皆さんから沢山のコメントが送られるなど
反響が凄くて驚きましたし嬉しかったです
梁幽館との試合は今回と次回で完結します
更に今回は真深の口から新たなアメリカの
オリジナルキャラの名前が登場しますので
どんなキャラで誰がモデルなのか予想して
楽しんで頂けると光栄です
それでは、ご覧下さい!!
梁幽館に1点リードされて迎えた新越谷の
7回表の攻撃はツーアウトから希の劇的な
同点タイムリーが飛び出し土壇場で同点に
追い付くことに成功すると打席には4番の
真深が立ち中田との直接対決が実現する
「上杉、打ってーー!!」
「中田、返り討ちだーー!!」
「真深ちゃん、頑張ってーー!!」
「中田、三振で終わらせてやれーー!!」
二人の直接対決に観客の興奮度も
最高潮になり観客席から二人に声援が送られる
(なんて威圧感だ……
今まで何人もの打者と対戦してきたが
これほどの打者には会ったことがない
間違いなく今までで最高の打者だろう)
(こんな緊張感の中で勝負するのは
アメリカで"ユイ"を初め"ローランダー"や
"アゾット"みたいな名投手と対戦した時以来ね)
そんな中で真深と中田も互いに発する
オーラによって闘志に火がついていた
そして……
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
真深がバットを構え中田がグラブを
構えた瞬間に二人から感じる闘志に
両チームのベンチや球場の観客席も
興奮状態から一転して緊張のあまり
息を飲みそうになっていた
「なんか見てる此方が緊張してきたわね」
「ああ……こんな雰囲気
ガールズに居た頃も感じたことない……」
「先程、真深さんが敬遠された後に
真深さんと中田さんが、一塁で会話してましたが
その時にも、お二人の雰囲気に萎縮していました」
理沙と怜が呟いた一言に白菊は3回表の
新越谷の攻撃の際に真深か敬遠された後
真深と中田が火花を散らして時のことを
緊張した表情をしながら思い出していた
そして遂に中田が真深に1球目を投じてきた
ズドバァァァァァァァァァァン
「ストライク!」
「「「「「「「 !? 」」」」」」」
中田は真深に対して第1球目を投じると
真深は球筋を見るために初球を見送ると
ボールは小林のミットに収まったものの
ミットがボールに収まった音は今までの
中田のボールより強く大きく響いたのだ
しかも球速まで明らかに今までで一番の
速さと分かるほどの豪速球だったので
メンバー全員が思わず息を飲んでしまう
「ひぃぃぃぃ!?」
「すっ……凄い気迫ね」
「うん、しかもさっきより早くなってる!?」
あまりの豪速球に息吹は震えてしまい
菫も中田の気迫を見て呆然としながら
呟くと菫と珠姫が肯定していた
「やっぱり真深ちゃんが相手だから
中田さんも気持ちが高ぶってるのかな?」
「気持ちが高ぶってるって?」
中田の投球を見ていて呟いた詠深の言葉に
菫が反応すると他のメンバーも詠深の方に
目を向けて興味深そうな様子を見せる
「うん……私って今日は中田さんに
2本もホームランを打たこともあるけど
やっぱり中田さんが相手の時は他の打者に
投げる時より気持ちが燃えていたって言うか
いつもより気持ちが高ぶった感じがしたから
もしかして中田さんも真深ちゃんが相手だから
いつもより投球に力が入ったのかなって思って」
詠深が自分の気持ちから
中田の今の心境を分析して呟くと……
「私も武田さんの言う通りだと思います」
「藤井先生?」
ベンチに居るメンバーの誰よりも先に
藤井先生が詠深の呟きを肯定したのだ
「これは私が現役の球女だった頃の
チームのエースだった友人の話ですが
投手……特にエースというのは相手の
4番が相手の時にはやはり他の打者と
対戦する時より力が入ると言ってました」
「やっぱり、そういうものなんですね……」
「えぇ……4番に打たれれば相手の
チームを勢いづけてしまいますから自然と
打たれたくないと強く意識するようですし
何より自分の意地でもそうなるみたいです」
そう言いながら藤井先生は懐かしそうな瞳を
向けながら対峙する真深と中田を見ていると
藤井先生の言葉通り中田は今までないくらい
投球にも気持ちにも力が入っており集中力も
今までないくらいに高まっている中で小林も
雰囲気に飲まれないよう懸命にリードをする
(次は内角高めに直球を!
ボール1個分、外して仰け反らせましょう)
威嚇も含めて真深に内角高めに直球を投げる
サインを出すと小林のサインに頷いた中田は
真深の顔の近くに豪速球を投じた
…………がっ!!
グワキイィィィィィィィィィィン
「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」
快音が響いた瞬間に中田や小林は勿論
両チームのベンチや観客席の観客も息を飲んだ
真深は顔の近くに投げられた直球に対し
仰け反るどころか瞬時に体制を整えると
強引かつ豪快なスイングで中田の投げた
豪速球を芯で捉えたのだ
「ファールボール!!」
真深の放った打球は三塁側の
ファールゾーンのスタンドに飛び込んで
ファールとなるが顔面スレスレの球を平然と
打ってきた真深を見て球場全体が騒然とした
(アレを打ってくるのか!?)
(仰け反るどころか完璧に打ってきた!?
顔の近くに直球を投げられたにも関わらず
平然と打ってくるなんて……なんて娘なの!?)
見ただけの観客ですら騒然としたのだから
球を投げた中田とリードをしていた小林が
心の中で驚きながら呟くのは当然であろう
(でも、コレで"2ストライク"に追い込んだ!
2球続けて直球で行きましたから直球の残像が
強く残っている内に外角に"コレ"で行きましょう)
それでも2球で真深を追い込んだ事もあり小林は
冷静に中田に外角に直球以外の球を投げるように
サインを出すと中田も小林の要求通りのコースに
要求通りの球種を投じてきた
「"チェンジアップ"です!!」
中田がチェンジアップを投じた瞬間に白菊が
先程の自分の打席で三振にされたこともあり
緊張したような表情で反応した
(流石に顔近くに、直球を投げられた後の
外角への奈緒さんのチェンジアップには
対応できないはず……コレで三振よ!!)
直球を2球続けて投げた上に顔の近くに
直球を投げられた後に直球とフォームが
殆ど同じチェンジアップを外角に来れば
タイミングを合わせられないと見たのか
小林は三振を取れると確信してサインを
出したのだが……
(流石に初見だったらタイミングを外されて
打てなかったかもしれないわね……直球を
2球続けた後の、この"チェンジアップ"は!)
キィィィィィィン
「なっ!? (合わせてきた!?)」
確かに内角を意識していた筈の真深が
外角低めへと落ちるチェンジアップをバットの
先に上手く当てて引っ掻けさせたことに加えて
「フッ……ファールボール!!」
(なんでバットの先に当てただけの打球が
ライトのポール際まで飛んで行っちゃうのよ!?)
バットの先を掠めただけの打球がライトの
ポール際まで飛んでスタンドに飛び込んだので
一塁の塁審が戸惑いながらファールをコールし
小林を初め両チームのベンチのメンバーに加え
観客席の観客も驚きを通り越し唖然としていた
一方の真深は……
「ふぅ……(本当に直球の時のフォームとの
見分けが難しいわね……もしも初見だったら
対応が遅れてたかもしれない……中田さんを
早めに引きずり出せた上に白菊ちゃんが粘って
球種を絞り出してくれなかったら危なかったわ)」
中田のチェンジアップを画像ではなく
生で前もって見ていなかったら流石に
対応できなかっただろうと見た真深は
中田を早めに引きずり出してくれた
仲間や中田にチェンジアップを含め
ある程度の球種を投げさせてくれた
白菊の頑張りに心の中で感謝していた
(まさか奈緒さんの投球に対して
これだけの打撃をしてくるだなんて……
影森との試合で見せたカット打ちが本当に
まぐれじゃなくて意図的に打ってたって話が
本当だってことを改めて思い知らされたわね)
そして小林はこの打席は勿論
今日の今までの真深の打席を見たことで
実は半信半疑だった影森との試合で真深が見せた
カット打ちが本当に意図的であったということを
嫌でも思い知らされてしまうことになったのだが
(けど、だからこそ打ち取り甲斐があるし
奈緒さんの言う通り彼女さえ打ち取れば
流れがウチに来て必ず7回裏の攻撃では
ウチがサヨナラを狙える状況にできるわ)
それでも小林は気持ちまでは負けておらず
吉川をリードしていた時には叶わなかった
真深を打ち取ることに対し信念を抱き初め
中田と共に真深を打ち取り同点で7回裏の
梁幽館の攻撃を迎えようと気持ちを高めた
(次は外れても良いので外角にスライダーを!)
小林は次にスライダーのサインを出した
(今のチェンジアップの後ですから
上手く引っ掻けてくれるかもしれません)
(分かった!)
小林が中田にサインを出すと中田は
小林からのサインに頷きボール1個
外角に外れるスライダーを投じた
「ボール!」
「はぁ……(やっぱり振ってこないか……
普通の打者なら釣られて振ってきたとしても
おかしくないコースなのに平然と見送ったわね
追い込まれているのに冷静で選球眼も良いのね)」
振ってこなかった真深に小林は
スライダーを見送られて小さく溜め息を吐いたが
逆に頭の中に真深を打ち取るイメージが浮かんだ
(でも、まだ手はある……
カウントは2ストライク1ボールで
此方が有利だから今度は内角低めに
ボール1個分外れる直球で来て下さい
それを上杉が見送れば次の球で上手く
勝負をつけられるかもしれませんので)
(分かった! 足元を狙う感じだな?)
(そうです!
但し当てないように気をつけて下さい)
(了解だ!)
小林のサインとミットを構えた位置を
確認すると中田は要求通りのコースに
完璧な直球を投げる
「ボール!」
(見送った!)
やはりボールになったものの、それは小林が先程
頭の中で、イメージしていた通りのリードであり
次の投球で決着をつけようと、中田に次に投げる
球種のサインを出して真ん中高めに構えた
(真ん中高めにチェンジアップをお願いします!)
小林が中田に要求した球種は
真ん中高めへのチェンジアップだった
(いくら上杉でも、低めを2球続けた後に
このコースに投げれば思わず食いついて
手を出して引っ掻けてゴロにする筈です
思いっきり投げてください!)
(分かった! 行くぞ!)
中田も小林のサインに納得したらしく
気合いをいれて直してから指示通りの
コースに完璧に投げたつもりであった
しかし!!
(しまった!?)
(奈緒さん!?)
チェンジアップを投げた瞬間に
中田は背筋が凍りついたような
感覚を覚えて小林は投じられた
チェンジアップを見て思わず
青ざめた顔になってしまった
失投だった……
どんなに優れた選手でもミスをしない選手など
居ないのだが真深の威圧感の影響もあったのか
寄りによってこの場面で中田が失投をしたのだ
低めを意識させた後に打ち頃の真ん中高めから
落ちるチェンジアップを投げれば流石に真深も
食いついて芯を外して内野ゴロにできる筈だと
頭でイメージしてサインを出した小林だったが
チェンジアップが"すっぽぬけた"棒球となって
ベンチや観客席からも失投だと分かる球だった
そして棒球となった"チェンジアップ"を見た
両チームのベンチや観客席も真深が失投を
逃す筈がないと新越谷のメンバーや梁幽館の
メンバーに加え観客も真深が失投を捉えて
スタンドに叩き込むだろうと確信したのだが
「…………」
スラッガーであれば目を見開いて笑みを
浮かべて喜んで振ってくるような失投に
対し真深は無表情になると体を少しだけ
三塁線に向けてからバットを振り抜いた
グワキィィィィィィィィィィン
ドゴーーーッ
真深が失投を捉えると打球は
三塁側のファールゾーンのフェイスを
強襲し打球が当たった部分が大きく凹んでいた
「ファール……ボール?」
真深の打球に三塁の塁審が
戸惑いながらファールをコースする
「「「「「「「!?」」」」」」」
「「「「「「「!?」」」」」」」
「「「「「「「!?」」」」」」」
すると両チームのベンチと観客席では真深の
凄まじいファールに驚いたと同時に戸惑った
真深の放った打撃は打ち損じたと言えるような
粗末な打撃でなく、しっかりフルスイングして
バットの芯で打球を捉えた、完璧な打撃であり
何より今日の試合の真深の打撃を見た者ならば
真深ほどの打者が先程の失投を打ち損じるとは
思えない程の打撃だったのでファールゾーンの
フェイスを強襲した打球を目撃し戸惑ったのだ
「今のって……」
「うん……影森との試合で見せた」
「意図的にファールにした打撃……だよね?」
しかし新越谷のベンチでは芳乃、詠深、珠姫が
影森との試合で代打で出場した際に真深が
死球を受けた息吹と自分の采配が原因で
息吹を危険に晒せたと自分を責めてしまった
芳乃を励ます為に敢えて中山のスライダーを
打とうとして中山がスライダーを投げるまで
意図的にファールを打った時の打撃だと悟った
同時に梁幽館のベンチに居るメンバーも
昨日の練習後のミーティングで影森との
試合の真深の打撃の映像を見ていたので
真深が意図的にファールを打ったのだと
気づいたが何故ファールを打ったのかと
疑問に思い初めていたが……
「フフッ……真深らしいわね」
スタンドで観戦していたユイに至っては
真深の意図が分かったらしく好意的な笑みを
浮かべながら真深の姿を見つめながら呟いた
「ウィラードさん……今のは、やはり?」
「ええ……わざと、ファールにしたわね」
「えっ!?」
二宮の言葉に答えたユイの言葉を聞いた
女性記者は思わず驚きの声をあげていた
「わざと、ファールしたって……
どうしてですか!? 折角の失投だったのに?」
先程からユイから真深の話を聞こうとしたが
新越谷の攻撃が終わるまでは待ってほしいと
頼まれてユイの隣で観戦していた女性記者が
ユイの呟いた言葉を耳にしてユイに尋ねると
同時にバッターボックスでは……
「どうして打たなかったの?」
「えっ?」
「"えっ?"じゃないわよ……
今の球……貴女なら余裕で打てたわよね?
どうして態々ファールになんてしたのよ?」
影森との試合の映像を見て真深が意図的に
ファールを打てることを知っていた小林が
思わず真深に真相を尋ね初めた
「影森戦……友理が撮ってきた
試合の映像で貴女の打席を見させて貰ったわ
貴女の打撃技術の高さは知ってるんだからね」
そう言って小林は真深が意図的にファールを
打てる技術を持っていることを知っていると
指摘する事で"誤魔化さないで"と暗に伝える
すると真深は小林に視線を向け静かに答えた
「……ずっと楽しみにしていましたからね」
「楽しみにしていたって……何を?」
「中田さんと勝負することです」
「奈緒さんとの勝負を?」
「はい……
中田さんは、もう3年生ですから
この夏の大会が高校最後の大会ですよね?」
「ええ、そうね……」
真深の言葉を聞いた小林は尊敬する
中田と一緒にプレイできるのが今大会が
最後だと分かっているので寂しそうな声になる
「だから、この打席が中田さんと勝負できる
最初で最後の機会になるかもしれないんです
少なくとも高校野球では、もう対戦できません
だから私が打つにしろ、打ち取られるにしても
中田さんの、最高の球で決着をつけたいんです」
そこまで話してから真深は視線を小林から
中田に移すと中田も真深と小林の会話に耳を
傾けていたのか真深の方に視線を向けていた
「だから……」
それを見た真深は腕をまくり
中田に向けてバットを構えて力強く宣言した
「失投なんかに……用はありません!!」
「「!?」」
「最初で最後の勝負……
とことん楽しませてもらいますよ!
それに中田さんには5回裏の3打席目で
詠深の決め球をホームランにされましたからね
此方も決め球を打って借りを返させて貰います」
真深からの宣言を聞いた小林と中田は思わず
唖然した表情となって開いた口が塞がらなく
なってしまっていると……
「いいぞ真深! 決め球を打ってやれーー!!」
「真深ちゃん、私の仇をとってーー!!」
稜と詠深がベンチから真深に声援を送り初めると
他のメンバーも二人に続き真深を声を送ってきた
すると……
「いい度胸ね……良いわ!
その挑戦、受けて立とうじゃない!!」
そう言って小林は挑戦的ながら
面白そうな笑みを向けて答えた
「フッ……面白い!!
ならば、その選択……後悔させてやろう!!」
そして中田も今までにないほどの
楽しそうな笑みを浮かべて見せると
真深の挑戦を受けて立つと宣言した
それにより球場のボルテージも最高潮となり
観客席から真深と中田に送られる声援の量も
先程よりも大きくなると小林がマウンド上の
中田にサインを出してきた
(とは言え……先程、外角への"チェンジアップ"を
バットの先に当てただけでポール際まで飛ばして
大ファールにされましたし上杉相手に外角攻めは
危険ですから基本は内角に直球と変化球を分けて
攻めていきましょう)
(わかった! 上手くリードしてくれ!)
(はい! 奈緒さんの投球で
上杉を捩じ伏せちゃってください!)
小林は真深に外角攻めは危険だという意識が
この試合で強く植え付けられたらしく極力
真深には内角で勝負しようと中田にサインを
出すと中田も小林に同感らしく頷いて見せた
そして……
「ファールボール!」
「ファールボール!」
「ファールボール!」
中田は真深に対して徹底した内角攻めに出ると
真深も中田の直球と変化球を混ぜた内角攻めに
食らいついていく
直球と得意なチェンジアップの他に
スライダーやカットボールを投げ分けてきたが
チェンジアップ以外の変化球には難なく対応し
ファールでカットして行くものの流石に直球と
チェンジアップの緩急差に手こずらされたりと
両者の一進一退の攻防は10球近くにも及んだ
(フッ……本当に面白い奴だ
こんな重要な場面なのにも関わらず
上杉との勝負を楽しんでいる自分がいる)
しかし中田の表情には笑みが見えていて
この勝負を楽しんでいることは明らかであった
(この時間が暫く続けばとすら思うが
このメンバーと全国の舞台に行くためにも
こんな所(3回戦)で苦戦してる訳にはいかない
名残惜しいが、そろそろ決めさせて貰うとしよう)
中田は心の中で呟きながら小林に向けて
そろそろ蹴りをつけようと合図を出した
(分かりました!
カウントは2ボール2ストライクで、ボール球を
あと1球投げられますから、ここで真ん中高めに
外れる力のある直球を投げて、餌を撒きましょう)
(了解だ)
小林のサインに頷いた中田は真ん中高めへ
速球を投げると外れてフルカウントとなり
小林は勝負を決める決め球のサインを出す
(ここで外角低めに力のある速球を!!)
(ここで行くか!!)
小林のサインを見た中田は笑みを浮かべた
(流石に10球以上も内角に攻めた後に
真ん中高めに直球を大きく外して見せました
幾ら上杉が外角が得意でも対応できない筈!
最後に中田さんが最も打者を打ち取ってきた
得意なコースに力のある直球で決めましょう)
小林がサインで示した通り中田が今までで
打者を打ち取ってきた最も得意なコースとは
真深が得意なコースである外角低めだったのだ
(分かった……行くぞ、衣織!!)
(はいっ!!)
小林とサインでやり取りをした中田は
今までにないくらいに集中力を高めて
打席の真深を見据えると……
(これから投げる球には私の3年間の思い
そして3年間共に切磋琢磨してきた仲間への
思いを込める……打てるものなら打ってみろ)
最後に真深に伝わる筈のない心の中の
思いを呟くと中田は外角低めに構える
小林のミットを目掛けて今まで直球を
投げると球は今までに投げたきた球の
中で最も手応えの感じる球だったので
中田にとっても悔いのない投球だった
そんな中田の豪速球にミットを構える
小林も真深を打ち取る手応えを感じた
しかし……
「……(笑)」
「「!?」」
中田も小林も応えを気づいてしまった
打席から発せられる真深の"オーラ"と
冷たい笑みを浮かべている真深の姿を
そして……
グワキィィィィィィィィィィィィン
《上杉、打ちましたーー!!
レフトへ打球が大きく延びていくーー!!》
快音と共に打球がレフトへ大きく舞い上がると
実況の声が高くなり両チームのベンチで見守る
メンバーや観客席の観客も真深の打球の行方を
目で追うが中田は振り返らず空を見上げ小林は
少し呆れたような苦笑いを浮かべ右膝をついて
項垂れると打球はレフトの場外へ消えていった
《入った! ホームランーー!!
徹底して内角を攻め続けられた後の
外角低めの豪速球を場外まで飛ばしました!!》
真深の打球が場外に消えていくと
球場は一斉に歓声と"どよめき"に包まれた
《先制2ランに続く今日2本目の
ホームランは最終回ツーアウトから同点に
追い付いた直後の勝ち越し弾となる2ラン
中田の自己最速となる速球を見事に豪打一閃!
これで"6-4"と新越谷がリードを奪いました》
中田の自己最速の速球が打たれたこともあり
実況は声を先程よりも高めてコメントをする
「中田の自己最速の球を……」
「しかも、あれだけ徹底して内角を
攻められた直後の外角低めへの直球を……」
ユイや二宮と共に一塁側で観戦をしていた
小関と田辺も流石に中田の自己最速の球を
場外に飛ばした真深に対し唖然としながら
呟くことしかできなかった
「打った上杉さんを誉めるしかないですね」
「ええ……敢えて中田さんが決め球を
得意なコースに投げるのを待っていたわね」
対して二宮は全く動じてないのか
表情を変えずに……そしてユイは
真深の場外弾を見て真深の狙いを
言い当てると同時に一刻でも早く
真深と勝負したいという思いから
闘志に火がついてしまっていた
(真深……必ず勝ち上がってきなさい!
そして次こそ貴女を倒して優勝して見せるわ!)
そして心の中で真深に宣戦布告をしている間に
真深は、ゆっくりと、ダイヤモンドを一周すると
「真深ちゃん!!」
「よくやったぞ、真深!!」
「ありがとうございます
実を言うと右腕が少し痺れてるんですけどね」
真深のホームランで先にホームインした希と
次の打者の怜が真深をハイタッチで出迎えて
来てくれたので真深も希や怜とハイタッチを
交わして真深が希と一緒にベンチへと戻ると
他のメンバーも我先にと真深を出迎えた
「「真深ちゃん、ありがとうーー!!」」
特に詠深と芳乃の喜び方は大きく
まるで姉を慕う3人の妹のように
両腕に希と芳乃が……背中からは
詠深が飛び付いたのを切っ掛けに
ベンチは最終回ツーアウトからの
逆転にお祭り騒ぎとなった
一方……
「…………」
真深にホームランを打たれた直後から
空を見上げていると中田の元に小林と
内野陣が心配そうに集まってきた
「済まない……打たれてしまった」
そして自分を心配して集まってきた仲間に
中田は苦い表情を浮かべながら謝罪をした
「ううん……奈緒の投球は完璧だったわ」
「後ろで見ても球威もキレも良かったよ」
「そうだよ……自己最速だったんだから」
「コースも凄く良かったし
アレを打たれちゃったら仕方ないよ……」
そんな中田に高代、白井、笠原、谷口が
中田の投球は今までで1番だったと励ます
「やっぱり上杉には徹底的に
内角で攻めるべきでしたね……すみません」
小林は先程の希の打席に続いて
またしても自分のリードミスの"せい"で
今度は逆転を許してしまった責任を感じて
先程より申し訳なさそうに中田に謝罪した
「衣織の判断は間違っていないさ
仮に衣織のリード無しで自分の判断で
投げていたら恐らく外角に投げていただろう
そもそも奴を打ち取れる手応えはあったんだ
だが上杉の打力が上回っていたということさ」
中田は励ましにきた仲間と申し訳なさそうに
謝罪をする小林に答えると再び視線を大空を
見上げると爽やかな表情で静かに呟いた
「しかし、なんだろうな……この気持ちは?」
「えっ?」
中田の呟いた言葉に代表して高代が反応した
「本当の事を言うとだな……
打たれた悔しさより清々しい気分が強いんだ
最高の球を最高の打撃で打たれたからかもな」
大空を見上げながら呟いた中田の表情は
どこか悔しさより満足感が勝ったような
清々しい表情であった
「奈緒……」
昨年の秋に新チームが発足したと同時に
チームの主将を任されたこともあってか
中田は感情を表に出すことが少なかった
その中田の表情を見たことで白井を初め
3年生のメンバーは思わず見惚れそうな
感情さえ覚えそうになると同時に中田が
そこまで全力を出した試合を負け試合で
終わらせたくないという気持ちも小林を
含めた3年以外のメンバーにも芽生えた
「だったら後続を抑えて
7回裏の攻撃で絶対に逆転しないとね!」
「だね……ここまで来て負けられないし」
「7回裏は秋からの打順だから
連打で繋いで奈緒に回せば逆転できるわ」
「うん……私達なら、きっとやれるよ!」
そう言って中田を鼓舞したのだった
「ああ、そうだな!
しっかり抑えて7回裏の攻撃に移ろう!」
「「「「おうっ!!」」」」
「はいっ!!」
最後に中田の言葉に答えた梁幽館の内野陣と
小林は自分たちのポジションに戻っていった
(そうだ……まだ終わりではない!
まだ流れは引き戻せる! まだ、ここからだ!)
仲間と言葉を交わしたことに加え
真深にホームランを打たれたことで
逆に刺激を受けたのか中田は続く怜を
三球三振に打ち取り7回表の新越谷の
攻撃が終了すると遂に7回裏を迎えた
次回……【決着】
↓ ↓ ↓
【番外編】
ーー真深がホームランを打つ数分前ーー
新越谷と梁幽館の試合が行われている
大宮公園野球場は公園の中に作られた
球場なので球場の外には家族連れや
恋人たちがデートを楽しんだり中には
子供たちだけで遊んでいる姿もあった
そして大宮公園野球場の近くでは
野球選手を夢見る幼い少女二人が
キャッチボールを楽しんでいた
「◯◯ちゃん、ナイスボール!」
捕手をしている少女が
投手をしている少女の
球を捕って声をかける
「この前よりも早くなってるね」
「エヘヘ……そうでしょう?
憧れのラスターソン投手みたいな
凄い投手になるために沢山、練習したんだ!」
投手をしている少女はかつて真深が所属していた
アメリカのガールズチームのエースであった
ラスターソンに憧れて投手を目指しているらしい
「私だってモウラー選手みたいな
どんな球でも捕れる凄い捕手になるんだもん!」
捕手をしている少女は同じく真深の所属した
ガールズチームの正捕手であったモウラーに
憧れて捕手を目指しているらしい
「だったら私の球……全部捕れるかな?」
「直ぐ調子に乗るんだから……この間より
早い球を投げられるようになったからって
調子に乗ったら直ぐに元に戻っちゃうよ!」
「アハハ……ごめん」
捕手の少女に注意された投手の少女は
苦笑いを浮かべながら舌を出していた
「でも、いつかは立派な高校球女になって
高校でも◯◯ちゃんとバッテリーを組んで
全国の舞台でも思いっきり投げてみたいな
私と◯◯ちゃんの夢への第一歩にする為に」
「だね……私も球女になって
全国の舞台で◯◯ちゃんと組みたいよ」
投手の少女が口にした目標とする夢に
捕手の少女も共感し互いに高校球女に
なった自分たちの姿を想像していた
「そのためにも今から沢山練習して
強い高校に入れるように頑張らないとね」
「うん! という訳で……
もう1度、私の球を捕ってくれるかな?」
「いいよ! 思いっきり投げて!」
未来の自分たちの姿を想像し終えると
少女たちは再びキャッチボールを再開した
「行くよーー!!」
「来い!!」
投手の少女が振りかぶると
捕手の少女もミットを構えると同時に
投手の少女がミット思いっきり直球を投げた
すると!!
バシィィィィィィィィィッ
「痛っ!?」
捕手の少女のミットに凄まじい衝撃が襲い
捕手の少女は思わず尻餅をついてしまった
「◯◯ちゃん、大丈夫!?」
それを見た投手の少女が捕手の少女に駆け寄る
「うん、大丈夫…………って、あぁーー!?」
ミットの中を確認した捕手の少女が
驚いた表情になると少し怒った顔を
投手の少女に向けた
「もう、◯◯ちゃん!!
ボールを1度に2つも投げたら危ないよ!?」
「へっ?」
捕手の少女に抗議をされた
投手の少女はキョトンとしてしまった
なんとミットにはボールが2つ入っていたのだ
「えっ……私、1個しか投げてないよ
それに、この球"おもちゃ"じゃなくて硬球だよ」
「えっ!?」
投手の少女に言われた捕手の少女が
再度ミットの中を見てみると2つの
ボールのうち1つは自分たちの使う
"おもちゃ"のボールだったが残りの
もう1つのボールは高校野球などで
使われる硬球だったのだ
「えっ? じゃあ、このボール何処から?」
「さあ? 私達以外に誰も
キャッチボールして遊んでないけど?」
何処から飛んできたのか分からない硬球に
首を傾げる少女たちの近くの大宮公園の
野球場からは観客の大歓声が聞こえていて
後に飛んできたボールは少女たちの宝物に
なったのであった
新たなアメリカのオリジナルキャラ
"アゾット"投手と"ローランダー"投手が
真深の台詞の中で名前だけですが登場しました
ふたりがプロフィールは近いうちに
紹介するので名前のモデルの選手が
誰が予想してみてください(^o^)
それから下にプロフィールでは書かなかった
真深のプレイスタイルのモデルになっている
選手を掲載致しました
真深の打撃スタイルはメジャーリーガーの強打者
プーホールス選手の打撃スタイルに女性らしさの
綺麗さと鮮やかさを加えた物をイメージしてます
因みに守備はほぼイチロー選手がイメージですね
こんな感じです……
梁幽館戦は次回で完結です! お楽しみに!