詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

31 / 45
梁幽館との試合も終盤に突入します

そしてここから真深に加えて
詠深による無双も始まります

それにより梁幽館の打者の打席での
成績か原作と違うものになりますし
詠深も原作と違う感じになったかも
知れませんが宜しくお願い致します

それから今後のストーリーの都合上
前回の話で書いた真深の成績の本塁打の
順位と1位の選手の名前を変更しました
もう一度見直して頂けますと助かります

それではご覧下さい!


第29話 覚醒!

真深の経歴が明かになり真深たちの知らぬ間に

球場外が騒がしくなっている間にグラウンドの

整備が終了しこれから5回表の新越谷の攻撃に

入るので梁幽館のベンチから中田を始めとした

メンバーが守備に向かおうと走り出そうとした

 

 

すると……

 

 

「待ってください!」

 

 

守備に向かおうとしたメンバーを

栗田監督が真剣な声と表情となり

メンバーを呼び止めた

 

 

「栗田監督……? どうかしましたか?」

 

 

それに対して主将の中田が

メンバーを代表して返答すると……

 

 

「この5回表は3人で終わらせてください

そして裏の攻撃で一気に突き放してください」

 

 

「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」

 

 

栗田監督は5回表の新越谷の攻撃を

三者凡退で終わらせるように要求したのだ

 

そして栗田監督の要求を聞いた吉川と小林は勿論

中田や陽秋月を含めた他のメンバーも栗田監督の

指示の意味を瞬時に理解した

 

5回表の新越谷の攻撃は1番の珠姫からの打順だ

 

そのような状況で3人で終わせろという

指示を出す意図は最早1つしかなかった

 

 

【4番に回さずに終わらせろ】……である

 

 

梁幽館は5回表を凌げれば5回裏の攻撃は

2番の白井からの打順なので確実に4番の

中田に打順が回る状況なのだ

 

しかしその前の5回表の攻撃で相手の4番

即ち真深に打順が回り新越谷にチャンスを

作られ主導権を握られることを栗田監督は

警戒していたのだ

 

というのも今日の新越谷の試合運びを

見ていた栗田監督はチャンスの場面で

真深に打順を回してしまうと新越谷の

チーム全体が活気づいてしまうことに

気づいていたのだ

 

それを危惧した栗田監督は5回表で真深に

3打席目を回さずに3人で攻撃を終わらせ

その裏の攻撃で2番の白井と3番の高代が

チャンスを作った状況で中田に3打席目を

回して点差をつけて新越谷を突き放して

試合を決定付けたいと考えていたのである

 

 

そして……

 

 

「分かりました! 和美、衣織、できるな?」

 

 

「はい!」

 

 

「やってみせます!」

 

 

中田からの真剣な問いかけに

吉川と小林も真剣な表情で頷いて見せる

 

 

「よし! 確実に3人で終わらせて

5回の攻撃で一気に勝負を付けてやるぞ!」

 

 

「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」

 

 

栗田監督の意図を悟ったのか中田が

激を飛ばすと守備に向かおうとした

メンバー全員が揃って気合い十分の

声をあげたのだった

 

或いは中田を始めとした一部の

メンバーも栗田監督と同じ事を

考えていたのかもしれない

 

 

 

 

 

一方、新越谷のベンチでは……

 

 

 

 

 

「5回表は珠姫ちゃんからの好打順……

次の梁幽館の攻撃は中田さんにも回るから

こっちもチャンスで真深ちゃんと怜先輩に

回して出来れば先に主導権を取りに行こう」

 

 

やはり新越谷も5回裏の梁幽館の攻撃で

中田を始めとした中軸に打順が回ることを

芳乃や藤井先生は意識していたようである

 

 

「タマちゃん、打てーー!!」

 

 

詠深や仲間からの声援を受けた珠姫が

ネクストサークルから打席に向かっていく

 

 

(詠深ちゃん……絶対に勝たせてあげるからね)

 

 

120球投げるという爆弾発言はあったものの

改めて詠深の野球に対する思いを知った珠姫は

詠深を勝ち投手にしてあげようと何がなんでも

出塁してチャンスを作ってクリーンナップに

回そうと前の2打席の時より集中力を高める

 

 

「くっ! (前の打席の時より

和美さんの発するオーラが凄くなってる)!?」

 

 

しかし吉川も栗田監督と中田から激励の

言葉を送られていたこともあったらしく

前の2打席の時より違う雰囲気であった

 

 

(でも、負けない!)

 

 

しかし詠深やチームの為にも

ここは絶対に出塁しようと気持ちを

強くしていた珠姫は吉川の雰囲気に

萎縮せずにしっかりと対峙していた

 

 

(今日はここまで2打席で2安打……

いくら珠姫でも私にだって意地があるし

これ以上は打たせるわけにはいかないよ)

 

 

対する吉川も前の2打席でヒットを

打たれていることへの、リベンジも兼ねて

是が非でも珠姫を打ち取ろうと、心の中で

気合いを高めた吉川は内角に直球を投げる

 

 

「!? (内角一杯の厳しいコース!)」

 

 

内角一杯に投じられた、力のある直球に

珠姫は一瞬、差し込まれそうになったが

 

 

「でも……(負けない!)」

 

 

何がなんでも出塁しようと

強い気持ちで打席に立っていた珠姫は……

 

 

キィィィィィン

 

 

「よしっ!」

 

 

吉川の直球の球威に負けじとバットを

振り抜くと打球はセンターへ弾き返し

手応えがあったのかヒットを確信した

 

 

しかし!

 

 

「ヒットには、させない!」

 

 

前に落ちようとしている珠姫の打球を

中堅手の陽秋月が3人で終わらせる為にも

是が非でも捕球しようと前に走っていくと

打球が落ちる寸前にダイビングキャッチで

珠姫の打球を取るファインプレイを見せた

 

 

「そんな!?」

 

 

そしてファインプレイで打球を取られた珠姫は

驚いた表情になるとヒットを確信していたのか

直ぐに悔しそうな表情に変わった

 

 

「アレを取るのかよ……」

 

 

「流石、陽さんだね……」

 

 

ベンチでも稜と芳乃の言葉に

同意するかのようにメンバーが唖然としていた

 

 

「陽さん、アザっす!!」

 

 

「よしっ! ワンアウト!!」

 

 

対して吉川はファインプレイで珠姫の打球を

捕球してくれた陽にマウンドから感謝すると

直後に中田が発した掛け声に他の梁幽館の

守備陣も声を揃えて答えると吉川はそれに

気持ちが高ぶったのか続く2番の菫を三振に

打ち取って首尾良く二つ目のアウトを取った

 

 

「よっしゃーー!!」

 

 

「くっ! さっきより球威が上がってるわ……」

 

 

三振にされた菫は動揺しながらマウンドで

声をあげている吉川の姿を見ながら静かに

ベンチに戻ることしかできなかった

 

これによって梁幽館の狙い通りにランナーを

出さずにツーアウトで希に打順を回すことに

成功するが当然ながら芳乃や新越谷にとって

厳しい状況であった

 

 

「うぅぅ……(どうしよう……

この裏の、梁幽館の攻撃で中田さんまで

回るだけに、此処を三者凡退にされたら

向こうに流れを持って行かれる危険も)」

 

 

今日は打撃も調子の良かった珠姫が陽秋月の

ファインプレイで打ち取られ空振りの少ない

菫が三振にされた為に芳乃は焦りだしていた

 

 

(お願い、希ちゃん!

なんとか真深ちゃんと主将に回して!)

 

 

しかし希望を捨てず3番の希に全てを託した

 

そもそも今日の試合で希を3番にしたのも

希の前の二人……珠姫と菫がチャンスを作り

それを希がホームに還し尚且つ4番の真深に

回して更に点を奪うための他にも今のように

ツーアウトでランナーが居ない場面でも希が

出塁することで後続の真深と怜が打つことを

期待しての3番起用であった

 

 

(芳乃ちゃんの期待に応えんと……!)

 

 

そして希も芳乃から、それを期待されて

いることを分かっていたので、絶対に

打って後続の二人に、繋ごうとしていた

 

 

「希ちゃん、打ってーー!」

 

 

「希ちゃん、行けーー!!」

 

 

「真深に回せーー!!」

 

 

そして芳乃がベンチから声援を送ると

詠深や稜を始めとした他の仲間も希に

声を出して希を鼓舞していた

 

そんな中で打席に立った希は小学生の頃に

所属していたチームの監督から教えられた

打撃と言葉を思い出していた

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「叩きつけなさい! 打ち上げてはダメ!

グラウンダーで転がせば必ず何かが起きるから」

 

 

「コンパクトに野手の間を抜きなさい!

フォームを崩すから大振りしてはいけませんよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

その言葉は希が優秀なアベレージヒッターに

成長した1番の要因であると同時に希の打撃の

スタイルに大きく影響を与える教えでもあった

 

希が野球を始めた小学生から新越谷に引っ越す

中学3年生まで所属していた九州の箱崎松陽に

居た頃の小学生チームを指揮していた監督から

言われた言葉であり、その監督はホームランを

打つ打撃よりグラウンダーで野手の間を抜く

打撃を好んでいたのである

 

打ち上げれば1度の捕球でアウトになるが

ゴロであれば捕球・送球・捕球と3回もの

エラーの機会があるからと考えていたのだ

 

そして小学生くらいの子供にとって両親や

教師の言葉とは印象に残るものであり希は

そのスタイルがフィットしたこともあって

監督の教えを守り高い打率を記録してきた

 

そして新越谷の野球部に入部してから

今までの試合でも"1度を除いて"希は

常にその打撃スタイルを守り通す事を

意識しており今日の梁幽館との試合の

今までの2打席に加え3打席目となる

この打席でもその打撃で挑もうとして

いたのであった

 

そんな希に対して吉川が初球に投じた

直球は前の打者の菫を三振にした事で

気が緩んでしまったのかド真ん中への

甘い球になってしまうと希は迷わずに

教わってきた打撃でピッチャー返しの

打球を放つと希の打球はセンター前に

抜けると誰もが思っていた

 

 

しかし……

 

 

希の打球に白井が飛び込んでキャッチし

その体勢のまま高代にトスすると高代が

一塁に送球するという見事な連携による

ファインプレイを披露して希が理想通りに

打った打球を難なくアウトにしてしまった

 

希の打球……即ち希の小学生時代の教師が

教えた打撃スタイルは小中学生レベルには

有効な打撃だったが高校野球のレベルでは

アウトにされやすいスタイルであり特に

梁幽館のような全国クラスの実力を持つ

内野陣にとっては打球の行方にもよるが

非常に守りやすい打撃スタイルだったのだ

 

 

「……」

 

 

そして打ち取られた希は芳乃やチームの

期待に応えられなかった為か一塁線上で

己の不甲斐なさを嘆くように俯いていた

 

 

「いいぞ、白井!」

 

 

「高代、ナイスフォロー!」

 

 

一方で見事な連携によるファインプレイを

披露して見せた白井と高代に観客から声援が

送られる中で梁幽館の選手たちがベンチ戻る

 

こうして梁幽館は、栗田監督の要求通りに

見事、5回表の新越谷の攻撃を三者凡退で

終わらせたのであった

 

 

「白井さん、高代さん、アザっす!」

 

 

「陽さん、ありがとうございました!」

 

 

そして吉川と小林のバッテリーが

珠姫と希をアウトにするファインプレイで

凌いでくれた白井、高代、陽秋月に感謝をすると

 

 

「ああ! 和美もナイピだったよ!」

 

 

「あの2番(菫)当てるの上手かったからね」

 

 

「……」コクッ

 

 

白井、高代、陽秋月も菫を三振にした

吉川の投球を誉めながら士気を高めていた

 

 

「吉川さん。よく抑えてくれました」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

そして栗田監督からも労いの言葉を

送られて吉川も自信に満ちた表情になっていた

 

 

「よしっ! 向こうは攻撃を三者凡退で

終わらされたことで士気が低下している筈だ

中軸に回るこの回の攻撃で一気に突き放すぞ」

 

 

「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」

 

 

そして中田の激に全員が声を揃えて答えると

5回裏の攻撃で畳み掛けようと士気を高めた

 

 

一方、新越谷のベンチでは……

 

 

「ドンマイ、希!」

 

 

「次が、あるぜ!」

 

 

「攻撃は、まだ2回ある!

気持ちを切り替えて、しっかり守るぞ」

 

 

菫と稜が希を励ますが珠姫の打球に続き

希の打球と1度の攻撃で2回も梁幽館の

攻守に防がれたことで直後に怜が守備に

向かう全員を鼓舞しようと声をかけたが

声をかけた怜も声をかけられた真深と

詠深を除く新越谷のメンバーの表情にも

焦りが見え始めていた

 

 

(この回に真深ちゃんと主将に回して

最低でも同点に追い付いておきたかった……)

 

 

そして芳乃も声には出さなかったが攻撃が

相手の攻守で三者凡退で終わらされた上に

その裏の梁幽館の攻撃でクリーンナップに

回るだけに流れを持っていかれる危機感で

気持ちが押し潰されそうになっていた

 

 

「芳乃ちゃん……」

 

 

「希ちゃん……どうしたの?」

 

 

「次の打席回ってきたら……」

 

 

「えっ?」

 

 

「なっ、なんでもない! 行ってくるね」

 

 

「うっ、うん……? しっかり守ろうね」

 

 

ふと声をかけて何かを言いかけた希に

首を傾げた芳乃であったが希が言葉の

続きを発することなく守備に向かうと

芳乃は精一杯の笑顔を見せて送り出し

今後の試合のプランを練り始めた

 

 

「あと2回か……(梁幽館は投手が

豊富にいるから延長戦になると圧倒的に不利

となると残り2回で2点とって逆転を狙いたい

厳しい状況だけどチャンスは作れてるし次の回

真深ちゃんからの打順だから必ず上手く行く!

問題は、やっぱり中軸に回る、この裏の梁幽館の

攻撃を押さえられるかによる……詠深ちゃん!)」

 

 

残り2回の攻撃で同点に追い付き

尚且つ逆転するためにも5回裏の

梁幽館の攻撃を凌ぐ必要があり

芳乃は祈るように詠深の好投を

懇願していた

 

 

「やっぱ守備もうまいわ梁幽館」

 

 

「もう勝ったろ?」

 

 

「でも次の回の新越谷は

あの4番からの打順だから、わからないぞ?」

 

 

「平気平気!

その前の攻撃でクリーンナップに

回るんだから、この回で決められるっしょ?」

 

 

「そうそう!

新越谷の1年投手も、そろそろ限界だろうし」

 

 

しかし梁幽館を応援する観客は5回裏の

梁幽館の攻撃がクリーンナップ回ること

そして1年生の詠深も精神的にも体力的にも

限界だろうと解釈し悲観的な見方をしていた

 

 

 

 

 

ところが……

 

 

 

 

 

ズドーーーン

 

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

「!?(こっ、この子……)」

 

 

先頭の白井は1球目の直球を空振りすると

続く2球目のツーシームを見送ったものの

内角一杯に決まって2球で追い込まれると

最後は鋭さを増した"あの球"を空振りして

三球三振に打ち取られた

 

 

更に……

 

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

「なっ!? (今の入ってたの!?)」

 

 

続く高代も"あの球"を2球続けた後の

外角に投じられたツーシームを見送ったが

外角一杯に決まり三球三振に打ち取られた

 

 

「おいおい……」

 

 

「さっきよりギアが上がってない?」

 

 

「良い球だ……」

 

 

白井に高代と梁幽館の上位打者2人が

二者連続三球三振に打ち取られたので

梁幽館を応援している観客も予想外な

詠深の投球の前に戸惑い始めてしまい

梁幽館のベンチでも唖然とした空気に

包まれ始めてしまっていた

 

 

「詠深ちゃん……凄い……」

 

 

そして詠深が希望通りに梁幽館の攻撃を

首尾良くツーアウトにしてしまい芳乃は

喜ぶのを忘れて息を飲んでしまい詠深の

後ろから怜を始め仲間が「ナイピ!」と

声をかけるが内心は詠深の好投が予想を

遥かに上回るという嬉しい誤算に先程の

攻撃を三者凡退にされてしまった事さえ

忘れてしまっている程であったが珠姫と

真深だけは違った

 

 

(やっぱり……さっきは120球も

投げられるなんて言うから注意したけど……)

 

 

(ピンチの場面で陽さんと対峙した時と

打ち取った時の雰囲気が、いつもの詠深ちゃんと

違ったから、やってくれるような気がしてたんだ)

 

 

詠深と子供の頃から一緒に過ごしてきた

真深と珠姫は前の回で陽秋月と対峙して

打ち取ってからの詠深の様子を見てから

行けるかもしれないと直感で感じていたのだ

 

 

一方……

 

 

「……(これは参りましたね……

奈緒さんの前にランナーを貯めて

一気に突き放すつもりだったのですが

武田さんの投球が予想を遥かに上回っていて

奈緒さんの前にランナーを出せませんでした)」

 

 

5回裏の攻撃で勝負を仕掛けるぞつもりが

詠深の投球の前にツーアウトランナー無しで

中田に回すことになってしまい今度は高橋を

始めとした梁幽館のベンチの空気が悪くなる

 

 

「あの投手、さっきより球威も

変化球のキレも増してるわ……気をつけて!」

 

 

「ああ、分かっている!」

 

 

白井に続いて三球三振に打ち取られた高代は

次の打者の中田に忠告すると詠深の投球を

ネクストサークルから見ていた中田も十分に

分かっていたらしく気を引き締めて打席へと

ゆっくり向かっていく

 

ここで追加点を取らなければ

何のために前の新越谷の攻撃を

三者凡退にしたのか分からない

 

そして次の新越谷の攻撃は4番の真深からの

打順なので詠深の投球が良くなってはいるが

栗田監督からもこの回で追加点を取ることを

求められているので絶対に追加点を取ろうと

中田は本塁打を強く意識して打席に立つ

 

 

《4番、一塁手、中田さん》

 

 

「キャーーー!!」

 

 

「中田さーーーん!!」

 

 

そして球場に中田の名前がコールされると

第1打席や第2打席の時のように観客から

割れんばかりの歓声が起こる

 

 

『さあ! ツーアウトとなって

第1打席は、同点2ラン本塁打

そして第2打席では、満塁の場面で

敬遠の4番、中田が打席に立ちます』

 

 

そして中田が打席に立つと実況も

詠深の調子が良いだけに中田との

対戦を期待するような様子となる

 

 

そんな中で珠姫は……

 

 

(芳乃ちゃんからは、次に中田さんに

打順が回ったら勝負するかしないか

私の判断に任せると言っていたけど

明らかに詠深ちゃんの調子は良いし

ピンチでもないし……ここは勝負だ)

 

 

珠姫はミットを構え勝負することを

詠深に示すと詠深も力強く頷いて見せた

 

 

「全員、下がってーーー!!

今度は、ちゃんと長打警戒で深めに守るよ!!」

 

 

そして珠姫が内野陣と外野陣に指示を出すと

第1打席に同点2ランを打たれた時とは違い

今度は全員が普段よりも深めの位置に付いて

中田の長打に備えたシフトを敷いた

 

 

「中田、ホームラン頼むぞーー!!」

 

 

「1年に格の違いを見せてやれーー!!」

 

 

そして三塁側の観客席の中田のファンが

今日2本目となるホームランを期待する

大声援が中田に送られる

 

 

そして……

 

 

「「……!?」」

 

 

1回裏の中田の第1打席の時とは違い

気を緩めずに中田と対峙する詠深や珠姫を

始めとした新越谷のメンバーも1回裏の打席では

感じ取らなかった威圧感を感じ息を飲んでしまう

 

 

「くっ! (意識して見ると凄い威圧感……)」

 

 

(これが全国レベルの威圧感か……

真深ちゃんと勝負する相手の投手も

いつもこんな気持ちになるのかな?)

 

 

真深クラスの打者と真剣に対峙したことで

詠深と珠姫は初めて真深と勝負するときの

相手の投手の気持ちが分かった気がした

 

 

(だからこそ、ぶつけたいかったし

リベンジしたい! 今の私達のベストピッチで)

 

 

詠深は強い決意を持って中田の威圧感に

臆することなく内角高めに構える珠姫の

ミットに向けて強直球を投じると中田は

振り遅れてしまい空振りをした

 

 

「中田が直球を空振ったぞ!?」

 

 

「やるじゃん、武田!」

 

 

「何でさっき敬遠したんだ!?」

 

 

初球とはいえ白井と高代に続き中田までもが

詠深の直球を空振りしたのを目の当たりにし

一部の観客も度肝う抜かれてしまい3回裏に

満塁の場面で敬遠する必要なかったのではと

"ざわめき"が起こり始めると続く2球目の

直球も空振りこそしなかったがボールの下を

掠らせてファールにことができず僅か2球で

ツーストライクに追い込まれる

 

 

(まだ下を叩いたか……良いスピンだ)

 

 

中田も第1打席にホームランを打った時より

更に球威も球筋も上がった詠深の投球を見て

対戦相手ながら感心していた

 

 

そして3球目は内角高めに外し中田を

仰け反らせるボール球を投じてくると

 

 

(オーソドックスな配球だが

普通では打てないだろうな……追い込んでから

1球仰け反らせた後の……あの"変化球"はな!)

 

 

中田は次に決め球の"あの球"が来ると

読んでたので仰け反らされたにも関わらず

フルスイングで詠深の"あの球"を捉えると

打球はライト場外に消えるファールとなる

 

 

「ナイスカット!」

 

 

「いいよ、奈緒!」

 

 

すると梁幽館のベンチから詠深の"あの球"を

カットした中田の打撃力とスイングに対する

声援が起こり始めた

 

 

(カットってレベルじゃないでしょ……

本当に、真深ちゃんといい、中田さんといい

スイングが凄すぎ……どんな腕してるのさ)

 

 

一方で珠姫は真深にも匹敵する中田の

スイングの強さに冷や汗をかいていて

抽選会の後に初めて真深にファールを

打たれた時と普段の練習の時の真深の

打撃を思いだしてしまい思わず二人の

桁違いの打力に呆れそうになっていた

 

 

(どうする、タマちゃん……

どうやって攻めていこうか?)

 

 

詠深も練習で真深に"あの球"を

何度か打たれたことがあるので

それほど動揺していなかったが

どうやって中田を打ち取ろうか

アイコンタクトで珠姫に向けて

サインを求める

 

 

(ひとまず外中心にギリギリ、ボール球で

勝負しよう……もし振ってこなかったら

残念だろうけど歩かせるよ!)

 

 

(分かった)

 

 

珠姫のサインに頷いた詠深は

中田に外角低めへの変化球を

投じると中田の方も負けじと

カットしてきた

 

 

(よしっ! 中田さんは真深ちゃんと違って

外角低めの変化球は得意じゃないみたいだね

このまま暫くは同じコースに投げ続けた後に

内角に"あの球"か強直球を投げて打ち取るよ)

 

 

(うん!)

 

 

それから4球目の変化球を、カットされてからは

詠深は、ひたすら外角低めに変化球を投げ続けて

それを中田がカットし続ける展開が続く

 

 

「明らかなボール球もカットしてますね」

 

 

その様子に梁幽館のベンチでは1年生で

一人だけベンチ入りした投手の堀弥生が

ボール球をひたすらカットし続けている

中田を見て首を傾げていると堀の隣に

居た白井が中田の打席を見届けながら

堀の疑問に答えはじめた

 

 

「カウントが悪くなったら歩かされるからね

並の打者なら四球を意識しちゃう場面だけど

栗田監督からこの回の攻撃で追加点を取って

突き放すことを求められていたのに私と恵が

凡退してツーアウトでランナー無しになった

このまま自分も打ち取られれば次の新越谷の

攻撃はあの4番に回ってしまう……だったら

今の、この状況で、自分に求められているのは

長打……それもホームランしかないと奈緒は

考えているんだよ」

 

 

「流石ですね……」

 

 

「相手もそれを分かっていてボール球を

投げ続けているけれど同点ホームランの

リベンジもしたいんだろうね……きっと

どこかで決め球の、あの変化球か例の早い

直球を投げてくるだろうから多分、奈緒は

それをスタンドに叩き込むことで、相手の

投手に精神的なダメージを与えて、勝負を

つけてやるつもりだよ……そして、奈緒は

それができる、4番の中の4番の打者だよ」

 

 

「……」

 

 

自分の疑問に答えてくれた先輩である

白井の言葉に堀も中田の主将としての

器だけではなく打者としての心構えを

知って尊敬の眼差しを向けていた

 

そして中田が外角低めに投げ続ける

詠深の球をカットし続けて次の球が

10球目となるところで遂に珠姫が

勝負に出ることにした

 

 

(布石は敷いた……決め球は

1球目に空振りを取った……強直球!

これで、さっきのリベンジをして見せよう)

 

 

(うん!)

 

 

中田にリベンジする決め球が

強直球に決まり強直球を投げたいと

思っていた詠深は嬉しそうにサインに頷いた

 

 

そして……

 

 

「ふんっ!」

 

 

内角一杯に構える珠姫のミットを目掛けて

詠深は空振りを取った初球の強直球よりも

力と思いを込めた強直球を投じた

 

 

しかし……

 

 

「……(笑)」

 

 

「「!?」」

 

 

強直球が投じられた瞬間に

中田が表情に不適な笑みを

見せた瞬間に詠深と珠姫の

背中に悪寒が走る

 

 

そして……

 

 

カキィィィィィィィィン

 

 

『打ちました! 大きーーーい!?』

 

 

強直球を捉えた中田の打撃に実況が

興奮しながら打球の行方を見送ると

梁幽館のベンチと観客が盛り上がり

ベストも含めた新越谷のメンバーは

落胆の表情を浮かべたままレフトに

伸びる中田の打球を見送ることしか

できなかった

 

中田の打球は同点ホームランを

打った時よりも高く早い速度で

スタンドに向かっていたからだ

 

そして打球は同点ホームランに

続いて真深の頭上を越えていき

 

 

ポトッ

 

 

『入りました、ホームランーー!

1回裏に続く、この試合2本目のホームラン!』

 

 

中田の打球がレフトスタンドに飛び込むと

1回に続く2本目の本塁打によって実況の

ボルテージがアップする

 

 

『ファールで粘った後の10球目の内角高めを

捉えるソロ本塁打による待望の追加点によって

梁幽館が"4-2"とリードを2点に広げました』

 

 

実況がコメントをしている間に中田は

ダイヤモンドを一周してホームを踏み

ベンチに戻ると仲間たちが次から次に

ハイタッチで中田を出迎えて来た

 

 

「ナイバッチ、奈緒!」

 

 

「流石です、奈緒先輩」

 

 

「もう、これで決まったっしょ?」

 

 

中田のホームランで2点差となり

残りの回も2回ということもあり

勝利を確信するメンバーも所々に

出始めているがソロホームランを

打った中田を始めとした梁幽館の

メンバーは夢にも思わなかった

 

今のホームランが自分たちの首を

絞める結果になってしまうことに

 

 

「詠深ちゃん……」

 

 

そして梁幽館のベンチが盛り上がっている中で

珠姫や新越谷の内野陣が詠深を励まそうとして

近づこうとした時だった

 

 

「!?」

 

 

マウンドの詠深を見た瞬間に

珠姫は思わず息をすることも

忘れそうになってしまった

 

ホームランを打たれリベンジに

失敗したにも関わらずに詠深の

表情は力強い笑顔に満たされて

瞳にも闘志の炎が燃え上がって

いるように見えたからだ

 

 

「(詠深ちゃん……!?)

皆! 早くポジションに戻って!!」

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

「早く!!」

 

 

それは珠姫が今までに見たことが

1度も無い詠深の表情だったので

声をかければ逆に詠深の集中力と

今の状態を切らしてしまうことを

危惧した珠姫が詠深を励まそうと

詠深に近づこうとした仲間たちに

思わずポジションに戻るようにと

指示を出すと詠深の表情を見て

珠姫も少し影響を受けていたのか

いつもより強い口調で声を出した

珠姫に内野陣も戸惑いながらも

珠姫の指示に従って自分たちの

ポジションへと戻っていった

 

 

「詠深……珠姫……(何か起こったわね)」

 

 

そして珠姫の様子を見た、外野陣の

怜と白菊も、どうしたのだろうかと

思っていた中で、真深だけは詠深に

良い意味で、何かあったと感じ取り

期待の眼差しを向けていた

 

 

《5番、三塁手、笠原さん》

 

 

「さあ! 更に畳み掛けてやるよ!」

 

 

そして打席には前の打席では目の前で

中田が満塁敬遠をされて舐められたと

感じて絶対にヒットを打ってやろうと

意気込んだものの詠深の強直球により

併殺打に打ち取られた笠原が詠深が

中田のホームランでショックを受けて

いると思い先程のリベンジも兼ねて

ここで更に畳み掛けようと意気揚々と

打席に立って詠深と対峙した時だった

 

 

「!?」

 

 

笠原は詠深を見たことの瞬間に

マウンドにいる投手がさっきと

別の投手が立っているようにも

見えてしまっていた

 

詠深が凄まじい闘志のオーラを

発していたことによって笠原は

完全に詠深のオーラに萎縮して

しまいそうになっていたのだ

 

 

(この笠原さんの打席は

詠深ちゃんの好きに投げさせよう)

 

 

そしてミットを構える珠姫はサインは

出さずに詠深の好きに投げさせようと

何もせずにミットを構えた

 

 

「えっ? (サイン無し!?)」

 

 

サインを出さずにミットを構える珠姫に

ベンチでは芳乃が驚いていたが次の瞬間

 

 

ズドーーーン

 

 

「!?」

 

 

「「「「「「「「「はっ?」」」」」」」」」

 

 

詠深が投じた強直球に笠原が

そして球場に鳴り響いた捕球音に

梁幽館のベンチと観客席の観客も

何が起こったのかと唖然としていた

 

それは詠深の後ろで守備についてる

新越谷の仲間たちやベンチで見守る

芳乃と息吹と藤井先生も同じだった

 

 

「いっ、今の直球……

さっきよりも早くなかった……?」

 

 

「ミットに入る音も凄かったよ?」

 

 

彼方此方で戸惑いの声が聞こえる中で笠原は……

 

 

「くっ!(まぐれに決まってる! 次は必ず!)」

 

 

なんとか気持ちを落ち着かせて

詠深の投球に備えようとしたが

 

 

ギィィィィィン

 

 

「痛っ……!?」

 

 

笠原は2球目の強直球に反応して

バットに当てたものの打球は後ろの

フェンスに飛ぶだけのファールとなり

笠原の手は痺れと痛みに襲われていた

 

 

(さっ、流石に3球続けて直球はない!

次は必ず決め球の変化球を投げて来るはず!)

 

 

3球続けて直球はないと読んだ笠原は

詠深が次に"あの球"を投げて来る筈と

読んで集中力を高めると詠深は直ぐに

3球目を投じてきたが……

 

 

「なっ!?(直球!?)」

 

 

詠深が投じたのは笠原の読みと違う

まさかの3球続けての強直球だった

 

 

そして……

 

 

ズドバァァァァァァァァァァン

 

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

「!?(そんな……2打席目の時より早い!?)」

 

 

読みが外れた笠原に、詠深の強直球に

対応することなどできず筈もなく

最後は空振りをして、全球直球による

三球三振で打ち取られてしまった

その上、球速も遥かに早く感じていた

 

 

『新越谷のエース武田! 素晴らしい投球!

4番の中田にソロホームランを許したものの

他の3人を見事、三球三振で打ち取り、最後の

笠原はなんと全球直球の三球三振に打ち取り

梁幽館は武田を畳み掛けることができずに

中田のホームラン1点止まりとなりました』

 

 

詠深の投球に実況も惜しみ無い称賛の

コメントすると球場全体は未だに詠深の

投球による"ざわめき"が収まらずにいた

 

 

そして観客席でも……

 

 

「いっ、今の武田さんの投球は一体……?」

 

 

試合を見届けていたユイが

詠深の投球に度肝抜かれてしまった

 

 

「思えば前の回で、陽さんと対峙した時から

序盤の武田さんと、違う気迫のようなものを

感じましたが、もしかすると今の中田さんの

ホームランが切っ掛けで、武田さんに眠る

才能か何かが、目覚めたのかもしれません

下手をすると、今の中田さんのホームランは

梁幽館にとって、痛手になるかもしれません」

 

 

ユイの隣に座り観戦する二宮も中田の今の

ホームランが梁幽館に勢いつけるどころか

相手の詠深を勢い付ける結果となって逆に

梁幽館は厳しい状況へと立たされることを

予測していたのであった

 

 

そして……

 

 

「ナイピ、詠深!」

 

 

「見ていて鳥肌がたったわ」

 

 

詠深がベンチに戻ると新越谷の仲間が

次々と詠深の投球を称賛しながら声をかける

 

 

「うん……何て言うか……

最初に打たれたホームランの時と違って

今の打席ではしっかり警戒して投げたし

今日1番の直球だったからホームランを

打たれて悔しくもあったけどそれ以上に

凄く楽しくって気持ちが高ぶっちゃって」

 

 

「ホッ、ホームランを打たれて……」

 

 

「楽しかった……?」

 

 

投手にとって1番悔しいはずの

ホームランを打たれたにも関わらず

楽しかったと聞いて菫と稜が唖然と

した表情になって詠深に聞き返した

 

 

「実力差を感じたし初めて投げた瞬間に

打たれたるのが分かる感覚を知ったけど

それ以上に中学の時にはこんな雰囲気の

中で投げられる機会なんて無かったから

この先勝ち続ければこんな勝負ができる

機会が沢山あるんだと思った瞬間に凄く

楽しい気持ちになっていて気がついたら

笠原さんを三振にしちゃってたんだ」

 

 

「「「「「「「「「……」」」」」」」」」

 

 

詠深から聞かされた話に仲間たちも

唖然としてしまい思わず開いた口が

塞がらなくなってしまっていたが

 

 

「だから早く次の回のマウンドに

立って投げたくて投げたくて仕方ないんだ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に真深、珠姫、芳乃が

微笑みながら詠深に目を向け同時に真深と

珠姫は詠深の中で何かが覚醒したことを悟った

 

 

そして……

 

 

「そっか……それじゃあ

今日は、もう打たれることはないわね」

 

 

「だね! 試合はまだ終わってないし

もしかしたら中田さんに、もう1打席

回ってくるかもしれないし、その時に

改めてリベンジ出来るかもしれないよ」

 

 

「うん! 今日はもう点は

取られない気がするし、あと2回も

攻撃する機会があるから逆転しちゃおう!」

 

 

「「「「「「「「うん!」」」」」」」」

 

 

真深と珠姫に詠深の言葉に中田のホームランで

追加点を取られて意気消沈していた新越谷の

メンバーにも活気が戻り雰囲気が明るくなった

 

 

「という訳で……

真深ちゃん、私の仇をとって~~!」

 

 

「そっか!

6回表は真深からの打順だったわね」

 

 

「目には目を!

ホームランにはホームランだぜ!」

 

 

真深に仇討ちを求める詠深の言葉に6回表の

攻撃が真深からであることを思いだし息吹と

稜のテンションが上がったが直後に真深から

思わず言葉が発せられた

 

 

「ゴメン、皆……

この打席ではホームラン打てないわ」

 

 

「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」

 

 

何気ない笑みで告げてきた真深の言葉に

詠深を始めとした、新越谷のメンバーが

全員、キョトンとしてしまうのであった

 

 




詠深が原作と違う雰囲気にしちゃいましたが
第29話で強い気持ちで陽秋月と勝負をして
打ち取ったことで詠深の中で長く眠っていた
闘争心が中田さんのホームランにより完全な
状態で覚醒したことを表現したくこのような
展開になりました……違和感はあるかも
知れませんが何卒広い心で見てくださいませ

梁幽館との試合も順調にいけば残り2話で
書ける予定なので最後までお付き合いください

それでは失礼致します……
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