詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

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遅くなって申し訳ありませんでした
少しスランプになっていた上にテレビで
オリンピックやパラリンピックを夢中で
見ていたら更新が大幅に遅くなりました

そのくせ、今回は書きたいことが多かったので
"20000"文字越えと長文になってしまった上に
真深と中田の勝負の手前で終わってしまいました

大変、申し訳ありませんでした……

今回はこの物語のオリジナル展開の
希と中田の勝負を楽しんで頂けると幸いです

梁幽館とのストーリーは
今回を入れて残り3回で完結予定なので
もう暫くお付き合いくださると恐縮です

それでは、ご覧下さいませ!!



第31話 逆転勝利を目指して!

6回裏の梁幽館の攻撃が終了して試合は

4ー3と梁幽館が僅か1点リードという

接戦は遂に最終の7回の攻防に突入する

 

 

「いよいよ最終回か……」

 

 

「コールドだと思ってたのに……」

 

 

「新越谷、強いわ……」

 

 

「というか、あの4番とエース、何者だ?」

 

 

下馬評では圧倒的に梁幽館が有利だと

誰もが予想していただけに観客席では

予想外の接戦に彼方此方から新越谷に

対する見方を変える者が出始めていて

中でも真深と詠深は中田や陽秋月にも

劣らぬ注目を集めていた

 

そしてマウンドでは7回表の新越谷の

攻撃を前に中田の投球練習と梁幽館の

内野陣が連携の確認をしながら守備と

送球の練習をしている

 

 

「……」

 

 

しかし、そんな中で新越谷のベンチでは

芳乃が追い詰められた表情になっていた

 

 

(いよいよ最終回……この回で同点に追い付いて

延長戦に入ったとしても、不利なのは此方だから

この7回裏で2点以上取って、逆転したいけれど

その為にも、なんとか希ちゃんと真深ちゃんまで

回したいけど、その為には最低でも詠深ちゃんと

珠姫ちゃん、菫ちゃんの3人の誰か出塁しないと

いけないけど……3人に、あの中田さんの投球を

どうやって攻略させれば……?)

 

 

7回表の攻撃で同点ではなく逆転を狙いたいと

考えていた芳乃は希と真深に打順を回したいと

思っていたが少なくとも希まで打順を回すには

詠深から始まる打順で詠深、珠姫、菫の3人の内

誰かが出塁しなければならないのだが6回表の

中田の投球を目の当たりにした芳乃は攻略法に

悩んでいたのだ

 

 

(ここで采配ミスをしたら、本当に終わりだ!)

 

 

3人の中で珠姫は吉川から2安打を放っているが

それはガールズ時代にバッテリーを組んで吉川の

投球を知り尽くした事もあるので中田が相手でも

打てる確証はなく菫は空振りは少ないがパワーが

不足気味なので中田の豪速球を前に差し込まれる

可能性があり詠深に至っては打率が壊滅的なので

中田が四球でも出してくれない限り出塁するのは

厳しいことは容易に予測できるので芳乃は逆転の

可能性の高い希と真深に打順を回す最良の作戦が

思い浮かばず追い詰められた表情になってしまい

頭を抱えていたのだ

 

 

すると……

 

 

「芳乃ちゃん」

 

 

「真深ちゃん……?」

 

 

苦しそうな表情になっていた芳乃に

真深が芳乃の肩に手を触れて優しく

微笑みながら声をかけてきた

 

 

「話があるの……少し時間を貰える?」

 

 

「えっ?……うっ、うん?」

 

 

そう言って真深は芳乃の手を取りベンチ裏に

連れていこうとするので芳乃が首を傾げると

 

 

「行きましょう、希ちゃん」

 

 

「うん」

 

 

「……希ちゃん?」

 

 

真深は希にも声をかけると希は真深に

声を掛けられることが分かっていたかのような

反応をして真深に付いて来るので芳乃は二人の

意図が分からずに更に首を傾げたくなっていた

 

 

「真深ちゃん、希ちゃん……どうかしたの?」

 

 

そして真深と希にベンチ裏に

連れてこられた芳乃は少し戸惑いながら

二人に時間をベンチ裏に連れてきた真相を尋ねる

 

 

「ごめんね、芳乃ちゃん……

試合が進むにつれて芳乃ちゃんが

苦しそうな表情になっていたから心配で……」

 

 

「……」

 

 

真深に指摘された芳乃はマネージャーなのに

選手に気を使わせた上に心配をかけたことを

知って慌てて作り笑いを浮かべると……

 

 

「しっ、心配かけてごめんね……

試合が始まる前から緊張しっぱなしで

気分が悪くなっちゃっただけだから大丈夫だよ」

 

 

心配かけまいと、作り笑いで大丈夫だと言う

芳乃であったが、真深と希は芳乃が無理して

笑顔になっていることを見抜いていた

 

 

「芳乃ちゃん」

 

 

「なっ、なに……!?」

 

 

真深が自分の両肩に両手をおいて真面目な

声色と表情で声を描けてきたために芳乃は

思わず怯んでしまった

 

 

「無理はダメよ……今日の試合前から

芳乃ちゃんに元気がないのは気づいていたわ」

 

 

「!!」

 

 

「もっと言うと影森との試合で息吹ちゃんに

死球が当たった時から元気がなかったけんね」

 

 

「……」

 

 

真深に続いて希からも指摘された

芳乃は反論できず俯いてしまうと

 

 

「態度に出てたかぁ……ごめんね……

なんだか良かれと思って選んだ戦術が

裏目ばっかりで自分のせいでチームが

ピンチになったり選手が危ない目に

あったりしたから私が何もしない方が

このチームには良いのかなって思って」

 

 

「そんなん采配が悪い方に偏ることなんて

いくらでもあろーもん……1回裏に中田さんに

ホームランを打たれた後にだって真深ちゃんと

藤井先生が采配ミスしない人なんていないって

言ってたし影森との試合で息吹ちゃんに死球が

当たった時も真深ちゃんが仇とってくれたやん」

 

 

「うん、分かってる……分かってるんだけど……」

 

 

"どうしても悪い方に考えがいってしまう"と

続きの言葉を口にすることができずに芳乃は

再び俯いてしまう

 

今日の芳乃は自分の采配が悪いという

気持ちが、どうしても大きくなってしまう様だ

 

 

(ここまで芳乃ちゃんが

追い詰められるなんて……梁幽館、強すぎやろ)

 

 

そんな芳乃の姿を見た希は改めて

梁幽館というチームの強さを実感していると

 

 

「あのね、芳乃ちゃん……

私は芳乃ちゃんの采配に感謝しているのよ」

 

 

「感謝?」

 

 

自分の采配に感謝していると真深に言われて

芳乃は俯いていた顔を上げて真深の顔を見る

 

 

「芳乃ちゃんに感謝しているのは

今日の試合の中田さんの第2打席の時に

満塁敬遠をする決断をしてくれたことよ」

 

 

真深は感謝している2つ目の理由に

満塁の場面で中田を敬遠する決意を

下してくれたことに感謝したのだ

 

 

「満塁敬遠? どうして!?

私が満塁敬遠なんてさせた"せい"で

皆が観客から悪口を言われちゃったのに!?」

 

 

先に梁幽館が真深を敬遠したことに加え

その前の打席で中田が同点ホームランを

打ったこともあり理解してくれた観客より

まさかの満塁敬遠という采配をしたことで

"ブーイング"や野次などで否定的な観客の

数の方が多かったので芳乃はグラウンドで

プレイする仲間たちには辛い思いをさせて

しまったと思い悔やんでいたので真深から

感謝してると伝えられて戸惑ってしまった

 

 

「だって……もしあの場合で中田さんと

勝負する選択を選んでいたら中田さんに打たれて

点差が開いちゃっていたかも知れないでしょう?

だけど芳乃ちゃんが勇気を出して満塁で敬遠する

指示を出してくれたから梁幽館を相手に7回表で

1点差でこれたんだと思う……私が芳乃ちゃんの

立場だったら満塁だし勝負しかないと思ったわ」

 

 

芳乃にそう言う真深であったが実際に

あの場面は真深も満塁で回した以上は

勝負するしかないと思って例え投手が

詠深でも最悪の場合、中田に打たれて

大量失点をする覚悟もしていたのだが

満塁で中田を敬遠するのを見た真深は

レフトの守備につきながら采配をした

芳乃に驚愕すると同時に感銘も受けて

いたのであった

 

 

「それに1点は勝ち越されるけれど中田さんさえ

歩かせれば詠深ならピンチを切り抜けてくれると

詠深を信用してくれたから満塁なのに中田さんを

敬遠する決意をしたんでしょ?」

 

 

「う、うん……」

 

 

「だから芳乃ちゃんが詠深を信頼して

勇気ある決断をしてくれたことが嬉しかったし

私は勿論、詠深も無意識で感謝していると思うわ」

 

 

「……」

 

 

観客からのブーイングがあったこともあり

芳乃は詠深に満塁敬遠をさせたことに対し

申し訳なく思っていたので真深だけでなく

詠深からも感謝している筈だと告げられて

芳乃は緊張した表情が少し和らぐ

 

 

「それに私も詠深も芳乃ちゃんと息吹ちゃんに

出会わなかったら野球部に入らなかったと思う

もっと言うと珠姫だって芳乃ちゃん達のお陰で

野球部に入って野球を続けることができたから

もし芳乃ちゃんが居なかったら今この場に私も

詠深や珠姫だって居なかったのは間違いないわ」

 

 

真深はアメリカで同世代のチームメイトから

辛い思いをさせられたことが原因で大好きな

野球への情熱を忘れ辞めようとしてしまった

 

詠深は良いチームメイトに恵まれなかった為に

"あの球"を習得するための練習や努力が無駄と

なってしまったことで野球を辞めようとした

 

珠姫は努力を積み重ねて、ガールズで正捕手の

レギュラーの座を掴み、その後もレベルの高い

守備力を維持していたにも関わらず、打撃力の

低さを理由にレギュラーを外され、野球に対し

情熱を失いかけ辞めようとしてしまった

 

そんな3人が新越谷で再会しただけでは再び

3人で一緒に野球部に入部して一緒に野球を

続けようとは考えなかったかもしれない

 

しかし3人が芳乃と出会い芳乃がグラウンドで

キャッチボールしようと誘った事が切っ掛けで

3人は自分たちが野球が大好きで野球に対して

未練があることに気づき晴れて野球部に入部し

野球を続ける決意をすることができた

 

いわば芳乃がいなければ真深も詠深も珠姫も

この場に居らず梁幽館と試合をすることは疎か

大会にすら出場せずテレビで試合を見るだけの

退屈な夏を過ごしていたかもしれないので正に

芳乃は3人と野球を再び結びつけた恩人なのだ

 

 

「芳乃ちゃんのお陰で私は詠深と珠姫の

3人で一緒に野球部に入部して夏大会に

出場できてあの梁幽館と試合する機会を

得ることができた……だから芳乃ちゃん」

 

 

そこまで言うと真深は芳乃の両手を

自分の両手で優しく包み込むように握る

 

 

「本当に、ありがとう」

 

 

「真深ちゃん……」

 

 

芳乃は真深に感謝の言葉を伝えられた事と

真深と同じ女の子ですら見とれそうになる

優しい笑顔と声で感謝の言葉を伝えられて

二重の意味で暑く込み上げてくる気持ちを

感じ取っていると……

 

 

「芳乃ちゃん……

私も芳乃ちゃんに感謝しとるんよ」

 

 

「えっ?」

 

 

真深の話が終わるのを待っていたのか

直後に今度は希が芳乃に声をかけてきた

 

 

「私と白菊ちゃんが

入部した時のこと覚えとお?」

 

 

「うん……」

 

 

「今やから言うっちゃけど

本当は私……新越谷の野球部には入らんで

強い高校に転校するつもりやったっちゃんね

初めて見たら人数も少ないし弱そうやったし」

 

 

「そうね……希ちゃんは中学の時の友達との

約束を守るために梁幽館みたいな強い高校の

野球場に入部するつもりだったのよね?」

 

 

「うん……埼玉に引っ越すことが決まって

直ぐ強い学校を調べたら引っ越し先の家の

近くの新越谷が全国に出たことがあるって

分かったから新越谷に入学したんやけれど」

 

 

「まさかの不祥事で3月まで活動禁止処分!

しかも4月に処分が解除されても野球部員も

殆ど居なくて驚いたのよね?……希ちゃんが

白菊ちゃんと一緒に詠深に連れられて初めて

会った時に自己紹介の後に新越谷の野球部に

入部する気はないって言いかけてたわよね?」

 

 

「そやったね」

 

 

「アハハ……私は希ちゃんと白菊ちゃんがきて

人数が揃ったと思って興奮しちゃっていたから

気づかなかったよ……」

 

 

そう言って真深と希と芳乃は3ヶ月前に

初めて出会った時のことを懐かしそうに話す

 

 

「けどあの時、芳乃ちゃんは新越谷が

ベスト4まで行けるって言いよったやろ?」

 

 

「うん……言ったね」

 

 

「今まさに、そのベスト4常連相手に

最終回1点差! 言った通りになっとーやん!」

 

 

ベスト4常連の梁幽館を相手に善戦し

苦戦させるだけの力を見せているということは

芳乃が言ったことは現実になっていると言える

 

そして僅か3ヶ月で新越谷を、それだけの実力の

あるチームに作り上げたのは、間違いなく選手の

実力を分析し、長所を伸ばす練習メニューを作り

藤井先生と2人で、何度もミーティングを重ねた

芳乃のお陰であった

 

 

「みんな疑っとったけど

芳乃ちゃんだけはマジやった!

私は何か信じれたし本当に新越谷で

いつか全国に行けるって思っやけん

芳乃ちゃんがおらんかったら今頃は

転校して梁幽館や咲桜におったかも」

 

 

そう言って希は芳乃がいなければ

他の強豪校に転校して新越谷には

いなかった自分の姿を想像すると

改めて今の自分があるのは芳乃の

お陰であることを告げた

 

 

「う~ん……希ちゃんが梁幽館の

応援席にいる姿を想像したら悲しくなりそうだし

少なくとも今日の試合は、かなり苦戦していたか

最悪、今より点差がついていたかもしれないわね」

 

 

真深は希が梁幽館に行っていた場合に今日の

試合を迎えた様子を想像して苦い表情を浮かべた

 

 

「うん……だから私は芳乃ちゃんに逢えて

良かったと思っとるし今では新越谷に来て

本当に良かったと思っとる……だから私も

芳乃ちゃんに感謝しとるけんね……大好き」

 

 

満面の笑みで言う希の表情は

決して御世辞ではなく芳乃への信頼と

感謝の気持ちが強く感じられるものであった

 

 

「ありがとう……選手に励まされるなんて

チームの参謀として、まだまだダメだなぁ私……」

 

 

真深と希からの言葉を聞いた芳乃は

漸く元気を取り戻し恥ずかしそうに

舌を先を出しながらも笑顔を見せて

心配をかけたことを二人に詫びると

 

 

「そんなことないわ

だって私達だって芳乃ちゃんに

励まされたり元気づけられたりしたもの」

 

 

「うん! 私が得点圏で打てんかった時にも

芳乃ちゃんは1人で背負わないで、いつでも

自分たちに、相談してって言ってくれたけん

そやから芳乃ちゃんも無理せんと、私たちを

もっと頼って欲しいけん」

 

 

「希ちゃんの言うとおりよ……

他の皆だって、きっとそう思っている筈だわ」

 

 

真深と希は、そう言って選手、参謀、監督が

互いに励まし合うチームになりたいことを

芳乃に告げて1人で背負わないように頼む

 

 

そして……

 

 

「うん……分かった!

もう1人で悩んだり抱え込んだりしない!」

 

 

その言葉で芳乃は完全に元気を取り戻し

凛とした表情になっていて真深と希に目を向ける

その表情を見た真深と希も安心して笑顔になると

 

 

「さあ! 試合が再開するわ……戻りましょう」

 

 

「「うん!」」

 

 

最後に真深が、そう言ってベンチに

戻ろうとすると希と芳乃も元気一杯の

声と表情になって真深の後をついて行った

 

 

「ただいま」

 

 

「あっ! お帰り、真深ちゃん」

 

 

3人がベンチに戻ると7回の先頭打者で

打順が回る詠深がヘルメットを被って

7回表の攻撃が始まるのを待っていた

 

 

そんな詠深を見た芳乃は……

 

 

(泣いても笑っても最終回……

やっぱり延長戦になったら不利だし

この7回表の攻撃で逆転したいから

私としては希ちゃんと真深ちゃんに

チャンスの場面で回したいんだけど

7回表は詠深ちゃんからの打順……

多分だけど詠深ちゃんに中田さんの

豪速球や変化球を打てる確率は低い)

 

 

やはり延長戦に入ると新越谷が不利なので

7回表の攻撃で逆転する作戦を考えていた

しかし表情は影森と試合する前の芳乃の

表情に戻っていたので芳乃の表情を見た

希も安堵していたが中田の投球を前にして

詠深から始まる7回表の打順で中田の球を

どう攻略すれば良いだろうかと考えていた

 

 

「……(1番、期待できるのは

今日は2安打、打ってる珠姫ちゃんだけど

中田さんの球は、吉川さんの球と比べたら

球威もキレも上だから、過信はできないし

菫ちゃんは三振は少ないけど、中田さんの

豪速球や変化球に、タイミングが合うかを

予測するには、まだまだデータが少ない)」

 

 

詠深の打率の低さと今日のこれまでの2打席で

いずれも三振で凡退していたので流石に芳乃も

少しだが心配そうな様子を見せながらも中田の

球を攻略する案を考えている横で真深が詠深の

様子を見ながら何やら笑みを見せていた

 

 

そして……

 

 

《7回表、新越谷高校の

攻撃は……9番、投手、武田さん》

 

 

「よーし! 打つぞ~~!!」

 

 

打撃では芳乃やチームメイトから

心配されてるなど知るよしもない詠深は

球場に自分の名前がコールされると前の

2打席では三振していることを気にした

様子は見せず意気揚々と打席に向かった

 

 

すると……

 

 

「詠深!」

 

 

「なに、真深ちゃん?」

 

 

突然、後ろから真深に声をかけられて

詠深が振り替えると真深は詠深に近づいて

笑みを浮かべて耳元にて何やら囁いたのだ

 

 

「えっ!?」

 

 

(|| ゜Д゜) ガーン

 

 

真深に耳元で囁かれた詠深は、その直後に

戸惑いとショックの混ざった様子を見せる

 

 

「そうよ、だって……」

 

 

そんな詠深に真深は更に耳元で囁いた瞬間

 

 

「そっか、そうだよね……

分かった! 思いっきり振ってくるね!」

 

 

「ええ、楽しんできてね」

 

 

「うん!」(⌒∇⌒)

 

 

2度目の真深の囁きを聞いた詠深は先程より

張り切った表情で打席に向かっていったのだ

 

 

「真深ちゃん……詠深ちゃんに何て言ったの?」

 

 

詠深を送り出して真深がベンチに戻ってくると

当然ながらメンバーは真深が詠深にどのような

アドバイスをしたのか疑問に思ったようであり

メンバーを代表するように芳乃が真深に詠深に

対して何を囁いたのか尋ねる

 

 

「う~ん…………秘密!」

 

 

そんな芳乃の質問に真深は

イタズラな笑みを見せて答えを、はぐらかした

 

 

(今日の武田は和美の直球に

全く対応できずに2打席とも三振しています

小細工なしで直球で押しきっちゃいましょう)

 

 

(そうだな……

それにウチの打線に対し、これだけの投球を

見せたのだから、私としても武田には全力の

直球で勝負をしたかったから、寧ろ丁度いい)

 

 

そして打席に立つ詠深に対し梁幽館バッテリーは

詠深の打率が、まさか詠深の打率が"0.50"とは

知らなかった上に今日の試合は吉川の投球を前に

2つの三振で凡退していたが中田は梁幽館打線を

相手に好投する詠深に対して敬意を表して自分も

容赦無しの全力勝負を挑もうと考えていた

 

 

そして……

 

 

ズドォォォォォォォォォォォォン

 

 

「ストライク!」

 

 

中田の豪速球がド真ん中に決まったが

あまりの豪速球に詠深は手が出ずに

見送り主審はストライクをコールした

 

 

「はいっ!」 スカッ

 

 

ズドォォォォォォォォォォォォン

 

 

「ストライク、ツー!」

 

 

そして続く2球目の豪速球に対しても

詠深は打撃の際に発する掛け声を発しながら

フルスイングしたが敢えなく空振りしてしまった

 

 

「やっぱり詠深じゃ無理かも……」

 

 

追い詰められた詠深を見た稜が静かに呟くと

打率"0.50"に加えて、影森との試合以外は

まともな"ヒット"を打った事のない詠深に仲間も

中田の豪速球を打つのは流石に厳しいと見ていた

 

 

(詠深ちゃんは投球に集中してくれれば良い

その代わり絶対に私が中田さんを打って見せる

そして希ちゃんと真深ちゃんに回して逆転して

詠深ちゃんを7回のマウンドに立たせて見せる)

 

 

仲間が悲観するなかで

ネクストバッターズサークルの珠姫は

今日の詠深には投球に集中してほしいと

思いながら好投する詠深のためにも必ず

中田の豪速球を打ってチャンスを作って

希と真深に回して逆転し詠深を7回裏の

マウンドに立たせてあげたいと気合を入れる

 

 

(これでいいわ……

打てないとしても詠深らしいスイングだし

前の2打席の時よりも良い表情をしてるし

私のアドバイスをきちんと生かせているわ)

 

 

そして真深も詠深のスイングと表情を見て

リードされて迎えた最終7回の先頭打者で

打順が回りプレッシャーが掛かる場面でも

自分のアドバイスを生かした詠深らしい

スイングをしていることを見たこともあり

微笑みながら詠深の打線を見届けていた

 

そんな中で向かえた3球目も中田は

全力の豪速球を投じて来ると詠深は

負けじとフルスイングしてバットを

振った結果ボールは小林のミットに

収まり詠深は空振り三振に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!」 カキィィィィィィィィィン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っと……誰もが思った瞬間に球場に

金属バットの豪快な快音が響き渡った

なんと詠深が中田の豪速球を捉えたのだ

 

 

「「!?」」

 

 

その瞬間に中田は動揺した表情を見せ

小林は信じられなさそうな表情を浮かべた

 

 

「えっ!?」

 

 

「あらっ♪」

 

 

そしてネクストバッターズサークルの珠姫は

驚きと興奮が混ざった声と表情になり真深は

ご機嫌な声と表情になる

 

 

「「「「「「「打ったーー!?」」」」」」」

 

 

更に珠姫と真深以外の新越谷のベンチの

メンバーに至っては未確認飛行物体でも

見たかのような声を発すると唖然とした

表情になりながら開いた口が塞がらなく

なってしまった

 

 

《武田、捉えたーー!?

打った打球は右中間に伸びて……

陽秋月の前に…………落ちましたーー!!》

 

 

やや球威に押されたのかヨロヨロと

右中間へ飛んで行った打球をセンターの

陽秋月は捕球しようと前進しダイビングでの

捕球を試みたが僅かに及ばずヒットとなった

 

 

《先頭の武田が安打で出塁!

新越谷に同点のランナーが出ました!》

 

 

最終7回に先頭打者の詠深がヒットで

出塁したことでノーアウトで新越谷に

ランナーが出たことから実況も思わず

声を張り上げてしまった

 

 

「当たりは良くはなかったけど……」

 

 

「詠深ちゃんが中田さんの球を……」

 

 

「打った……」

 

 

「あの豪速球を……」

 

 

そしてベンチでは未だに珠姫と真深以外の

仲間が唖然としながら詠深が中田の豪速球を

ヒットを打ったことを信じられなさそうに

呟いていると……

 

 

「わーい! やったーー!!

真深ちゃん、私やったよーーー!!」

 

 

「ナイバッチよ、詠深!!」

 

 

「詠深さん、凄いです!!」

 

 

ヒットを打った詠深は一塁上で満面の

笑みを浮かべて両腕を高く上げながら

ベンチの真深に向けて喜びを現すと

真深は親指を立てて詠深を祝福して

一塁のベースコーチャーについていた

白菊も詠深の打撃を笑顔で称賛すると

 

 

「おい、真深!

詠深が打席に向かう前に何て言ったんだ!?」

 

 

「何か凄いアドバイスをしたんでしょう!?

そうでもなければ詠深が、あの中田さんから

ヒットなんて打てるはずないわ!?」

 

 

(酷くない……) (^。^;)

 

 

ヒットを打ったのに仲間から

祝福ではなく最初からヒットを

期待されていなかったかのような

話し声が聞こえた詠深は苦笑いを

浮かべながらベンチに目を向けた

 

 

「真深ちゃん、教えて!

詠深ちゃんに何てアドバイスをしたの!?」

 

 

一方、芳乃は中田を攻略できるかもしれないと

興奮しながら、他のメンバーも中田を打てると

思いながら真深に尋ねると、帰って来た真深の

答えは作戦でも何でもないものであった

 

 

「ん? "三振してもいいから

中田さんとの勝負を楽しんでね"って言ったわ」

 

 

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 

 

「そっ、それだけ……?」

 

 

「ええ、それだけよ」

 

 

真深からの答えを聞いたメンバーは

呆気にとられた表情と拍子抜けした

声を出し芳乃も戸惑いながら真深に

確認すると真深は気にせず淡々と答えた

 

 

「そっ、そんなんで打てるのかよ……」

 

 

打率が".050"と致命的な詠深に対して

相手が梁幽館エースの中田だというのに

あまりに中途半端で戦略的な要素もない

言葉をかけたことに稜が戸惑いながらも

真深に尋ねると他のメンバー達も真相を

知りたそうにしていた

 

 

「昔から詠深は何か調子が良いことがあると

他のことでも普段より力を発揮できることが

あったから投球の調子の良い今の詠深ならば

打撃でもいつもより良いスイングが出来ると

思ったし試合も楽しめてるみたいだったから

"中田さんと勝負する機会なんて今回が最初で

最後かもしれないんだから楽しまないと損よ"

って言ったら詠深も嬉しそうにしてくれたわ

けど、本当に打ってちゃうなんて流石、詠深ね

元々、スイング自体も悪くなかったんだし」

 

 

仲間に説明しながら真深は打つ前に2球

空振りした際にも詠深は中田の投げる豪速球を

目を輝かせながら見ている様子を見ていたので

三振しても良いし中田との勝負で打撃の方でも

レベルアップする切っ掛けが掴めればと思って

見届けていたので楽しめた上にヒットを打った

詠深を自分の従姉妹ながら流石だと思っていた

 

 

「「「「「「「「 ………… 」」」」」」」」

 

 

対して真深の説明を聞いた仲間たちは

暫く唖然とした表情のままでいたのだが……

 

 

「それって詠深にしか

通用しなさそうなアドバイスね……」

 

 

「アハハ……だな」

 

 

菫と稜が苦笑いをしながらも詠深なら

真深が伝えたアドバイスだけで結果を

出して不思議ではないと思ったらしく

納得したような様子を見せると……

 

 

「ナイバッチ、詠深ちゃん!!」

 

 

「この回、逆転できるわよ!!」

 

 

珠姫と息吹が出塁した詠深に声援を送ると

他の仲間も二人に続いて声援を送り士気も

上がったらしく笑顔も出てきていた

 

 

一方……

 

 

「やられたな……

(油断していた訳ではないのだが

まさか武田にヒットを打たれるとはな……)」

 

 

マウンドでは中田が"してやられた"と

言わんばかりに苦笑いを浮かべながら

一塁上の詠深に目を向けている

 

 

「奈緒さん、偶々です!

打球の飛んだ場所が良かっただけで

当たりとしては打ち取った当たりでしたよ

ここは山崎を抑えることに集中しましょう」

 

 

「分かっている……

ただ武田も投球での勢いが打撃の方でも

出たとはいえ私の直球に当てたことには

素直に称賛したいなと思っていただけで、武田に

安打を打たれた事は、気にしてないから大丈夫だ

それに後続の3人の打者を全員、抑えさえすれば

奴(上杉)まで回さずに、勝利する事ができるんだ

ここから先は、もう打たせないから安心してくれ」

 

 

「はい! 私も、しっかりリードして見せます!」

 

 

「ああ、頼りにしてるぞ」

 

 

そんな中田に駆け寄っていた小林が

気持ちを切り替えて珠姫との勝負に

集中することを提案すると中田は

詠深に安打を許したことは気にした

様子はないので小林も中田の言葉に

安心してポジションに戻っていった

 

 

そして……

 

 

《1番、捕手、山崎さん》

 

 

打順は1番に返り今日の試合は

吉川から2安打の珠姫に打順が回ると……

 

 

(正直、厳しいと思っていたのに

詠深ちゃんが先頭打者で出塁してくれた!

併殺を防ぐためにも、ここは迷わずバントだ!)

 

 

芳乃は1回表に菫に出した時と違い

今度な迷いなく自信を持って珠姫に

バントのサインを出した

 

 

(せっかく、詠深ちゃんが

ノーアウトで繋いでくれたんだ

ここは私の選手生命に賭けてでも送る!)

 

 

チャンスを作ってくれた詠深の頑張りを

無駄にするものかと言わんばかりに珠姫は

今までにないくらい打席で集中力を高める

 

 

(できれば送らせたくない……

ここは外角に1球、直球を投げて外した後に

変化球を投げてタイミングを外しましょう!)

 

 

(わかった!)

 

 

珠姫がバントをしてくると読んでいた小林は

外角に直球を外した後に"チェンジアップ"や

"スライダー"を外と内に投げ分けて珠姫に

的を絞らせない作戦を考えて中田にサインを

出すと中田も小林に頷き外角にボール1つ分

外れる豪速球を投じてきた

 

 

しかし外角に豪速球が

投じられた瞬間に珠姫は目を見開いた

 

 

(この直球を見逃せば多分

次からは変化球主体で攻めてくる……だったら)

 

 

珠姫は小林のリードをしっかり読んでいた上に

脳裏に3回裏の守備の時の高代の打席で外角に

外す球を強引に当ててきた高代の打球を太陽の

光で目がくらみ落球してしまったエラーの時の

光景を思い出すと……

 

 

(これで詠深ちゃんを送って

あの時の借りを……ここで返す!!)

 

 

詠深がヒットに勇気付けられたこともあり

珠姫は外角に外れる中田の直球を3回裏に

高代が飛び込んで当てたように横っ飛びで

バットの先に当てるとボールは一塁線に

転がる完璧な送りバントとなって詠深を

安全に二塁に送ることができた

 

 

「クッ……1つ!」

 

 

そして珠姫に完璧な送りバントを

決められた小林は苦い表情を浮かべながら

打球の処理に向かってきた一塁手の谷口に

一塁に投げるように声を出し谷口は一塁の

ベースカバーに入った二塁手の白井に球を

送球すると新越谷はワンアウト二塁となり

一打同点のチャンスを作ることに成功した

 

 

「よっしゃーー!!

ワンアウトで走者二塁のチャンスだぜ!!」

 

 

「同点……いや! 逆転できるわよーー!!」

 

 

詠深のヒットという嬉しい誤算から

チャンスが到来し稜と息吹が興奮しながら

声を上げるとベンチのボルテージも最高潮になる

 

 

「やったわね、芳乃ちゃん!

詠深と珠姫の打順を並べて正解だったじゃない」

 

 

「ナイス采配やん!」

 

 

「真深ちゃん、希ちゃん……うん、ありがとう!」

 

 

試合前日に打順の説明を聞いていた真深と希が

打順の采配の件で芳乃の采配を太鼓判を押すと

芳乃も今度は心から嬉しそうな表情になった

 

 

《さあ! ワンアウト走者二塁!

新越谷、一打同点のチャンスで中軸に回ります》

 

 

そして実況のコメントと同時に

球場も異様な盛り上がりを見せ始めていた

 

 

「これは……もう一瞬も目が離せませんね」

 

 

「そうですね……これで、もう1人出塁すれば」

 

 

「逆転のチャンスで、上杉さんまで回せそうね」

 

 

観客席で試合を観戦していた

ユイ、二宮、小関も試合に目が釘付けになっていた

 

 

「というか……周り、人増えてない?」

 

 

「確かに……」

 

 

そんな3人の横で田辺と久保が

呟いたので3人も見てみると試合開始前は

ガラガラで空いていた一塁側の観客席には

いつの間にやら新越谷の制服を着た学生や

一般人の観客の姿が増えていたのであった

 

 

「あれ? ◯◯ちゃん達も来たの!?」

 

 

「うん! テレビで見てたんだけど……」

 

 

「凄い試合になってるから来ちゃった!」

 

 

「詠深からも"来てって"頼まれてたしね」

 

 

「まさか梁幽館を相手に

ここまで良い試合するなんて思わなかったわ」

 

 

「ボコられるどころか

詠深が梁幽館打線をボコボコにするなんてね」

 

 

「というか真深ちゃんが凄くない!?」

 

 

「打撃も守備も足も半端ないよね!?」

 

 

ユイたちの近くで最初から詠深たちの

応援に来ていた二人の女子生徒が他の

クラスメイト達が球場まで着たことを

驚きながら尋ねるとテレビで見ていたが

彼女たちも思わぬ好ゲームに今からでも

見に行こうとやって来たと説明していた

 

 

「思わぬ接戦と好ゲームに皆さんも球場に

足を運んでまで見に行きたくなったようですね」

 

 

その様子に二宮が納得したように呟いた時だった

 

 

「あの……」

 

 

「「「「「 ??? 」」」」」

 

 

不意に横から声をかけられたので

5人か声がした方に目を向けると

 

 

「咲桜高校の皆さんですね?」

 

 

「はい……そうですけど?」

 

 

「あっ!? あなたは……」

 

 

主将である小関が両手にペンと手帳を持ち

腕には記者と書かれている腕章を付けた女性に

応対すると女性の姿を見たユイが直ぐに反応した

 

 

「私が咲桜に入学して直ぐに取材に来ていた!」

 

 

「ああ、あの時の……」

 

 

それは新越谷のメンバーがゴールデンウィークに

初めての合宿をした時に芳乃がメンバーに見せた

ユイが取材を受ける映像でユイにインタビューを

していた女性記者だったのだ

 

 

「覚えていてくれたんですね……嬉しいです!

球場に小関さんたちがウィラード選手を連れて

観戦に来ていると情報を得て探していたんです

ウィラード選手に少しお話を伺いたかったので」

 

 

ユイたちが自分の事を覚えていてくれたことを

嬉しく思いながらユイを探していた事を告げた

 

 

「私に何か、ご用ですか?」

 

 

「はい……上杉選手について、お話しが聞きたく」

 

 

「「「「「 !? 」」」」」

 

 

女性記者の言葉を聞いた瞬間に

5人は驚いたのか少し目を見開いたが

彼女がユイに何を聞きに来たか察したらしく

 

 

「どうやら気づかれたみたいですね……」

 

 

「まあ、梁幽館を相手に

あれだけのプレイをしていれば……」

 

 

「調べられるわよね……」

 

 

「だね……」

 

 

二宮、小関、田辺、久保が順番に呟き

真深の経歴が知られたのだと直ぐに悟った

 

 

「それでは、やっぱり……

ウィラード選手がリベンジしたい相手とは!?」

 

 

小関たちの呟きを聞いた女性記者も

何かを悟ったように再びユイに目を向ける

 

 

「もう隠す必要はなさそうですね……

良いですよ……ですが今は目が離せない

場面なので答えるのは、この回の新越谷の

攻撃が終わってからに、させてくださいね」

 

 

ユイは不適な笑みを浮かべながら

女性記者の言葉に答えたのであった

 

 

そんな中でも試合は続き……

 

 

《2番、二塁手、藤田さん》

 

 

球場に名前をコールされた菫が

緊張と気合いが混ざった表情で

ゆっくりと打席に向かっていく

 

 

「菫、頼むぞーー!!」

 

 

「日頃の練習の成果を見せてやれーー!!」

 

 

ベンチから怜と稜が菫に声援を送ると

他のメンバーも続いて菫に声援を送る

 

そんな声援にいつもの菫なら

緊張しそうな場面だったが今は違った

 

 

(絶対に打つ!

詠深だって打ったんだもの……

相手が中田さんだからって過剰に

意識しなければ私にだって打てるはず!)

 

 

詠深のヒットに勇気付けられたのは

珠姫だけではなく中田がマウンドに

上がってから萎縮していた菫を初め

新越谷の他のメンバーも同じだった

 

真深や詠深のように楽しむまでは

できなくとも強い気持ちで挑めば

打てない相手ではないのだと

 

 

そして……

 

 

「来なさい!!」

 

 

菫は力強い表情と声を

中田に向けながらバットを構えた

 

 

(藤田は当てるのが上手くて空振りが

取れないから小細工をしたら此方が不利

逆にパワーの方は新越谷の打者の中では

低いから奈緒さんの直球で押しきれる筈)

 

 

小林は試合を通じて菫に長打力はなく

球威のある直球にも対して強くないと

判断して中田にサインを出す

 

 

(小細工なしの直球勝負で!

奈緒さんの直球なら押しきれる筈です!)

 

 

(わかった! お前のリードを信じるぞ!)

 

 

1つ年下ながらも小林を信頼している中田は

小林のサインを信じて力強く頷いて見せると

躊躇なくストライクゾーンに渾身の豪速球を

ミット目掛けて投げ込んだ

 

 

(やっぱり早い……けど、負けない!!)

 

 

菫は投じられた直球に目を見開くと

中田の直球に負けるものかと力強く

バットを振り抜いた

 

 

キィィィィィィィン

 

 

菫が力強く振ったバットは中田の直球を捉えた

 

 

しかし……

 

 

「ショート!」

 

 

「オーライ!」

 

 

菫の打球は遊撃手の高代の頭上に

舞い上がる緩いフライになってしまい……

 

 

「アウト!」

 

 

菫の打球は高代に捕球され

遊撃フライとなりツーアウトとなる

 

 

「クッ……!!」

 

 

その瞬間に菫は両手の拳を

握りしめながら一塁線上で俯いた

 

 

《2番、藤田が倒れてツーアウト!

これで梁幽館、勝利まであとアウト1つです!》

 

 

「良いぞ中田!!」

 

 

「あと1人だ!!」

 

 

「「「「「あと1人! あと1人!」」」」」

 

 

ツーアウトとなり、あの1人で梁幽館の勝利が

決まる状況となり、三塁側の梁幽館の応援席の

応援団に加えて、梁幽館を応援している観客の

ボルテージが最高潮になる

 

 

「ねえ、真深……」

 

 

「菫ちゃん……どうしたの?」

 

 

菫が凡退したので球場に名前がコールされる前に

3番の希が打席に向かおうとネクストサークルで

準備を始めたので次の打者の真深もヘルメットを

被ってバットを手にしてからネクストサークルに

向かおうとすると凡退した菫が俯いたまま真深に

声をかけたのだ

 

 

「今度、打撃練習をする時は

私も真深と一緒に練習させてくれない?」

 

 

「え?」

 

 

「どんな豪速球でも直球なら

打てるくらいの打撃力と最低限の

長打力を身に付けたいの……お願い!」

 

 

そう言う菫の瞳には悔し涙が溢れていた

豪速球とはいえ真ん中高めという絶好球を

打ち上げたことが非常に悔しかったらしい

 

 

「……わかったわ!

次の練習の時に一緒に打ち込みましょう」

 

 

「うん、ありがとう……」

 

 

真深が快く承諾すると菫はベンチへ戻っていき

そんな菫を先程の打席で中田の直球にバントを

打ち上げて悔し涙を流したが真深に励まされて

立ち直った稜が励ましていていた

 

 

《3番、一塁手、中村さん》

 

 

そして3番の希の名前が球場にコールされる

 

 

《さあ梁幽館! 勝利まであと1人!

打席には今日はヒット1本の3番、中村!

7回表ツーアウト! 追い詰められた新越谷

果たして中村が後続に繋ぐことができるか!?》

 

 

いよいよツーアウトとなり

三塁側の観客席に、いつの間にか観客が増えた

一塁側の観客席でも、盛り上がりを見せていた

 

希が打ち取られれば梁幽館の勝利となり

希が打てば同点かチャンスが広がった状況で

4番の真深に回るという場面なので当然であろう

 

両チームのベンチでも選手や監督が固唾を飲んで

戦況を見守る中で小林が中田に駆け寄って最後の

打者を打ち取るための作戦とサインの確認をする

 

 

「中村には全打席で外角への

変化球をヒット性にされていますし

ここは力のある速球を中心に攻めますか?」

 

 

「だな……今日の中村の打席を見る限り

奴の打撃技術は良いと思うが野手の間を

塗ってコンパクトに打つ打撃スタイルは

はっきり言ってウチの守備にとって最も

打ち取りやすい打撃だから内野を後ろに

下げて外野は前進させておいて内角への

直球中心に攻めていけば問題ないだろう

繋ぐことに徹した3番打者など怖くない

私の真っ直ぐで捻り潰してやる!」

 

 

「ですね! それで、行きましょう」

 

 

「ああ! 勝つぞ、小林!」

 

 

「はい!」

 

 

小林は中田と力強く声を掛け合ったが

その間に希も一旦打席を外してバットを構えて

ネクストサークルで打順が回るのを信じながら

待っている真深の元へとやって来て声をかけた

 

 

「真深ちゃん、さっきは、ありがとう」

 

 

「ううん……気にしないで

私も芳乃ちゃんに元気がなくて

心配していたから寧ろ丁度良かったわ」

 

 

「うん……」

 

 

希が真深にお礼を言ったのは

先程の7回表の攻撃が始まる前に芳乃を

ベンチ裏に連れて行って励ました時のことだ

 

希は試合開始時から芳乃に元気がないことに

気づいてどうにかしたいと思っていたのだが

6回表に新越谷がノーアウトで1点を還して

1点差に詰め寄った直後に中田がマウンドに

上がり圧巻の投球で同点を阻止されたことで

いよいよ顔色が悪くなったしまったのを見て

何とかしてあげたいと思い真深に相談すると

真深も芳乃に元気がないことと大体の原因に

気づいていたので6回裏の梁幽館の攻撃が

終わり次第ベンチ裏に連れて行って励まし

元気付けようと希に提案していたのだった

 

 

「真深ちゃんって同い年なのに

お姉ちゃんみたいな感じがするけんね」

 

 

「あら、そうかしら?」

 

 

「うん! 1年の皆より背が高いし

お淑やかで優しいし、皆が悩んでたり

落ち込んでると、気遣ってくれるから

年上に感じる時があるっちゃけんね」

 

 

「フフッ。そう言ってもらえて嬉しいわ

そういえば小さい頃に詠深にも言われたわね」

 

 

希の言葉に真深は普通の反応でいたが

実際に今日の試合だけでも芳乃、希、稜、菫が

真深に励まされていて、影森との試合の際も

エラーをして、落ち込んでいた白菊を励まし

元気付けていたので、真深に対し希みたいな

感想を持っている仲間は、多かったのである

 

実際に詠深は小学生の頃は真深がアメリカに

引っ越すまで姉のように慕っていて春休みに

真深と再会した時に飛び付いたのも小学生の

頃の名残でもあった

 

 

「それから、もうツーアウトで

後がない状況じゃなかったとしても

この打席はチームの皆や、芳乃ちゃんの為に

何より自身の為に、必ず打ちたいっちゃけん

だから、さっき真深ちゃんが教えてくれた事

この打席で、やってみようと思っとるちゃね」

 

 

「私が言ったこと?」

 

 

「うん……"状況に合わせて自分の

打撃スタイルにアレンジを加える"って……」

 

 

「あぁ、アレ……」

 

 

アメリカのガールズに入ってから

自分が意識して取り組んだことを

希に話した真深であったが自分の

言った言葉を希が真剣に考えて

参考にしようとしていたと聞いて

先程、希から、お姉ちゃんみたいと

言われた時より嬉しく感じていた

 

 

「だから必ず打って詠深ちゃんをホームに

還して真深ちゃんに繋ぐけん……期待しててね」

 

 

「ええ! 今の希ちゃんなら絶対に大丈夫よ!」

 

 

「ありがとう! 行ってくるね!」

 

 

真深の返事を聞いて打席に戻っていった希の

表情は自分が打ち取られれば終わりだという

プレッシャーを感じている表情でなく自信に

満ちていて勝利を信じている表情だった上に

笑顔すら見えていたのであった

 

そうしている内に中田とサインの確認をしていた

小林が足早にポジションに戻ると希も打席に戻り

小林もミットを構えると中田は内野陣には普段の

ポジションより後ろに下げて外野陣には前を守る

シフトを指示すると全員が指示通りに動き完璧な

"希シフト"を敷いたのである

 

 

「プレイ!」

 

 

しかし主審が試合再開をコールすると

希は冷静に梁幽館の内角と外野の位置を確認する

 

 

(内野は少し後ろに……外野は前進しとるな)

 

 

希は一目見て自分の打撃スタイルに合わせた

シフトを梁幽館が敷いていることに気づいた

 

 

そして……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「叩きつけなさい! 打ち上げてはダメ!

グラウンダーで転がせば必ず何かが起きるから」

 

 

「コンパクトに野手の間を抜きなさい!

フォームを崩すから大振りしてはいけませんよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………」

 

 

希は普段から意識していた為か希の脳裏には

小学校の頃に所属していたチームのコーチの

言葉が頭の中に過った

 

 

しかし……

 

 

(スミマセン、監督……

けど、もう高校野球で、それは通用しないけん

これからは自分の打撃スタイルを維持しつつ

自分なりのアレンジを加えて強くなるけんね)

 

 

希は小学校の頃の監督の助言と決別して

自分なりの新たな打撃スタイルを築いて

行くこと決心をしたのだ

 

 

(長打を打てば今の梁幽館の

外野の守備位置なら越せるけん!

中田さんは登板してからは初球は全部直球で

来とったし内野手の守備位置を見る限り次も

きっと内角低めに直球を投げて来る筈っちゃ)

 

 

そして相手の守備位置から内角低めを

攻めてくると読んだ希は、長打を打とうと

初球に来る可能性の高い直球に狙いを絞った

 

 

(コンパクトに狙った位置に打つ

ウチの打撃スタイルに長打をつける

イメージをしながら打てばいけるけん!)

 

 

今まで意図的に長打を狙ったことのない

希だったが希には長打を打つイメージの

参考になる打撃が脳裏に残っていた

 

 

それは……

 

 

(思い出すっちゃ!

守谷欅台との試合で打った……あの感覚を!)

 

 

得点圏で打てずに悩んでいた自分に芳乃から

4番を任された守谷欅台との試合で真深から

試合前日に受けたアドバイスを参考にして

打ってホームランなったあの時の打席だった

 

そして希がベンチに目を向けると祈るように

自分の打席を見守る芳乃の姿が視界に入った

 

 

(私の打席では、サインが出る事はない

少し寂しい気もするけど芳乃ちゃんが

私の打撃を信じてくれてる証拠っちゃ

それにベンチを見ると、いつも笑顔で

応援してくれるのが、嬉しかったけん)

 

 

立ち直ったとはいえども周りの観客にも

芳乃の采配が凄くて正しいということを

示すためにも二塁走者の詠深をホームに

還して自分も芳乃の采配の凄さを周りに

示したいと強い思いを抱いていた

 

 

(私の為にもチームの為にも、いつか全国に

行くには芳乃ちゃんの采配が必要やけんね

それにクリーンナップに置いてくれた事を

後悔させたくない……詠深ちゃんが打って

珠姫ちゃんが送ってくれたからここで私も

打てば芳乃ちゃんの采配が正しいって事を

もっと証明できるけん! その為にも……)

 

 

希が心の中で自信の鼓舞していると

中田が初球に内角低めの豪速球を投げてきた

 

 

(ここで打つしかなかろーもん!)

 

 

カキィィィィィィィン

 

 

初球の直球を狙っていた希は

フルスイングでボールを捉えると

打球はライト方向に大きく延びていった

 

 

《初球打ちーーー!?

打球はライトに向かって延びていくーーー!!》

 

 

「「!?」」

 

 

快音が響くと同時に実況は声を上げて

希が長打を狙わないと決めつけていた

中田と小林が焦った表情となって希の

打球の行方を見つめる

 

そして希の打った打球を前進守備を

していた右翼手の西浦が懸命に追っていく

 

 

「打った!!」

 

 

「越えろ!!」

 

 

そして新越谷のベンチでもメンバーが

希の打球と希の打球を追う西浦の姿を

見ると打球が抜かることを願いながら

声を張り上げる

 

 

「越えてーーー!!」

 

 

そんな中で芳乃も祈るように

いつもより大きな声で打球が西浦の

頭上を越えることを必死に願っていた

 

 

そして……

 

 

《頭上を越えたーー!!

ライトフェンス直撃ーー!!

右翼手の西浦、飛び込むも及ばす!!

二塁ランナーの武田は既に三塁を蹴って

ホームに……帰って来たーー!! 同点ーー!!》

 

 

普通に走っては追い付けないと見た西浦は

"一か八か"ダイビングキャッチを試みたが

希の打球の勢いは強く西浦のグラブの先を

余裕を持って越えるとライトフェンスに

直撃した上にフェンスに直撃した拍子に

クッションボールで不規則な打球となり

西浦は打球の処理に手こずった為に二塁の

詠深が悠々とホームに帰ってきたのだった

そして打った希も悠々と二塁まで到達した

 

 

《最終回ツーアウトから

3番、中村の起死回生の同点タイムリー!

もぎ取った新越谷! 中田、打たれましたーー!》

 

 

詠深がホームを踏んで新越谷が同点に

追い付いた瞬間に梁幽館の応援席では

選手達が凍りついて梁幽館を応援する

観客も頭を抱えたり信じられなそうな

表情を見せている一報で一塁側に座る

観客や真深や新越谷のファンになった

観客から歓声と拍手が鳴り響いた

 

 

「詠深!!」

 

 

「真深ちゃん!!」

 

 

そしてホームを踏んだ詠深を

ネクストサークルにいた真深が出迎えると

2人はその場でハイタッチを交わし詠深は

満面の笑みをしながらベンチに戻っていき

仲間達も詠深を盛大な歓迎で迎え入れると

同点タイムリーを打った希にも声援を送る

 

そんな中で芳乃も希の同点タイムリーに

感極まったのか目元に涙を浮かべながら

二塁上の希に目を向けると芳乃の視線に

気づいた希は満面の笑顔になると自分の

人差し指を芳乃に向けた

 

 

【このタイムリーを芳乃ちゃんへ】

 

 

「!?」

 

 

そのジェスチャーを見て希の意思に

気づいた瞬間に芳乃は芳乃は両手で

口元を覆い感極まって涙を浮かべた

 

そして芳乃にジェスチャーを送った希は

そのままネクストサークルの真深の方に

眼を向けると真深は右手の親指を立てて

希の打撃を称賛していた

 

 

(ナイスバッティング!)

 

 

それを見た希も真深と同じように

笑顔で親指を立てながら答えていた

そんな新越谷とは対照的に梁幽館の方は

内野陣が暗い表情となってマウンドに集まる

 

 

「完全に狙われてましたね……私の責任です」

 

 

「いや……奴が長打を狙って来ないと

決めつけて外野陣に前進守備をさせた

私にも非がある……定位置であったら

追い付いてたか最低でも単打で済んで

同点にはされなかったかもしれないな

いや……もしかすると油断してたから

どのみち、打たれていたかもしれない」

 

 

中田は自分の判断ミスと

希の打撃を甘く見て油断していたことに

気づいて苦い表情を浮かべながら後悔し

同時に先程の真深と希の会話を思い出した

 

 

(……今までの3打席と違い

中村は表情にもスイングにも迷いがなかった

先程の上杉との会話で切っ掛けを掴んだのか?

私としたことが……なぜ気づかなかったんだ?

折角あの場に居て二人の会話を聞いていたのに

あれを意識していれば警戒して投げられた筈だ

一瞬の甘さが命取りになるというのに情けない)

 

 

中田は希が今までと違う打撃をしてくる可能性を

察することができる場面に居ながら警戒を怠った

自分自身を強く激しく憤っていたが同時に真深の

あの一言だけで打撃スタイルを変えながら結果を

出した希の才能に敬意も感じていた

 

 

「とにかく過ぎてしまったことを

この場で議論している場合ではない

打った中村を褒めるしかないと気持ちを

切り替えて行くぞ! なにせ、次の相手は」

 

 

そして自分のリードの"せい"で打たれたと

責任を感じて落ち込んでいた小林を中田は

相手を讃える形で上手く気持ちを切り替え

ネクストサークルへと目を向けると同時に

球場にあの名前がコールされた

 

 

《4番、左翼手、上杉さん》

 

 

名前がコールされネクストサークルで真深が

ゆっくりと立ち上がるとマウンド上の中田や

中田の回りに集まった梁幽館の内野陣に目を

向けながら打席に向かって歩んでいく

 

 

《さあ! ツーアウトから同点に追い付き

一打逆転の場面という打席には4番の上杉!

初回の先制2ラン本塁打を初め守備に走塁と

あらゆるプレイで規格外のプレイを披露して

試合を盛り上げた彼女と中田の直接対決です》

 

 

最終回ツーアウトから同点に追い付き

尚もツーアウトながらランナー二塁と

今度は一打逆転というの場面で真深に

打順が回り同時に真深が熱望していた

中田との直接対決の時を迎えた

 

 

(中田さんとの勝負……

試合が始まる前から楽しみだったわ

繋いでくれた詠深と希ちゃんに感謝しなきゃ)

 

 

真深は試合の行方を左右する重大な場所で

打順が回ってきたことによる緊張感よりも

中田と勝負できる楽しみと喜びの思いから

全く重圧を感じていなかった

 

 

しかし当然というべきか

一打逆転の場面で真深に打順が回ったので

梁幽館の方には楽しむ余裕などはなかった

 

 

「ここで上杉ですね……どうしますか?」

 

 

「…………」

 

 

そして希にタイムリーを打たれた直後に

中田の元に歩み寄っていた小林が真深に

対して、どう対処するか確認していた

 

 

すると……

 

 

「中田と上杉の直接対決だ!!」

 

 

「凄い勝負になりそう!!」

 

 

「どっちも頑張れーー!!」

 

 

真深と中田の直接対決を楽しみにしていたのは

真深本人だけではなかったようで観客たちまで

今日の試合で共に火花を散らした二人の対決に

ボルテージが最高潮になっていた

 

それを見た中田と小林はベンチに目を向けたが

栗田監督は指示を出す様子はなく両腕を組んで

戦況を見守っており真深と勝負するかの判断を

含め中田に全てを託すことを示していた

 

 

そして……

 

 

「勝負だ!!」

 

 

「!!」

 

 

中田の決断を聞いた瞬間に

小林は気を引き閉めた表情になる

 

 

「同じ相手に2度も逃げるような

無様な真似は出来んし奴を抑えられれば

この裏の攻撃に向けて弾みもつくだろう

観客の期待に応えてみたいし何より私も

奴と勝負してみたいと思っていたからな」

 

 

真深と同じく中田も真深と勝負してみたいと

思っていたのと同時に真深を打ち取ることで

逆転のピンチを凌ぎ7回裏の梁幽館の攻撃で

サヨナラ勝ちを決めるための勢いを作ろうと

真深との勝負を選択したのだ

 

 

「奴を倒して次の攻撃でサヨナラを決めるぞ」

 

 

「はい!」

 

 

中田の力強い表情から発せられた言葉に

勇気付けられた小林も先程より更に気を

引き締めた表情になって頷くとその場を

離れてポジションに戻りミットを構えた

 

 

《捕手が座りました! さあ、勝負です!》

 

 

小林が座ってミットを構えたことで

一塁側や三塁側と両方の観客席から

真深と中田に声援が送られてきた

 

 

「上杉、打ってーー!!」

 

 

「真深ちゃん、頑張ってーー!!」

 

 

「中田、返り討ちだーー!!」

 

 

「三振で終わらせてやれーー!!」

 

 

彼方此方から歓声が巻き起こる中で

真深がバットを構え中田がグラブを

構えたと同時に球場全体が緊迫した

空気に包まれて新越谷のベンチでも

メンバーが雰囲気に圧倒されそうに

なっていた

 

 

「真深ちゃん……お願い!」

 

 

その中で芳乃は真深が逆転の一打を

打つことを祈るように見つめていた

 

 

「大丈夫だよ、芳乃ちゃん」

 

 

「詠深ちゃん?」

 

 

「真深ちゃんは打つよ……絶対、打ってくれる!」

 

 

そんな芳乃の横から詠深が雰囲気に

圧倒されそうになりながらも真深が

必ず逆転の一撃を打ってくれることを

確信しながら力強い声で芳乃を励ます

 

 

「だから私たちは

真深ちゃんを信じて声援を送ろうよ」

 

 

「うん! そうだよね!!」

 

 

詠深に励まされたことで芳乃が詠深と一緒に

真深に声援を送ると他の仲間達も真深に向けて

精一杯の声援を送り始めると遂に両者が雌雄を

決する時が来たのである

 

 

次回……【上杉真深 VS 中田奈緒】

 

 




このような展開にしちゃいましたが
読者の方々に不満がないか不安です

野球はツーアウトからと言いますし
そこから希と真深の二人で同点から
逆転まで持っていく展開にしたくて
この展開になりました

「希のホームランがない」と
思われた方にはこの場でお詫び申し上げます

次回こそ真深と中田さんの勝負になるので
二人の勝負を楽しみにして頂けると幸いです

その代わり次の更新は来週中には
できそうなので今回みたいに長く
お待たせはしないと思いますので
ご安心ください

それでは失礼致します!
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