詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

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先ずは詠深と真深が再会する話になります

次回からアニメやコミックに会わせた
オリジナルストーリーになります

それではご覧下さい


プロローグ "再会"

桜の花びらが舞う3月末

 

二日前に中学校を卒業して新越谷高校への

入学を迎える前の春休みを満喫していた

武田詠深はその日自宅でソワソワしていた

 

 

「詠深、少し落ち着いたら?」

 

 

「でも、お母さん!

今日は真深ちゃんが帰ってくる日なんだよ

楽しみでジッとしてなんてしてられないよ」

 

 

「ふふふ、それもそうね」

 

 

娘(詠深)の様子を見て微笑む詠深の母親

今日は4年前にアメリカに引っ越しした

従姉妹の上杉真深が帰国してくる日なのである

 

春からは一緒に新越谷高校に進学することも

決まっていたので詠深は従姉妹の真深に

会える今日という日を楽しみにしていたのだ

 

 

そして数分後……

 

 

ピンポーーーン

 

 

詠深の家のインターホンがなった

 

 

「あっ、来た!!」

 

 

インターホンの音を聴いた詠深が

一目散に玄関へと走っていき扉を開けると

 

 

「詠深、久し振り、元気してた?」

 

 

「真深ちゃん!」

 

 

扉の前に立っていた背の高い少女に

詠深は満面の笑みを浮かべながら飛び付いた

 

 

「うふふ、相変わらずね詠深は」

 

 

「ぶぅ~~~、真深ちゃんは

私に久し振りに会えて嬉しくないの?」

 

 

飛び付いた詠深に苦笑いを浮かべる真深に

詠深が不満そうに顔を膨らませると

 

 

「ふふふ、照れてるのよ詠深ちゃん

真深ったら何日も前から"詠深に会える"って

ずっと楽しみにしていたんだから」

 

 

「もう、お母さん……」

 

 

横に立っていた母親からのカミングアウトに

恥ずかしそうにしながらも真深は笑みを浮かべる

 

 

「なんだ、そうだったんだ

真深ちゃんって恥ずかしがり屋だったんだね」

 

 

「アハハ……」

 

 

詠深にそう言われ再び苦笑いを

浮かべながらも恥ずかしそうに

真深が顔を赤く染めていると

 

 

「姉さん、久しぶり」

 

 

「深代、元気そうね」

 

 

詠深の母親も玄関にやって来て

真深の母親と久し振りに言葉を交わす

因みに詠深の母親の深代は真深の母親の妹だ

 

 

「真深ちゃんもお久しぶりね

すっかり体も大きくなって綺麗になって

本当に見違えっちゃったわよ」

 

 

「詠深のお母さん、お久しぶりです」

 

 

「フフフ……さあ、上がって上がって」

 

 

「「おじゃまします」」

 

 

詠深の母親に促され家に入る真深と真深の母親

その後はお菓子を食べたりお茶を飲みながら

互いの話に花を咲かせている

 

 

「引っ越しの荷物は大丈夫なの?」

 

 

「えぇ、さっき家に行ってみたら

もう届いてたから明日は家族全員で片付けるわ」

 

 

「だったら私も手伝うよ。良いよね、お母さん?」

 

 

「勿論よ、お母さんも手伝いに行くわ」

 

 

「えっ……でも深代だって忙しいんじゃない?」

 

 

「平気よ姉さん、家も近いし、どうせ暇なんだし」

 

 

「悪いわね……じゃあお願いするわ」

 

 

詠深と真深、二人の母親の四人で

引っ越しの後片付けのやり取りが決まった

 

因みに真深の家はアメリカに引っ越す前に

住んでいた家と同じ詠深の家の近所なのだ

 

真深の家族がアメリカに行っている期間は

真深の父親の会社の後輩が住んでいたのだ

 

引っ越しの話を終えた後は些細な会話を

楽しんでいたが不意に二人の母親が

詠深と真深に、ある提案をして来た

 

 

「そうだ! 再会を祝って

久し振りに二人で小さい頃に遊んでた公園で

キャッチボールでもしてきたらどうかしら?」

 

 

「そうね、行ってきなさいな」

 

 

「「…………」」

 

 

互いの母親に進められた瞬間

一瞬だけ躊躇の様子を見せた詠深と真深だったが

 

 

「……そうだね、やろうよ真深ちゃん」

 

 

「……そうね、行きましょうか」

 

 

折角だからと二人はグローブを

持って公園へと出掛けていくと

キャッチボールを初めたのだが

暫く沈黙が続いておりボールがグローブに

収まる音だけが永遠と鳴り響いていたのだ

 

 

「「…………」」

 

 

黙々とキャッチボールを続けるなかで

先に沈黙を破ったのは真深の方だった

 

 

「ねぇ、詠深」

 

 

「なに、真深ちゃん?」

 

 

「私がアメリカに引っ越してから何かあった?」

 

 

「……どうして?」

 

 

「だって昔は楽しそうに

キャッチボールしてたのに

今はなんかつまらなそうだから

野球に飽きちゃったのかなと思って?」

 

 

「そう言う真深ちゃんこそ

お母さん達にキャッチボールを

進められた時に気が進まなそうだったじゃん

アメリカに引っ越してから野球はしなかったの?」

 

 

詠深に尋ねられ真深は静かに話し初めた

 

 

「勿論、やってたよ……だって好きだもん」

 

 

「真深ちゃんは打撃が好きだったもんね」

 

 

「うん……でも流石にアメリカは

野球の本場なだけあって体格も技術も

私より凄い娘ばかりで私じゃチームに

入ってもベンチにすら入れなかったわ」

 

 

「やっぱりアメリカの娘って凄いんだ」

 

 

「うん……でも私は野球が大好きだから

レギュラーを取るために最初の1年間は

ひたすら体を鍛えて他の娘より素振りも

沢山してきたわ」

 

 

「流石、真深ちゃん」

 

 

昔から真深が努力家だったことを

知っていた詠深がアメリカでも

野球を続ける為の努力を続けた

真深を称賛する

 

 

「それから1年くらいたった時かな?

私が毎日トレーニングしていたのをチームの

主将が見ていてくれてたみたいで監督に私を

使ってやってくれって進言してくれてたのよ」

 

 

「凄い、それでそれで!?」

 

 

「監督も私の足の早さと外野手としての

守備力を評価してくれてたこともあって

ある日突然、先発メンバーで起用されてね

その試合で私はホームランを2本打ったわ」

 

 

「アメリカの投手からホームランを2本!?」

 

 

野球の本場アメリカで先発メンバーに

選ばれただけで凄いのにホームランを

2本も打ったと聞いて詠深は興奮を隠せなくなる

 

 

「その試合で主将も監督も先輩も

私を評価してくれて丁度チームの

レフトのレギュラー選手が不調で

結果が出ていなかった事もあって次の試合から

私がレフトのレギュラーメンバーに選ばれたの」

 

 

そう言って真深は監督に言われた言葉を思い出した

実は真深がレギュラーになる前にレフトの守備の

レギュラーだった選手は真深と同世代だったのだが

特待生として入学し入部したことに加え才能に溺れ

練習もそこそこにボーイフレンドと遊び呆けていて

監督と主将が問題視していたので主将は監督に対し

真深を使うように進言し監督も試合で見せた真深の

実力と練習態度を高く評価したことを告げて真深に

レギュラーメンバーに選んだことを告げていたのだ

その話を詠深に話すと詠深は目を輝かせていた

 

 

「凄い、凄いよ真深ちゃん!」

 

 

「ありがとう。それから一年間は楽しかったわ

試合に出られてホームランも定期的に打ったら

4番を打っていた主将の次の打者を任されたし

監督や主将や先輩たちも喜んでくれてたからね」

 

 

「5番レフトか……格好いいな」

 

 

「でも同世代の娘からは目の敵にされちゃって」

 

 

「えっ、どうして?」

 

 

「当時のレギュラーメンバーは

私以外は全員が上級生だったし

私にレギュラーを奪われた形になった娘が

同世代の中でリーダー格な感じだったのよ

それでその娘に同調するように同世代の

メンバーから目の敵にされたみたいでね

私が試合で結果を出すと喜んでくれてた

先輩たちに対して同世代の娘たちからは

気に入らなそうな態度までされちゃって

主将は悔しければ真面目に練習しろって

注意してたけどそれが逆に拍車をかけたわ」

 

 

「何それ、逆恨みじゃん!?」

 

 

話を聞いた詠深は憤った表情と声を出す

レギュラーを得るために真面目に練習し

レギュラーを掴んだ後もトレーニングを

怠らなかった真深に対し彼氏と遊んだり

練習を疎かにした娘が真深を目の敵に

するなど逆恨みどころの話ではなかった

 

 

「その後はどうしたの?」

 

 

「先輩たちが高校に進級して

チームを去ってからは最悪だったわ

監督からは引き続き信頼されたから

3年目は4番を任されたけど監督の

目がない所で『東洋人の癖に』って

言われた挙げ句に後輩のメンバーが

私に声をかけようとする娘が居たら

『ソイツに構うな』って叱られてね」

 

 

「…………」(;゚Д゚)

 

 

そこまで聞かされて詠深は怒りを通り越し

唖然とした表情になり呆れ果ててしまった

 

 

「んで、試合でも練習でも

孤立してる内に野球への熱意が冷めちゃって

日本に帰ったら野球は辞めようと思ったのよ」

 

 

「……そうだったんだ、大変だったね」

 

 

そんな体験をしては野球を辞めようと

思ってしまっても仕方がないと詠深が

納得していると今度は真深が詠深に尋ねてきた

 

 

「詠深は? 中学校で野球はしてなかったの?」

 

 

真深に中学校の時のことを聞かれると

詠深も何やら虚しそうな様子で話し初めた

 

 

「中学でも野球はしてたよ……だけど」

 

 

「だけど?」

 

 

「私の中学校の野球部は親睦会みたいな

感じで勝つ気が全然無いチームだったの」

 

 

「そっか……」

 

 

「うん……チームでは私がエースだったんだけど

それは私が他の投手よりもストライクが入るって

理由だけだったんだ」

 

 

「詠深はコントロールが抜群だものね」

 

 

真深は小さい頃から詠深の投球の

コントロールが良かったことを思い出した

 

 

「公式戦は3年とも初戦敗退だったし

時々やってた練習試合でも勝ったこと無くて」

 

 

「そっか……」

 

 

「それでも投げるからには勝ちたかったから

相手の打者に簡単には打たれないような球を

投げたいと思って頑張って練習して習得した

"あの球"も無駄になっちゃったから……」

 

 

真深は詠深の"あの球"という

ワードに瞬時に反応した

 

 

「詠深……"あの球"って?」

 

 

「覚えてない?

小さい頃カラーボールで投げたよく曲がる球」

 

 

「もしかして、あの魔球のこと!?」

 

 

「うん……」

 

 

「アレを硬球で投げられたの!?」

 

 

「うん……」

 

 

真深は詠深が小さい頃にカラーボールで

編み出した球を思い出して驚きの声をあげた

あの変化は柔らかいカラーボールだったから

投げられた球で硬球では無理だと思ったからだ

 

 

「ちょっと投げてみて」

 

 

真深はそう言うと捕手のようにグローブを構えた

 

 

「……いくよ」

 

 

「うん」

 

 

詠深は振りかぶると投手の時と

同じようにボールを真深へと投げると

スッポ抜けたと思われたボールはスピードを

落とさず大きく曲がりながら真深に飛んで来た

 

 

「うわっ!?」

 

 

あまりの変化に真深は捕球できず

ボールは後ろに大きく逸れていってしまった

それを見た真深は興奮しながら詠深を褒めた

 

 

「凄いわ詠深!」

 

 

「そう?」

 

 

「えぇ! カラーボールで投げてたのと

殆ど同じ変化球を硬球で投げれるなんて

あんな球、アメリカでも見たこと無いわよ」

 

 

「えへへ、ありがとう」

 

 

真深に褒められて詠深も嬉しそうだ

 

 

「こんな変化球を投げれたのに勝てなかったの?」

 

 

「…………」

 

 

真深の、その言葉に詠深は俯いた

 

 

「詠深?」

 

 

詠深の様子に気付き真深が首を傾げると

 

 

「捕ってくれる娘が居なかったから……」

 

 

「あっ……」

 

 

寂しそうに口にした詠深の真深は言葉を失った

 

どんなに良い変化球が投げられても

それを捕れる捕手が居なければ宝の持ち腐れだ

 

先程詠深から中学の野球部は勝つ気の無いような

やる気の無いチームと聞いたので詠深のチームの

捕手が詠深の"あの球"を捕れるようになるための

努力もしなければ練習すらもしてなかったのだと

真深は瞬時に理解した

 

 

「それにチーム打率も低かったし」

 

 

捕手はやる気がなく打線も平凡では

どんなに詠深が頑張っても無意味だ

野球はチームでやるスポーツだから

全員で勝つために練習をするべきなのに

詠深のチームはそれを疎かにしてたのだ

それを聴いた真深は憤りを隠せなくなる

 

 

「はっきり言わせてもらうけど

そのチームは詠深に相応しくないチームね

選手はマトモに練習もせずに監督もそれを

気にせずに放置するなんてどうかしてるわ

詠深の努力を何だと思ってたのかしら!?」

 

 

「真深ちゃん……」

 

 

自分のために怒ってくれる真深に

詠深の胸が少し熱くなるものがあった

 

 

「頑張って練習したのに

チームに恵まれなかった詠深の境遇と比べたら

それなりに勝ててた私の境遇なんてまだマシね」

 

 

「そんなことないよ!?

差別的なことを言われてきた

真深ちゃんの方がずっと大変だったよ

私なら精神的に病んでたかもしれない」

 

 

互いの境遇を聞いて自分の方が相手より

マシな境遇だったと同時に思う詠深と真深であった

 

 

「だから高校に入ったら野球部に入らずに

3年間のんびり過ごそうと思ってたんだよ

新越谷高校も制服が可愛いって理由だけで

選んだし新越谷の野球部って去年不祥事を

起こして今年の4月まで活動禁止らしいし」

 

 

「……そっか

だったら丁度良かったかな?

私も詠深が入学するって理由だけで

新越谷高校に進学することにしたし

野球部が活動禁止なら丁度良いかも」

 

 

「そうだね……」

 

 

詠深のその言葉を最後に二人は再び沈黙するが

やがて真深が残念そうに詠深に声をかける

 

 

「でも勿体無いわ」

 

 

「え?」

 

 

「だってアレだけの変化球を

投げられるのに辞めちゃうなんて」

 

 

「それを言うなら真深ちゃんこそ

アメリカでホームランを打てるくらいの

打撃力があるのに辞めちゃうなんて勿体無いよ

真深ちゃんの事を知ったら強豪校も欲しがるよ」

 

 

「そうかしら?」

 

 

「そうだよ!」

 

 

今度は互いに相手が野球を

辞めることを残念だと口にし始めると

 

 

「「………………」」

 

 

「「アハハハハハ」」

 

 

互いに黙り込んだ後に笑いあってしまう

 

 

「新越谷高校では互いに良い思いで作ろうね」

 

 

「えぇ、宜しくね詠深」

 

 

「宜しく真深ちゃん!」

 

 

最後に互いに言葉を送り合うと

二人は暫くキャッチボールを続けたのだった

 

しかしこの時の二人は想像もしていなかった

新越谷高校で小さい頃に野球で遊んだ二人の

親友と再会し最高の仲間に出会い共に野球を

続けることになるとは……

 

 




詠深と真深の再会の話でした



因みに詠深の母親に勝手に名前付けちゃいました

武田深代(たけだ みよ)

ただ単に詠深の名前をひっくり返しただけです



次回は新越谷高校入学の話になります
詠深と真深が珠姫と再会し川口姉妹と出会います
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