詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

22 / 45
よっ、漸く書けました……

まさか影森との試合を書くのに
こんなに時間が掛かるなんて
自分でも思いませんでした

この物語でのオリジナル展開を
考えたり書いたりしたのですが
納得できる文章に出来ずにいて
最終的に殆ど原作通りの展開に
なってしました……

しかも今回は息吹が投げる
直前のばめんで終了してしまいました

申し訳ありませんでした……

殆ど原作通りですが真深のセリフが
所々に加わっているのでそれをお楽しみに下さい



第20話 初戦……VS影森高校

遂に影森高校との初戦を明日に迎えた練習日

芳乃から影森高校戦のオーダーが発表された

 

そして発表された打順とポジションは……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【1】 中村 希 (一塁手、3)

 

【2】 藤田 菫 (二塁手、4)

 

【3】 山崎 珠姫 (捕手、2)

 

【4】 岡田 怜 (中堅手、8)

 

【5】 川崎 稜 (遊撃手、6)

 

【6】 藤原 理沙 (投手、5)

 

【7】 大村 白菊 (右翼手、9)

 

【8】 川口 息吹 (左翼手、10)

 

【9】 武田 詠深 (三塁手、1)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「えっ!? 私が先発!?」

 

 

「レフトの先発、私なの!?」

 

 

発表されたオーダーに理沙と

息吹が驚きのあまり後退りしそうになる

 

 

「これを見て」

 

 

そう言って芳乃はタブレットに

記録した昨年の秋以降の影森の

公式戦のスコアを見せる

 

 

 

ーーーー影森高校新チーム後のスコアーーーー

 

 

◯ 1-0 上尾総合 (試合時間:40分)

 

● 1-2 椿峰 (試合時間:55分)

 

◯ 2-1 東応第三 (試合時間:46分)

 

◯ 1-0 高瀬川 (試合時間:48分)

 

● 0-1 柳大川越 (試合時間:1時間01分)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「影森は相手の強弱に関わらず

試合時間が異常に短くロースコアなんです

これは何らかの戦略でハイテンポな展開を

強いて来るのかもしれないからその戦略に

詠深ちゃんの調子を崩されたら大変だから」

 

 

「それに目標は優勝やけんね!

梁幽館に勝てた後の過密日程を

詠深ちゃんだけに頼れんしね!」

 

 

「そう、その通り!

それになるべく早く理沙先輩と

息吹ちゃんを使ってみたいからね」

 

 

タブレットの画面を見せながら

真剣な表情でメンバー全員に説明する

芳乃に希が真っ先に賛成の意を示した

 

 

「それに私たちが影森に勝って2戦目に

進めたら次の相手は"梁幽館"か"埼玉宗陣"

どっちが来ても手ごわいから真深ちゃんの

打撃力と守備力は隠しておきたいと思って」

 

 

「それは言えてるわね……」

 

 

「だな……」

 

 

確かに試合で真深の桁外れな打撃力や

レーザービームが出れば警戒されると

菫と稜も真深を温存する案に納得する

 

 

「それにこれは予測だけど……

その試合に梁幽館と埼玉宗陣から

偵察が見に来る可能性もあるしね

詠深ちゃんを影森戦で温存なのも

それが理由の1つでもあるからね」

 

 

影森に勝利した後のことを考慮した芳乃の

判断を聞いて誰も反論する者は居なかった

 

 

「詠深と真深は、それでいいのか?」

 

 

主将の怜が念のために

詠深と真深の意思を確認すると

 

 

「もちろん投げたいですけど

温存ということはエース扱いで

それは凄く嬉しいですし最近は

三塁手も楽しいですから大丈夫です」

 

 

「私は元から芳乃ちゃんの

判断を尊重するつもりでしたし

温存されるのは信頼されている

証ですから私も嬉しく思います」

 

 

詠深と真深は少し恥ずかしそうにしながらも

信頼されていることを嬉しく思い快く同意した

 

 

「必ず守りますから

どんどん打たせてくださいね! 私みたいに!」

 

 

「ええ」

 

 

詠深は理沙の手を握って

鼓舞すると理沙も笑顔で返した

 

 

「みんなで勝ちましょう!」

 

 

「だな」

 

 

そして真深の言葉に怜が頷くと

他のメンバーも一斉に初戦に向けて

気合いと士気を高めた筈であったのだが

 

 

「だけど私の打順が9番なのは、どうして?」

 

 

詠深は自分を温存することには同意したが

打順が下げられたことに不満そうにするが

 

 

「詠深ちゃん……

今までの練習試合の打率はいくつ?」

 

 

「ギクッ!?」Σ(;`∀´)

 

 

芳乃の指摘に痛いところを

突かれたような表情になる

 

 

「ぶ……」

 

 

「え? 何割って?」

 

 

詠深の声がよく聞き取れなかったので

メンバー全員を代表して稜が再度、聞き返すと

 

 

「".050"です!!」

 

 

「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」

 

 

恥ずかしそうに答えた詠深の

答えに芳乃以外の全員が唖然としてしまった

 

 

「それじゃあ打順下げれても仕方ないぜ」

 

 

「明日打ったら戻るかもだから頑張って」

 

 

「はい……」

 

 

稜と芳乃の言葉に力なく頷いていた

 

こうしてミーティングは無事終わり

影森戦の方針が決まったのであった

 

 

 

 

 

 

 

ーー そして迎えた影森戦当日 ーー

 

 

 

 

 

 

 

新越谷は試合が行われる越谷市民球場に

会場入りするとユニフォームに着替えて

試合開始前のノックを受ける

 

 

「少ないけど……お客さん

見に来てくれる人もいるんだね」

 

 

「けど、ガラガラだなぁ……」

 

 

「まぁ、初戦だし……」

 

 

「まあ、プレッシャーが、なくてありがたいな」

 

 

最初に今日の試合の内野陣がノックを受け

三塁手で先発の詠深と遊撃手で先発の稜が

観客がいることを、ありがたく思っていた

 

 

「次! 外野!」

 

 

内野のノックが終わると続いて

真深、怜、息吹、白菊、と外野陣の

4人がノックを受けていると

 

 

「お嬢〜~!! 頑張れ~~!」

 

 

「ホームラン頼みますぞ~~!」

 

 

球場の一角に道着をした人たちが

集まっていて白菊に声援を送っていた

 

 

「道場の皆さん……お母様も!」

 

 

その人たちを見た白菊が

嬉しそうな笑顔になっている

 

 

「白菊ちゃんの知り合い?」

 

 

「はい! お母様と道場の

皆さんが応援に来てくださったんです」

 

 

「良かったわね、白菊ちゃん

じゃあ、お母さんと皆に良いところ見せないと」

 

 

「はい! 頑張ります!」

 

 

ベンチに戻りながら真深が白菊に声をかけると

白菊の母親と白菊の実家である道場の門下生や

お手伝いの人たちとのことなので真深も白菊が

今日の試合で活躍することを心の中で願った

 

そして新越谷のノックが終わると続いて

影森の試合前のノックが始まったのだが

 

 

「静かなノックだな……」

 

 

「ノックで声出さないチームなんてあるのね」

 

 

大抵のチームは声を出し合ってノックをするが

影森は全員が無言でノックを受けているために

怜と菫が呆気にとられたように呟いている

 

 

「ま! こっちは声出して圧かけて行こうぜ!」

 

 

「その通りだ!」

 

 

前向きな稜の発現に怜も太鼓判を押した

 

そして相手のブルペンを見ると影森の

先発投手の中山が投球練習をしていた

 

 

「相手の先発投手予想通りアンダーね!」

 

 

「息吹のコピーにそっくりだな!」

 

 

「球速以外は息吹ちゃんと同じやん」

 

 

「よくやったぞ、息吹!」

 

 

「きっ、緊張していて

それどころじゃないですよ……」

 

 

菫、稜、希、怜の4人から褒められた息吹だったが

初めての公式戦の為にかなり緊張した様子だった

 

 

そして影森のノックが終わり

遂に試合開始の時を迎えると

新越谷が1回表の守備につく

 

 

(大事な初戦……

まさか私が先発だなんてね)

 

 

先発の理沙は改めて自分が

先発投手としてマウンドに

立てていることに少し緊張していた

 

理沙(と怜)にとって初めての公式戦

 

その試合で先発投手に選ばれるなどと

想像したことも無いので緊張するのも

無理はなかったのだが

 

 

(こんな経験、最初で最後かもしれない

だったら、しっかり味わわないと損よね)

 

 

マウンドに立つ前に三塁手で先発の

詠深を初めとした内野陣からも声を

かけられたこともあって前向きな

気持ちに切り替えていた

 

 

《1回表、影森高校の攻撃は

1番、ショート、山池さん》

 

 

球場に打席に立つ影森の

打者の名前がアナウンスされると

 

 

「プレイ!」

 

 

主審から試合開始のコールが出され

今の新越谷のメンバー全員にとって

初となる公式戦の試合が始まった

 

そして最初に迎えた影森の打者だが

 

 

(ダルそうな顔だな……)

 

 

打席に立つ影森の1番打者の山池は

何処と無く不機嫌な表情で打席に立っていた

 

そんな影森の打者に戸惑いながらも珠姫は

冷静にマウンド上の理沙にサインを出した

 

 

(このチームは予想では

早打ちを仕掛けてくるだろうから

慎重に行きたいけど緊張を解す為にも

先ずは適当なところに直球でお願いします)

 

 

珠姫からのサインに理沙は頷き

直球を投げると相手は初球から手を出し打球は

セカンドとライトの間への平凡なフライになる

 

 

(初球からボール球を

打ってくれた……打ち取った!)

 

 

打球の上がり具合を見て安堵する珠姫

 

 

「ライト、任せたわよ! 前!」

 

 

「はい!」

 

 

打球はライト寄りに飛んだので二塁手の菫は

打球の処理を白菊に任せ声をかけると白菊は

既に捕球に向かって走っていたので首尾よく

最初のアウトを取れたと思われたが……

 

 

「!?」

 

 

惜しくも白菊は捕球できずに

エラーで最初のランナーを出してしまった

 

 

「あぁ~~!?」

 

「お嬢様~~!?」

 

 

すると白菊の応援に駆けつけていた白菊の

道場の人たちから悲鳴に近い声が上がった

 

確かに応援している選手がミスをすると

心配な気持ちになるので増してや身内や

慕っている選手がミスをすれば仕方ない

反応と言えるだろう

 

そして勿論エラーをした白菊も

責任を感じ真っ青な表情になっていたが

 

 

「白菊ちゃん、ドンマイ

後ろに逸らすよりマシやけん

気にせんでいいよ」

 

 

「いいよ。声掛け合っていこうね!」

 

 

直ぐに希が白菊をフォローし励まし

それに芳乃が太鼓判を押している

 

声をかけて互いに鼓舞し合うのは

今の新越谷野球部の真骨頂である

 

加えてエラーをしたとはいえ白菊も打球に

対する反応も入部時より上がっているので

とにかく今は上手く気持ちを切り替えて

最初のアウトを取ることに集中すべきだ

 

そして一塁に出塁したランナーの

リードは小さく影森の2番打者は

既にバントの構えをしていた

 

 

(リードは小さいし盗塁はないな……

バントさせて最初のアウトを貰いましょう)

 

 

珠姫のサインに頷いた理沙が

2球目を投じようとした瞬間

珠姫は意表を突かれてしまう

 

 

「!? 走った!」

 

 

なんとリードが小さいにも関わらず

ランナーが盗塁をしてきたのである

 

 

更に……

 

 

「バスターエンドラン!?」

 

 

バントの構えをしていた打者が

瞬時に打つ構えに変えてくると

迷わず振り抜いてきた

 

幸い打球は遊撃手の稜の前に転がる

内野ゴロとなりスタートをしていた

一塁ランナーは二塁に進んだものの

打者は一塁でアウトにできた

 

 

(バントと決めつけて

ストライクを投げさせられた

次からは気を付けていかないと)

 

 

影森のまさかの攻撃にパターンに

珠姫は警戒感を強めざるを得なかった

 

 

 

 

 

一方新越谷のベンチでは……

 

 

 

 

 

「芳乃ちゃん……影森の攻撃、どう思う?」

 

 

「うん……初回の大事なランナーなのに

リードもスタートも仮に空振りだったら

余裕でアウトにできたタイミングだった」

 

 

「そうよね……

よほどミートに自信があるのかしら?」

 

 

「なんか違和感を感じるね……」

 

 

ベンチで試合を見守る真深と芳乃は

影森の攻撃に奇妙な感じていると

続く3番の三角にも初球のカーブを

打たれると当たりは二游間を抜けて

二塁ランナーがホームに帰って

先制点を取られてしまった

 

 

「たった3球で……」

 

 

「今のカーブ……

見送ればボールだったのに

構わず強引に打ってきたわね」

 

 

3球で影森に先制点を奪われベンチで

愕然とする芳乃と外に外れるカーブを

初球から強引に安打にしたことに対し

両腕を組んで呟く真深

 

 

「影森の試合がロースコアの原因は

守備力とどんな球だろうと初球から

振ってくる多少強引だけど積極的な

打撃が一因と見て間違いないですね」

 

 

「そうですね……

予測していましたがこれ程とは……」

 

 

真深と藤井先生は影森のロースコアの

正体は守備より必ず初球を打ってくる

打撃だと確信したようだ

 

 

「理沙先輩、偶々です」

 

 

そうしていると捕手の珠姫が急かさず

マウンド上の理沙の元に駆け寄っていた

 

 

「あんな攻撃いつまでも続きません

今まで通りにテンポ良く投げてください」

 

 

「練習試合で打たれ慣れてるから大丈夫よ」

 

 

幸い理沙も精神的ダメージまでは

それほど受けていない様子である

 

 

「打たせていきましょう

まだ自責点はゼロですから」

 

 

「すみません~~」

 

 

エラーによるランナーが

生還したことによる失点なので

理沙の自責点ではない事を稜が

指摘するとエラーをした白菊が

再度落ち込んでしまっていた

 

 

「稜ちゃん……

傷口に塩を塗っちゃダメでしょう……」

 

 

「まあ、稜ちゃんだから……」

 

 

稜としてはフォローしたつもりだろうが

結果的に白菊を再び落ち込ませる結果に

なってしまっていたために真深と芳乃は

そんな稜に苦笑いをしていたが……

 

 

「それにしても影森って

点を取ったのに凄く静かよね……」

 

 

「うん、次の打者は

いつの間にか打席に入ってるし

なんか急かされてるみたいだね」

 

 

「ですね……

この後用事でもあるんでしょうか?」

 

 

「流石に公式戦がある日に

予定を入れたりしないと思いますけど……」

 

 

影森の異様な雰囲気に

真深、芳乃、藤井先生も違和感を感じていた

 

しかし理沙は続く4番打者を内野フライに

打ち取って漸くツーアウトを取っていたが

続く5番打順が初球の甘く入ってしまった

直球を三塁線に抜かれる打球を打たれると

三塁の詠深が直ぐにジャンプするも及ばず

レフトへの長打にされてしまう

 

 

「稜ちゃん! 私、中継入るね!」

 

 

「オッケー!」

 

 

直ぐに詠深が中継に入る体勢になると

遊撃手の稜も三塁についてフォローの

体勢に入った

 

そしてレフトのファールゾーンに

抜けた打球にレフトの守備につく

息吹が追い付くとボールを掴んで

中継に入っている詠深にボールを

送球すると息吹からの送球を受けた

詠深は投手で鍛えられた腕の強さと

制球の良さで真深にも劣らない早く

正確な送球をホームに投げて捕手の

珠姫のミットに収まるとランナーの

足に珠姫がタッチした

 

 

「アウト!」

 

 

間一髪のタイミングではあったものの

走者の三角をタッチアウトで打ち取り

何とか2点目は死守して初回の影森の

攻撃が終了した

 

 

「詠深ちゃん、ナイス送球!」

 

 

「ありがとう、詠深ちゃん!」

 

 

「大袈裟ですよ」

 

 

ベンチへ戻ってきた詠深を

芳乃と理沙が嬉しそうに出迎えた

 

 

「息吹ちゃんも良い送球だったよ!」

 

 

詠深を出迎えた芳乃は続けて

詠深に好送球を送った息吹を称賛した

 

 

「ありがとう!

まあ、真深なら中継無しで刺せただろうけど」

 

 

そう言って息吹は照れながら

真深のレーザービームのことを思い出した

 

 

「それでも最初の頃と比べたら

全然上手くなってるし真深ちゃんの

強肩を隠す事ができたから大助かりだよ」

 

 

息吹の言うように真深の打撃力は愚か

レーザービームも隠すために開幕戦で

真深を先発から外した芳乃にとっては

詠深と息吹のコンビプレーでの好守は

非常に嬉しいことであった

 

 

「…………」

 

 

一方で失点に繋がるエラーをしてた白菊は

ベンチに座ると申し訳なさそうに落ち込んでいた

 

 

「白菊ちゃん」

 

 

「真深さん……」

 

 

すると白菊の横に真深も座り話しかけた

 

 

「一度もエラーをしない選手なんて

滅多にいないんだから気にする必要なんてないわ」

 

 

「真深さんもエラーをしたことがあるんですか?」

 

 

「勿論! アメリカでレギュラーを

取ったばかりの頃は2・3回エラーをしたわ」

 

 

「そうなんですか……?」

 

 

「ええ……私の知ってる中でも

エラーをしたことのない選手なんて

ジータパーラーくらいしかいないし

ボストフやモウラー達でさえ何度か

エラーをしたことがあったんだから」

 

 

真深は過去の自分とジータパーラー以外の

スター選手でもエラーをしていた話をして

白菊を励ましていた

 

 

「大事なことはエラーという失敗で

得た経験から学ぼうとする気持ちを持つことよ」

 

 

「エラーから学ぶ……ですか?」

 

 

「俗に言う"失敗は成功の元"って奴ね

白菊ちゃんは剣道では失敗したことは無いの?」

 

 

「あります!

それはもう何度も失敗しては

お母様から叱られていましたから」

 

 

そう言って白菊は幼い頃から

中学校の全国大会で優勝するまでに

必死に練習していた自分を思い出していた

 

 

「そう……でも剣道が好きだと言う気持ちと

剣道で1番になって剣道よりもっと大好きな

野球をしたいっていう気持ちがあったから

頑張ってこれたのよね?」

 

 

「はい! 勿論です!」

 

 

「だったら今回だって同じよ

エラーをしたことで辛い思いはしたけど

逆に次はエラーをしないし今よりもっと

上手くなりたいと思えたんじゃない?」

 

 

「はい、仰る通りです」

 

 

「その気持ちがあれば大丈夫よ

その思いを次の守備や打席の時にぶつけてね」

 

 

「はい! ありがとうございます」

 

 

真深の励ましで白菊は無事に立ち直ったようだ

 

 

「真深ちゃん……」

 

 

「珠姫? どうかしたの?」

 

 

すると珠姫が戸惑ったような表情で

グラウンドを見ながら真深に声をかけてきた

 

 

「積極打法に積極走塁……

加えて攻守交代も機敏なのに

どこかやる気が無さそうに見えない?」

 

 

「そうね……なんだか

嫌々プレーしているように見えるわね」

 

 

「うん……変なチームだね」

 

 

1回表の攻撃に加えて素早く守備に向かう

影森ナインの姿に珠姫と同じように真深も

変なチームだと思わずにはいられなかった

 

 

「1点なんて想定内! 早めに追い付こう」

 

 

そんな真深と珠姫を余所に芳乃の掛け声から

遂に1回裏の新越谷の攻撃が始まろうとすると

 

 

「希ちゃん。第1打席だけど

できるだけ見ていってくれるかな?」

 

 

「任せて!」

 

 

芳乃から影森のエースの中山の

球筋を見るためにボールを見ていくことを

依頼された希が自信たっぷりに頷いている

 

 

《1回裏、新越谷高校の攻撃は

1番、ファースト、中村さん》

 

 

球場内に希の名前がコールされると

希はワクワクしながら打席に立った

 

 

「お願いします」

 

 

そして球審に挨拶をしたと同時のことだった

 

 

「!?」

 

 

思わず希は狼狽えてしまった

 

 

「ストライク」

 

 

希が挨拶をした直後に球審が

プレイ開始をコールした瞬間

 

希がまだバットを構える前に

中山は初球を投げ込んできた

 

そして捕手も捕球するや否や

直ぐにボールを中山に返すと

間髪いれずに2球目を投げてきた

 

 

「ストライク」

 

 

影森のバッテリーは球審がプレイをコールして

10秒もしない内に希は追い込まれてしまうと

またも捕球が直ぐに中山にボールを返したので

希は堪らずバッターボックスを外し間を外した

 

 

(息吹ちゃんの物真似と

フォームは同じやけどタイミングが全然違う)

 

 

中山のあまりのテンポの早さに

初見だったこともあって思わず

希も戸惑っていたが……

 

 

(面白いやん!)

 

 

野球になると好戦的になる希は

早くも中山の投球に闘争心を出していた

 

 

「凄いテンポですね……」

 

 

「クイックモーションだよ

打者のタイミングを外すのに効果的なんだよ

中山さんの場合は常にクイックみたいだから

今のは"スーパークイック!"ってとこかな?」

 

 

「カッコいいです!」

 

 

中山の投球に釘付けになっている

白菊の横で芳乃が説明してる内に

希がサードゴロで打ち取られた

 

 

「ごめん……」

 

 

「ドンマイ、希ちゃん

それで中山の投球……どうだった?」

 

 

「多分全部直球……

大した球やなかったけど

なんか気持ち悪かったけん……」

 

 

実際に打席に立って中山の投球を

体験したことで希も戸惑ってしまったようだ

 

すると続く2番の菫も初球の直球を引っ掛け

ショートゴロに打ち取られ新越谷があっさり

ツーアウトにされてしまった

 

 

「構えた瞬間に投げてくるし

希に投げてた時とタイミングも違ったわ」

 

 

打ち取られてベンチに戻ってきた菫も

希のように気持ち悪さを感じたようだ

 

そして続く珠姫は真ん中に来た直球を

捉えたがセンターフライに打ち取られ

練習試合から今まで全試合で先取点を

取ってきていた新越谷が初めて初回を

三者凡退に終わらされてしまった

 

 

「さあ! 切り替えて、しっかり守るぞ!」

 

 

初の初回三者凡退に気落ちするメンバーが

いる中で主将の怜が鼓舞しながら真っ先に

グラウンドに飛び出し守備に向かったので

それに続くように他のメンバーも守備へと

向かうと途中で白菊が希にいつにも増して

真剣な表情で何やら尋ねていた

 

 

一方……

 

 

「さてと……どうする?

徹底して地合い作りをしてくるチームに

間を取りつつリズムを崩していくか被せていくか」

 

 

「だね」

 

 

2回表の守備に向かうためにプロテクターを

着ける珠姫とそれを手伝う芳乃の2人に加え

真深と藤井先生が今後の試合方針を話し合う

 

 

「高校野球の審判はテキパキしたねが

好きですからね時間を使うと相対的に

ダラダラしているように映るかもしれません」

 

 

「確かに此方が準備している内に

影森の打者は打席に立ってますし

球審の準備も出来ていますからね」

 

 

藤井先生と真深がそう言って見ると

2回表の影森の先頭の打者と球審は

今か今かというような表情で待っていた

 

 

「被せていこう!」

 

 

「決まりだね」

 

 

「そうね……それなら珠姫!」

 

 

「なに、真深ちゃん?」

 

 

敢えて影森のペースに被せることが

決まるや否や真深が珠姫の耳元で囁いた

 

 

「理沙先輩には内角か外角の

厳しいコースに直球を投げるよう伝えて」

 

 

「内角か外角の厳しいコースに?」

 

 

「ええ……見ていて分かったけど

影森の打者の打力は大したものじゃないわ

新越谷の方が影森より何枚か上だと思うし

1回表は影森の早打ちに対応しきれなくて

先制されたけど影森の打撃力のレベルなら

理沙先輩の球威で押せると思うから珠姫も

影森の捕手みたいに捕ったら直ぐ返球して

理沙先輩に厳しいコースに直球を要求して」

 

 

「そっか! 影森が、どんなコースだろうと

初球から振ってくれるなら厳しいコースに

どんどん投げていけけばアウトを取れるし

理沙先輩のスタミナの消費も抑えられるね」

 

 

真深の説明に芳乃は直ぐに理解し共感した

 

 

「そういうこと……

序盤はクイックモーション合戦で行くわよ」

 

 

「うん、分かった!」

 

 

珠姫も真深の作戦に同意して

プロテクターを着け終えると

マウンドの理沙の元へ作戦を

伝えに走っていった

 

 

「という訳で……早いテンポで行けますか?」

 

 

「クイックは詠深ちゃんに

教えて貰ったからやってみるわ」

 

 

「お願いします……

それから直球はできるだけ

内角か外角の厳しいコースでお願いします」

 

 

「分かったわ、任せて!」

 

 

珠姫から伝えられた作戦に

理沙も同意して2回表の影森の

攻撃が始まったが真深の読み通り

影森は厳しいコースだろうと初球から

振ってきてたものの理沙の球威に加え

菫の好守備もあり三者連続内野ゴロに

仕留め5球で影森の攻撃を終わらせた

 

 

「上手くいったわね」

 

 

「これなら三振は取れないけど

逆に四球での自滅する心配もないからね」

 

 

「えぇ、これなら理沙先輩も

5回くらいまで投げられそうね」

 

 

「うん!」

 

 

練習では70球ほどしか投げていない

理沙のスタミナを心配していた芳乃も

真深の言葉に同意し安心していた

 

 

「この調子で早いうちに同点に追い付こう」

 

 

作戦が上手くいき嬉しそうな芳乃は

2回裏の攻撃に弾みを着けようとしたが……

 

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

(えっ!?)

 

 

しかし2回裏の攻撃で先頭打者の

4番の怜がツーストライクに追い込まれた後の

明らかな外角に大きく外れる直球を見逃したが

球審に見逃し三振をコースされて動揺していた

 

 

「ストライクゾーンが広い……」

 

 

「今の完全にボールでしたよね」

 

 

「球審の方も速い展開に

つられているのでしょうか……」

 

 

まさかのストライクの判定に

藤井先生と真深も戸惑いを隠せなかった

 

 

「影森の打者は

必ず振ってくるコースですからね……」

 

 

「じぁあ今日は、あのコースは

ずっとストライクだと考えた方が良いわね」

 

 

「うん……こうなると投手戦……

ロースコアの原因は影森のバッティングで

ストライクゾーンが広くなるのも原因だろうね」

 

 

「椿峰と柳大川越は勝てたみたいだけど

この戦術に翻弄されてたから思うように

点が取れなくてロースコアになったのね」

 

 

芳乃と真深は昨年の影森の公式戦の

スコアを思いだし影森の守備よりも

積極的な打撃がロースコアの原因と

確信しているうちに続く稜と理沙も

外角に外れてる直球をストライクと

コールされて三者三振で2回裏の

攻撃が終わってしまった

 

しかし3回表の影森の攻撃も

2回表の時のように理沙が球威のある直球を

内野と外角の厳しいコースに上手く投げ分け

影森を三者凡退で抑えたので直ぐに3回裏の

新越谷の攻撃にはいることができた

 

3回裏の攻撃は7番の白菊の打順からだった

 

 

「白菊! なんとか希の前に出てくれ!」

 

 

「頼むよ!」

 

 

「白菊ちゃん、頑張ってね!」

 

 

「はい!理論は完璧です!」

 

 

「「「理論……?」」」

 

 

白菊の理論という言葉に白菊に

声をかけた怜、希、真深がキョトンと

しているうちに白菊が打席に立った瞬間

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

打席に立った白菊から発せられるオーラに

次の打者の息吹を初めベンチで見守ってる

希、稜、菫、詠深が何かを感じ取った

 

 

「ん? この感じ……」

 

 

「真深が打席に立った時のに似てるわね?」

 

 

それは新越谷のスラッガーにして4番である

真深がいつも打席に立った時に放つオーラと

そっくりな物であった

 

 

そして……

 

 

カキィィィィィィィィィィン

 

 

白菊は初球の直球を完璧なタイミングで

捉えると高く舞い上がった打球は見事に

左中間へのホームランとなった

 

 

「ホームランよ!」

 

 

「同点だ!」

 

 

白菊のホームランで同点となり

新越谷のベンチが盛り上がった

 

 

「お嬢様~~!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「ナイス、ホームランです!」

 

 

すると観客席で白菊を応援している

彼女の道場の人達が興奮しながら喜んでいた

 

 

「ナイバッチ、白菊!」

 

 

「エラー取り返したな!」

 

 

「手洗い祝福、嬉しいです!」

 

 

そしてベンチ戻った白菊をベンチにいた

メンバーも全員が、はしゃぎながら祝福していたが

 

 

「むぅ……!」

 

 

希が何やら不服そうな表情になったと思いきや

 

 

「痛っ!誰か本気で叩いてます!」

 

 

希は白菊を本気で叩く……もとい本気で蹴っていた

 

 

「どっ、どうしたの希ちゃん……!?」

 

 

白菊を本気で蹴っちゃった希に

真深が冷や汗をかきながら尋ねてみると……

 

 

「……さっき、私に球速聞いて来たっちゃ」

 

 

「へっ?」

 

 

不満そうに答えた希に

真深が更に訳がわからなくなっていると

 

 

「真深さん、やりました!」

 

 

先程エラーをした後に真深に

励まされたこともあってか白菊が

嬉しそうに真深に声をかけてきた

 

 

「初ホームランおめでとう

お母さんや道場の人たちの前で

晴れ姿を見せられて良かったわね」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「それにしても……

よく中山さんのクイックに

タイミングを外されず打てたわね」

 

 

「はい! 実は……」

 

 

真深の質問に答えた白菊によると

白菊は剣道での経験をいかしたらしい

 

確かに剣道は相手との間合いの

駆け引きが非常に重要な競技だ

 

白菊が言うには自分と中山の間合いを14.5m

剣道で言うと八間と見たらしく間合いというのは

時間距離のことで2回表の守備に着く前に希に

声をかけていたのは普段の練習で打ち慣れている

マシンと同じタイミングで中山の球を打つために

間を測ろうとした剣道経験者の白菊ならではの

作戦だったのだ

 

そして中山から白菊までの間は18.44m

 

白菊が見定めた間合いは14.5mだったので

球速を聞いていたことにより白菊の間合いに球が

入ってきた瞬間にマシンと同じタイミングを取り

バットをフルスイングしホームランを打ったのだ

 

つまり白菊は自分で定めた間合いに中山の球が

入るのを待っていたので白菊の視界には中山の

姿は入っていなかったのでクイックは白菊には

全く通用しなかったのだ

 

 

「なんか剣道やったことのない私には

よく分からない話だったけど白菊ちゃんが

凄いことをやったということは分かったわ」

 

 

「はい! 剣道の経験が役に立って良かったです」

 

 

そう言う白菊の表情は今までより

遥かに明るく嬉しそうな笑顔だった

 

 

「あぁ……それで希ちゃん

白菊ちゃんに焼きもち焼いて……」

 

 

「はい?」

 

 

「ううん、何でもないわ」

 

 

同時に真深は希が自分がアドバイスを生かして

白菊がホームランを打ったことに焼きもちを

彼女を焼いて蹴ったのだと悟ったのであった

 

とにもかくにも白菊のお陰で中山攻略の糸口が

見えたことで漸く新越谷に光明が見えてきた

 

そして続く息吹も白菊のホームランを間近で

見たことで中山のクイックにタイミングを

合わせるのではなくボールだけをよく見て

合わせることを理解していたらしく初球の

直球を打ち返すと当たりは弱かったものの

上手く野手の間に落ちるポテンヒットになり

新越谷はノーアウト1塁のチャンスを掴んだ

 

 

(詠深ちゃん、バント宜しく)

 

 

(任せて!)

 

 

当然ここは1塁ランナーの息吹を確実に

得点圏の2塁に進めるため芳乃は詠深に

バントのサインを出し詠深も今の勢いと

流れを止めないようにと気合い十分に

バントの構えをとると息吹に続き詠深も

初球の直球にバットを当てようとしたが

 

 

「!?」

 

 

なんと中山が投げたと同時に影森の

一塁手と三塁手に加え投手の中山も

投げて直ぐに前に突っ込んで来たのだ

 

 

(どっ、どこに転がそう?)

 

 

影森内野陣の思わぬ前進守備に

詠深も咄嗟の何処にバント球を

転がそうか判断できずにいると

詠深はバント球を中山の前へ転がしてしまい

1→6→4のダブルプレイになってしまった

 

 

「バントゲッツー!? 最悪……」

 

 

それに怜と珠姫が思わず

落胆の表情と声を出してしまっていた

 

詠深も打順を9番に下げられたことで

気合いが入っていただけに今までより

沈んだ表情でベンチに戻ってきた

 

幸い芳乃が息吹と投球練習をして肩を

作っておいてとほしいと頼まれた事で

気持ちを切り替えられていた

 

そして"ツーアウト"でランナー無しで

2順目に周り1番の希が打席に向かう

 

 

「希ちゃん」

 

 

「真深ちゃん、なに?」

 

 

「希ちゃんなら気づいてると思うけど

打席に立ったら中山さんのクイックは

意識しないでボールにだけ集中してね」

 

 

「うん! 大丈夫やけん」

 

 

白菊のホームランに焼きもちは焼いたものの

それから中山の攻略法は掴んでいたらしく

希は真深からのアドバイスに頷いて打席立つ

 

 

(希ちゃん……

ここは粘って出塁がベストだよ)

 

 

(任せて!)

 

 

一塁コーチャーに付いていた芳乃も

中山の球種を探るために粘ってから

出塁してほしいというサインにも応じると

2打席目だったこともあってか希は中山の

球を8球もファールで粘った後にヒットで

出塁したおかげで中山の球種も把握できた

 

 

「スライダー、シュート、カーブ……か」

 

 

「流石、希ちゃんね

2打席目で、しっかり対応出来てるわ!」

 

 

ベンチの怜と理沙も改めて

希のバッティング技術に感心していた

 

 

ところが……

 

 

「あら?」

 

 

「どうした真深?」

 

 

真深がマウンド上の中山の異変に気づいた

 

 

「中山さん……なんか怒ってる

というか苛立っているような感じが……?」

 

 

真深の発言にベンチにいたメンバーが

中山を見てみると確かに真深の言うように

中山は希を苛立ったように睨み付けていた

 

 

すると……

 

 

「「「「「あっ!?」」」」」

 

 

中山が妙に長く持っていると思われた瞬間

まだ少し苛立った表情を見せながら一塁に

素早く牽制球を投げて盗塁を仕掛けようと

していた希は逆を突かれてアウトにされた

 

そして一塁の塁審のアウトのコールをする

前に全員が素早く無言で一斉にベンチへと

引き上げっていってしまった

 

対戦相手には目もくれずに掛け声ですら

聞かせてもらえない影森の圧倒的鎖国感に

芳乃はなんとか新越谷に対し意識をもって

来させたいなと思っていたときであった

 

 

(あれは……梁幽館の偵察!)

 

 

観客席の一角にこの試合に勝てば新越谷の

次の対戦相手になるであろう梁幽館高校の

制服を着た生徒が数人ビデオカメラを手に

試合を撮影し何やらメモを書いていた

 

 

(やっぱり真深ちゃんと詠深ちゃんは出せない

少なくとも、真深ちゃんの打力と詠深ちゃんの

"あの球"は絶対に見せたくない!)

 

 

予想はしていたものの

梁幽館からの偵察が来ていたことで芳乃は

やはり予定通りに真深と詠深は出さないか

出しても真深には長打力……更に詠深には

"あの球"を封印して投げて貰おうと考えた

 

 

「梁幽館の偵察ですか……

となると出来るだけ藤原さんを

引っ張りたいところなのですけれど……」

 

 

「そうですね……

理沙先輩は練習では70球くらいまで

球威を保てますが公式戦の重圧を考えると

50球くらい……この回か次の回で限界かも」

 

 

影森の早打ちのお陰で少ない球数で3回まで

少ない球数で投げてこれた理沙ではあったが

そろそろ限界が近いと見定めていた

 

しかし4回表の守備も理沙はランナーを

出しても要所を突いた投球で影森にチャンスを

与えずにいると次第に新越谷の守備のリズムも

良くなってきて稜のファインプレイが飛び出し

1回表にエラーをした白菊もその後は安定した

守備を見せ無失点に抑えることができた

 

チェンジになった瞬間に影森のメンバーは

先程ベンチに戻った時のように掛け声すら

出さずに新越谷のメンバーがまだベンチに

全員戻る前に素早く守備位置に就いていく

 

 

「こんちわ……

この後、用事でもあるんすか?」

 

 

あまりに無言で素早く急いでいるような

影森が気になった稜がベンチに戻る途中

三塁手の選手に声をかけては見たものの

案の定、完全に無視されてしまうと……

 

 

「こら! ちょっかいを出すな」

 

 

「いてっ!?」

 

 

怜に叱られてしまう稜なのであった

そして4回裏も影森は掛け声なしで

黙々とプレイを続けている

 

 

「影森って野球が嫌いなのかな?」

 

 

それを見た稜が困惑した表情で

芳乃やベンチにいるメンバーに

疑問を投げ掛けてきた

 

 

「それはないと思うよ

好みの展開に持ち込める戦略に戦術

こんなにレベルの高いプレーをして

野球が嫌いな訳ないよ」

 

 

「そもそも野球が嫌いなら

野球部に入ったりしないんじゃない?」

 

 

「あっ、そっか……」

 

 

自分の疑問に答えてくれた芳乃と真深の

言葉を聞いた稜は直ぐに納得したようだ

 

そうしている内に4回裏の先頭打者の

菫が三遊間に鋭い打球を放つが影森の

遊撃手の好守備に阻まれ打ち取られた

 

 

「これは私の想像だけど……

試合よりも身内だけでやる練習の方が

好きなのかも……私達に興味無さそうだし」

 

 

芳乃が言うとおり影森のメンバーもベンチでは

メンバー同士で仲が良さそうに会話もしていた

 

 

「そんな事ってあるのか?」

 

 

芳乃の推測に稜が信じられなそうな

反応をすると藤井先生が例を挙げる

 

 

「そうですね……

例えば私は野球ゲームが好きなんですが

オンライン対戦はほとんどやりませんね

寧ろ育成とか戦略モードの方が好きです」

 

 

「良い例え!」

 

 

「よくわからん……」

 

 

「私もゲームは、やるけど"マリ◯"とか

"ポケ◯ン"ばかりやってて、野球のゲームは

あまりやらないから、よく分からないかも?」

 

 

「すみません……」

 

 

藤井先生の例え話に芳乃は共感していたが

稜と真深は今一つ理解しずらかったようだ

 

 

「でも確かに今もファールで粘っている

珠姫に苛立っているような感じがするわ」

 

 

「ホントだ……」

 

 

真深に言われて稜と芳乃が見てみると

確かに先程の3回裏の攻撃の希の時と

同じようにファールで粘る珠姫に対し

中山や影森の内野陣は苛立っている様子だ

 

そして珠姫は中山の直球を上手く捉えたが

レフトのファインプレイに阻まれアウトに

なってツーアウトになってしまう

 

 

「タマちゃん惜しい~!」

 

 

そこへ投球練習を終えた詠深と息吹が戻ってきた

 

 

「詠深ちゃん、息吹ちゃん……肩は暖まった?」

 

 

「私は基本いつでもOK!」

 

 

「私も一応……」

 

 

やる気満々の詠深に大して

息吹は少し緊張した様子で返答した

 

 

「ところで何の話をしてたの?

ゲームとか"マリ◯"とか対戦がどうとか……」

 

 

「あぁ、実はね……」

 

 

芳乃は詠深と息吹……

そして凡退してベンチに戻ってきた珠姫に

真深、稜、藤井先生と話していた影森の話を

そのまま詠深、息吹、珠姫に話して聞かせた

 

 

「なるほどね……試合よりも練習かぁ……

でも確かにウチだってもし部員が揃わなくて

好きな人同士だけで適当に体を動かすだけの

部活だったらいつか部員が揃ってても他校と

試合するのが億劫になってたかもしれないね」

 

 

「いつか話したキャッチボール部の話ね……」

 

 

「でも影森が、そうとは限らないよ

あれはあれで楽しんでいるのかもしれないし」

 

 

「その通り!」

 

 

話を聞いた詠深、息吹、珠姫も

新越谷高校に入学したばかりの頃の

自分たちのことを引き合いに出して

多少なりとも理解した反応を見せる

 

 

「…………」

 

 

しかし真深だけはベンチに座り

両腕を組ながら不機嫌な表情になっていた

 

 

「どういう気持ちであれ

手強い野球をしてることに変わりはないね」

 

 

「まぁ、できればもうちょっと

相手として見てもらいたいけどなぁ……」

 

 

「それは言えてるね……

もう5回に入るしそろそろ手を打つよ」

 

 

やはり影森に対戦相手として

意識してもらえないのは寂しいようだ

 

 

その後4番の怜の打球もレフトの

ファインプレイに阻まれてしまい

4回裏の新越谷はチャンスらしい

チャンスもなく無得点に終わった

 

 

そして詠深たちが守備に向かおうと

ベンチを出ようとした時であった

 

 

「あれ? 真深ちゃん、どうしたの?」

 

 

「何が?」

 

 

詠深が先程から不機嫌な様子の真深に気づいた

 

 

「"何が"って……なんか不機嫌な顔に」

 

 

「別に……」

 

 

「そう?……なら良いけど……」

 

 

そう言って立ち去る詠深だったが

明らかに真深の表情は怒っているものだった

 




結局ここまでしか書けませんでした

影森の試合って文章にするの意外と
自分には難しかったです

影森の戦術といい白菊が
ホームランを打った時の間合いの話とか

さて次回でなんとか影森戦は終わらせます

自分としても早いところ
梁幽館との試合の話を書きたいので……

因みに次回では真深が試合終盤
ホームラン以外で打撃レベルの
高さを見せるので、お楽しみに
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