ちゃん、ナイスピッチ!」
「よく耐えたぞ、詠深!」
「ありがとうございます」
ベンチに戻った詠深を珠姫と怜が誉め称えた
1点を返されスコアは5-2になったものの
1点で押さえたのは大きかった
「さあ、追加点取るよ!」
「「「「「「「「オーーっ」」」」」」」」
芳乃の掛け声に全員が気合い十分の声を上げる
5回表の攻撃は3番の珠姫からの打順だったが
スライダーを打ち上げて外野フライで凡退した
そして今度はランナー無しで真深に回る
「勝負するかな?」
「ランナー居ないし流石にすると思うよ」
「それにさっきは敬遠して次の怜に
打たれたから敬遠はやりにくいと思うわ」
敬遠を心配する詠深の言葉に
珠姫と理沙が予測を口にすると
芳乃の狙い通りに怜を警戒した
藤和高校は真深との勝負を選択した
(よしっ、狙い通り!)
作戦が成功して芳乃は思わず
胸を撫で下ろしながらも心の
中でガッツポーズをしていた
そして真深に対して藤和高校は
変化球を中心に際どいコースを
攻めていくが真深は際どいでも
ストライクと判断した球は全て
カットしボール球は見送るので
業を煮やした投手が外角高めに
投じたストレートを弾き返して
二塁打を記録した
(チッ! 何なの、この4番!?)
相手の投手は真深を睨み付けるので
堪らず捕手が駆け寄り投手を宥めた
「「真深ちゃん、ナイバッチ!」」
二塁打を放った真深に詠深と珠姫が声を送る
「真深の奴、選球眼も良いんだな」
「見送った球は全部ボールだったわね」
「それで際どい球は全部カットだもんな」
「対戦相手じゃなくてホント良かったわ」
稜、菫、怜、理沙は選球眼の良さと際どい球を
カットする打撃センスを見て真深が味方で
本気で良かったと心底感じていたのだった
真深が2塁に出て再びチャンスで怜に回るが
相手は怜の打撃を警戒して再度併殺打狙いの
敬遠策に出て怜を歩かせた
「私との勝負を選んだことを後悔させてやる」
怜が敬遠されると稜が闘争心を剥き出しにし
真深が敬遠された後に怜が打ったように稜も
自分が打ってやろうと気合いを入れて打席に
入ると甘く入った直球を上手く弾き返したが
相手の遊撃手の攻守備に阻まれて思惑通りに
併殺打に打ち取られてしまった
「面目ない……」
「ドンマイ、稜ちゃん」
「今のは相手が上手かったわ」
落胆しながらベンチに戻った
稜を芳乃と菫が励ましていた
そして5回裏の藤和高校の攻撃は詠深が先程
ダブルプレイを取った4回裏の勢いそのまま
直球と"あの球"と"ツーシーム"を投げ分けて
見事三者凡退に終わらせた
そして回は6回まで進み6回表の新越谷の
攻撃は7番の理沙から始まったが理沙は
外野フライに打ち取られ続く詠深は三振に
打ち取られてアッと言う間にツーアウトを
取られて9番の白菊に打順が回る
(この試合は、まだヒットを打っていません……
ここは何としても打って皆さんの期待に答えます)
藤和高校との試合でヒットが出てない白菊が
いつにも増して気合いを入れて打席に入った
メンバーも白菊の打撃力に期待しているので
声援を送って白菊を鼓舞すると初球の直球が
甘く入ってきた
(甘い球!!)
白菊も目を見開き逃すまいとバットを振り抜いた
(神仏照覧!!)
カキィィィィィィィン
白菊の捉えた打球は高く舞い上がっていくと
惜しくもスタンドには届かなかったものの
フェンスに直撃して長打になり白菊は
余裕で2塁に進んで初の長打を放った
「白菊ちゃんの、初の長打だよ!」
「ナイバッチ、白菊ちゃん!」
「もう、ちょっとでホームランだったな!」
白菊の初の長打によるチャンスメイクに
芳乃、詠深、稜がベンチから白菊に声援を送った
「初の長打……やりました!」
白菊も2塁ベース上で喜びの表情を見せると
(ぐぬぬ……私も負けんけん!
それにさっきはチャンスで凡退したけん
次は打ってチャンスメイクしてみせるっちゃ!)
白菊の長打力への対抗心に加えて
2回表の攻撃でツーアウトながら3塁の
チャンスで凡退したことを気にしていたので
リベンジも兼ねて気合い十分で打席に入った
しかし希は直球を上手く捉えたものの惜しくも
打球は二塁手の正面に飛んでしまって凡退して
2回表の攻撃に続いてチャンスで打てなかった
「クッ……(また)!」
「…………」
チャンスで打ち取られ悔しさを見せる希を
ベンチから芳乃が心配そうに見つめていた
そして6回裏の藤和の攻撃では先頭の打者に
この試合初めて長打を許しノーアウト2塁に
すると続く打者にセーフティバントを許して
ノーアウトで1塁・3塁のピンチを迎えるが
詠深が次の打者に内角に"あの球"を投げると
上手く引っ掻けさせショートへの内野ゴロで
ダブルプレイで打ち取ったと思われたのだが
先程のチャンスでの凡退を気にしていたのか
稜がこの日2個目のエラーを喫してしまって
3塁ランナーが生還し1点を返されスコアが
5-3と2点差にまで詰め寄られてしまうと
1塁ランナーも一気に3塁まで進んでしまい
尚もノーアウトで1塁・3塁ピンチが続いて
堪らず新越谷が守備のタイムを取った
「すまん詠深……」
「ドンマイ、稜ちゃん」
エラーをして暗い表情になりながら
謝る稜を詠深が明るい表情で励ます
「さっきのを引きずってるの?」
「そんなんじゃ無いんだけどよ……」
菫に5回表の攻撃で怜が敬遠された後に
凡退したことを指摘された稜が苦い表情で答える
「まあまあ……
とにかくまだノーアウトだから落ち着いて
もう一度ダブルプレイを狙いながらいこう」
「でもダブルプレイ取れたとしても
もう1点返されて1点差になるわよ」
珠姫の言葉に対し菫が心配そうな反応を示す
流石に6回まで来て1点差に詰め寄られれば
それを機に勢いに乗った相手に一気に逆転を
許す可能性もあるからだ
「まあ、理想としては次の打者を三振に
打ち取った後に敬遠してダブルプレイ狙いかな」
「そうね……それが1番理想的かしらね」
珠姫の案に理沙と菫も賛同する
「つまり詠深ちゃん次第だけど……大丈夫?」
「私は珠ちゃんのリードと
皆を信じて投げるだけだから大丈夫だよ」
珠姫の作戦に当の詠深は全く動じておらず
いつも通りの明るい雰囲気で大丈夫そうだ
「うん! じゃあ"一か八か"この作戦で行こう」
珠姫の言葉に内野陣が頷いて
それぞれの"ポジション"へ散っていった
(詠深ちゃんは逆境に強いな……流石、エース!)
珠姫はピンチの中でも平常心で
明るく振る舞う詠深の精神力の
強さに感服していた
(だったら、ここは何としても切り抜けよう!)
意を決して珠姫はミットを構える
そして次の打者に対する珠姫のリードは……
(初球に"あの球"……2球目は外に大きく
外してから外角に"ツーシーム"を投げた後に
"あの球"で顔面4分割の外角高めに三振取るよ)
(うん!)
珠姫からのサインに詠深が力強く頷くと
要求通りの投球でカウントを"1-1"に
すると3球目は外角に"ツーシーム"を投じた
しかし……
カキィィィィィィィン
「「あっ!?」」
相手打者は腕を上手く畳みながら詠深の直球を
捉えてると打球は外野へ飛んで3塁ランナーが
犠牲フライの為にタッチアップの体制に入った
しかし……
打球の飛んだ方向はレフトだった……つまり
「珠ちゃん!」
「うん!」
詠深が満面の笑みで珠姫に声をかけると
珠姫も笑みを浮かべて捕球体制に入った
そしてレフトが捕球すると3塁ランナーが
タッチアップしてホームへ走っていったが
ドギュュュュュュュュュン
レフトから凄まじい返球が帰って来る
「アウト!」
3塁ランナーを見事にホームで刺した
更に……
「珠姫、こっちだ!!」
「!?」
稜の声が聞こえて珠姫が2塁を見ると
1塁と2塁の間にランナーが飛び出していた
急かさず珠姫が2塁に送球するとランナーを
1塁と2塁の間に挟んで稜と希がランナーを
追い掛けながらキャッチボールをしていたが
次第に距離を縮めてタッチしてアウトにした
「"トリプルプレイ"!?」
「スゴーーーイ!!」
真深のレーザービームと直後の稜のカバーで
トリプルプレイに仕留め見事にピンチを脱し
思わずベンチで息吹と芳乃が大興奮しているが
藤和のベンチでは真深のレーザービームを初め
思わぬ新越谷の好守備で反撃の根を摘み取られ
反撃ムードから一変して落胆の空気に包まれた
因みにこの試合の後に藤和高校と対戦する為に
観戦していた大鷲高校のメンバーが自分たちと
試合した時は何でエラーを連発したのだろうと
新越谷のトリプルプレイに度肝卯抜かれていた
「やったーーー!」
「真深ちゃん、ナイス送球!」
「相変わらず凄い送球だったわね」
「そう簡単にホームは踏ませませんから」
トリプルプレイを決めたこともあり
詠深、珠姫、理沙がハイタッチをしながら
笑顔で真深を出迎えると真深も笑顔で答える
「稜ちゃんも、ナイスカバー!」
「エラー、帳消しにできたわね」
「へへっ……見直したか?」
稜は珠姫と菫から褒め言葉を貰えて嬉しそうだ
「さあ、最終回だよ! 追加点取ろう!」
5-3でリードしたまま遂に7回を迎えた
この回の先頭は2番の菫からだったのだが
藤和高校としては7回裏で逆転サヨナラを
狙うためにも4番の真深に前に是が非でも
ランナーを出したくなかったのでチームの
クローザーを投入してきた
……しかし
「クローザーを出してきたね」
「ここを3人で抑えて最終回の
攻撃に賭けるつもりなんだと思うよ」
珠姫と芳乃が藤和高校の
思惑を見事に言い当てていた
そして代わった右投げのクローザーの投手が
投球練習を終え菫と珠姫を得意のシュートで
内野ゴロに打ち取って首尾良くツーアウトで
ランナー無しで真深を迎えたが……
ガキィィィィィィィィィィン
ストレートの次にシュートが得意だった
真深が豪快な打撃音と共にかっ飛ばすと
打球はレフトへ高く舞い上がっていき
投手はマウンド上で項垂れてしまった
「また、いったーーー!!」
「これは、いっただろう!!」
打撃音と共に新越谷のベンチが沸き上がり
打球がレフトスタンド最奥部に飛び込んだ
大鷲戦を含め今日3本目となるホームラン
そしてこのホームランが逆転勝ちを狙っていた
藤和高校の希を打ち砕くトドメの一撃となった
そして……
「ストライク、バッターアウト!」
7回裏の藤和高校の攻撃を詠深が
3人で、きっちり抑えて新越谷が6-3で
嬉しいチーム初勝利を果たしたのであった
という訳で……
新越谷が初勝利をあげる話でした
原作より、かなり早いですが
真深の存在が新越谷の総合力や
詠深の投球に+作用があったという
設定にしたくて、このような展開にしました
藤和の戦術が"セーフティバント"や
盗塁を初め足を使って相手を撹乱する
設定にしたのはコミックでスクイズで
得点しているシーンを見て決めました
4番に関する芳乃と主将の会話は梁幽館との
試合がオリジナル展開になることに加えて
今回の話で真深を4番にしてストーリーを
進めるために今回の話しに持ってきました
それから原作で初勝利をあげた守谷欅台戦も
原作とは違う観点で行いますので出来れば
こちらの方も楽しみにしていてくださると
大変光栄ですので何卒宜しくお願い致します
次回は合宿を終えた後に皆で初勝利の
お祝いと期末テストの話しになると思います
それでは次回まで失礼致します!