自分の文章を書く能力の低さが嘆かわしい
ですがオリジナルシーンを入れたりして
自分なりに良いできになったと思うので
少しでも楽しんで頂けると幸いです
それでは、ご覧下さい
真深が敬遠で一塁に歩かされて
ワンアウト満塁となった新越谷
《5番、中堅手、岡田さん》
そして、5番の怜に打順が回ってくると
当然、梁幽館の内野陣は併殺打に備えた
シフトを敷いてきていた
(ここで新越谷の主将か……
さっきは二塁打を打たれたけれど
私を信じてくれた先輩たちの思いに
答えるためにも是が非でも抑えてやる)
先程、中田から掛けられた励ましの言葉を
心に刻み付けていた吉川は、強い気持ちを
持って怜と対峙していた
(さあ! 歩かせたからには抑えるわよ)
(あぁ、死んでも抑える!)
小林と吉川は気持ちを切り替えると
再び仕草や目線でサインの、やり取りを始めた
(相手はスライダーを意識している筈よ
だから初球は、内角に直球を外した後に
"コレ"で仕留めるわよ!)
(オッケー!)
小林のサインに頷いた吉川は
内角高めに直球を投げてくる
「ボール」
(内角高めに直球で来たか……
だとすると次はスライダーが来るはず!)
内角高めの直球に主審がボールをコールすると
怜は次に来る球種をスライダーだと予測したが
それは小林も読んでいる事を知る由もなかった
そして、次に投じられた球種は……
(カーブ……!?)
小林が吉川に要求した2球目の
変化球の球種はカーブであった
スライダーよりも球速が遅いカーブを
投げられた為にスライダーを読んでいた怜は
カーブに完全にタイミングを外されてしまい
バットの先端に引っ掻けさせられてしまった
「セカンド!」
「オーライ!」
吉川が二塁手の白井に向けて大声をあげると
白井は既に打球に反応していて捕球と同時に
二塁のカバーに入った遊撃手の高代にトスを
送ると高代も捕球と同時に一塁手の中田に
素早く正確にボールを送球して4・6・3の
ダブルプレイでスリーアウトになってしまった
「やった!」
「よっしゃーー!」
ダブルプレイでスリーアウトになると
小林と吉川は思わず喜びの感情を表した
「くっ……!!」
逆に併殺打を打たされてしまった怜は
既にボールが送球された一塁を踏むと
同時に悔しそうな苦い表情と声を発した
《梁幽館の吉川投手!
4番、上杉を歩かせた後に迎えた満塁の
ピンチを見事にダブルプレイで凌ぎました!》
「いいぞ、吉川!」
「ナイピーー!」
そして真深への敬遠でざわついていた
観客席から吉川に声援が送られてきた
「よく抑えた、和美」
「アザっす!」
「依織もいい配球だった」
「ありがとうございます」
そして吉川と小林がベンチに戻り中田が
バッテリーの二人に労いの言葉を送ると
直ぐに他のメンバーを周りに集合させる
「制球の良い直球に"ツーシーム"に
決め球である大きく縦に落ちるスライダー
中々の好投手だが攻略できぬこともないだろう」
1回裏と2回裏の詠深の投球を見て
球種を把握した中田は改めてメンバーを鼓舞する
「再び上位に回るこの回……一気に突き放すぞ」
「「「「「「「「 おうっ! 」」」」」」」」
最後に中田の激を飛ばすと全員が
気合いをいれた声で中田に答えた
「…………」
一方ワンアウト満塁のチャンスを
ダブルプレイで凌がれてしまって
芳乃は途方に暮れてしまっていた
「すまん……」
「ドンマイ、主将!」
「まだまだ、これからです!」
そこへ併殺打と打たされてしまい
申し訳なさそうにベンチ戻ってきた怜に
詠深と真深の二人が直ぐ様フォローを入れる
「さっ、さあ! 切り替えて守ろう!!」
「「「「「「「「おーー!!」」」」」」」」
詠深と真深の声で何とか我に帰った芳乃が
精一杯の笑顔で守備へと向かうメンバーを
送り出したのだった
《9番、右翼手、西浦さん》
そして3回裏の梁幽館の攻撃は9番打者で
吉川や小林と同じ2年生の西浦からの打順だった
(次の打者から2順目……
この9番は是が非でも押さえたい)
西浦の次は再び1番の陽秋月に回るので
その前にランナーを置きたくない球姫は
9番打者とはいえ慎重に攻めていく事を
心掛けていたので初球から"あの球"の
サインを出してストライクを取ったが
西浦は表示を変えず落ち着いた様子だ
(陽さんを三振にした球……成る程……
1年生の投球レベルを遥かに越えている)
初球に投じられた"あの球"だったが
西浦に動揺した様子は全く見られず
寧ろ冷静に見極めているかのような
雰囲気すら感じられる
(この投手は、これから先も
私達の前に立ちはだかることになる
今のうちに潰しておかなければ)
これまでの詠深の投手内容や
先程の中田から聞かされた情報に加えて
投じられた"あの球"を見た西浦は詠深が
危険な投手だと認識すると詠深に精神的
ダメージを与えるために敢えて決め球の
"あの球"に狙いを定めることにすると
2球目に投じられた"あの球"を完璧な
タイミングでライト前へと弾き返すと
(確か右翼手は初心者……行ける!)
右翼手の白菊が初心者なのを理由に
そのまま一塁を蹴って二塁へと向かった
「白菊ちゃん、二塁(2つ)!」
「はい!」
西浦の打球を捕球した白菊が一塁の希の
声に反応して剣道で鍛えた肩を生かして
素早く二塁に送球した
「暴走だぜ!!」
そして白菊からの送球をキャッチした遊撃手の
稜が西浦の足をタッチアウトにしようとしたが
西浦は二塁を諦め一塁で止まっていた
長打コースになったので本当は二塁まで
行こうとしたが影森との試合の映像で見た
ホームランが頭を過ると肩も強い可能性が
高いと判断して一塁で止まったのであった
実際に白菊の送球は進塁を試みていれば
タイミング的にアウトになっていたのである
真深や怜にこそ及ばないが初心者でも
白菊の肩の強さはトップレベルなのだ
("あの球"が狙われていた……?
出してはいけない先頭打者を出してしまった)
しかし球姫は"あの球"を完璧に打たれた上に
出したくなかった9番打者を出してしまって
苦い表情を浮かべていた
一巡目は見てくると思い込んでしまった上に
打たれるわけないと高を括ってしまったので
打たれたのは自分の配球ミスだったと球姫は
反省しながら詠深に謝った
因みに詠深は打たれたのは自分のミスだと
思っていたらしく球姫が謝ってきた理由が
分からず首を傾げていた
("あの球"をまともに打たれたのは
真深ちゃんと主将と勝負した時、以来だな……)
そして西浦の狙い通りに"あの球"を完璧に
打たれたことで詠深の頭の中で西浦に対して
警戒感と苦手意識が芽生えそうになっていた
《1番、中堅手、陽秋月さん》
そしてノーアウト、走者一塁で打席には
中田の次に危険な打者である陽秋月が立つ
先程は三振にしたが初見と違い打者一巡し
詠深の投球レベルや球種を見せているので
さっきのように簡単に打ち取れないことは
詠深も球姫も十分すぎるほど分かっていた
(さっきの借りを返す!)
そして陽も久しぶりに三振にされたことで
詠深にリベンジしようと西浦の同じように
"あの球"を狙っていた
(陽さんにバントはない……
何がなんでも自力でアウトを取らないと)
1回の高代の打席こそ真深のホームランに焦り
バスターをしてきてはいたが基本的に梁幽館は
ノーアウトかワンアウトでランナーが出た場合
栗田監督の指示で送りバントをしてくることが
多いのだが梁幽館の打線の中では中田と同じく
自分の判断で打つことを許されてる上に打率が
6割の陽秋月がバントしてくる可能性は低いと
球姫はきちんと読んでいた
そして今後は初球から"あの球"のサインを
出したが陽は待っていたかのようにバットを
振り抜きライト線へのファールボールになった
(タイミングが合ってた……
陽さんも"あの球"を狙っているんだ
だったら……"コレ"で引っ掻けさせるよ!)
ファールになったが、またも"あの球"を
タイミング良く当てられたことで、陽も
"あの球"を狙っていると悟った球姫は
配球を見直し比較的打率の低い外角へ
"ツーシーム"のサインを出したが……
(ツーシーム……!?
もう"あの球"は投げて来ないか
だったら……コレを打てばいい)
この打席では"あの球"は来ないと悟った陽も
瞬時に狙いを変更して"ツーシーム"を捉えて
レフト前に打ち返した
(簡単な球じゃないのに……何なの!?)
そして外角へと逸れる難しい"ツーシーム"を
意図も簡単に弾き返されたので球姫は完全に
動揺されられてしまった
しかし打球はランナー性の強い打球となって
一瞬で左翼手の真深に飛んで行ってしまうと
目の前で"ワンバウンド"した打球を捕球した
真深は一塁に走り出した陽と一塁でグラブを
構える希の姿を確認すると腕を振りかぶった
(まさか……)
本来なら楽々、一塁に到達できる打球だったが
1回裏に、真深が見せた強肩を思い出したのか
(まずい!?)
真深が一塁に送球しようとしていることに
気づいた陽秋月は全速力で一塁へと走った
「行っけーーーーー!!」
その瞬時に真深は一塁で陽を刺そうと
再び強肩を使って一塁にボールを送球した
《出ました! 上杉の凄まじい送球!
まさか打った打者を外野から狙うつもりか!?》
外野から打者を刺そうとする真深により
再び"レーザービーム"が披露されたので
実況が興奮しながら真深の送球と一塁に
走る陽の足のどちらが間に合うか見守る
(間に合え!!)
普通に走ったのでは間に合わないと悟った陽は
両腕を一塁に伸ばしてヘッドスライディングを
試みた結果……真深からの送球を捕球した希が
陽にタッチする前に陽は一塁のベースに触れて
間一髪アウトを免れることができた
「セーフ!!」
そして塁審からのセーフがコールされて
一先ず安堵した陽だったのだが完ぺきな
レフト前ヒットが危うくアウトかという
ギリギリのタイミングでのセーフとなり
ヒットを打った感じがしなかったのだが
直後に更に思わぬ事態が起こった
「希ちゃん、3つ(三塁)!!」
「「!?」」
三塁から理沙の声がして希と陽秋月が三塁を
見ると詠深の"あの球"を打って出塁していた
西浦が隙をついて三塁を狙い走り出していた
そして理沙の声で状況を瞬時に理解した希は
直ぐに三塁の理沙に球を送球すると希からの
送球を捕球した理沙は走り込んできた西浦の
足をしっかりタッチした
「アウト!!」
結果、西浦を三塁でアウトにすることができて
一塁ランナーが西浦から陽に入れ替わっただけで
無事にワンアウトを取ることができたのであった
「「「やった!!」」」
それに詠深、球姫、芳乃は思わず
声をあげて喜びの感情を見せた
レフト前ヒットでノーアウト一塁・二塁の
ピンチになったはずがワンアウト一塁に
なったのだから当然と言えば当然であった
(なんということでしょう!?
陽秋月のレフト前ヒットが危うく
レフトゴロになりそうになった上にヒットに
なったにも関わらずノーアウト一塁・二塁と
チャンスが広がるどころかワンアウト一塁と
アウトが増え走者が入れ替わっただけという
非常に珍しいプレイが飛び出しました!)
ヒットでランナーが増えず
逆にアウトカウントだけが
加算された新越谷の守備に
実況は信じられなさそうに
声を張り上げてしまった
「真深ちゃん、理沙先輩、ありがとうーー!!」
梁幽館のチャンスを潰す切っ掛けになる
送球を送った真深と三塁で西浦の進塁を
希に知らせた理沙にマウンドから詠深が
お礼を言うと真深と理沙は右手の指で
"ワンアウト"を示しながら答えていた
「凄い!!
陽さんにヒットを打たれたのに
ピンチが広がるどころか相手の
チャンスを防いじゃったわよ!?」
「うん! (出したくなかった9番の
先頭打者を出してしまって嫌なムードに
なってただけに、このアウトは凄く大きい!)」
そして新越谷のベンチでは息吹と芳乃が
思わぬアウトに興奮しながら喜んでいた
3回表の攻撃でチャンスを掴みながらも
無得点で終わった上に出したくなかった
先頭打者を出して流れが悪なる可能性を
危惧していたので今のアウトな芳乃には
心の底から嬉しいアウトだったのである
そんな息吹と芳乃……
そして梁幽館を相手に健闘する選手を
藤井先生も微笑みながら見守っていた
「スミマセン、監督……」
一方でアウトになった西浦は悔しさと
申し訳ない気持ちという相反している
2つの感情が渦巻いた状態でベンチに
戻ると同時に栗田監督に謝罪をする
「仕方ありません……
まさかあんなプレイをしてくるとは
私も思っても見ませんでしたからね」
外野手の真深が打った打者を一塁で
アウトにしようとする想定外すぎる
プレイだったこともあり栗田監督は
西浦の走塁の判断を責めなかった
「今後はレフトに打球が飛んだ時は
無闇に次の塁を狙うの控えた方がいいだろう」
「彼女の、あの肩の強さは危険ですからね」
続けて主将の中田が西浦を含めた
ベンチにいるメンバー全員に意識させると
戦略マネージャーの高橋も納得して付け加えた
「ですが……このままでは終わらせませんよ」
そしていつもよりも闘志を露にしてきた
栗田監督に梁幽館のベンチのメンバー達
全員が息を飲んだ
(栗田監督を、ここまで暑くさせるとは……)
(新越谷……やりますね!)
そんないつも一味違う栗田監督の姿に
中田と高橋は少し驚いたが、それ以上に
新越谷との試合が更に楽しくなっていた
「白井さん!」
「はい!」
そして栗田監督は次の打者の
白井に耳打ちで指示を出した
「わかりました!」
そして耳打ちされた栗田監督からの指示に
白井が気合いをいれながら頷いて答えると
栗田監督は続けて一塁の陽秋月にサインで
指示を出すと彼女も監督の同じくサインに
しっかり頷いていた
《2番、二塁手、白井さん》
そして白井が打席に立つと球姫は
芳乃のサインを確認しようとして
芳乃の方も球姫にサイン出そうと
していたであるがこの時の球姫と
芳乃はある思考でお互いに考えが
一致していたのであった
それは……
(今日の梁幽館は……)
(何をしてくるか読めない……)
1回裏の攻撃では高代がバントをしてくると
読んだものの実際にはバスターを仕掛けられ
その直後には真深の技術の真似をした中田に
同点ホームランを打たれるなど真深や詠深の
活躍で梁幽館を翻弄できてるメリットの反面
それに対応してくる梁幽館の手の内や作戦が
読みづらくなるデメリットが起きていたのだ
(ここは併殺で、ダブルプレイを取るのが
1番の理想なんだけどバントをするのか
或いは強攻して打ってくるのか……?)
今もワンアウト一塁なので本来の梁幽館なら
送りバントをしてくる場面である筈なのだが
1回裏に高代がバスターしてきた場面が頭を
過って球姫と芳乃は警戒していた
(陽さんのリードが少し大きいけど
盗塁するか判断するには微妙なリードだな……)
陽は6割打者であることに加えて足も
早いので1番打者を任されているので
球姫は打者の白井だけでなく一塁上の
陽の動きにも注意していた
そして今の陽はリードが、やや大きく
盗塁か送りバントの、どちらで来るか
芳乃の判断を仰ごうと目を向けると、
(1球"あの球"で出方を伺おう……)
(うん、わかった!)
芳乃は西浦に打たれたものの詠深の
持ち球の中で1番打たれる可能性が
低い"あの球"を投げて白井の出方を
伺う作戦に出た
「ストライク!」
すると白井は投じられた"あの球"を
力一杯スイングしたが捉えられずに
空振りして一塁上の陽も動きは無い
(振ってきた……)
(強攻を選択した……!?)
フルスイングした白井と盗塁の気配を見せない
陽秋月の様子を確認した芳乃と球姫は梁幽館が
この場は強攻を選んだと判断した
ところが芳乃と球姫がアイコンタクトで確認を
している間に白井も陽秋月とアイコンタクトを
して合図を送りあっていることに芳乃と球姫に
新越谷のメンバーは誰も気づいていなかった
(詠深ちゃん……次は内角に直球だよ
"あの球"の残像が、残っているうちに
内角を攻めて詰まらせて併殺、狙おう
制球ミスらないでよ……)
(オッケー!!)
球姫のサインに頷いた詠深は内角に構えた
球姫のミット目掛けて渾身の直球を投じた
…………がっ!
《あぁーーっと! 一塁ランナー、スタート!》
詠深が内角に直球を投げたと同時に陽は
一塁から二塁に盗塁を仕掛けたのである
更に……
「「「あっ!?」」」
白井もヒッティングの構えから
バントの構えに変えてきたのである
そして白井は詠深が内角に投げた直球を
三塁線にボールの勢いを無くすバントを
転がすと上手く勢いを消す三塁と本塁の
ちょうど間へと転がす緩いバントになる
詠深は意表を突かれて反応が遅れてしまい
三塁手の理沙も併殺シフトを取ろうとして
普段より二塁に寄ってしまっていたために
理沙は急いでバントされたボールを掴んで
一塁に送球にしたのだが1回裏にも見せた
足の早さを生かして悠々とセーフになると
「希! ランナー、回ってるわ!?」
「えっ!?」
菫の掛け声に希が反応するとランナーの
陽が既に二塁を蹴って三塁へと向かって
走り出っていたのだ
慌てて希は三塁へ送球しようとしたが
詠深の投球と同時に走り出したことに
加えて陽は西浦より足が早かった上に
白井のバントに気を取られていた事で
反応が遅れたことにより三塁と本塁の
間に転がされた打球の処理に向かった
三塁手の理沙が三塁まで戻れておらず
遊撃手の稜は相手の動きに翻弄されて
三塁のベースカバーに入るのが遅れて
結果誰も三塁のベースカバーに入れず
希は三塁に送球することが出来ず陽に
三塁への進塁を許してしまった
《梁幽館、見事な機動力!!
相手に意表を突かれて失ったチャンスを
逆に相手の意表を突いて取り返してきました》
梁幽館の意表を突いた攻撃に実況も
目を見張りながらコメントをすると
観客席の梁幽館の応援団や梁幽館を
応援する観客が盛り上がり梁幽館の
ベンチではメンバーのテンションが
上がっている横で栗田監督が陽と
白井に満足そうに拍手を送っていた
実は栗田監督は打席に向かう前の
白井に対して初球は態と空振りを
して相手に強攻を意識させた後に
直球が来たら三塁線にバントを
するよう指示を出すと陽秋月には
バントと同時に盗塁をして一気に
三塁まで行くよう指示をしていた
これは監督として長年の経験から
新越谷が三塁に走ったランナーを
アウトにしたので直後に梁幽館が
同じようなプレイをしてくるとは
思わないであろうと読んだことに
加えて新越谷に意表を突かれて
潰されたチャンスを逆に新越谷の
意表を突くことで取り替えそうと
考えた栗田監督の秘策だったのだ
現に新越谷側は全員が陽が三塁まで
走ってこないと思い込んでいたのだ
「…………」
梁幽館の意表を突き返す攻撃と走塁に
相手の考えに気づいたのか強攻すると
判断をしてしまった芳乃は呆然とした
表情でいることしか出来ずにいた
「……(セーフティバントで
陽さんを三塁まで進めてしまった……
私の判断ミスのせいで、またピンチに……)」
せめて、もう1球、様子を見れば良かったと
芳乃は呆然としながら自分の判断を大きく
悔やんでしまっていると新越谷の内野陣も
苦い表情を浮かべていた
一方、球姫は……
(これが梁幽館の実力か……
これで次で併殺が取れなかったら……)
併殺打でダブルプレイが取れなければ
今度は新越谷がピンチで4番の中田に
打順を回す危険を想定していると……
「ドンマイ、ドンマイ! 次で抑えようよ」
詠深だけが1人明るい声と表情で
メンバーを励まし気合いが入っていた
(詠深ちゃんは、こんな時でも
気持ちを切らさないから本当に凄いな……)
球姫は詠深は逆行に屈しない精神力と
前向きな姿勢に励まされ自分も詠深に
見習わなければと気持ちを切り替えた
《3番、遊撃手、高代さん》
そして再びチャンスを得た梁幽館は
ここでクリーンナップに打順が回り
先程は真深のファインプレイにより
凡退した高代が気合い十分な表情で
打席にたった
(とにかく、ここは意地でも
高代さんを抑えないといけない……
できればダブルプレイを取りたいけど
取れなければ今度は確実に中田さんを
敬遠して笠原さんで勝負が理想かな?)
球姫は辛うじて冷静にピンチを乗り切る
作戦を考えていたが、どちらにしろ、ここで
高代を打ち取れなければ話にならないのだ
(三塁に足の早い陽さんがいるから
外野フライは勿論、スクイズにも注意しないと)
そして球姫からのサインを受けた詠深は
高代への初球をスクイズの警戒のために
1球、外に大きく外した
一方、梁幽館ベンチでは……
(ここは本来なら強攻で行きたい場面ですが
万が一、強攻で行ってレフトに飛んでしまえば
また上杉さんの強肩でアウトにされかねません)
普段は強攻を好む高橋だったが強攻で行った際に
真深の強肩で防がれるリスクが頭に過ったために
強攻か慎重にスクイズで行くか考えていた
(強攻かスクイズ……
栗田監督は、どちらを選ぶでしょう?)
再びチャンスを取り返した監督の
采配に注目していると栗田監督は
高代にサインを出すとそれを見た
高代は静かに頷き集中して詠深と
対峙すると……
(それで、行きますか……)
栗田監督の選んだ采配を見た高橋は
栗田監督らしいと思いながら笑みを浮かべた
一方、球姫は……
(ここで1番嫌なのは警戒しすぎて
四球を出して満塁で中田さんに回すこと
カウントを悪くせずにストライクが欲しい
……と相手も考えてるはず……つまり……!!)
【スクイズ!】
スクイズと読んだ球姫は今度は外に大きく外すと
球姫の読み通りに高代はスクイズをしようとして
バットの構えになって三塁ランナーが飛び出すと
詠深も球姫のサインに合わせて外に大きく外した
(かかった!)
(外された!)
作戦が成功したと笑みを浮かべる球姫に対し
飛び出してしまったランナーは焦りの表情になり
梁幽館のベンチでも焦った様子を見せたが
(くっ……! 当てる!)
ランナーをアウトにさせまいと高代は
打席からジャンプして飛び出してバットに
ボールを当てたが捕手の真上に打ち上げた
(よし、打ち上げた! これで……!)
高代が真上に打ち上げた打球を捕球しようと
球姫は上空のボールを視界に捉えようとした
しかし……
(うっ!?)
ボールが太陽の光と重なってしまい
太陽の光に目が眩んだ球姫は高代の
打球を落としてしまった
三塁ランナーの進塁は許さなかったが
白井は一塁から二塁に進めてしまうと
高代も一塁への出塁を許してしまって
ワンアウト満塁となってしまった
(なんて不運……!?
読み合いには勝っていたのに!
さっきの真深ちゃんの打席の時の
風といい今の日光といい運が悪すぎる……)
相手の考えを読んで2つ目のアウトを
取れた筈が日光という思わぬ障害により
取り損ねたので先程の真深の本塁打性の
打球をファールにされた風に続き2度も
運や自然に邪魔され流石に芳乃も項垂れる
(しかも次の打者は……)
芳乃は心の中で嘆きながら
相手のネクストサークルに目を向ける
『4番、一塁手、中田さん』
《さあ! ワンアウト満塁のチャンスで
第1打席で、同点となる2ランを放った中田です》
そして新越谷は満塁で最も回したくない
強打者に打順を回してしまったのである
「中田! 2打席連勝だ!」
「満塁本塁打、打てーー!」
「この打席で決めちゃえ!」
そして梁幽館を応援する観客から満塁本塁打と
それによって試合を決定付けることを期待する
大声援が起こり始めた
(最高の形ですね!
スクイズ成功よりも良いかも!!)
スクイズ自体は失敗に終わったがチャンスは
更に広がった上に4番の中田に打順が回って
高橋も興奮のあまり思わず両手に力が入った
そして新越谷にとってはこれ以上にない程の
大ピンチの到来であった
そんな大ピンチに新越谷のベンチでは……
(前の攻撃で時間をかけて
丁寧に攻めていれば……数分遅れていれば
球姫ちゃんの真上にまだ太陽は来てなくて
捕れてたかも……私の采配ミスの"せい"だ)
芳乃は精神的に追い詰められて太陽の位置という
予測しようのない不運ですらも自分の采配ミスの
"せい"だと見てしまい自分を責めてしまっていた
すると……
「ちょっと、芳乃!」
「ふぇ?」
横から息吹の声がして芳乃が向いて見ると
息吹がやや呆れたような表情をして芳乃の
顔を見つめていた
「アンタ……今のエラーを
自分の采配ミスだって思ってたでしょ?」
「えっ!?」
自分を責めていることを息吹に
言い当てられた芳乃は驚きを隠せなくなる
「確かにエラーにはなったけど今のは
芳乃のミスでも球姫のミスでもないわよ!
太陽に目が眩んだ不運だから仕方ないでしょう」
「どっ、どうして分かったの……?」
「そりゃ分かるわよ……
私たちは双子であって家族なのよ!
何年、一緒に過ごしてきたと思ってるのよ?」
自分の考えを言い当てられて
戸惑いながら理由を尋ねる芳乃に
息吹は再度、呆れたような表情で答えた
精神学的にも双子は互いに無意識で同じ行動や
仕草をしたり相手の考えが分かる時があるとは
言われているが息吹もいつも一緒にいた芳乃の
考えを感じ取ったのかもしれない
「勝負は時の運とも言うし
さっき真深と先生も言っていたけど
采配ミスなんて誰でもするんだから」
「息吹ちゃん……」
「とにかく今のは運が悪かっただけで
誰も悪くないんだから気持ちを切り替えて
この状況を打開する作戦を考えるのが先よ」
「うん……ありがとう!
(確かに息吹ちゃんの言う通りだ……
いちいちエラーを気にしてたらキリがない)」
息吹のフォローにより芳乃は不運によるエラーの
ショックから無事に立ち直ることができたようだ
「それで……作戦は、どうしますか?」
そんな双子のやり取りを見守っていた
藤井先生が改めて芳乃に作戦を尋ねる
「このまま何もしなければ
決まりかねません……ここは思いきって」
芳乃は作戦を決めたが
何やら複雑そうな表情になって
息吹と藤井先生に作戦を伝える
「ほっ、本気なの……!?」
「これはまた……思いきった作戦ですね」
「はい! 今はもう、これしかないと思います」
作戦を聞いた息吹と藤井先生は
思わず耳を疑いそうになってしまったが
芳乃は迷いを断ち切ったように説得した
どうやら芳乃の考えた作戦とは、芳乃自身は
勿論だが、それ以上に聞いた側の人間も驚く
内容だったようだ
「分かりました! それで行きましょう」
「覚悟を決めるしかないわね……」
しかし芳乃の驚愕させられる作戦に
藤井先生と息吹も芳乃を信じて同意した
「息吹ちゃん! 皆に、伝令お願い」
「分かったわ」
そして藤井先生が主審にタイムを取ると
息吹は詠深とマウンドへと集まっていた
内野陣や球姫に芳乃からの作戦を伝えた
「芳乃らしい作戦だけど……素でエグい」
「まあ、毒も食らわば皿までって言うしな」
「ごめんね……
私のエラーのせいで満塁になっちゃって」
「タマちゃんは、いつも完璧過ぎるからねぇ
たまには、こんなこともあっても良いのでは?」
「流石に太陽の動きまでは
誰も予測出来ないから仕方ないわよ」
息吹から芳乃の作戦を伝えられると
菫、稜、球姫、詠深、息吹の順に感想を
言葉にして驚いていたが……
「まあ、さっきは向こうが
真深に、やってきたんだから今度は私たちが
中田さんに、やっちゃっても良いんじゃない」
「だな! まあ、向こうの時と違って
こっちは満塁だから1点は取られるけどな」
「でも長打や、最悪ホームランを
打たれちゃうよりは、遥かにマシでしょ?」
「そうだね……
真深ちゃんがホームラン打った後に中田さんが
ホームランを打って借りを返してきたんだから
今度は私達が借りを返しちゃえばいいんだよね」
「"目には目を"……やね!」
「そうね! 最小失点で切り抜けましょう」
「私も同じミスは2度としないよ」
何やら真深の第2打席のことを引き合いに
出すと菫、稜、息吹、詠深、希、理沙の順番に
賛成の意を示す言葉を口にするとエラーを
記録した球姫は2度とエラーをするまいと
その場で気合いを入れると息吹はベンチに
戻り内野陣もポジションに戻っていった
「お待たせしました」
そして球姫もポジションに戻ると主審と
中田にタイムで時間を取らせたことを
お辞儀をして詫びてから詠深と向き合う
(もう、腹を括るしかないね)
(うん!)
最後に詠深と球姫はアイコンタクトをする
そして新越谷の決めた作戦は……
《新越谷バッテリー、勝負しません!
なんと満塁ですが敬遠を選択してきました》
球姫が立ち上がり右手を横に翳した瞬間
球場全体が"どよめき"と"ざわめき"に包まれた
新越谷は満塁で中田を敬遠する選択をしたのだ
「うわーー!! 満塁でやってきた!?」
「はぁ!? 嘘でしょう!?」
「ホームランの次は、敬遠の応酬だ!?」
「オイイ! あり得んって!」
「さっきも守備と攻撃で
お互いに意表を突き合ったりしたし!?」
「満塁だし、勝負しかないだろ!?」
「どうなるんだ、この試合!?」
まさかの満塁敬遠に梁幽館が真深を
敬遠した時のように賛否両論の声が
球場の彼方此方から巻き起こった
「フッ……(やってくれたな)」
敬遠されることは今までに何度も
経験してきた中田も流石に満塁で
敬遠されるとは思わなかったらしく
一瞬だけ驚いた表情を見せていたが
直ぐに面白そうな苦笑いを浮かべた
「やりやがった……」
梁幽館のベンチでも唖然としている
メンバー全員の気持ちを代弁するように
吉川が静かに呟いたが高橋は満塁敬遠に
対し何やら意味深な笑みを浮かべていた
(私は心のどこかで……
やって来ることを期待していたかも?)
どうやら新越谷が満塁敬遠をしてくる
可能性が脳裏に浮かんでいたようである
(奈緒さんの打力を考えれば当然の敬遠
加えて今は新越谷に悪い流れが来ていて
その悪い流れを変えられる可能性もあり
これは一石二鳥とも言える合理的な作戦
それに先に敬遠をしたのは此方ですから
観客の反応もさほど酷くないですから
選手がメンタルを保てれば問題ないです)
高橋は対戦相手ながら満塁敬遠を選択した
新越谷の作戦には納得していたのと同時に
満塁敬遠という大胆な作戦に出た新越谷の
指揮官の度胸と冷静さに感心していた
「ボールフォア」
その間に中田は敬遠で一塁に歩かされると
満塁だったので三塁ランナーの陽秋月が
押し出しでホームを踏んで梁幽館が1点を
勝ち越すことができたが思わぬ形による
勝ち越し点に梁幽館のベンチでメンバーは
盛り上がることなく複雑そうな表情になり
微妙な空気に包まれてしまっていた
《5番、三塁手、笠原さん》
そして打席には5番打者の笠原が立ったが
その表情の中には憤りの感情が現れていた
「くっ……(舐めやがって!!)」
いくら中田の打撃が規格外とはいえ
自分の前の打者が満塁で敬遠されて
面白くなく思っていることは明白で
意地でも打ってやろうという気迫で
満ちていたのだった
そして……
(詠深ちゃん……
1球目と2球目はさっきと同じ攻めで)
(分かった!)
球姫が詠深に出したサインは大胆にも
前の打席と同じ2球続けて"あの球"で
攻めていくものだったが球姫を信じる
詠深は躊躇いなく球姫のサインに従い
投げると1球目は空振りにし2球目は
カットさせて直ぐに笠原を追い込んだ
(さっきと同じ攻め……!?)
1回裏は怜のファインプレイによって
アウトにされたが打球の当たり自体は
良かったので同じ攻めで来られ笠原は
意表を突かれていたのだった
そして勝負の3球目は……
(さっきの第1打席では打たれたけど
ここは敢えて同じ内角への直球で行くよ!
但し……ここで強直球を使って攻めるよ!)
(強直球!! まだ未完成だけど
真深ちゃんから教わってる変化球と
一緒に練習している私の切り札の直球)
この試合で初めて強直球のサインが出て
投げたかった詠深が嬉しそうな表情を見せる
そして球姫が本来のポジションよりも遠くに
居ることをイメージしながら渾身の力を込め
強直球を投げた
「チッ……(やっぱり同じ攻め……舐めるな)」
完全に舐められたと思った笠原は
第1打席で打った時と同じように
詠深の直球を捉えようとしたが
「えっ……!? (早い!?)」
第1打席の時とは桁違いの早さで
投げられた強直球にタイミングを
完全に外されてしまうとバットの
根元に当たってしまった打球は
詠深のグラブに難なく収まると
1・2・3のダブルプレイになり
1点は失ったが梁幽館と同じく
満塁のピンチを最小失点で切り抜けた
「よしっ!!」
無事にピンチを切り抜けた詠深は
歓喜で、その場で右手を強く握りしめた
そしてチャンスを潰された梁幽館の
ベンチではメンバーが項垂れていて
暗い空気に包まれていた
「詠深、ナイピー!!」
「流石よ、詠深!!」
「今の直球! 私にも投げて! 勝負して!」
そして詠深がベンチに戻ると稜と菫が
労いの言葉をかけると希に至っては
詠深の直球に闘争心に火がついたのか
強直球で勝負してほしいと頼んでいた
そんな新越谷のベンチを敬遠で一塁に
歩かされた中田が興味深そうな表情で
詠深のことを見ていると不意に先程の
真深の言葉を思い出した
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「そう簡単に詠深は攻略できませんよ
あの娘は実力があるのに無名だったのは
中学時代のチームメイトに足を引っ張られて
実力を出せなかっただけで投手として中々の
実力の持ち主ですから油断しないことですね」
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「フッ……(確かに、手強そうだ)」
真深の言葉の意味を悟った中田は
面白そうな表情に変わると同時に
必ず攻略して見せようと闘争心に
火がついていたのであった
中田さんの第2打席は
原作と同じく満塁敬遠でしたが
先に梁幽館が真深を敬遠した事に加え
真深の活躍で新越谷を応援する観客が
原作より多いので賛否両論にしました
それから折角、息吹と芳乃が一緒に
ベンチにいるので球姫が日光で目が
眩んだシーンで自分の采配を責める
芳乃を励ますシーンを入れてみました
違和感があったら申し訳ありませんが
あのシーンは誰のミスではないという
自分は思うので書いてみました
それでは次回も宜しくお願い致します