新越谷の内部の様子の話になりましたが
今回は新越谷以外の埼玉県内の他校など
主に外部の反応の話になります
因みに今回は真深の意外な一面が
明らかになり真深に対する印象が
幻滅してしまうかもしれませんが
ギャグ要素だと思いながら寛大な
心で見てくださいますと幸いです
それでは、ご覧下さい!
理事長との面会を終えた真深、詠深、怜の3人は
心配してやってきた野球部の仲間と合流すると
校舎の屋上でお昼を食べながら会話を楽しんで
昼休みを過ごしていた
「それにしても、真深ちゃん……
新越谷に入学した時にアメリカで打った
本塁打の数は30本越えって言ってたのに
実際は40本越えだったから驚いちゃったよ」
「そうよね……
30本越えと40本越えじゃ全然違うわよね」
詠深がウインナーを口にしながら真深が
アメリカで打ってきた通算本塁打の数の
話をすると息吹も詠深に共感してくる
「40本越えといっても42本だし……
それに本塁打の数なんて数えてなかったから」
そんな詠深と息吹と芳乃の指摘に
真深は淡々とした様子であっさりと答える
「自分の記録とか気にならなかったの?」
「詠深たちには話しましたけど
私は試合に出られることが嬉しかったので
試合に楽しむことしか頭になかったですし
記録とかはあまり気にならなかったですね
本塁打を多く打ちたいとは思いましたけど」
「そっか」
理沙からの指摘に真深は
アメリカでプレイしていた頃を
思い出しながら懐かしそうな表情で答える
「本塁打の数もそうですが
私は打率が6割なのも凄いと思います!」
「6割って陽さんと同じやけんね」
「だね……本塁打打者って
本塁打が打てる分、大振りする選手が多いから
大抵の場合、三振も多い傾向にありがちだから
打率と本塁打の両方が高いのは、凄いと思うよ」
そこへ白菊と希と珠姫が打率の話をしてくる
「確かに、そうだね……
因みにボストフ選手も本塁打が多い上に
通算打率が5割を越えていて中田さんも
チームメイトで6割打者の陽さんにこそ
及ばないけど三振や凡退の数が少なくて
得点圏打率が凄く高い打者だったんだよ」
「真深もボストフも中田も
打撃に関しては完全に化け物だな……」
「本人を前にして化け物なんて言う?」
「今のは誉め言葉だって……」
「誉めるなら化け物じゃなくて
規格外って言った方がいいんじゃないの?」
芳乃の説明を聞いて呟いた稜の言葉に
菫が少し呆れたような表情で指摘する
「言っておくけど……
ジータパーラーは本塁打の数こそボストフや
私より少なかったけど打率は7割だったのよ」
「7割!?」
「そっちの方が化け物やん!?」
真深がジータパーラーの通算打率を
教えると詠深と希が驚愕して思わず
声が大きくなってしまう
「つまり2年前の真深ちゃんのチームは
3番に7割打者のジータパーラー選手がいて
4番には女子野球界最強の本塁打打者にして
打率5割のボストフ選手がいたってことだね」
「……そのボストフ選手の後には打率6割の
本塁打打者の真深ちゃんがいたわけなんだから
投手からして見たら正に地獄のような打線だね」
「……スポーツ紙にガールズ史上最強の
クリーンナップって書かれるのも納得っちゃね」
楽しそうに話す芳乃と対照的に詠深と希は
冷や汗をかきながら芳乃の言葉に共感していた
「それにしても……
こうして周りの反応やスポーツ紙を見て見ると
私達って本当に凄い選手とプレイしているのね」
「私としても真深ちゃんは勿論
詠深ちゃんが今までの努力が報われた上に
世間から正当な評価をされるようになって
まるで自分の事みたいに凄く嬉しく思うよ」
その直後に息吹と珠姫の
呟いた言葉を聞いてメンバー全員が
笑みを浮かべながら真深と詠深に視線を向ける
「私は真深ちゃんの
従姉妹だからって注目されてるだけで
選手として注目されてる程じゃないよ」
そんなメンバーの視線を受けた詠深は
照れ笑いをしながら恥ずかしそうに否定するが
「そんなことないよ!
ちゃんと実力が認められたんだよ!
あの梁幽館から12個も三振を奪ったんだし!」
「それに加えて詠深ちゃんは公式戦で
初めて陽さんから三振を2つ奪った投手だしね」
そんな詠深に珠姫が興奮しながら否定すると
芳乃も満面の笑みで詠深が実力を認められて
注目されていることを指摘した
「そうよね……実は昨日の夜に私と稜の
中学時代の南相模のチームメイトから梁幽館に
勝った事をお祝いしてくれるメールが来たけど
それと一緒に"上杉と武田ってどんな娘?"って
メールも来ていたのよ」
「おっ! 私にも来てたぜ!」
「私も荻島で一緒にプレイしていた
チームメイトから同じようなメールが来てたな」
息吹の呟きを聞いた菫、稜、怜が
中学やガールズ時代のチームメイトから届いた
メールの内容を話ながら会話を盛り上げ始めた
「真深ちゃんも詠深ちゃんも普段から私達や
学校の皆にも気さくに接してきてくれるからね
つい凄い選手だってことを忘れちゃうんだよね」
「謙虚で立派です!」
怜たちの会話を聞いた芳乃と白菊が
親しみやすい2人の性格を尊敬して
嬉しそうな表情を真深に向ける
しかし……
「私も良い先輩に恵まれて
打撃で良い成績を残せただけで
皆と同じ野球が好きな普通の女の子よ。
休みの日には家でゲームで遊んだりもするわ」
真深は注目されることに関してはアメリカで
慣れたので日本でも注目されることになった
現状も受け入れられてはいるものの周囲から
特別扱いされることは嫌いだったので芳乃と
白菊が褒めてくれたのは分かるのだが2人の
言葉を聞いた真深は複雑そうな表情になる
「そういえば、小学生の頃は
私と真深ちゃんとタマちゃんの3人で
"マリ◯パーティー"をして遊んでたもんね」
「そうね……私がアメリカに
引っ越すことになるまで、私か詠深か珠姫の
3人の、いずれか家に集まって遊んだわよね」
「懐かしいね(笑)」
真深が家でゲームで遊ぶことを話すと
詠深と珠姫が懐かしそうに会話に加わってきた
「一昨日、真深ちゃんの家に泊まった時も
夕飯を食べた後に"ポケ◯ン剣盾"で遊んだしね」
「そういえば、真深ちゃんは"ドラ◯エ"や
"ファ◯ナル◯ァンタジー"も好きだったよね?」
「ええ。特に"F◯7"が好きね!
主人公の"クラ◯ド"がカッコよくて好きなのよ」
詠深と珠姫が真深の好きなゲームの
タイトルの話をして真深が話しに肯定すると
「おおっ! "◯F7"なら
私もやったぜ!! スッゲー、面白かったよな!」
「私もゲームは好きですが
そのタイトルのゲームはやったことないですね」
稜と白菊の2人も会話に加わってきた
「稜ちゃんと白菊ちゃんもゲームするんだ」
「おうっ! 休みの日には、家でよく遊ぶぜ」
「私もアニメや漫画が好きだったので
自然とゲームの方にも好きになりまして
剣道の練習の合間とかに遊んでいましたね」
詠深の言葉に稜と白菊は元気よく答えた
どうやら稜と白菊もゲーム好きだったようだ
「"F◯7"をやったのなら
稜ちゃんは"ナイツ◯ブラウ◯ド"手にいれた?」
「おうっ、入れたぜ……あれは凄かったな!」
「12人の騎士が次々に敵を攻撃した後に
聖剣を持った王が現れてトドメの一撃を放つ
防御無視の13回連続攻撃は圧巻だったわよね」
そう言って真深と稜が
好きなゲームの話で盛り上がり始める
「ところで真深は"ウェ○ン"は倒したか?
海底で泳いでる"緑の奴"と砂漠に居る"赤い奴"」
「フッフッフッ……
私は緑のも赤いのも2匹とも倒してやったわ!」
「マジか!? 私は"緑の奴"は倒せたけど
"赤い奴"は、どうしても倒せなかったんだよな」
「赤いのを倒すにはコツがいるのよ……
稜ちゃんさえ良ければ教えてあげましょうか?」
「おおっ! 頼むぜ!!」
好きなゲームの話で盛り上がる2人の横で
2人の話しているゲームを知らなかったり
ゲームをしないメンバーが付いていけずに
「何の話しだろう……?」と思っていると
「稜ちゃん……
ゲームで"赤い何か"を倒す前に
部活とゲームばかりに集中しすぎて
テストで"赤点"取ったりしないようにね……」
「おっ、おうっ! 気を付けるぜ!?」
芳乃に中間テストの結果が発表された際に
赤点を取らなかったか確認された時と同じ
冷たい視線を向けながら忠告されたことで
稜は冷や汗をかき慌てながら弁解している
「「アハハ……」」
その様子に真深と詠深を含めた
稜と芳乃の2人以外のメンバー全員が
苦笑いを浮かべながら成り行きを見届けていた
因みに真深は成績が良かったので芳乃に
冷たい視線を向けられてしまうことはなかった
「とっ、とにかく……
これからも今までのように友達として
そして新越谷野球部のチームメイトとして
今までと変わらず私たちと接してほしいわ」
芳乃と稜のやり取りを見届けていた
真深は再び新越谷のチームメイトに向けて
今までと変わらない接し方をしてほしいと
願いながら複雑そうな表情のままで話すと
「勿論だよ! 私にとっても2人は
これからも大切な幼なじみで親友だからね」
そんな2人の思いを知ってか知らずが
珠姫が真っ先に今までと変わらず幼なじみの
親友として接するつもりである事を告げると
「ああ! これからも期待しているぞ」
「改めて宜しくね」
チームで唯一の上級生である怜と理沙の
2人が真深にそう告げると他の1年生の
メンバーも同じような言葉を真深に送る
「フフッ……ありがとう」
「エヘヘ」
そんなメンバーに対して真深と詠深も
嬉しそうに微笑みながら感謝していた
しかし……
真深の存在と経歴の発覚に加えて
梁幽館打線を翻弄した詠深の存在は
埼玉県内の他の高校野球のチームには
明らかに大きな影響を及ぼし初めていた
梁幽館との試合の翌日の新越谷高校では
良くも悪くも真深と詠深の2人の話題で
持ちきりであったように埼玉県内の他の
高校もそれは同じであった
【柳大川越】
「大野さん! 大野さん!」
「何よ、騒がしいわね……」
真深たちがお昼を食べてたのと同時刻
4月に新越谷や咲桜と練習試合をした
柳大川越高校では1年生の大島留々が
スポーツ紙を片手に自分と同じ1年の
野球部の仲間と一緒に先輩で野球部の
主将でエースである大野彩優美の姿を
廊下見つけて走り寄ると大野は廊下を
走ってきた留々たち後輩達の姿を見て
困惑した表情を向ける
「大変ッスよ、大野さん!?
4月に練習試合をして朝倉さんから
本塁打を打った上に、とんでもない強肩を
投げてきた上杉って選手のことなんスけど!?」
「……これでしょ?」
留々が話を続ける途中で大野は
彼女の言おうとしていることを
察して留々が持っていたものと
同じスポーツ紙を見せた
「あっ! 大野さんも
今朝のスポーツ紙を買ったんスね……」
大野もスポーツ紙を持っていることを
見るや大島と大島と一緒にやってきた
1年生の面々は落ち着きを取り戻した
因みに大島留々と共に大野の元に
やってきた1年生の部員は外野手の平田と
もう1人は1年生ながら2番手捕手に選ばれ
副主将で正捕手の浅井の後継者とも言われて
上級生からも期待されている浜田葵であった
「まあ、あの練習試合の後に本人から
アメリカでプレイしていたって聞いていたから
ウィラードがリベンジしたい相手と聞いた時は
私も花代子も、もしかしてとは思ってたんだけど
流石に私も、ボストフやジータパーラーの2人と
チームメイトだった事には、正直言って驚いたわ」
そう言いながら大野は
信じられなそうな表情で記事に目を向ける
「マジで、ヤバイッスよ!?
アメリカで通算本塁打40本越えで
通算打率も6割な上に、あの化け物投手の
ウィラードが1度も勝てなかった打者ッスよ!」
「私たちと練習試合をした時に加えて
一昨日の試合で完全試合を達成したことを
考えるとウィラードから10割というのは
かなり危険な打者ということになりますよ」
「それに加えて武田って投手も
練習試合をした時とは比べ物にならない位の
投球で梁幽館打線を翻弄してましたし私達も
今のうちに対策を練った方が良いと思います」
大島が記事を目を通しながら声を発すると
大島と共にやって平田と浜田も大野に対し
新越谷対策を練ることを提案する
「言われるまでもないわ!
私も朝倉も新越谷と練習試合をした時から
夏大会でもう一度対戦することを想定して
練習してきたんだし昨日の試合を見る限り
ウチもベスト8まで勝ち進めれば新越谷と
当たれる可能性は高まったから準々決勝で
上杉を倒したらその次の準決勝では咲桜と
対戦してウィラードにリベンジしてやるわ」
落ち着いた口調で話す大野であったが大野の
声や表情からは心の内の方では静かに闘志を
燃やしていることが感じられた
「私と花代子と朝倉は
上杉の対策の方を練っとくからアンタ達は
武田の対策の方を任せるわ……頼んだわよ」
「はっ、はい!」
「任せてください!」
「期待に応えて見せるッス!」
大野が1年生の面々に詠深の対策を任せると
平田、浜田、大島の順に大島から大事な任務を
任されたことを嬉しく思いながら返事をした
「それじゃあね……廊下は走るんじゃないわよ」
最後に先ほど自分の姿を見つけるや
廊下を走ってきたことを指摘すると
廊下を走らないように注意してから
大野は去っていった
「大野さんから大事な役目を任されたッス!」
「新越谷や咲桜と練習試合をしてから
大野さんは勿論だけど朝倉さんもリベンジに
燃えながら練習してたし絶対に応えないとね」
「自分たちを鍛えることも忘れちゃダメだよ」
大野から詠深対策を任されたことで
大島を初めとした柳大川越1年生の
面々は意気揚々と自分たちの教室へ
廊下を走らずに戻っていった
それから時間は進み放課後……
【美園学院】
咲桜や梁幽館と並ぶ埼玉県内屈指の
名門にして昨年の関東大会で優勝し
今年の春の全国大会に出場を果たし
ベスト4にまで勝ち進んだ美園学院
互いに2年生ながら県内最高の投手とも
言われる美園学院のエースの園川萌と
バッテリーを組む相方の捕手の福澤彩菜
彼女たちにも昨日の梁幽館の敗退と
真深と詠深の活躍とアメリカでの
真深の経歴の情報は行き届いていた
そして放課後の練習の合間の休憩時間に
美園学院のエースの園川はタブレットの
動画を見つめていた
「やっぱり、気になる?」
「彩菜……」
そんな彼女に捕手の福澤が声をかけてきた
「どんな打者が相手でも気にせず
私はいつも通り自分の投球をするだけ
……って言いたいけれど……流石に彼女の
この打力と経歴を見たら対戦してみたくて
いつもより気持ちが高ぶっちゃってるわね」
福澤の言葉に答えてから
園川はタブレットの動画に再び目を向ける
それは今朝の詠深たちがクラスメイト達と
見ていたアメリカ時代の真深の動画だった
因みに園川が見ていたのは真深のチームと
ユイのチームが2年前のガールズリーグで
優勝を決める大一番で2点をリードされて
迎えた最終7回にユイから逆転の3ランを
放つ真深の姿であった
「流石、萌様……
私でしたら少し緊張してしまいそうですわ
あのウィラードが1度も勝てなかった上に
最強打者2人とプレイしていたのですから」
そこへ園川と同じ投手で1年生の
黒木亜莉紗が尊敬の念を抱きながら声をかける
お嬢様学校の椿峰には及ばないが美園学院も
家柄が良い生徒が多いらしく野球部員の一部の
メンバーにも当てはまっていたので美園学院の
野球部員は他校と比べて上品で品格が良かった
そして黒木もその内の1人らしく彼女は園川を
心の底から尊敬し慕っていた為に園川に対して
いつも以上に口調に品格があった
「ですが萌様は間違いなく
ウィラードよりも優れた投手ですわ!
故に上杉が相手でも負けるはずがありませんわ」
黒木は真深とユイの存在を驚異に思いながらも
園川なら真深とユイにも勝てると太鼓判を押す
「亜莉紗……あなただって上杉さんと
同じ1年生なんだから、いつか対戦する時が
来るかも知れないんだし、そんな弱気じゃダメよ」
そんな黒木に園川は厳しくも
優しい口調で黒木の闘志を促した
「申し訳ありません、萌様!
では早速、投球練習に行って参りますわ」
尊敬する園川から闘志を促されたことに
感動したらしく黒木は同じ1年で捕手の
田村澪の元に向かうと……
「澪! 投球練習をしたいので手伝ってください」
「おっ! 良いよ……私もそんな気分だったから」
黒木からの頼みに田村は快く応じていた
「頼もしい後輩ができたね」
そんな黒木と田村の姿を見て
福澤が微笑ましそうな視線を向けながら呟いた
「そうね……けど私に様付けするのは
やめてって言ってるのに直してくれないのよね」
黒木から"萌様"と呼ばれることに
園川自身は恥ずかしく思っているらしく
困ったような笑みになりながら黒木に目を向ける
「それだけ萌のことを慕ってるんだよ
去年の秋大会と春の選抜の萌の投球を見て
美園学院に入ってきた1年生は多いんだから」
「もう……他人事だと思って……」
福澤からの言葉に園川は溜め息をしながらも
「しょうがない娘たちね……」
後輩は可愛いらしく優しい笑みを向けていた
「さて……休憩は終わりにして
後輩たちが頑張ってるし私達も戻りましょう」
「だね……今日は萌の気が済むまで付き合うよ」
「フフッ、それじゃ、お言葉に甘えようかしら?」
投球練習をする黒木と球を受ける田村を初め
後輩たちの姿に目を向けながら園川と福澤も
休憩を終えて練習へ戻っていった
一方……
【熊谷実業】
美園学院のエースの園川に並び
県内では名の知られた投手で県内最速の直球を
投げることで知られる上に中田と同じく4番で
主将まで努める熊谷実業のエースの久保田依子
バシィィィィィィィィン!
今朝の朝練でグラウンドに最初に入り捕手を
座らせて投球練習で投げ込んでいた久保田は
放課後の練習でも最初にグラウンド入りして
気持ちを全面に出す全力の投手練習を始めた
バシィィィィィィィィン!
「久保田さん……昨日の練習の時から
いつもの以上に投球練習に力が入っているな」
「昨日、あんなことがあったからな……」
全力の投球練習をする久保田の姿を見ながら
他の部員たちは昨日のことを思い出していた
ーー新越谷と梁幽館の試合後の熊谷実業ーー
「もっと声だしていくぞーー!!」
「「「「「「「おおーーーっ!!」」」」」」」
主将の久保田が声をあげて練習するように
他の部員たちも促すと部員たちも久保田の
声に答えて圧をも感じさせる大声をあげて
練習を清を出していた
「久保田さん! 今日も絶好調ッスね!」
「当たり前だ!
次の試合に勝ってベスト16に進めば久々に
公式戦で梁幽館と……中田と対戦できるからな」
気合い溢れる久保田の姿を見て
熊谷実業の1年生のメンバーの1人が呟くと
上級生のメンバー数人が1年生のメンバーに
近づいて笑みを見せながら事情を教え始めた
「一昨年の夏大会の準決勝で
梁幽館と熊谷実業が対戦した時には互いに
1年生でレギュラー入りした久保田さんと
中田が勝負した時に中田が久保田さんから
本塁打を打って梁幽館が熊谷実業に勝って
決勝に進んでそのまま優勝したんだからな」
「けど、その時に久保田さんと中田は
互いに認め合う良きライバル関係になって
久保田さんは中田と力と力の真っ向勝負を
勝負をすることが生き甲斐の1つになった」
「その試合はアタシも見てました!
あの試合の久保田さんを見て憧れたから
迷わず熊谷実業に進学することにしたんです」
「アタシも熊谷実業に来て
久保田さんや先輩方とプレイできて嬉しいです」
先輩部員の話を聞いた1年生のメンバー等が
久保田に対する憧れと熊谷実業で野球をする
喜びを意気揚々て話す
「けど2年前の準決勝以来
公式戦で梁幽館とは当たっていませんよね?」
「ああ……だが今回は互いに
ベスト16にまで勝ち進めればウチは
梁幽館と公式戦で当たる事ができる上に
今回はウチも梁幽館もクジ運に恵まれて
ウチはベスト16までは格下が相手だし
梁幽館も初戦で埼玉宗陣にさえ勝てば
ベスト16までは格下としか当たらない」
「だから最後の夏に梁幽館と
当たれる可能性が高くなったことが
久保田さんのモチベーションを上げてるんだ」
「久保田さんのモチベーションが上がれば
チーム全体が活性化するし私たちも楽しみだ」
「今日の梁幽館の相手も
1年生が主体の新越谷が相手だから
梁幽館のことだしコールドを決めてるかもな」
上級生のメンバーも久保田と同様に
梁幽館と当たることは楽しみらしく
瞳に闘志の炎が宿りそうな雰囲気を
醸し出していた
「確か今日の梁幽館の試合を
ウチの偵察が見に行ってるんですよね?」
「ああ、試合開始時間からして
そろそろ戻ってくる頃だと思うけどな?」
1年生部員の言葉に
1人の上級生部員が答えた直後だった
「おーい! 偵察が帰ってきたぞ!!」
「おっ! 思ったより遅かったな」
そこへ梁幽館の試合の偵察に行っていた
偵察のメンバー等が戻ってきたと聞いて
久保田は試合結果を知ろうとして偵察の
メンバーに近寄ったが新越谷が相手なら
コールドで勝利すると予想していた為か
偵察が戻ってくるのが自身の予想よりも
遅いと感じていたらしい
「どうだった、試合は?」
久保田に試合結果を尋ねられた偵察の部員が
何故か言いずらそうな表情を久保田に向けていた
「どうした?」
「そっ、それが……」
再び久保田に声をかけられた部員が
意を決した表情になって言葉を続けたのだが
「梁幽館が……負けました…………」
「なん、だと……!?」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
彼女たちの口から告げられた報告は
久保田にとっては信じがたい報告だった
そのため久保田は頭が真っ白になってしまい
他の部員までが騒然とし初めてしまっていた
「どういうことだ!?
相手は1年主体のチームだったんだろう!?」
梁幽館が敗れたと聞いた途端に
結果が信じられないあまりに久保田は
偵察から戻ってきた部員に対し思わず
掴み掛かりそうな勢いで迫ってしまう
「相手の4番とエースが
1年生ながら規格外な選手だったんです
先発した吉川と継投した中田が2人とも
相手の4番に2ランを打たれてしまって
梁幽館の打線も中田が相手のエースから
2本の本塁打こそ打ったんですけど他の
打者が7連続を含めた12個の奪三振を
喫した結果"6ー4"で敗れてしまいました」
「……」
試合内容を聞かされたことで久保田は
その場で呆然としてしまい他の部員も
吉川だけでなく中田まで相手の4番に
本塁打を打たれたことに加えて相手の
エースに12奪三振を喫したと聞いて
騒然としてしまっていた
「映像を見ませんか?
聞くよりも見た方が良いと思います」
「そっ、そうだな……頼む……」
ライバルの中田が敗れたショックで
久保田は未だに呆然としてしまいながらも
梁幽館と新越谷の試合を見ることにすると
他の部員も練習を中断して映像を見るため
寮の視聴覚室に向かい映像に目を向けると
真深と詠深のプレイに騒然とさせられていた
そしてその日の夜には真深のアメリカでの
経歴がスポーツニュースで取り上げられて
寮で夕食を食べていた熊谷実業の部員は
ニュースに騒然としていたのだが……
「面白い……捻り潰してやろうじゃないか!」
梁幽館の敗北を知らされて
久保田は呆然としていた時から一転して
瞳に闘志の炎を宿しながら笑みを浮かべていた
ーーそして場面は現在に戻るーー
昨夜に闘志に火がついた勢いのままに
久保田は豪快な投球練習に励んでいた
「ウチと新越谷が共に4回戦に勝てば
その次の試合で当たることになるしアタシ等も
久保田さんの足を引っ張らないように励むんだ」
「「「「「「「おおーーーっ!!」」」」」」」
久保田と同じ3年生の部員の1人が周りの
他の部員を鼓舞すると全員が気合い十分に
大声を出したのであった
一方で新越谷が梁幽館に勝利したことと
その試合での真深と詠深の活躍に加えて
アメリカでの真深の経歴は昨年の新越谷の
野球部の不祥事が活動禁止になったことで
他校に転校した去年まで新越谷の野球部に
所属していた者に複雑な思いを抱かせていた
【姫宮】
ここ姫宮高校は毎年初戦敗退か
1回戦を突破するかと言われるレベルで
3回戦進出を目標にする弱小校だったが
その姫宮高校には昨年の春に新越谷から
2人の転校生が野球部へと入部していた
「……」
その日の放課後の練習時間前に1人の
野球部員が複雑そうな表情でベンチで
芳乃が買っていたものと同じスポーツ紙の
記事と真深と詠深の写真に目を向けていた
「美月……」
「あっ、小陽……」
スポーツ紙に目を向けていた美月という少女
そして美月は声をかけてきた少女に対しては
小陽と呼びながら視線を向ける
スポーツ紙を呼んでいた少女は吉田美月
そして後からやってきた少女は金子小陽
美月は外野手と投手をこなすことができ
小陽は遊撃手を専門にプレイすることが
できる昨年の春に新越谷から姫宮高校に
転校しガールズでのプレイ経験まである
姫宮の中ではレベルの高い選手であった
「昨日の新越谷の試合……凄かったね」
「うん……」
美月の言葉に小陽も複雑そうな表情で答える
「……なんで新越谷が
こんな凄い新人を2人も獲れたんだろうね?」
「新聞の情報だと上杉さんと武田さんは
高校では一緒のチームでプレイすることを
約束していたみたいで武田さんが新越谷に
進学したから上杉さんも進学したんだって」
「そうなんだ……」
小陽は真深と詠深が新越谷の野球部に
入った理由が気になり美月に尋ねると
美月はニュースやスポーツ紙の記事で
見た内容を小陽に教えると小陽は再び
複雑そうな表情になる
「上杉さんも武田さんも
強豪校からスカウトされなかったのかな?」
「武田さんは中学では
無名だったみたいだから強豪校のスカウトの
目には留まらなかったみたいだし上杉さんは
彼女がアメリカで活躍していることを日本の
強豪校のスカウトが知らなかったみたいだね」
「……新越谷が不祥事で今年の春まで
活動禁止だったことを知らなかったのかな?」
「……わからない」
真深と詠深が高校では同じチームで共に
プレイすることを約束したことで一緒に
新越谷に進学したことは2人もわかるが
仮に不祥事による活動禁止処分が今年の
夏にまで適用されていれば折角の才能を
生かす機会が失われていた可能性があり
2人が進学先に新越谷を選んだことには
2人を心配するような感情を抱いていた
「どのみち新越谷は思わぬ救世主を得たよね」
「そうだね……怜と理沙も
2人と一緒にプレイできて楽しそうだったね」
「うん……私達を含めて殆どの部員が
転校した中で怜と理沙だけは最後まで新越谷に
残って頑張ってきた努力が報われて良かったよ」
「うん、安心した…………でも……」
「美月……?」
かつてチームメイトであった怜と理沙の
話をした為か小陽と美月の表情に自然と
笑みが浮かんだものの直後に再び美月が
複雑そうな表情になったので小陽が首を
傾げながら美月に視線を向ける
「少しだけ、羨ましいかも……」
やはりスポーツ選手として
優秀な選手と同じチームでプレイすることは
憧れるらしく怜と理沙が羨ましかったようだ
「美月……それは言っちゃダメだよ
私達は怜と理沙を見捨てて逃げたんだし
私達を受け入れてくれた姫宮の皆にも悪いよ」
「そうだよね…………ごめん……」
そんな美月に小陽は怜と理沙に引け目を感じて
複雑な感情を抱きながらも美月の言葉を正すと
美月は直ぐに反省した表情になり小陽に頷いた
「おっ! 2人とも、もう来ていたのか?」
「「キャプテン」」
そこへ姫宮の主将と他にも数人の野球部員が
談笑しながらグラウンドに次々と姿を表した
「さあ! 私達は私達にできることをやろう!」
「だね……行こう!」
小陽は美月は意気揚々と新しい仲間である
姫宮の野球部員の元へと元気に駆け出した
更に意外な場所にも
新越谷を意識する選手の気配があった
【椿峰】
「真深ちゃん……
アメリカから帰ってきてたんだ♪
私が野球を始める切っ掛けをくれた大切な友達」
お嬢様校でありながら埼玉県内の野球の強豪校の
1つに数えられている椿峰のブルペンでは黒髪を
ポニーテールにしてる1人の少女が懐かしそうに
スポーツ紙の写真の真深の姿を見つめていた
「この大会は、お互い決勝まで勝ち上がらないと
対戦できないけど真深ちゃんと対戦してみたいな」
どうやら黒髪のポニーテールの少女は
真深の知り合いらしく真深との対戦を
強く熱望していたのであった
一方……
【梁幽館】
新越谷に敗れ早々と大会を去った梁幽館
昨日の敗戦のショックが部員の心の中に
残ってはいるが学生の本業は授業である
授業を疎かにするわけにはいかないので
各々が気持ちを切り替えて授業を受けて
安定した成績を残さなければならない
何せ成績が悪い状態が続けば最悪の場合
部を退部させられる可能性があるからだ
そして授業には集中して挑んだ部員等は
気合いに満ちた様子でグラウンドに現れ
放課後の練習に挑み始めた
当然ながら梁幽館の野球部員もテレビの
ニュースや今朝のスポーツ紙の記事から
真深の経歴は知れ渡っていた
「むぅぅ~~」
野球部の寮の食堂で高橋友理が
タブレットの画面に写る動画を
睨み付けるように見つめていた
因みに食堂の窓からは野球部の
グラウンドの様子がよく見える
「友理」
「あっ、奈緒さん」
タブレットの画面と"にらめっこ"状態の
高橋の後ろから中田奈緒が声をかけてきた
「その動画……
アメリカでプレイしていた頃の上杉の動画か?」
「はい! 秋大会以降に新越谷と
当たった時のために今のうちに少しでも彼女の
弱点を掴んで対策を立てられたらと思いまして」
「そうか……しかし上杉が
ボストフやジータパーラーと同じチームで
プレイしていた事には流石に驚かされたな」
「ですね……」
昨日の試合後に真深と会話した際に
真深がユイのライバルでアメリカで
プレイしていたことは知ったものの
まさか女子野球界のスーパースター
ボストフとジータパーラーの2人と
同じチームでプレイしていた経歴は
流石に度肝う抜かれていたらしい
「昨日の試合の後は落ち込んでいた
2年生や1年生の皆さんも昨夜のニュースと
今朝のスポーツ紙を見て一転して目の色が
変わって今朝の朝練にも励んでましたからね」
「そうだな……参加できないのが残念だ」
昨日の敗退と同時に引退した中田は
真深の経歴に刺激を受けて練習に励んでいる
後輩の姿を見て共に練習ができず残念そうだ
「特に和美さんは凄い気迫ですね
凄すぎて無理をしないか少し心配になります」
「ふむ……」
心配そうに高橋が食堂の窓から外に見える
野球部のグラウンドに目を向けると中田も
グラウンドにあるブルペンに目を向けると
吉川が投球練習に励んでいた
ドンッ!!
「ナイスボール! いい具合に走ってるわね!」
吉川の球を受ける小林は球威を初め吉川の
投球に手応えと感じて笑顔で投球を受けていた
「いや……まだまだだよ
今のままじゃ新越谷には絶対に勝てないよ」
「気持ちはわかるけど
昨日、投げたばかりなんだから抑えないと……」
そんな吉川の投球を受ける捕手の
小林は呆れた表情をしながら吉川に注意する
「分かっているけど
投げたい気持ちが高まって抑えられないんだ
あんな負けかたをして悔しかったのもあるし
梁幽館高校の選手としての誇りやプライドに
掛けてでも次は絶対に新越谷に勝ちたいから
今まで以上に気合い入れて練習したいんだよ」
吉川は気合いと気迫を感じさせる
表情を見せながら生き生きと気持ちを明かす
「和美……」
今までに見たことのないくらいの力強い表情で
強い決意を口にする吉川に小林も何も言えなく
なってしまうほどであった
すると……
「いい目をしているな、和美……」
「奈緒さん!?」
「お疲れさまです!!」
そこへ中田が姿を見せて吉川と小林が
一瞬にして姿勢を正してお辞儀をする
「頼もしくなったな……
昨日の試合の前とは別人のようだぞ」
「ありがとうございます!
私の不甲斐ない投球の"せい"で奈緒さん達の
最後の夏を終わらせてしまいましたし2度と
あんな悔しい思いなんてしたくないですから」
「そうか……」
中田も気合い十分の吉川の姿に笑みを浮かべる
「昨日の試合で投げたばかりなのに
昨夜と今朝の上杉のニュースを見てから
"今日は投げ込むぞ"って言って聞かないですよ」
そして小林は吉川に呆れたような笑みを浮かべる
「まあ、アレを見てしまったら
誰もが今の和美みたいな気持ちになるだろうな」
中田も吉川の気持ちはわかるので
吉川が無理な練習をしないかという
心配こそあるものの吉川に理解を示す
「はい! それに私は上杉さんだけでなく
ウィラードにも勝ちたいと思っていますからね」
「ウィラードだと?」
「???」
「ああ、実はですね……」
ユイの名前が出て来て中田と高橋は
意表を突かれたような表情になるが
小林は吉川の真意を知っているのか
中田に事情を話し始める
真深に関しては言わずもがな昨日の
試合でリベンジを誓ったので絶対に
勝ちたいと思っていたのだがユイに
関しては開会式の日に真深と詠深に
声をかけておきながら自分のことは
見向きもされなかったことに対して
元々憤りを感じていたのだが昨日の
ニュースで真深とユイの因縁を知り
2人に自分の存在も印象づけたいと
強く意識していたのだ
小林は梁幽館のメンバーの中で唯一
その時の場に居合わせていたことで
吉川の気持ちには気づいていたのだ
「フッ、成る程な……
蚊帳の外にされた気がしたという訳か」
「あっ、はい……」
中田に気持ちを言い当てられた吉川は
少し恥ずかしそうにしながら頭をかく
「…………」
頼もしくなった吉川の姿に中田は
嬉しく思いながらも昨日の試合で
真深と詠深と対戦したことにより
勝ち負けも大事だが野球と試合を
楽しむ心も大切だと知ったことで
試合に勝つことだけ考えていては
新越谷には勝てないと見た
「ふっ……」
そこで中田は少し笑みを浮かべてから
吉川に加えて小林に声をかける
「和美、依織」
「「はい!」」
中田に名前を呼ばれた2人は
しっかりとした声で答えたが
「野球……好きか?」
「「えっ?」」
直後の中田の言葉に戸惑ってしまい
吉川は先程までの表情とは一転して
キョトンとした表情になってしまう
「もう一度聞く……野球は好きか?」
そんな事にはお構い無く
中田は再び吉川と小林に同じ質問する
「すっ、好きです!
好きに決まってるじゃないですか!?」
「私の人生は野球と共にありますから」
再び同じ質問をされたことで小林が
戸惑いながら答えると吉川も慌てながらも
野球に対する強い思いを込めながら答えた
すると……
「そうか……なら野球を楽しめ!」
「「えっ?」」
次に中田から発せられた言葉に
吉川と小林は再びキョトンとしてしまう
「強くなって試合に勝ちたい気持ちは
確かに大事だが楽しむ心も忘れてはダメだ
それでは幾ら練習しても上杉にも武田にも
ウィラードにも決して勝つことはできんぞ」
「「……」」
その言葉に吉川も小林も何も言えなくなる
「先程、和美は自分の不甲斐ない
投球の"せい"で私達の夏を終わらせたと
言っていたが私は悔いは残っていないぞ」
「そっ、そうなんですか……?」
「確かに球場から学校に戻る時の奈緒さんは
随分と清々しそうな様子だとは思いましたけど」
悔いはないと聞いて意外そうな表情になる
「昨日の試合の敗因は実力は勿論だが
何よりも勝つことより野球を楽しむ気持ちで
新越谷に劣っていたことが敗因だったからな
昨日の上杉と武田を見てお前達も感じた筈だ」
「「……」」
その言葉に対しても
吉川と小林は何も言えなくなってしまう
真深と詠深からは勝ちたい気持ちもあったが
それ以上に自分たちのプレイを楽しんでいた
現にネットやツイートには真深と詠深の
プレイを見ていたら見ている方も自然と
試合を楽しく見られたという意見が多く
書き込まれていたのど
「現に私も最終回の攻防では
あの2人に敗れてしまったが私自身も
持てる力の全てを出せたこともあって
気持ちは清々しい気持ちで一杯だった」
「そっ、そうだったんですか……」
「ああ……試合に敗れて
あんな気持ちになったのは初めてだった
最後の夏の大会で敗れたにも関わらずだ」
試合は昨日のことなのに中田は
懐かしそうな表情で吉川と小林に話した
「勿論、部員が多い梁幽館の野球部で
レギュラーを獲るためには楽しむだけでは
無理だろうがレギュラーに選ばれて試合に
出られたからには試合を十分に楽しむんだ」
そこまで話してから中田は横にいた高橋に
視線を向けると高橋と中田は互いに頷いて
更に言葉を続けた
「これは、まだ私と友理の2人が
栗田監督と話し合ったことなんだが
折角だからお前達にも話しておこう」
「「???」」
その言葉に吉川と小林は首を傾げる
「次の秋大会までに梁幽館の野球部は
今までの方針やスタイルを見直すつもりだ」
「見直す……?」
「それは、一体……?」
その言葉に野球部に何が起こるのだろうと
吉川と小林は少し緊しながら中田に尋ねる
「今までのバントやスクイズを用いた
緻密な野球からは180度方針を変えて
少なくとも打撃に関しては個人の意思を
尊重するスタイルに変えるつもりでいる」
「打撃に関しては……」
「個人の意思を尊重する……?」
聞かされた話しに理解が追い付いていないのか
呆然としながら言葉を返す2人に今度は高橋は
吉川と小林に説明する
「今までは攻撃の際には中田さんや
陽さんのような打撃能力に優れた特例の選手を
除くと栗田監督の管理の元で行ってきましたが
これからは小細工抜きの積極的な強行によって
点を取りにいく野球を目指そうと思っています」
「今までの梁幽館のやり方と
180度、真逆のスタイルに変えるの!?」
「なっ!? 本気か、友理!?」
高橋から聞かされた説明を聞いて
小林と吉川も驚きのあまり自分の耳を疑った
「ええ、本気ですよ!
現に栗田監督も前向きに考えてくれてますし
奈緒さんや秋さんレベルではないては言えど
打撃力の高い選手が多いんですから積極的に
打っていった方が大量点も取れるでしょうし
そのスタイルの方が楽しいと思いませんか?」
そう言いながら高橋は吉川と小林に
生き生きと楽しそうな様子で事情を話していた
「あっ! 言っておきますけど
バントがダメだと言ってる訳ではありませんよ
状況次第ではバントやスクイズも使いましょう」
「そういうことだ……2人は、どう思う?」
高橋の説明を聞き終えると
中田は吉川と小林の2人の意見を求めた
「どっちが良いかと聞かれたら
私は積極的に打っていく方が好きです」
「私も……美南ガールズでは
4番を打っていたこともありますから」
意見を求められた小林と吉川は
しっかり吟味してから自分の考えを伝えた
「フフッ! 一先ず、賛成派を2人得ましたね」
「いや……多分、殆どのメンバーが
今の友理の案に賛成すると思うんだけどな?」
賛成の意見を聞けて嬉しそうな反応を
見せる高橋に吉川が高橋の案に太鼓判を押す
「もし友理の案が秋大会から
取り入れられるなら今から秋大会が楽しみね」
「ああ! どちらにしろ私は
昨日から秋が待ち遠しいと思っていたけどな」
小林はチームの攻撃の方針が
積極的な打撃スタイルに変わることを……
吉川は夏大会に早々と敗退してしまったので
早く試合に出たくて秋大会が楽しみなようだ
「それより今は監督から秋大会で
エースナンバー(1番)を託されるように
今より良い投手になるように努力します」
「そうか……期待しているぞ、和美」
「はい! それでは練習に戻ります」
「えっ!? 少し休憩したら!?」
中田との会話を終えた吉川が
再びブルペンに向かって冬季練習に
向かおうとすると練習が始まってから
投げっぱなしなのか小林が吉川の肩の
披露を心配し休憩するよう提案するが
「さっきも言っただろう?
投げたい気持ちが抑えられないんだよ」
そう言って吉川は中田にお辞儀をしてから
ブルペンのマウンドに向かって走っていく
「全くしょうがないわね……」
そんな吉川に小林は苦笑いを浮かべる
「フッ……行ってやれ、依織
但し投げすぎないよう注意はしてくれ」
「はい! 失礼します」
小林も中田にお辞儀をしてから
ブルペンに向かって去っていった
「……(本当にいい表情になったな……
このまま和美が投手陣の中心として成長して
友理が復帰して打線の中心になってくれれば
新人戦や秋大会も十分に優勝を狙えそうだな)」
ブルペンに戻っていった吉川と小林の
後ろ姿を見ながら中田は秋大会からの
梁幽館の躍動を楽しみになっていると
「中田さーん!」
「「???」」
後ろから中田を呼ぶ声が聞こえたので
中田と高橋が振り替えると1年部員で
投手の堀弥生が駆け寄ってきた
「どうした、弥生?」
「それが……理事長がお呼びです」
「理事長が……?」
「はい……中田さんの他に
陽さんと笠原さんも呼ばれてます
何でも野球連盟から葉書が届いたみたいで」
「野球連盟から……?」
野球連盟から葉書が届いたと聞いて
葉書を送られる心当たりがないので
首を傾げている
「奈緒さん、早く行かれた方が……?」
「そうだな……行ってくるよ」
高橋に促されて理事長室に向かっていくが
この葉書は中田にとって本当の高校野球の
集大成を飾ることになるとは中田本人すら
想像していなかった
今回は新越谷と梁幽館の試合が終わった後の
他校の選手の様子を想像しながら書いていて
時間が掛かって遅くなってしまいました
遅きなったことをお詫び申し上げます
真深というオリジナルキャラがいる設定での
他校の様子を書きましたが他校のキャラ達の
喋り方に違和感がないか心配なので気になる
点があったら指摘してくださると幸いです
そして……
真深がゲーム好きでまさかの
ゲーム業界では有名な金髪チョコボ頭の
ファンであることが発覚しちゃいました
"げんこつ"と共にギャグと見てください
次回は馬宮との試合に向けての準備から
馬宮との試合前までを書く予定ですので
今度こそ早めに投稿したいと思うので
これからも宜しくお願い致します