そして遂に宿敵2人が再会の時を迎えます
では、どのような再会になるかご覧下さいませ!
いよいよ開会式を週末に迎えた平日
「「おはよう」」
「真深、詠深! おはよう」
「ねぇ、2人とも! コレ見て!」
真深と詠深が教室に入ると息吹と芳乃が
読んでいた雑誌を真深と詠深にも見せた
「週刊ペナント増刊号!
埼玉大学の特集で新越谷も載ってるんだよ!」
芳乃が見せてくれた週間ペナントには
今年の夏の埼玉大会に出場する全ての
チームが写真と一緒に掲載されていて
そこには新越谷のことも書かれていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【新越谷】
『1年生主体の新チームで再スタート』
1年生9人、2年生2人と今大会
県内で最も平均年齢の低いチーム
1年生エースの武田はコントロールの良い直球と
変化の大きいスライダー系の球で打者を打ち取る
スタミナもあり試合を作ることが出来る投手
打線は俊足巧打の1番打者の中村の出塁が鍵
4番と5番には長打力と勝負強さが持ち味の
上杉と主将の岡田が控えており早い回で点を
奪い主導権を握れば躍進も期待できる
チームを率いるのはコーチも務める藤井監督
藤井監督は新越谷高校の野球部OGで
かつて『埼玉四強』と呼ばれた時代に
レギュラーとして活躍していた
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「うんうん!
ちゃんと書かれてるし、皆の写真写りも良いね」
書かれていた記事と数日前に週間ペナントの
記者が取材で撮った写真を芳乃が満足そうに
髪をピョコピョコさせながら見入っていると
「おはよ」
珠姫が4人の教室を訪ねてきた
「タマちゃん、おはよーー!」
「おはよう、珠姫!」
詠深と真深が珠姫と朝の挨拶を交わすと
珠姫も読んでいる雑誌に気づいて芳乃に
雑誌を見せてもらう
「……4月まで停部になっていて
練習試合も8試合しかやってない割に
詠深の球種や私の打撃だけじゃなくて
希ちゃんや怜先輩の事まで書かれてるわね」
「確かに……柳大川越以外の
対戦相手は県外のチームだったのにね」
監督同士が知り合いで試合が組めた
柳大川越を除く他の県内のチームは
練習試合を受けてくれないだろうと
考えていたこともあるが折角だから
真深の打撃や詠深の"あの球"を始め
チームのデータが県内の他の高校に
知られない方が良いだろうと県外の
チームと練習試合を組んできたにも
関わらず簡単ながらチームの主力の
選手や藤井先生のことまでが記事に
書かれているのを見た真深と息吹が
意外そうな表情で呟いた
「記者の情報網は広いからね
何かしらの方法で知ったんだろうね?
でもコレくらいの内容だったら大して
他校に警戒される程じゃないと思うよ」
「多分ね……でも、この写真欲しいかも?」
そんな2人の呟きに問題ないだろうと
答えた芳乃に珠姫も同調すると雑誌の
メンバーの写った写真を欲しそうにしたが不意に
詠深が珠姫が持っていた手提げの中身に気づいた
「何、これ?」
「あっ! それは……」
詠深は珠姫の断りもなしに、それを手に取った
「吉川さんのデータ……こんなに詳しく……」
それは梁幽館の2番手投手で
珠姫のガールズ時代の先輩の
吉川のデータが書かれた用紙だった
そしてそれを見た詠深の表情は
不満そうになり瞳から光が消え
曇った瞳に変わったので真深は
その横で呆れた表情になっていた
「……そういうのじゃないから」
「そういうのってどういうの?」
「だから!
芳乃ちゃんに渡すために作ったの!
勝つために!」
「へぇ~~、そっか……
じゃあタマちゃんの元チームメイトがいる
梁幽館のページでも見てみよっか……
前にタマちゃんとバッテリーを組んでいた
吉川さんはどこかな~~?」
そう言って詠深は不満そうに
梁幽館のページを探し始めた
(ハァ~~、めんどくさい)
珠姫は溜め息を吹きながら
芳乃に吉川のデータを手渡すと
(珠姫……いつも、ゴメンね)
(いいよ……もう、慣れたし)
(アハハ……)
そんな珠姫に詠深の従姉妹である
真深が困り顔になりながら謝罪していた
「あった! 梁幽館!」
そんな二人のことなど知るよしもない
当の詠深が梁幽館のページを見つけて
一転してテンションがあがって声をあげた
「さすが名門だね……4ページもある」
梁幽館の情報は強豪校らしく4ページ
しかもその内の1ページは注目選手の
中田奈緒と陽秋月の二人の写真に使う
豪華さであった
「"中田さん"と"陽さん"……」
「この2人はプロも注目してるよ」
真深たちも梁幽館のエースで4番の
中田奈緒と6割打者の陽秋月の写真に目を向ける
「プロも注目かぁ……早くやりたいなぁ」
今や詠深は梁幽館との対戦が楽しみで
仕方がないために目を輝かせている
「まずは、初戦で勝たないとね」
「先の事ばかり気にしていると
油断が生じて足元を掬われるわよ」
「うん!」
梁幽館は確かに気になるが
まずは影森戦に勝たなくては意味がない
珠姫と真深の言葉に詠深も気合い十分に
頷くと更にページを捲って他の高校の
記事を見ようとすると
「あっ……」
とあるページでページを捲る詠深の手が止まった
「咲桜高校……」
梁幽館と並ぶ名門校……咲桜のページであった
咲桜もページが4ページ使われる豪華だったが
「あっ! ユイさんだ……」
3年生の選手が殆どの注目選手の中にユイも
写真と共に紹介が書かれている項目もあった
「ユイさん凄い……
小関さんや田辺さんを初めとする
3年生の注目選手と一緒に紹介されてる」
芳乃が驚きと感動が混ざったような様子になる
「アメリカでも注目されたスター選手だし
日本の高校球女の1年生レベルじゃないし当然ね」
息吹は納得した様子で芳乃の横で呟いた
「やっぱりユイさんとも対戦したいな」
「そうだね……そのためにも頑張ろう」
「うん!」
改めてユイと対戦したいと呟いた詠深に
珠姫も勇気づけるように詠深を鼓舞した
(ユイ……)
一方で真深は高校野球の雑誌にユイが
写っているのを見て改めてユイが本当に
自分と対戦したいがためにアメリカの
高校を辞め日本に留学したのだと自覚し
静かに気を引き締めていたのであった
ーーそれから数日後の開会式当日ーー
開会式が行われる大宮公園野球場には
大会に出場する全てのチームの選手が
集結していて勿論その中には新越谷の
メンバー全員の姿もあった
「見渡す限りの……野球選手!」
「テレビや漫画で見るのと遜色ない風景です
あっ! あの方……私と同じ9番です!」
「おっ! あの6番、でけぇ~な!」
早速、芳乃と白菊と稜が
大はしゃぎをしながら周りを見渡している
「もう、はしゃぎ過ぎ……」
「まあ、緊張するよりは良いか……」
そんな3人に菫と怜が苦笑いを浮かべている
「やっぱり2番は、大きい人が多いな……」
その側では珠姫も周りを見渡し自分と同じ
正捕手の背番号である2番を着ける他校の
選手を見ていたがその殆どの選手が体格が
良くなかで比較的に小柄であることに対し
引け目を感じてしまいそうになる
「体格なんて関係ないわ、珠姫」
「真深ちゃん……?」
すると、そんな珠姫に真深が横から声をかけた
「捕手で1番大事なことは
投手の良さを引き出すことよ
その点、珠姫はそこらの捕手よりも
優れているんだから自信をもってね」
「真深ちゃん……そうだよね、ありがとう!」
「フフッ」
捕手に大事なことは体格ではないという
真深の言葉に珠姫はいつもの表情に戻り
それを見た真深も安堵の笑みになる
すると……
「珠姫ちゃん、真深ちゃん……あれ」
芳乃に言われ珠姫と真深が振り向くと
「初戦の相手……影森高校だ」
初戦で当たる影森の選手たちがいたのだが
「全員で固まってるわね……」
影森の選手たちは集団で
目立たない所でしゃがんで固まっていた
無理やり連れ出されたように寄り添って
「なんか冬を越す、てんとう虫みたいね……」
「たっ、確かに(´∀`)……挨拶しておく?」
てんとう虫見たいという真深の例えに
珠姫は一瞬、笑いそうになりながらも
挨拶に行くことを提案するが
「やめとこ……あそこに入っていけば……」
「そうね……近づくな&話しかけるな
オーラが凄いからなにもしない方が良いわ」
「だね……」
芳乃と真深に言われて
珠姫も挨拶に行くことを諦めた
「それにしても詠深たちトイレ遅いな」
「どうせ油売ってますよ」
少し前にトイレに行った
詠深と息吹と希がなかなか戻らないので
心配する怜に対して菫は確信したように
3人が寄り道している事を予測していた
「他校の生徒に絡んでなきゃいいけど……」
「まぁ、大丈夫だよ」
「希とか強豪校を見つけたら
その場で挑んで行きそうだしな〜」
「希ちゃんなら、やりそうね……」
珠姫、芳乃、稜、真深は、その場で遭遇した強豪校に
試合を申し込んでいる希の姿が容易に想像できた
ーーその頃の詠深たちーー
「迷った~~」
「その辺、歩いてれば、辿り着くでしょ」
「強いチーム見つけたら練習試合申し込むけん」
メンバーの予想通りに希は
強豪校に絡む気満々であった
すると……
「おっ! 噂をすればDシード! 柳大川越!」
偶然、3人は柳大川越のメンバーに出会った
「出たね! 今度は絶対打つけんね!」
「どうかな?
こっちもスピード上がったし……」
「今から勝負して!」
「大会でね……」
そして早速、希は朝倉に挑み
思わず朝倉も困り顔になっていた
「そういえば……
梁幽館の山を引いたんだって? 大変ね……」
「そうなんですよ……参りましたよ~~」
(全然、参ってるように見えないわよ……)
柳大川越のエースの大野が詠深に
梁幽館と2戦目で当たることになったことを
指摘したが参ったと言いながらマイペースな
詠深の様子を見て呆れた表情になっていた
「私たちが当たるのは準々決勝……
ベスト8やね! 今度は負けんけんね!」
「こっちだってアンタ達に
3点とられた借りがあるんだからね
途中で負けるんじゃないわよ」
「「はい!」」
「うん!」
大野なりの激励に
詠深も息吹も希も気合い十分に答えると
直後に大野と朝倉は周囲を見渡し始めた
「そういえば、貴女の従姉妹は居ないの?」
そして大野は詠深の従姉妹……
つまり真深の居場所を尋ねてきた
どうやら詠深が現れたので真深も
近くにいると思って尋ねたらしい
「真深ちゃんですか?
実は私たちトイレに行っていて
戻る途中だったんですけど迷っちゃって」
(何やってるんだか……)
迷ったと言いながら困った様子を
全く感じない詠深に大野は今度は
唖然としてしまっていた
「……なら彼女に伝えておいて
"必ず勝ち上がって私と勝負するのよ"……って」
「私からも良いかな?
"新しい変化球を覚えたから
次は打たせないよ"……ってね」
「!!」
大野と朝倉に頼まれた真深への伝言に詠深は
先程までのマイペース笑顔から"ハッ"とした
表情に変わった
(そうか……大野さんと朝倉さんも
真深ちゃんと対戦したい投手の1人なんだ)
そして柳大川越との練習試合の後に
大野が真深と再戦を誓い合った事を思い出した
「分かりました。必ず伝えます!」
「頼んだわよ」
「宜しくね」
「はい!」
詠深は大野と朝倉からの伝言を
必ず真深に伝えることを約束をしてから
息吹と希と一緒に、その場を立ち去っていった
ーーその頃、真深たちーー
「ねぇ……ちょっと探しにいく?」
なかなか詠深たちが戻ってこないので
流石に理沙は心配になってきたらしい
「いえ……理沙先輩に手間をかけさせるのは
流石に申し訳ないですから私が探してきます」
「あっ! 真深ちゃん、私も……」
詠深たちを探しにいこうとする真深に
珠姫も同行を志願しようとした時だった
「珠姫……?」
「えっ?」
胸元に"RYOYU"と書かれている梁幽館の
ユニフォームを着た背番号が18番の選手が
後ろから珠姫に声をかけてきた
「やっぱり、珠姫だ!」
「和美先輩……」
その人こそ珠姫の美南ガールズ時代の先輩で
梁幽館の2番手投手の吉川和美選手であった
「珠姫~~!
久しぶりじゃないの!
会いたかったよ~~!」
「お久しぶりです……」
吉川は嬉しそうに珠姫に抱きついてきたので
珠姫は苦笑いをしながら受け止めたのだった
「珠姫! 結構成長したんじゃないの~~?」
「和美さんも体、大きくなりましたね」
「でしょ?
梁幽館のキツ〜い練習で鍛えられたからね
先輩方は、もっとすごいぞ~~!」
2年生の吉川でコレほど鍛えられてるなら
中田や陽を初めとした3年生の選手たちは
どれだけなのだろうと真深が考えていると
「それは早く見てみたいですね〜
さすが梁幽館! 引き締まってます!」
芳乃が他校の選手だろうと
お構いなしに吉川の足を触っていた
「何、この子は……?」
「ウチの秘密兵器……」
突然、足に触れられ動揺する吉川に
珠姫は再び苦笑いをしながら答えた
「しかし新越谷に入ってたとはねぇ
早速当たるかもしれないじゃないの」
「そうですね……」
「でも珠姫よぉ……
なんで梁幽館に来なかったんだよ
監督にも強く推しておいたんだよ
スカウトだって来てたでしょ?」
「はぁ……」
「珠姫ならベンチ入りできるのに
また珠姫とバッチリ組みたかったなぁ……」
吉川の発言に芳乃を初めとした
一部の新越谷のメンバーが不満そうな表情になる
「相変わらず自分勝手ですね
そんな事言ってると今の捕手に失礼ですよ」
確かに今の言葉をチームの正捕手の選手が
聞いたら気を悪くするだろう真深も思った
「それに私じゃ梁幽館は無理です
寮に入ってまで野球したくはないですし」
(確かに私も寮に入るのは嫌ね……)
実は真深もアメリカで野球が名門の高校から
両親が日本に帰国しても真深はアメリカに残り
寮に入らないかというスカウトを受けたことが
あるのだが詠深と一緒の高校に行く約束を守る
理由の他に寮に入ることに抵抗を感じたことも
スカウトを断った理由の1つでもあったのだ
故に仮に梁幽館が真深のことを知り
スカウトをしていたとしても真深を
獲得することは出来なかっただろう
「この〜~、生意気言ってからに!
まぁ、野球続けてるならいっか~~♪」
そんな感じで暫く吉川が
珠姫と親しそうに絡んでいると
「タマちゃん、その人は……?」
「詠深、いつの間に……」
いつの間にか詠深が戻ってきていて
その瞳からは光が消え曇った瞳に変わっていた
「おかえり詠深ちゃん。えっとこの人は……」
また詠深が、めんどくさいことをすると危惧し
慌てて珠姫が吉川のことを説明しようとすると
「そっか、そっか……
あなたが新越谷の1番さんね」
慌てる珠姫とは対照的に吉川は
現れた詠深を見て興味深そうにすると
「梁幽館の吉川和美です
美南ガールズで珠姫とバッテリー組んでました」
そんな詠深に吉川は美南ガールズで
珠姫とバッテリーを組んでいたことを
誇らしそうにしながら自己紹介をした
「武田詠深です。今は "私が!"
タマちゃんとバッテリー組んでます」
そして詠深は、あからさまに"私が!"を
強調して焼きもち見え見えの自己紹介をした
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
そして互いに視線をバチバチとさせながら
相手の強く手を握りしめながら握手をした
「珠姫ってさ
めっちゃ投げやすいでしょ 」
「いい音で捕ってくれて気持ちいいですよね」
「年下のくせに強気なリードでさぁ
ガールズ時代ではいつも従わされてたよ」
「私もいつも引っ張ってもらってます~~」
今度は吉川と詠深による
珠姫の自慢話の応酬が始まった
「試合後いつも反省会とか言って
引っ付いてくるのが、かわいかったなぁ」
「私は試合後に限らずいつもなんですよ〜」
「捏造で張り合わないで!
ベタベタしてくるのはアンタたちでしょうが」
流石に聞き捨てならぬ捏造で
口論されたので珠姫もバッサリ否定した
どうやら吉川は性格もプレイスタイルも
詠深に似たタイプなようである
「まぁ……珠姫がいなかったら
今の私はなかったからね……感謝してるよ」
「私もです……
タマちゃんと真深ちゃんが
いなかったら私は、ここにいなかったし」
「真深ちゃん?」
珠姫が捏造を否定すると一転して
二人は珠姫への感謝の言葉を口にしたが
詠深が真深の名前を出したので吉川が首を傾げた
「彼女です! 私の従姉妹なんです」
そう言って詠深は真深を指差した
「はじめまして
武田詠深の従姉妹の上杉真深です」
詠深に紹介されたので
真深も自己紹介をして吉川にお辞儀をした
(うわっ! スッゴい美人……モデルかよ!?)
真深の姿を見た吉川は真深の容姿と
スタイルの良さに思わず驚いてしまっていた
「小さい頃から私と真深ちゃんと
タマちゃんの3人と野球で遊んでいたんですよ」
「ふっ、ふぅ~ん……そうなんだ」
吉川は真深の容姿に動揺しながらも
辛うじて詠深の自慢話に焼きもちを焼いた
するとそこへ……
「いたいた……和美、早く戻るわよ!
目を離すとすぐいなくなる……皆、怒ってるよ」
やって来たのは梁幽館の正捕手で
吉川と同じ2年生の小林依織だった
「ゴメンゴメン……もう戻るよ」
小林に叱られ吉川は苦笑いを浮かべている
(小林さん……私と大差ない体格なのに
梁幽館の正捕手だなんて凄いなー)
珠姫は自分と同じくらいの体格の
小林が梁幽館の正捕手であることを
驚きながらも親近感を感じたようだ
「珠姫! 武田さん! 上杉さん!
続きは試合でやろっか……初戦勝ちなよ!」
「言われなくたって!」
吉川からの激励に詠深は力強く答える
その様子に珠姫と真深……そして新越谷の
メンバーも漸く詠深と吉川のやり取りが
終わったと安堵したのだったが……
「ところで詠深さんや〜~
珠姫とお風呂入ったことある?
すっごいんだよアイツーー」
「なっ!? そのくらい私だってあります!」
「なにぃぃぃっ!?」
二人は再び珠姫の自慢話を始めてしまった
「いつまで続くのかしら、このやり取り?」
「もう、知らない……」
繰り広げられる詠深と吉川のやり取りに
最早、憂鬱な気分になってしまう真深と珠姫
小林も無理やり連れ帰ろうとするのだが
吉川も意地になってしまい終わりそうもない
他の新越谷のメンバーも苦笑いを浮かべたり
楽しそうに見てたりしていたので彼女たちは
気が付かなかった
自分たち以外の高校のチームの選手たちが
ザワついている事と背後から近づいている
人物がいることに……
そして……
「真深」
「!?」
後ろから話しかけられた声を聞いた瞬間に真深の
表情から苦笑いが消えると鋭い目付きに変わった
「ユイ……」
そして真深が静かに後ろを振り替えると
咲桜のユニフォームを着たユイの姿があった
ユイが真深に留学を宣言した、あの公園での
会話から1年ぶりとなる、2人の再会だった
(ユッ、ユイさんだ!?)
(なっ、ウィラード!? なんで此処に!?)
そしてユイが現れたことにより詠深と吉川も
悪ふざけを止め新越谷のメンバーや梁幽館の
二人だけでなく周囲も緊迫感に襲われる
視線を会わせる真深とユイの二人から
龍虎が見えてる様な感じがしたからだ
「久しぶりね、真深」
「えぇ……1年ぶり
正確には1年と2ヶ月ぶりかしら?」
「そうね……あの時から
ずっと、この時を待っていたわ」
睨み合う真深とユイだが
その表情の内には互いに再会を
嬉しそうにする雰囲気も感じられる
「たっ、珠姫……何、この緊張感?
上杉さんって、ウィラードと知り合いなの?」
「えっ?……さっ、さあ」
吉川から真深とユイの関係を
尋ねられる珠姫だったが真深の経歴を
梁幽館に知られるわけにはいかなかったので
申し訳なく思いながらも誤魔化したのだった
するとユイは詠深の元へと歩み寄ってきた
「貴女が"武田詠深"さん?」
「えっ? はっ、はい! 武田……詠深、です」
ユイに声をかけられて詠深は
緊張しながらユイに返事と自己紹介をした
「はじめまして、ユイです
貴女のことは真深から聞いているわ」
「そっ、そうなんですか?」
「えぇ……だから、どんな投手なのか
私も先輩たちも楽しみにしているんですよ」
そう言ってユイは詠深に手を出し握手を求めた
「はっ、はい……(ユイさんと咲桜が私を?)」
そして詠深は緊張しながらもユイと
握手を交わすと自分のことをユイと
咲桜が意識していると聞かされて
耳を疑いそうになってしまっていた
そしてユイは詠深との握手を終えると
再び真深の元に歩み寄って真横に立つと
周りに聞こえないように小さな声で囁いた
「準決勝で当たるのを楽しみにしてるわ」
「お互いに勝ち上がればね……
そっち(咲桜)はまだしもウチは
ノーシードで2戦目が梁幽館か
埼玉宗陣だから約束できないわ」
「貴女のチームなら、既にシード校並みの
レベルにはなってるでしょ? 期待しているわ」
「随分と期待されたものね……
まあ、期待に応えられるように頑張ってみせるわ」
「フフッ、それから言っておくけど
咲桜の先輩たちには真深の経歴を全て
話しておいたから隠そうとしても無駄よ
最も準決勝まで来た頃には真深も他校から
警戒される打者になっているかもしれないから
隠してきた意味なくなってるかもしれないわね」
「そう……」
「フフッ……それじゃあ、お互い頑張りましょう」
「ええ、もちろん」
真深との小声での会話を終えると
ユイは抽選会で出会った芳乃と怜に
お辞儀をしてその場を去っていった
「さ、さあ……戻るわよ和美」
「あ、あぁ……またね珠姫」
「あっ、はい……」
真深とユイのやり取りが終わると小林は
真深とユイのやり取りを戸惑いながらも
吉川の手を引きながら戻っていった
(なんだよアイツ……
私は眼中にないっていうのか?)
だが吉川は真深と詠深に声をかけながら
自分には目もくれなかったユイに対して
僅かなりとも悔しさと憤りを抱いていた
そして真深とユイのやり取りを見ていた
他校の選手も、どうしてユイが不祥事を
起こした新越谷の選手なんかに声を
かけたのだろうと不思議そうな様子を
見せていたのであった
そして……
「はぁ~~、スゲー緊張したぜ……」
「二人とも、オーラが凄すぎよ……」
「わたくし、動揺してしまいました」
「…………」
ユイが立ち去っていって真深とユイの放つ
緊迫感から解放された稜と息吹は"ホッ"と
一息ついて深呼吸をしており白菊と希の
二人は未だに緊張した表情になっている
「あれがウィラード選手……」
「凄いオーラだったわね……」
「あぁ……私と芳乃と先生も
抽選会で会った時は緊張したからな」
未だユイのオーラに緊張した様子で呟いた
菫と理沙の呟きに怜も改めて同調していた
「えっ? ウィラードと話をしたんですか?」
「あっ、あぁ……ちょっとな
真深が元気かと聞かれただけだ……」
「うん……宜しくって言われて……」
稜に抽選会でユイと会話したことを聞かれ
怜と芳乃は詠深たちへの伝言のことだけを
話さずに、その時の事実を説明した
「そう……やっぱり
真深ちゃんのことを強く意識してるのね」
「ライバルって感じがしましたよね……」
理沙と菫が改めて真深とユイの
間にあるライバル心の強さを理解していた
「ユッ、ユイさんと握手しちゃった……」
「ねぇ、真深ちゃん……ユイさん何だって?」
ユイと握手した右手を見ながら詠深が
感動と戸惑いが混ざった様子でいると
その横から珠姫がユイに囁かれた話の
内容を真深に尋ねた
「私のことを咲桜の部員に話したらしいわ」
「そっ、そうなんだ……」
「まあ留学した理由を聞かれただろうし
チームメイトに隠す必要なんてないから
当然と言えば当然よね……」
「そうだな」
珠姫の質問に答えた真深の言葉に理沙と怜
そして他のメンバーも納得した様子になる
何よりも咲桜が隠したかった真深の経歴を
外部に漏らさないでいてくれて良かったと
ありがたく感じていた
それから暫くして……
《まもなく選手入場を開始します》
開会式の開始を告げるアナウンスが流れてきた
「いよいよ入場ね」
「出陣ですか」
アナウンスに息吹と白菊が緊張した様子になる
「これからテレビに映るよ!
強いチームは行進も良いからね!
左右は私に。テンポは演奏に合わせて
腕と脚をあげて、かっこ良くいこうね」
芳乃から行進する際の最終確認が告げられると
「よしっ、行こう!」
「「「「「「「「 はい! 」」」」」」」」
キャプテンの怜の号令に
全員が声を揃え気合いを入れた
そして観客席から沢山の拍手に迎えられながら
各校の選手たちが次々とグラウンドに入場して
行進をしていき新越谷のメンバーたちも堂々と
しっかりした足取りで行進していく
こうして遂に新越谷の新たな……
そして再スタートとなる夏が始まったのである
ーー 因みに、その日の夕方 ーー
「おーー! 映ってる、映ってる」
開会式が終わって学校に戻ってきた
新越谷のメンバーは開会式の録画を見ていた
「みんなの晴れ舞台! かっこいい!」
メンバーが行進する姿に
感動している芳乃であったが……
「やっぱ11人だと目立つなぁ……」
殆どの高校はベンチ入りメンバーの
再大人数である20人か少なくとも
15人以上で行進している中で
新越谷だけ11人だったために
違う意味で目立っていた新越谷
そして、その中でも……
「手足が同時に出てる奴!(笑)」
「「はぅぅぅ……」」
緊張のあまり手足が同時に出ていた
白菊と息吹の姿が特に目立っていて
恥ずかしさのあまり白菊は顔を手で
覆い隠し息吹は自身に対する落胆の
涙を苦笑いをしながら滝のように
勢いよく流していたのであった
「二人とも……ドンマイ」
そんな二人に真深がフォローしたのであった
真深とユイの再会……如何だったでしょうか?
珠姫と和美の再会と互いの珠姫の自慢話で
詠深と和美が盛り上がっている中でユイが
現れたらなと思って書きました
さて次回は、いよいよ影森との試合になります
納得の行くないようになるまで
何度も書き直していて時間が掛かっていますが
次回の更新もお楽しみにして頂けると幸いです
それでは失礼致します