映像を見る場面から試合開始の直前までです
影森戦で見せた真深の打撃を映像で見た
梁幽館のメンバーの様子をお楽しみください
そして試合前日の夜に真深と詠深による
二人のオリジナルの会話を入れてみました
それでは、ご覧下さい!
遂に新越谷と梁幽館の試合が2日後まで迫り
新越谷のメンバーが練習に励んでいる一方で
梁幽館の方も新越谷との2戦目の試合に向け
練習している中で珠姫の美南ガールズ時代の
先輩である吉川が正捕手の小林依織と共に
投球練習をしていた
「よしっ! 今日はこれくらいにしとくか!」
「調子は良さそうね」
「私はいつでも絶好調さ! それに相手は……」
小林に調子の良さを伝えた吉川は美南ガールズで
バッテリーを組んでいた珠姫がいる新越谷との
試合に向けて思いを馳せていた
どうやら芳乃の予測通りに新越谷との試合は
吉川が先発投手で投げるようだ
そして暫くするとメンバー全員が集合し
新越谷との試合に向けたミーティングが始まる
「次の相手は新越谷高校です
かつては強豪校でありましたが
例の不祥事により今春まで活動自粛
今は1年生ばかりの新チームですし
先日の試合以外はノーデータですね」
新越谷と影森の試合の偵察に訪れていた梁幽館の
戦略担当マネージャーである高橋友理が新越谷の
詳細を纏めたメモを読みながら説明を始めた
「ですが停部明けは主に県外の有力校と活発に
練習試合をしていたようですが偶然入手できた
情報によると昨年の夏の東東京大会の優勝校の
藤和高校に勝利しているそうです」
昨年の東東京大会優勝校に勝っているという
高橋友理の情報を聞いた梁幽館のメンバーの
何人かから、どよめきが聞こえ始めた
「勿論相手をしたのはBチームみたいですが
それでも埼玉県内ベスト16級の実力ですし
他の有力校にも善戦していると聞いています
油断はできないでしょう」
「その通りだ!」
高橋友理の横で両腕を組ながら話を
聞いていた梁幽館のキャプテンで
エースと4番を努める中田奈緒が
言葉を発したことで場の緊張感が
更に高まった
「最初の難関……宗陣は
本来ベスト16以上で当たる相手だ
それを突破できたことで暫くは楽な
相手が続くと気が緩んでいるだろう」
「「「!?」」」 ギクッ
中田の指摘に何人かのメンバーは
痛いところを突かれたかのように
気まずそうな表情になった
「それは必ずしも悪い事では無い
格下と思えるのは激しい練習に耐え
強者としての自覚を持っているからだ
ただ野球をナメるな! 何があるか分からん
自信をもって、いつも通り勝つぞ!!」
「「「「「「「おおっ!」」」」」」」
中田の掛け声にメンバー全員が応える
「映像を見ますか? 初戦にありが……」
"初戦にありがちな試合"と言おうとした
高橋だったが何かを思い出したかように
考え込んだ表情になった
「どうした、友理?」
「いいえ……試合の終盤に
少し気になるプレイがあったもので……」
「ん?」
それに気づいた中田に指摘された
高橋がそのままの表情で説明した
「とにかく映像を見せてくれないか?」
「はい。皆さんも、ご覧になりますか?」
「みるみる~~♪」
少しでも新越谷の情報を得ようと
中田と共に新越谷と影森の試合の
映像を見ようとメンバーが集まる
そして高橋がタブレットを起動し
映像を流すと白菊のホームランの
シーンが映された
初心者とは思えないそのパワーに
その後に映された怜の打撃と共に
中田は警戒感を強める
「岡田と大村……
打線ではこの二人は要注意だな……おい加藤!」
「はい?」
「荻島で岡田と一緒だったんだろう?」
中田は怜と荻島ガールズ時代に一緒に
プレイしていた加藤千代を呼び出した
以前に怜が芳乃に話していた梁幽館に
所属する知り合いとは彼女のことであった
「怜……懐かしいです
体も大きくなって上手くなってます
停部を受けても頑張ってたんでしょうね」
そう言いながら画面に写る怜を加藤は
怜の活躍を喜び懐かしそうに見ていた
そして場面は先発の理沙から息吹に
交代してマウンドに上がるシーンになる
すると映像を見ていた吉川が首を傾げた
「あれ? エースは投げてないんですか?」
「5番と10番の継投だよ」
吉川の側で映像を見ていた
二塁手のレギュラーの白井が吉川に答えた
「初戦、絶対勝ちたいだろうに温存しやがったな」
「隠したというのが正しいかもね
どんなピッチャーか全く分からないし……」
芳乃の作戦により梁幽館は詠深の情報を
得ることが出来ず対策を練られなかった
「まっ、こっちも私を温存していたし五分だろ」
「あんたは、ただの二番手よ」
「うぐっ……」
小林の厳しい突っ込みに吉川は苦い表情になる
しかし投手が理沙から息吹に代わる映像を見た
メンバーの一人が吉川のように疑問を口にする
「それにしても、どうして態々
一塁手を左翼手に移したのかしら?」
その言葉に他のメンバーも
言われてみればと言うかのように口を開く
「確かに何で"7番"を出さないんだろう?」
「"5番"を"7番"に代えればいいのにね?」
「怪我してるか調子が悪いんじゃないの?」
新越谷が7番……即ち真深を出さなかった訳を
予測する梁幽館のメンバーの憶測が飛び交う中
真深が6回裏に代打で登場するシーンが映った
「綺麗な子……」
「こんな子、見たことない……」
真深の容姿に見とれる梁幽館の
メンバーがいるなかで真深が中山の球を
ファールにし続けるシーンに切り替わる
「打ち頃のストレートやカーブ……
それにシュートも悉く打ち損じているわね」
「やっぱり調子が悪くて出さなかったのかな?」
真深がファールを続けている場面を見て一部の
メンバーが真深の調子が悪いと見たが真深が
スライダーを捉えると打球の強さに目を見張る
「凄い打球!」
「当たれば飛ぶってやつかな?」
「あれだけ絶好球を打ち損じていたのに
それより変化の鋭いスライダーをよく打てたね」
打球の強さには驚愕したものの
それまでに投じられた打ち頃の球をファールに
していたことで点差がついて勝負が見えたので
調子の悪い選手を代打で出したのだと梁幽館の
メンバーの殆どが予測していた
しかし……
「やれやれ……
お前たちは、それでも梁幽館レギュラーか?」
「「「「「「「 ??? 」」」」」」」
キャプテンの中田の言葉にメンバーが
何か変なことを言っただろうかと首を傾げると
「彼女、凄い……」
「はい、私も目を疑いました……」
「ほう……秋と友理は気づいたか」
しかし中田と同じく主力の一人である
陽秋月と高橋友理は何かに気づいたようだ
「さっき友理が言いかけた
終盤に出た気になるプレイとはコレのことか?」
「はい……」
中田の問いかけに高橋は静かに頷いた
「奈緒、友理、秋……どういうこと?」
未だに訳がわからないメンバーの言葉を
代表するように三塁手の笠原が3人に尋ねる
「友理……すまないが
もう一度、彼女の打席を最初から流してくれ」
「はい」
中田に頼まれた高橋が真深が
打席に立つ場面まで映像を戻した
「いいか! 奴の打球をよく見ていろ」
中田がメンバーに注意点を告げてから
高橋は再度、真深の打席のシーンを流した
すると……
「えっ……打球がほぼ同じ場所に飛んでる!?」
一人のメンバーが気づいて驚愕しながら呟くと
それにより他のメンバーも気づき真深の打球を
全てチェックすると確かに打球が同じ場所へと
打たれていることが確認できた
「ようやく気づいたか……」
そして中田が面白そうなものを見て
楽しむかのような笑みを浮かべて説明を始めた
「奴は意図的にファールにしていたのだろう
現に奴は同じ場所に飛ばしているだけでなく
全ての球をバットの芯で捉えている」
中田の説明に映像を見ていたメンバーが驚く
「つまりファールにしていた球も
ヒットにしようと思えば出来たってこと!?」
「でも仮にそうだとして
点差もついて相手投手のスタミナも
少なくなってる状況で何で態々そんなことを?」
説明を聞いたメンバーの何人かが
信じられなそうに驚愕しながら中田に尋ねる
「何故かは分からぬが6回裏の最初の打者……
川口息吹に対して影森の投手は少し憤っていた
故にスライダーが大きく曲がりすぎ死球となり
新越谷のベンチの雰囲気が暗くなっていただろ」
そこまで聞いて他のメンバーも悟ったようだ
「まさか……仲間の敵討ち!?」
「死球と仲間の報復のために
敢えてスライダーを待っていたってこと!?」
しかし意図に気づいても信じられなさそうだ
「信じられない気持ちは分かる……
だが奴はスライダーが投じられた瞬時
明らかに表情に笑みを浮かべていたぞ
まるで、ずっと待っていた獲物が現れて
仕留めようとする、ライオンのようにな
そして奴は1発で仕留めたということだ」
確信したように話す中田の言葉に
陽秋月と高橋友理を除く映像を見た
メンバー全員が唖然としてしまった
「つまり奴は投じられた球の球種を瞬時に見定め
それをフェアゾーンとファールゾーンに打ち返す
技術に加えてそれだけの事をやる気持ちの余裕も
あるということだ……流石に私もこれは無理だな」
「それって、ジータパーラーじゃない!?」
「彼女にしか出来ないと言われている
打撃を日本の高校球女に出来る筈が……!?」
「私、ジータパーラーのポスター持ってるわ」
やはり芳乃のように梁幽館のメンバーの
白井、笠原、高代がジータパーラーの意図的に
ファールを打つ技術の話題を持ち出してきた
因みに高代は遊撃手のためか同じ遊撃手の
ジータパーラーに憧れを抱いているらしい
「友理……奴の過去のデータは無いのか?」
真深の過去の情報を知りたい中田が
高橋に尋ねるが高橋は中田の問いに
静かに首を横に振った
「彼女の名前は上杉真深さん……
新越谷の1番の武田詠深さんの従姉妹
それ以外の情報は一切見つかりません
何処のガールズに所属していたのかも
何処の中学出身かも一切分かりません」
「詳細不明のエースの従姉妹か……
もしかすると新越谷が初戦で温存したのは
エースだけではなかったのかもしれないぞ」
高橋の話を聞いて静かに呟いた中田の
言葉を聞いて停部明けで1年生主体の
チームということで新越谷は楽な相手だろうと
思っていた梁幽館のメンバーは緊張感を強めた
すると……
「そういえば……」
「どうした小林?」
梁幽館の正捕手の小林依織が
何かを思い出したように呟き
中田がそれを尋ねる
「開会式の日にウィラードが
彼女に態々、会いに来て声をかけてましたね」
「あっ、そういえば……」
「なに!?」
小林の言葉を聞いて一緒に
その場いた吉川も思い出して呟くと
中田の目付きが鋭い目付きに変わると
4月に見たユイが咲桜に留学してきて
最初に受けたインタビューを思い出す
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「アメリカで1度も打ち取れなかった
彼女にリベンジするために私は日本に来ました」
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「まさか……………フッ、まさかな」
中田は不意に頭の中にとある推測が
浮かび上がったが考えすぎだろうと
笑みを浮かべて自分の推測を退けた
ーー新越谷と梁幽館の試合前日ーー
いよいよ翌日に迫った梁幽館との
試合前日の練習日に芳乃は打順と
ポジションをメンバーに発表した
「明日のスタメン……この打順でいくからね」
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【1】 山崎 珠姫 (捕手・2)
【2】 藤田 菫 (二塁手・4)
【3】 中村 希 (一塁手・3)
【4】 上杉 真深 (左翼手・7)
【5】 岡田 怜 (中堅手・8)
【6】 川崎 稜 (遊撃手・6)
【7】 藤原 理沙 (三塁手・5)
【8】 大村 白菊 (右翼手・9)
【9】 武田 詠深 (投手・1)
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「打順据え置き……
前の試合ヒット打ったのに
芳乃ちゃんは何も分かってない……」
影森との試合でタイムリーを打ったのに
今回も打順が9番であることに対し詠深は
露骨に不満な気持ちを表向きに表してきた
「詠深! わがまま言わないの!
梁幽館の打線が相手なんだから詠深には
打撃より投球に集中してほしいと思って
芳乃ちゃんは頼りにしてくれているのよ」
「はい……ごめんね、芳乃ちゃん」
「ううん、気にしないで」
しかし真深に注意されたことで
詠深はまだ少し気落ちしながらも了承した
(真深ちゃんの、お陰で詠深ちゃんの
扱いに気を使わなくていいから助かるな……)
詠深は真深の言うことなら
素直に聞くので実は珠姫は疎か
芳乃や怜も密かに安堵していた
(3番……クリーンナップ!
芳乃ちゃんの期待に応えんと……)
3番で起用されることを知った希は
緊張しながらも自分を鼓舞していた
「珠姫と希の打順を入れ換えたのね」
「理由を聞いてもいい?」
菫の指摘の後に珠姫が自分が
1番打者に起用された理由を尋ねる
「この中で吉川さんの球を誰よりも
知っているというのと詠深ちゃんと
打順を隣にすれば攻撃中にも作戦の
話をしたり出来ると思ったからだよ」
「さすが芳乃ちゃん! わかってるゥ!」
打順を上げて貰えず落ち込んでいた
詠深だが芳乃から理由を聞いた途端
上機嫌になって芳乃に感謝していた
「今日は自主トレは
そこそこにして、しっかり休んでね
主将! 最後に声かけで終わりましょう!」
「あぁ! 新越谷、絶対勝つぞ!!」
「「「「「「「おおっ!」」」」」」」
怜の掛け声にメンバー全員が応える
そして明日に向け今日は自主トレを
休みにして全員が早めに帰宅したのだった
ーーその日の夜、真深の家ーー
「ただいまーー!」
「おじゃまします」
学校から帰宅した真深の家には
真深だけでなく何故か詠深の姿もあった
「おかえりなさい、真深
いらっしゃい、詠深ちゃん」
そして二人を真深の母親が出迎えた
実は今日は詠深の父親は仕事で遅く
そして母親は用事で遅くなるので
それなら明日は試合なので折角だし
家に泊まっていって明日は一緒に
球場に行くといいと真深の母親が
自身の妹である詠深の母親に進めて
その言葉に甘えることにしたのだ
そして真深と詠深は風呂に入って
夕食を食べ終えリビングで寛いでいた
「真深ちゃんの家に泊まるの久しぶりだな」
「そうね……3年ぶりよね」
「私も詠深ちゃんが
久しぶりに家に来てくれて嬉しいわ」
真深がアメリカに引っ越してしまうまで
真深と詠深は家が近所なので次の日が
日曜日か祝日の時は定期的にどちらかの
家に泊まりに来て遊んだりしていたのだ
因みに珠姫も小学生の頃には真深や
詠深の家に泊まりに来たこともある
そして真深の母親がテレビを見てる横で
真深と詠深がゲームをして遊んでいると
偶然にも高校野球の番組が始まった
《本日より3回戦に突入した
埼玉県大会……注目の咲桜高校の
アメリカ人留学生ウィラード選手が
初登板でいきなり大記録を打ち立てました》
「「!?」」
テレビのアナウンサーの言葉を聞いた
真深と詠深は瞬時にゲームの手を止め
テレビに視線を向けた
《初戦で、いきなり3番、三塁手で先発して
第1打席で逆転の2ランホームランを放つ
華々しいデビューを飾ったウィラード選手は
初登板となった本日の試合は1人もランナーを
許さぬパーフェクト投球を披露すると打撃でも
2試合連続となるホームランも放ってチームも
5回コールドの完封勝利で余裕の4回戦進出
昨年の夏大会優勝に貢献した強力打線に加えて
ウィラード選手の加わった大会2連覇を目指す
王者咲桜から今大会は目が離せません!》
実は今日から3回戦が始まっていて
咲桜は既に試合を終え4回戦に駒を
進めており今日の試合の先発投手は
ユイが起用されていたのだ
「5回コールドのパーフェクト試合!?」
そしてアナウンサーの言葉を聞いた詠深が
驚きと興奮のあまり声が大きくなってしまった
「初戦はエースの小西さんが先発して
1回に1失点したみたいだけど、その裏に
ユイが2ランを打って逆転した後は打線も
繋がって大量点を取って小西さんも1回に
1点取られた後は好投して5回コールドで
勝ってたから2試合連続のコールド勝ちね」
「強いね……」
真深から咲桜の初戦の結果を聞いた
詠深は唖然としながら咲桜の強さを
改めて思い知らされていると……
《そして明日は大宮公園野球場にて
同じく優勝候補の梁幽館高校の試合が行われます
初戦で埼玉宗陣を下し勢いに乗りたい梁幽館高校
明日はどのような試合を見せてくれるでしょうか
そして注目の4番中田のホームランが見られるか
明日の試合は○時から生中継でお送り致します》
明日の梁幽館の試合がテレビで
中継される時間を伝えるとアナウンサーは
新越谷のことは一言も触れずに今日の他の
試合の結果や明日の紹介を初めてしまった
「あら……失礼なアナウンサーね
新越谷について一言も触れてないじゃない」
それに真深の母親が不満そうに呟く
「仕方ないわ、お母さん
不祥事を起こして部員もギリギリな
学校のことなんて誰も気にしないわ」
「しかも1年生主体のチームですし」
そんな彼女に真深と詠深は
苦笑いを浮かべながら宥めていた
「明日は球場には行けないけど
お父さんとテレビを見て応援するから二人とも
頑張ってね! そして試合を楽しんでらっしゃい」
「ええ! そのつもりよ!」
「家もお父さんとお母さんが
テレビで応援してくれるみたいですし
梁幽館との試合するの楽しみだったんです!」
「フフッ……なら大丈夫ね
真深と詠深ちゃんと珠姫ちゃんが
初めて3人一緒に先発するんだし
お父さんもお母さんも楽しみだわ」
そんな真深と詠深を見て
真深の母親は一転して微笑んだ表情になった
そして高校野球の番組が終わると二人は
真深の部屋で明日に備えて早めに寝ることにした
そして……
「真深ちゃん、ベッド使わせてくれてありがとう」
「ううん、気にしないで」
詠深は真深が使っているベッドに寝て
真深は部屋の床に布団を敷いて寝ていた
「いよいよ明日ね……」
「そうだね、楽しみで仕方ないよ」
真深も詠深も明日の試合が待ち遠しい様子だ
「野球、辞めなくてよかったな……」
「奇遇ね……私も同じ事を考えていたわ」
詠深は呟いた言葉に真深も同調した
「野球を辞めていたら
こんな楽しい機会を逃していたわね」
「うん……公式戦で初めて思いっきり
投げられるのが嬉しいし真深ちゃんの
お母さんも言ってたけど真深ちゃんと
タマちゃんと3人で一緒に公式戦の
試合に出られるのが凄く楽しみなんだ」
「ホントね……
私も今までに出場した、どの試合よりも
明日の試合が今まで1番楽しみで仕方ないわ」
練習で疲れている筈の二人だが
気持ちは明日の試合が楽しみで気持ちが
高まり過ぎた為に眠くなれずにいたのだ
「明日は私達3人にとって
記念すべき試合……絶対に勝ちましょう」
「うん! 勝てるよ、きっと」
「ええ! 明日の試合を詠深の
公式戦初勝利の試合にしちゃいましょう」
「そうだね、頑張るよ!」
「フフッ……さあ、もう寝ましょう
少しでも多く寝ておかないと明日に響くわ」
「だね……おやすみ真深ちゃん」
「おやすみ、詠深」
最後にエールを送りあった二人は何とか気持ちを
落ち着かせて眠りについたが明日の試合が真深と
詠深の運命を大きく変える試合になるという事を
この時の真深と詠深の二人は知るよしもなかった
ーー翌日ーー
朝になり朝食を食べ終えた二人は
真深の両親に見送られ試合会場の
大宮公園野球場を目指していると
最寄り駅前で珠姫の姿を見つけた
「タマちゃ~ん!」
「おはよう、珠姫!」
「詠深ちゃん! 真深ちゃん!」
詠深と真深に声をかけられた珠姫も
振り替えって二人に手を振って答えた
「いよいよだね……緊張してない?」
「そりゃ、多少はしてるけど
昨夜、真深ちゃんとも話したけど
今日は初めて3人で一緒に公式戦に
出られる日だし電車の中で皆のことを
考えてたら早く投げたくて仕方ないよ」
「私も早く打席に立ちたくて仕方ないわ」
「そっか……なら大丈夫だね」
いつもと変わらない様子の
詠深と真深を見て珠姫は安心して笑みを見せる
「うん! 一生忘れられない日に
なる気がするよ……今日は宜しくね」
「宜しくね、詠深ちゃん」
「二人とも、頼んだわよ」
「うん! 真深ちゃんも宜しくね」
「ええ、必ず援護して見せるから」
そう言って詠深と真深は珠姫は握手をする
その後3人は大宮公園野球場に到着すると
新越谷のメンバーと合流して更衣室に入り
ユニフォームに着替えて試合に備えた
ーーそれから数分後ーー
ベンチ裏の通路で新越谷の主将の怜と
梁幽館の主将の中田による先攻後攻を
決めるジャンケンが両チームの監督と
審判の立ち会いの元で行われた
「「最初はグー! ジャンケン……ぽん!」」
結果は中田が"パー"怜が"グー"となり
中田が先攻か後攻を決める権利を得た
「後攻でお願いします」
やはり野球で有利と言われる後攻を選択した
「新越谷、先攻……梁幽館、後攻……っと」
そして試合の主審を務める審判の女性が
メモを書いている内に両主将が握手を交わした
「「よろしく、お願いします」」
因みに怜は相手がスタープレイヤーの
中田ということもあり表情は少し緊張していた
更に……
「……(名将、栗田監督……今年で
45になる筈ですが、これほどお若いとは!)」
「お手柔らかに」
藤井先生も名将と呼ばれる梁幽館の
栗田監督と緊張した表情で握手していた
「それでは良い試合を」
「はい!(栗田監督と握手してしまいました
今日は手を洗えませんね)」
どうやら藤井先生は栗田監督に憧れているらしい
そして新越谷は一塁側のベンチへと入っていくと
そのすぐ後に梁幽館のメンバーが三塁側に現れた
「梁幽館だ!」
「中田、頼むぞーー!」
「陽さん、かわいい!」
「吉川だ! ガールズから見てるぞ!」
梁幽館のメンバーが三塁側に現れると
球場内が割れんばかりの歓声に包まれた
更に言うと新越谷が座る一塁側の客席が
ガラ空きなのに対して梁幽館が座る三塁側の
客席の方は沢山の観客に埋め尽くされていた
やはり名門校だけあって人気も期待も凄く
この場にいる誰も新越谷に注目していなかった
そして両チームのメンバーがホームベース前に
集合し審判の合図と共に試合前の挨拶を交わす
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」
新越谷 VS 梁幽館……運命の一戦が遂に始まる
ようやく梁幽館との試合の話に入れました
以前にも書きましたが梁幽館との試合では
オリジナル展開が多いので宜しくお願いします
それから……
原作では詠深の扱いに試行錯誤していた
新越谷のメンバーでしたがこの物語では
詠深が真深には素直なので何かあったら
全て真深に任されている設定です
それでは次回まで失礼致します