詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

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活動報告にも書いてお知らせしましたが
3月の始め頃にコロナに感染してしまって
物語を書く気力がない状態が続いてました
ですので3月中に更新できてよかったです

今は、もう完治したので
これからも応援、宜しくお願い致します!

始める前にご説明させていただきますが
この球詠の物語は5回終了時点で10点差と
6回終了時点で7点差でコールドと致します

そして今回で馬宮との試合は完結しますが
原作より新越谷の打線が物凄いことになり
結果的に馬宮にとっては少し酷な出来事が
起こることをお知らせ致します

それからこの38話のみとなりますが馬宮に
2番手投手のオリジナルキャラを出すことも
この場でお知らせしておきます

それでは、ご覧下さい!!


第38話 打線爆発!!

1回裏の新越谷の攻撃はランナーは出したが

いきなり真深が歩かされたり相手の好守備に

阻まれたりもしたが怜のヒットにより1点に

先制して今日の試合で先発を任された息吹を

早めに援護することはできた

 

そして2回表のマウンドに向かった息吹は

数日前の練習を思い出しながら次に迎える

馬宮の打者に備えていた

 

 

 

 

 

ーー 皆で屋上でお昼を食べた日の放課後 ーー

 

 

 

 

 

「いくわよ!(究極複製投法……"あの球"!)」

 

 

放課後の練習では馬宮との試合で

先発する息吹が得意のコピー投球で詠深と

全く同じフォームから"あの球"を投げると

ボールは詠深の"あの球"とほぼ同じ変化を

見せながら珠姫の構えるミットに収まった

 

 

「本物と比べると、だいぶ遅いけど

確かに詠深の"あの球"に、よく似てるわね……」

 

 

「うん! 一巡目は問題なく使えそうだし

相手も詠深ちゃん対策はしてくるだろうから

場合によっては上手く相手の意表を突けるかも」

 

 

コピー投球による"あの球"を見て菫はコースは

ほぼ同じだが球速が本物と比べると遅いことを

少しだけ心配そうにしていたが芳乃は確かな

手応えを感じていた

 

 

「前に真深ちゃんも言っていたけど

フォームが速球派なのに球速が遅い投手に

真深ちゃんやボストフ選手たちが翻弄されて

打てなかったみたいなことが起きると思うよ」

 

 

「そういえば、そんなこと言ってたわね」

 

 

「だとしたら、かなり期待できそうだな」

 

 

芳乃が息吹と理沙が投手に抜擢された際に

真深が話した言葉を指摘すると菫と怜も

息吹のコピー投球に期待を持ち初めていた

 

その間にも息吹は詠深のコピーで

投球練習を続けながら"ツーシーム"や

"カットボール"など他の球種も試していた

 

 

すると……

 

 

「ラスト、"強直球"!!」

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

息吹が"強直球"を投げると宣言した瞬間に

珠姫だけでなく芳乃、怜、菫も驚きの表情となった

 

 

「息吹ちゃん、投げられるの!?」

 

 

「? うん、問題ないわよ……?

流石に球威や球速は本物には及ばないけど……」

 

 

驚きながら尋ねてきた珠姫に

息吹は少し戸惑いながらも淡々と答えた

 

 

「"強直球"は詠深ちゃんの

強い"意識"によって引き出されてる球だよ……」

 

 

「普通の直球と少し違うのよね……

フォームというかリリースのタイミングが……」

 

 

「つまり、詠深ちゃんの癖!?」

 

 

「多分ね……」

 

 

息吹からの"普通の直球"と"強直球"の

僅かな違いを教えられた珠姫は思わぬ

詠深の癖を知ると今後に当たる相手に

詠深の癖を気づかれてそこを突かれる

危機感を覚えたのだが……

 

 

「今の話は詠深ちゃんにはしないでおいて

もしも気にしてフォームを崩すといけないから」

 

 

「だね……大会中に

フォームを変えるのはリスキーでしかないしね」

 

 

「わかったわ」

 

 

大会中に詠深の調子が悪くなることの方が

危ないと判断した珠姫と芳乃は"強直球"を

投げる時の癖の話をしないようにと息吹に

頼むと息吹は快く応じてくれた

 

 

「真深ちゃんや私ですら気づかなかった

詠深ちゃんの癖に直ぐに気づくなんて凄いよ」

 

 

「息吹ちゃんの"コピー能力"あってこそだね」

 

 

「あっ、ありがとう……」

 

 

詠深の癖に気づいたことを珠姫と芳乃に

褒められ息吹は照れながらも嬉しそうに

表情に少し笑みを浮かべた

 

 

「とりあえず"強直球"投げてみて!

折角だし試合でも使えるかどうか試してみよう」

 

 

「わかったわ」

 

 

そう言ってミットを構えた珠姫を相手に

息吹は再び"強直球"を含めた投球練習を

再開したのであった

 

 

 

 

 

ーー そして場面は試合に戻る ーー

 

 

 

 

 

息吹は続く2回表ではツーアウトから馬宮に

ヒットを2本打たれて一塁・二塁のピンチを

迎えるが味方の守備にも後押しされるように

無失点で切り抜けると続く3回表の投球でも

二塁打を1本許して再び出塁を許したものの

 

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

「!?(なにぃぃぃぃ!? 振り遅れ!?)」

 

 

詠深の対策しかしていなかった馬宮の

中軸に"強直球"のコピー投球が見事に

決まりフォームこそ本物と同じものの

本物より球速の遅い強直球のコピーに

馬宮の打者が対応できずに三振の山を

築き無失点に抑えた

 

 

「3回無失点! 素晴らしいね、息吹ちゃん!」

 

 

「"あの球"も"強直球"も良い感じだよ!」

 

 

3回、3安打、無失点という初心者とは思えぬ

好投でチームに良い流れを呼び込みベンチに

戻ってきた息吹を芳乃と珠姫が太鼓判を押す

 

 

「私のコピーとはお目が高い……

オリジナル(本物)も早く投げたいなぁ~~」

 

 

「アハハ……」

 

 

詠深に至っては自分のコピーで好投する息吹を

嬉しく思いながらも息吹の好投を見たことにより

逆に良い刺激を受けて投げたくなってきたようだ

 

 

そこへ……

 

 

「詠深」

 

 

「真深ちゃん?」

 

 

真深が励ますように優しい声で詠深に話しかける

 

 

「今日の試合は投げない分

学校に帰ったら"アレ"の練習をしましょう」

 

 

「あっ、そうだね……」

 

 

真深から"アレ"の練習をしようと言われて

詠深は思い出したように頷いたのであった

 

話は息吹が投球練習をしながら詠深の癖を

珠姫や芳乃に指摘した時にまで時間を遡る

 

 

 

 

 

ーー息吹が珠姫や芳乃と投球練習していた頃ーー

 

 

 

 

 

「えいっ!」

 

 

詠深は息吹が投球練習をしている場所からは

少し離れた場所でミットの代わりにグラブを

構える真深と一緒に投球練習をしていた

 

 

すると……

 

 

「あっ!?」

 

 

珠姫の代わりにミットを構える真深は

詠深の投げた球を捕ることができずに

後ろに大きく剃らしてしまった

 

真深に捕手の経験がなかったからという

理由もあるが一番の違いは詠深が投げた

今のボールが原因だった

 

詠深が練習している球は詠深が真深から

教わっている"例の球"の練習だったのだ

 

 

「…………」

 

 

そして後ろに剃らしてしまったボールを

真深は驚いた表情になりながら振り返り

静かに見送っていたが……

 

 

「真深ちゃん、どうだった……?」

 

 

そんな真深に詠深が緊張しながら

自分の投げた球の感想を聞いて来ると……

 

 

「この短期間で、よくここまで……」

 

 

詠深に声をかけられた瞬間に

真深はなにやら手応えを得たように

直ぐに笑みを浮かべながら詠深に答えた

 

 

「真深ちゃん、それじゃあ……」

 

 

対して真深の言葉を聞いた詠深は

興奮と緊張が混ざった様子で再び尋ねる

 

 

「少しだけど変化してたわ」

 

 

「本当!?」

 

 

少しだけ変化したという真深の言葉に

詠深は嬉しそうに満面の笑顔となった

 

 

「まだ試合で使えるレベルじゃないけど

このまま練習を続けていれば夏の大会中に

試合でも使えるレベルになるかもしれないわ」

 

 

「わかったよ、真深ちゃん!

私も早く試合で投げられるようになりたいし

次の試合は私の出番はないみたいだから今は

"この球"の練習に集中して頑張って見せるよ」

 

 

「ええ! 詠深なら、きっとできるわ」

 

 

真深からの激励に詠深もやる気が上がって

"例の球"の習得に意欲を見せたのであった

 

 

 

 

 

ーーそして場面は試合に戻るーー

 

 

 

 

 

「さあ、二巡目! 希ちゃんからの好打順!

球種は全部見たし、好球必打で追加点を狙おう!」

 

 

3回裏は打順一巡し希からの打順なので芳乃が

明るい声でメンバーを鼓舞して打席に送り出す

 

因みに2回裏の新越谷の攻撃は先頭の稜が

外野フライで凡退した後に理沙がヒットで

出たものの続く白菊は外野フライで凡退し

息吹は内野ゴロによりスリーアウトとなり

チャンスを作れなかった

 

 

《1番、一塁手、中村さん》

 

 

そして球場に名前がコールされると

芳乃に鼓舞してもらったこともあり

希が意気揚々と打席に立つ

 

 

(追加点欲しいし、ここは出塁重視で……)

 

 

1回裏の第一打席は相手の投げるコースを

読んでいたこともあり二塁打を打った希は

ここは確実に追加点をとるために長打より

コンパクトな打撃で出塁する事を意識した

 

 

そして……

 

 

キィィィィィィィン

 

 

「打った!」

 

 

「ナイバッチ!」

 

 

第一打席で二塁打を打たれたが相手は

希に内角で攻めることを躊躇したのか

再び外角で勝負したが希はまたしても

上手く弾き返すとレフトへのヒットで

出塁し新越谷のベンチが盛り上がる

 

 

《2番、二塁手、藤田さん》

 

 

そして今度はノーアウト一塁で菫に打席が廻る

 

 

(今度こそ……)

 

 

先程は馬宮の中堅手で主将の西田の好守備で

希をホームでアウトにされていたこともあり

菫は次こそはと気合いが入っていたが

 

 

(ここは走者一塁だから相手は私が

送ってくると思ってるかもしれないし

敢えてバントの構えを見せておいてから

バスターを狙ってもいいかもしれないわね)

 

 

菫は今の状況と梁幽館との試合では

2本の犠打を記録していることから

馬宮のバッテリーが自分がバントを

してくると見ていると読んで意表を

突く作戦に出てみることにした

 

 

(梁幽館戦では2犠打……

多分、この場はバントだろうから

取り敢えずワンアウト貰っておこう)

 

 

案の定、相手の投手の村井は

菫がバントをすると判断していた

 

そして村井が迷わず直球を投じた瞬間に菫は

バットを引いてヒッティングの構えになると

フルスイングで直球を打ち返した

 

 

カキィィィィィィィィン

 

 

「!?」

 

 

バントだと甘くみていた為に直球は

打ち頃の棒球となり意表を突かれて

完全に長打を許してしまった

 

 

「打った!!」

 

 

「大きい!!」

 

 

逆に新越谷のベンチでは菫のバットから

快音が響きレフトに舞い上がって一部の

メンバーが身を乗り出すと菫の打球は

フェンス直撃すると一塁から希が一気に

ホームに生還し1点を追加し菫も二塁に

到達し高校初長打となる二塁打となって

スコアも"2-0"となる

 

 

「初長打! やったわ!!」

 

 

打った本人が二塁上で喜んでいると

ベンチのメンバーもホームに生還した希を

出迎えながら菫に声を送って盛り上がっていた

 

するとバントだと見ていたところを意表を突く

長打を打たれたことで動揺したのか続く珠姫に

四球を出してノーアウト一塁・二塁となる

 

 

《4番、左翼手、上杉さん》

 

 

そしてピンチが広がった上に一塁にも

走者がいる状況で真深に打順を回してしまう

 

 

「今度は一塁が埋まってるよ!」

 

 

「さっきは主将に

ヒットを打たれたし、ここは勝負だろう!」

 

 

二塁には菫、一塁には珠姫がいるので

ここは歩かせられないだろうとベンチで

詠深と稜が盛り上がっていて観客席でも

観客が真深の打撃を期待する声援が響く

 

 

 

しかし……

 

 

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

 

直後の馬宮のバッテリーのとった行動に

新越谷のベンチと観客席がザワついてしまう

 

馬宮の捕手の西山は中堅手の西田の方を向き

アイコンタクトをしてから再び立ち上がると

再び右腕を横に翳したのだ

 

 

《おっと……!?

馬宮バッテリー、ここも勝負しません!?》

 

 

一塁に走者がいる状況での敬遠に

実況も戸惑いながらコメントをしている

 

 

「マジかよ、徹底してんな……」

 

 

「ここで歩かせたらノーアウト満塁なのに……」

 

 

稜と詠深の言葉に共感するかのように

ベンチでは藤井先生を含めたベンチの

メンバーだけでなく塁上の菫と珠姫も

口を開けて呆然としてしまっている

 

 

「お~い! 走者が一塁にいるんだぞ!?」

 

 

「まさか、全打席、敬遠する気かよ!?」

 

 

「そんなの、つまんないよ~~!?」

 

 

「ここは勝負しようよ~~!?」

 

 

最初の敬遠では理解を示してくれた観客も

走者が一塁にいる状況での敬遠に所々から

文句が出始めてしまう

 

 

しかし……

 

 

「くっ!(本当は私だって…………でも……)」

 

 

マウンドでは投手の村井が

悔しそうな表情で歯を食い縛りながら

黙々と敬遠球をミットに向けて投げていたのだ

 

 

「…………」

 

 

そんな村井の様子を真深は打席で

敬遠されながらも、しっかりと気づいていた

 

 

「ボールフォア」

 

 

結局、真深は敬遠で2打席連続で歩かされて

菫と珠姫が1つずつ進塁して、真深は一塁に

到達して、新越谷はノーアウト満塁になると

 

 

「向こうが、その気なら……

この回の攻撃で一気に畳み掛けちゃおう!」

 

 

芳乃が少しイタズラな笑みを浮かべながら

ベンチにいるメンバーを再び鼓舞し初めた

 

 

「ウチは真深ちゃんと詠深ちゃんだけの

チームじゃないってことを思い知らせちゃおう」

 

 

「ですね……ノーアウト満塁ですし

3・4点は取るくらいの気持ちで行きましょう」

 

 

芳乃の言葉に藤井先生も共感して付け加えると

ベンチにいるメンバーも気合いが入ったようだ

 

 

そして……

 

 

続く5番の怜は相手のカーブを上手く捉え

打球は一・二塁間を抜けるかと思われたが

相手の二塁手が横っ飛びで打球を止めると

直ぐに一塁に送球して怜は一塁でアウトに

なったも菫がその隙に三塁からホームへと

戻り更に1点を追加し珠姫と真深も進塁し

ワンアウト二塁・三塁になると続く6番の

稜は直球を豪快に振り抜き打球はレフトへ

舞い上がる犠牲フライとなり三塁の珠姫が

悠々とホームを踏んで更に1点を追加して

"4-0"になると7番の理沙にも二塁打が

飛び出して二塁から今度は真深が生還して

更に1点が加わり"5-0"になると続く

8番の白菊は2打席連続の外野フライで

スリーアウトとなったが3回裏の攻撃で

新越谷は4点を追加することに成功した

 

一気に4点を追加し新越谷のベンチでは

芳乃を中心に盛り上がりを見せる一方で

観客席では新越谷の様子を視察している

見覚えのある2人の姿があった

 

 

「一気に4点か……」

 

 

「あくまで結果論ですが藤田さんが

バントしてたら追加点が入らなかった可能性が

高かったですね……相変わらず良い攻撃でした」

 

 

それは梁幽館の中田と高橋の2人であった

 

 

「フフフ……(新人戦や秋大会は勿論

来年の夏でも、当たる可能性もありますし

早速、偵察も兼ねて見学させてもらいますよ)」

 

 

高橋は新越谷のデータを少しでも得ようと

自前のビデオカメラを意気揚々と回していた

 

 

「しかし……馬宮は徹底して

上杉との勝負を避けているのに新越谷は

いずれも後続の打者が結果を出していて

しっかり敬遠の対策もしていたようだな」

 

 

「ですね……ウチのチームのように

他のチームなら4番を打てるような選手が

居るわけでもないのに上杉さんの打撃力に

頼りすぎるようなこともなく新越谷の他の

打者が自分の打撃力をしっかり磨いてます」

 

 

「これは今後に当たるチームの

投手にも少なからず重圧を与えそうで見物だな」

 

 

中田という超高校級のスラッガーを擁しながらも

他にも強力な打者を擁する梁幽館の打線は中田が

抑えられたりチャンスで敬遠されたとしても他の

打者が打ってきていたように新越谷も真深という

スラッガーを擁しながら甘んじることはなく他の

打者が結果を出した3回裏の新越谷の攻撃を見て

中田と高橋も感心していた

 

 

「それにしても4回戦なのに

川口息吹を先発とは大胆な起用だな」

 

 

「格下相手とはいえ

3回無失点ですから嫌になりますね」

 

 

「相手のレベルに会わせた

柔軟な戦略や戦術……今後のウチの

野球部が見習うべき野球かもしれないな」

 

 

「相手のレベルに合わせた投手起用と

積極的な打撃スタイル……確かにそうですね」

 

 

中田と高橋は梁幽館に勝利した重圧から詠深を

先発させて確実に勝利を得る作戦をしてくると

思っていたが実際の新越谷は相手のレベルに

会わせた起用や戦術を見せる新越谷の采配に

新越谷に敗れた翌日に吉川と小林にも聞かせた

今後の梁幽館の野球部の目指すべきスタイルを

見ることができたような気がしていた

 

そんな中で打線に5点のリードを貰った息吹は

4回表の馬宮の攻撃をツーアウトを取った後に

安打と四球でツーアウト一塁・二塁のピンチを

迎えたが馬宮の8番打者の村野を"投手ゴロ"で

打ち取り4回表も要所を閉める投手で無失点で

切り抜けて見せた

 

 

「見事な投球ですけど、あの人、初心者ですよ」

 

 

「元々、才能があったのだろう……

でなければ、あれだけの投球はできまい。

もしも幼い頃から野球をしていたならば

上杉や武田のように選手になっていたか

ウチのような強豪校の選手だったかもな」

 

 

初心者とは思えない息吹の投球を見て

高橋と中田は息吹の才能を感じ取っていた

 

そして迎えた4回裏の新越谷の攻撃になると

先頭の9番の息吹が四球を選んで出塁すると

三巡目となり本日3回目の打席に立った希が

今日3本目となるヒットを放ち一塁・三塁と

チャンスを広げると2番の菫も四球を選んで

3回に続きノーアウト満塁のチャンスを作る

 

 

《3番、捕手、山崎さん》

 

 

「行け、タマちゃん!」

 

 

「真深に回せ!」

 

 

打席には3番の珠姫が立つとベンチから

詠深や稜を初めとした仲間たちが珠姫に

向けて声援が送られてくる

 

 

「……(回は4回裏で、スコアは"5-0"……

ここで追加点を取ってスコアを"6-0"にして

ノーアウト満塁の状況で真深ちゃんまで回せば

相手は"5回コールド"が見えてくるから嫌でも

勝負を選択せざるを得ないだろうからこの場は

敢えて単打を打って満塁で真深ちゃんに繋ごう)」

 

 

珠姫は5回裏終了時点で10点差

6回裏終了時点で7点差でコールドゲームが

成立することを考慮して自分が単打で繋いで

満塁で真深に回せば梁幽館との試合で中田の

第2打席の時に自分たちがしたような満塁で

敬遠することはできないだろうと考えたのだ

 

 

そして……

 

 

キィィィィィィィィン

 

 

「レフト前ヒット!!」

 

 

「更に1点追加だ!!」

 

 

「ナイバッチ、タマちゃん!!」

 

 

珠姫は初球の直球を上手くレフトに弾き返すと

三塁から息吹が生還しスコアも"6-0"となり

点差が6点となり新越谷のベンチも盛り上がる

 

 

《4番、左翼手、上杉さん》

 

 

そして珠姫は見事に狙い通りに

ノーアウト満塁の状況で真深に打順を回した

 

 

「4回裏でスコアを"6-0"にして

ノーアウト満塁で新越谷は上杉まで回したな」

 

 

「流石に6点差ですし、万が一にも歩かせて

"7-0"にして次の5回表の攻撃で馬宮が1点も

取れなかったらコールドゲームも見えてきますし

苦しいでしょうけど勝負するしかないでしょうね

仮に併殺を打たせたとしても点を取られますし」

 

 

「ああ……山崎は上手く単打を打って繋いだな」

 

 

観客席で観戦している中田と高橋も

珠姫の意図に気づいたらしく珠姫の

作戦と繋ぐ打撃に感心していると

 

 

「ノーアウト満塁で上杉だぞ!!」

 

 

「もう、敬遠できないよ!!」

 

 

「勝負!!」

 

 

漸く真深の打撃が見られると

他の観客のボルテージも本日最高潮になる

 

 

「くっ……! (この状況じゃ

もう勝負するしかないじゃないのよ!?

折角、ここまで上手く勝負を避けてきたのに!)」

 

 

自分たち(馬宮)がピンチの場面なら

徹底して勝負を避ける作戦を指示した西田も

勝負せざるを得ない状況に苦い表情になっている

 

 

しかし……

 

 

「やっと……(やっと勝負できる!!)」

 

 

それとは対照的に馬宮のエースの村井の

表情は気合いと興奮が混ざった表情になっていた

 

 

(ぶつけたかった……彼女に私の全力を!!)

 

 

どうやら真深という実力と経歴を

兼ね備えた強打者に自分の全力投球を

ぶつけたかったらしく前の2打席での

真深への敬遠も村井は不服だったのだ

 

 

「…………」

 

 

対する真深も村井の表情に気づいたのか

村井と勝負することができて嬉しそうな

笑みを向けていた

 

 

「真深ちゃん、かっ飛ばせーー!!」

 

 

「ここで、決めてやれーー!!」

 

 

そして新越谷のベンチから仲間たちが

真深に声援を送るなかで真深と村井の

初めての勝負が始まった

 

 

(確か初対戦の投手が相手の時は

初球は手を出してこないって聞いたし

とりあえず"ストライク"を1つ貰っておこう)

 

 

数少ない真深の情報から村井は甘いコースに

投げないように初球は内角への直球を投じる

 

 

「ストライク!」

 

 

そして村井の読み通りに真深は村井の

球筋や球威を見定めるために初球は見送った

 

 

「よしっ!(次は得意な外角に

外に外れるカーブを投げて空振りを狙おう)」

 

 

村井は真深の得意な外角のコースに

カーブを投げることで真深に食いつかせ

ボール球を振らせて空振りを獲ろうと意気込み

 

 

「ボール!」

 

 

「!?(あっさり見送られた……)」

 

 

しかし選球眼も抜群の真深は

外角に投げられたカーブに吊られることなく

平然と見送ることで村井に重圧をかけてくる

 

 

「くっ……(だったら外角に直球を1球外して

内角一杯のコースに直球を投げて詰まらせよう)」

 

 

梁幽館との試合やアメリカで活躍していた頃の

真深の動画を見ていたこともあり真深に外角で

勝負するのは危険と判断した村井は再び外角に

ボール球を1球外した後に内角への直球勝負に

出ることにしたのだが……

 

 

「ストライク、ツー!!」

 

 

「!?(振ってきた……!?)」

 

 

真深が外野にボール1個分外れる

ボール球の直球を空振りしたので

思わぬ2つ目のストライクを取り

村井は目を見開く

 

 

(こっ、これで内角一杯に直球を決めるば……)

 

 

これで内角に自分が渾身の直球を投げれば

詰まらせるか上手くいけば空振りを獲れる

 

そう考えた村井は中途半端な直球を投げて

それを打たれて後悔するくらいなら自分の

ベストの球を投げようと一呼吸入れてから

真深に内角一杯のコースに直球を投じた

 

 

………………がっ!!

 

 

グワキィィィィィィィィィィン

 

 

「!?」

 

 

《打ちました! これは、大きーーーい!?》

 

 

真深は内角への直球を振り抜くと

打球は高々と舞い上がりながら勢いよく

レフトスタンドに向かって飛んでいくと

 

 

ポトッ

 

 

《入りました、満塁ホームランーー!!

2打席連続敬遠の鬱憤を晴らす上杉の本塁打で

新越谷が"10-0"とリードを更に広げました》

 

 

「キャーーー!!」

 

 

「真深ちゃーーーん!!」

 

 

待望の真深の本塁打……

しかも満塁ホームランにより観客席が

今日1番の大きな盛り上がりを見せて

スコアも"10-0"と二桁得点となる

 

実は村井の外角にボール1個分外れる

ボール球を空振りしたのは罠であった

 

真深はアレを空振りすれば次の投球で

村井が内角に投げてくることを読んで

確実に打とうと敢えて空振りしたのだ

 

つまり梁幽館との試合での第1打席で

吉川から本塁打を打った時と同じ手を

村井を相手にもやって見せたのだ

 

そして本塁打を打ってダイヤモンドを

回ると本塁打で先にホームに生還した

希、菫、珠姫の3人と次の打者の怜から

ハイタッチで迎えられベンチに戻ると

 

 

「真深ちゃん、ナイバッチ!」

 

 

「これで5回表の相手の攻撃を0点に

抑えられたら5回コールドが決められるよ」

 

 

4回裏で10点差になったことでベンチで

詠深と芳乃がハイテンションになっていた

 

 

すると……

 

 

《馬宮高校……

選手の交代をお知らせします

投手、村井さんに代わりまして広瀬さん》

 

 

馬宮のベンチから監督が出てくると

エースの村井を下げて2番手投手を

マウンドに送ってきたのだ

 

 

「馬宮はエースを下げるのか……?」

 

 

「交代の決定打になってしまったのは

今の本塁打でしょうけど、その前の山崎さんに

安打を打たれる前から、既に制球が定まらずに

四球を続けて、満塁にしてしまいましたからね」

 

 

「ああ……投手は被安打を打たれるより

四球を出す方が厳しく見られてしまうから

少し厳しいかもしれないが仕方ないだろうな」

 

 

「ですね……

それに上杉さんとの勝負で残っていた力を

使いきってしまった感じもありますからね」

 

 

観客席で観客していた中田と高橋が村井が

降板させられた原因を冷静に分析していた

 

 

「……(あの打者を相手に自分なりの

ベストピッチはできたし……悔いはないわ)」

 

 

しかし真深と真っ向勝負ができて自分なりの

精一杯の投球ができたこともあり降板したが

村井の表情は穏やかな表情であった

 

そして2番手投手がマウンドに上がったが

新越谷の攻撃はこれで終わりではなかった

 

続く5番の怜が代わったばかりの2番手の

投手からヒットを放ってノーアウト一塁と

再びチャンスを作ると……

 

 

「……(10点差もあるしやってみるか?)」

 

 

続く6番の稜が何やら意を決したような

表情になりながら打席に向かっていった

 

すると積極的なスイングをするはずの稜が

送りバントを決めて怜を二塁に進めたのだ

 

 

「稜ちゃん、ナイスバント!」

 

 

「稜ちゃんがノーサインで

自分からバントをするなんて驚いたよ」

 

 

「一体、どういう風の吹き回しよ……?」

 

 

バントを決めてベンチに戻ってきた稜を

詠深と芳乃が出迎えた後に稜と腐れ縁の

菫が意外そうに尋ねた

 

 

「ああ……梁幽館との試合で中田の

豪速球をバントにできなかったのが悔しくて

バントの練習を増やしたから点差も開いたし

実戦で上手くやれるか試したくなったんだよ」

 

 

どうやら梁幽館との試合で中田の豪速球を

打てずに悔しく思いをした菫がいつもより

長打を打つ練習をしていたように稜は稜で

中田の豪速球をバントにできず打ち上げて

チャンスを生かせなかった悔しさがあって

いつもよりバントの練習をしていたらしく

点差もついて余裕ができたことでこの場で

練習の成果を試したようだ

 

 

「そういう訳だったの……」

 

 

「ああ……上手くできてよかったぜ」

 

 

菫が真深と長打を打つ練習の成果を

発揮できたように稜も練習の成果を

発揮できて満足そうな様子だ

 

 

「うんうん!

菫ちゃんも稜ちゃんも今日は大活躍だね」

 

 

そんな2人に芳乃もチーム全体のレベルの

向上に繋がると見て嬉しそうな様子だった

 

そして稜の送りバントで怜は二塁に進んで

ワンアウト二塁となり今日は二塁打を含め

2打数2安打の7番の理沙に打順が回る

 

 

「……(私も梁幽館との試合の次の日から

素振りの練習の時間を増やしてきたんだから

私もこの打席で練習の成果を出して見せるわ)」

 

 

理沙も素振りの成果も見せようと

いつもより気合いを入れて打席に向かっていく

 

 

そして……

 

 

カキィィィィィィィィン

 

 

「打った!!」

 

 

「これは、大きい!!」

 

 

理沙の放った打球はレフトに大きく舞い上がると

そのまま一直線にレフトスタンドに向かっていき

 

 

「入った!」

 

 

「ホームランだーー!!」

 

 

理沙の2ラン本塁打で更に2点が追加され

"12-0"と遂に点差は12点に広がった

 

 

「ナイバッチだ、理沙」

 

 

「ありがとう、怜……

自分でも納得のスイングができたわ」

 

 

理沙のホームランで先にホームに帰っていた怜が

ホームランを打った理沙をハイタッチで出迎えて

理沙も嬉しそうに応じた

 

 

更に……

 

 

「理沙先輩も本塁打ですか……

(今日は、まだヒットを打っていませんし

私も打撃練習の成果を発揮したいですし

ここは私も何としてでも打って見せます)」

 

 

今日の2打席はいずれも大きな当たりを

打ちながら打球がフェンス前で失速して

外野フライで凡退していた白菊が自分も

この勢いに続こうと理沙とハイタッチを

交わしてから集中力を高めて打席に立ち

 

 

「神仏照覧!!」

 

 

グワキィィィィィィィィン

 

 

「えっ!?」

 

 

「まさか……!?」

 

 

「これも、行くのか!?」

 

 

白菊の打球が勢いよくバックスクリーンに

向かって延びていくと新越谷のベンチから

仲間たちが信じられなそうに身をのりだし

白菊の打球の行方を見送ると

 

 

ドンッ

 

 

「また、入った!!」

 

 

「二者連続ホームランだーー!!」

 

 

「真深のを入れて、このイニング3本目よ!!」

 

 

白菊の打球がバックスクリーンに直撃し理沙と

二者連続に加え真深の満塁ホームランも入れて

1イニング3本目となるホームランが飛び出し

スコアも"13-0"となって新越谷のベンチは

最早お祭り騒ぎとなった

 

 

「ナイバッチ、白菊!」

 

 

「大会2本目の本塁打だな!」

 

 

「手荒い祝福、ありがとうございます!」

 

 

菫と稜からヘルメットを叩きながら

白菊を祝福し白菊も嬉しそうにすると

(希を除く)他のメンバーも白菊を祝福した

 

そして打順は一巡して9番の息吹にこの回で

2回目の打席が回るものの内野ゴロで凡退し

ツーアウトとなってしまうが1番に帰り希に

4打席目が回ってくると……

 

 

「……(白菊ちゃんには負けんけん!

13点差やし中田さんからタイムリーを

打った時の感覚で私も狙ってみるけんね)」

 

 

白菊の本塁打に希の闘志に火がついたらしく

4打席目に立った希がいつもよりもバットを

長く持って長打を打つ際の構えになると

 

 

カキィィィィィィィィン

 

 

希は梁幽館との試合で中田から

同点のタイムリーを打った時のように

内角に入ってきた直球に対し躊躇なく

フルスイングで打ち返すと希の打球は

ライトのポール際に向けて延びていく

 

 

「おい、おい、おい!?」

 

 

「これも、延びてるよ!?」

 

 

希の打球が大きな放物線を描きながら

ライトスタンドに延びていきベンチで

再びメンバーが一斉に身を乗り出した

 

 

「届けーー!!」

 

 

チームで1番仲の良い希の打球なだけに芳乃も

前の3人の本塁打の時よりも興奮しながら身を

乗り出して希の打球の行方を見送ると

 

 

トンッ

 

 

希の打球はライトスタンドのポール際の

ギリギリに飛び込む本塁打となったのだ

 

 

「行ったーー!!」

 

 

「やったね、希ちゃん!!」

 

 

「1イニング4本目のホームラン!?」

 

 

「マジかよ!? 良いのか、こんなに打って!?」

 

 

希のホームランに詠深と芳乃が

大喜びしている一方で菫と稜は思わぬ新越谷の

ホームラン攻勢には逆に戸惑ってしまっていた

 

 

「希ちゃん、ナイバッチ」

 

 

「ありがとう、芳乃ちゃん」

 

 

そんな2人の横で芳乃がホームランを打って

ベンチに戻ってきた希と包容しながら祝福し

ホームランを喜んでいる姿があった

 

その後……菫も積極的にフルスイングをして

2打席目に続け長打を狙ったものの惜しくも

外野フライで凡退してスリーアウトとなるが

結局4回裏の攻撃で新越谷はノーアウトから

珠姫がタイムリーを打って1点を追加すると

尚もノーアウト満塁から真深の満塁本塁打と

理沙の2ラン本塁打に加え白菊と希の2人も

ソロ本塁打と4人が本塁打を放って一挙に

9点を奪いスコアは"14-0"にまでなった

 

 

「1イニング4本の本塁打とは驚いたな……」

 

 

「強豪校も顔負けの見事な猛攻でしたね……」

 

 

そんな新越谷のまさかのホームラン攻勢には

中田と高橋も思わず唖然としてしまっていた

 

一方で馬宮の2番手投手には新越谷打線から

エースとの交代でマウンドに上がって早々に

思わぬ洗礼を受けてしまったのであった

 

そして試合は5回表へと進んで馬宮の攻撃に

入ろうというところで新越谷のベンチから

藤井先生が出てきて主審に何かを伝え初めた

 

 

《新越谷高校、

シフトの変更をお知らせします

投手の川口息吹さんが左翼手に

左翼手の上杉さんが三塁手に……

三塁手の藤原さんが投手となります》

 

 

場内アナウンスで新越谷の守備の

変更が伝えられ息吹が投手から左翼手に移り

投手には三塁手から理沙が移ると左翼手から

真深が公式戦では久々に三塁手に入ったのだ

 

これも事前に芳乃と藤井先生が打ち合わせで

決めて馬宮との試合途中で理沙がマウンドに

交代で上がる際にはこのシフトでいくことを

メンバーに伝えていたのだ

 

息吹も好投していた上にチームも大量リードを

奪って余裕をもって投げられそうな気もするが

初心者の息吹に無理はさせられないし理沙にも

投げさせたかったので芳乃も藤井先生も5回で

交代させるつもりでいたのだ

 

更に今後の為に真深に公式戦の場で少しでも

三塁手の守備を経験させておきたかったのだ

 

 

「14点リードで藤原か……楽に投げられるな」

 

 

「そうですね」

 

 

そんな芳乃と藤井先生の采配に

中田と高橋も理解し感心しながら見届けていると

 

 

「ところで、主将……

例の野球連盟からの"アレ"どうするんですか?」

 

 

高橋が新越谷との試合の翌日に

中田と陽秋月と笠原に届いた葉書のことを尋ねる

 

 

「ああ……受けることにしたよ」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

受けることにしたという中田の言葉に

高橋は嬉しそうに笑顔で反応してきた

 

 

「"秋"も受けることにしたようだよ

笠原はまだ悩んでいるみたいだったな……

正直言って古株が再びユニフォームを着たら

後輩たちに申し訳ないかもとも思ったんだが

折角の機会だし、最後にもう一度だけ、梁幽館の

ユニフォームを着て試合に出たくなったからな」

 

 

「そんなことありませんよ!

少なくとも私は奈緒さんと秋さんが梁幽館の

ユニフォームを着てプレイする姿が見られて

嬉しく思いますし皆だってきっと喜びますよ」

 

 

高橋が珍しく興奮しながら話をしている

 

 

「そうか……そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

 

そんな高橋の心からの言葉に

中田も嬉しさと安堵が混ざった表情で微笑んだ

 

その間に5回表の馬宮の攻撃が始まったのだが

理沙は先頭の9番打者を幸先よくアウトにして

コールドゲームの成立まで残り2アウトとする

 

 

「なあ、友理……

新越谷との試合……どうすれば勝てたと思う?」

 

 

そこへ理沙の投球を見ていた中田が不意に

高橋なら新越谷との試合にどのような対策をして

挑んでいたのかを探りをいれるように尋ねてきた

 

 

「そうですね……今となっては

何を言っても負け惜しみにしかなりませんし

上杉さんの存在を隠されていた時点で此方が

不利なのは変わらなかったとは思いますけど

私なら弥生ちゃんを先発にしたと思いますね」

 

 

「弥生を先発にか……?」

 

 

1年生で1人だけベンチ入りした

堀弥生の名前が高橋の口から出て

中田は意外そうな反応を見せる

 

 

「球威は並みですがリリースも制球も

良い左腕ですし対戦経験の少ないタイプの

投手だと思いますし相手がノーデータなら

此方もノーデータの選手をぶつけて戦術や

戦略面で互角なら良い勝負ができたかと?」

 

 

生き生きと話す高橋の姿を見た中田は

なにかを決意したように頷くと高橋に

再び言葉をかける

 

 

「今の友理を見て決めたよ……

新チームの主将には友理を推薦することにした」

 

 

「えっ?………………えぇっ!?」

 

 

中田からの推薦に高橋は驚き戸惑ってしまう

 

 

「本気ですか!?

私は選手に復帰したばかりなんですよ!?」

 

 

「栗田監督の育成や指導は確かだが

これから新しいスタイルの梁幽館野球部を

築いていくには友理の力が絶対に必要だし

主将の立場であれば監督とも対等な立場で

戦術について話もできるだろうと思ってな」

 

 

「…………」

 

 

「まあ、ウチの主将は部員の

投票で決まるから確実に選ばれるとは

限らないが可能性はあると思っていてくれ」

 

 

戸惑っている高橋をよそに

中田は高橋の肩にそっと触れたのであった

 

 

そして……

 

 

「ストライク、バッターアウト!!」

 

 

9番打者を打ち取った理沙はその次の1番打者に

ヒットを許したものの続く2番打者を内野ゴロを

打たせ走者は二塁に進みツーアウト二塁となるが

続く西田を空振り三振に仕留めて試合は新越谷が

"14-0"で5回コールドによる4回戦に勝利し

見事に"ベスト16"に進出したのであった

 

 

「終始危なげない見事な試合運びでしたね……」

 

 

「ああ……今日の新越谷の試合を見て

改めて思ったが新越谷がウチに勝ったのも

間違いなく実力であってマグレなどではないな」

 

 

高橋と中田は新越谷の馬宮との試合を見て

改めて新越谷の実力とレベルの高さを認め

夏大会以降で新越谷と当たった際の対策を

練っておくべきだと見ていると……

 

 

「おいっ!」

 

 

「「???」」

 

 

不意に中田と高橋の横から

不満そうな口調で誰かが声をかけて来た

 

 

「久保田か……」

 

 

それは熊谷実業の主将にしてエースで4番で

自他共に中田のライバルだと認められている

久保田依子であった

 

 

「"久保田か……"じゃねえ!

最後の夏にお前と力勝負することを

楽しみにしていたのに負けやがって」

 

 

「勝負?

ストライクは入るようになったのか?

それに今日は試合だったろ? 勝ったのか?」

 

 

「"15-5"だ……」

 

 

実は市営大宮球場で新越谷と馬宮の試合が

始まる少し前に隣にある県営大宮球場では

久保田の率いる熊谷実業の試合が行われて

ついさっき試合が終わって次の対戦相手が

決まる新越谷と馬宮の試合を見に来たのだ

 

 

「フッ……相変わらずの得点力だが

失点の方も多いじゃないか……大丈夫か?」

 

 

「ふん! ほざけ……」

 

 

試合結果を聞いて中田は失点数が多いことを

指摘するが久保田に気にした様子はなかった

 

 

「言っておくが次の相手は手強いぞ!

どこから見ていたかわからないが今の試合でも

序盤は打線が繋がって点を取っていたし中盤は

4本の本塁打を放つなど中々に強力な打線だし

投手陣も無失点に抑えてかなり安定しているぞ」

 

 

「ほう……」

 

 

中田からの言葉に久保田は

バックスクリーンのスコアボードに目を向ける

 

 

「ふん! 少しは楽しませてくれそうだな」

 

 

スコアボードを見た久保田は

挑戦的な笑みを浮かべるとベンチ前で観客に

挨拶をしている新越谷の面々に視線を向けた

 

 

「お前の望んでいる力勝負も

新越谷の4番が私の代わりにお前を十分に

満足させてくれるだろうから期待していろ」

 

 

真深と対戦して心踊る真っ向勝負を

体験した中田は真深となら久保田も

満足する熱い勝負ができるだろうと

笑みを浮かべながら告げる

 

 

「じゃあな……健闘を祈っている」

 

 

「失礼します」

 

 

最後に中田と高橋は久保田に

別れを言葉を告げて球場を去っていった

 

 

 

 

 

ーーそれから数分後ーー

 

 

 

 

 

試合を終えた新越谷の面々は球場の

駐車場に停めていたバスの前に集まっていた

 

 

「みんな、今日もナイスゲームだったよ」

 

 

「投打が噛み合った良い試合内容でしたね」

 

 

集まったメンバーに対し芳乃と藤井先生が

試合内容やチームワークを称賛してくれる

 

 

「次の相手は、さっき県営大宮球場で

一足先にベスト16進出を決めた熊谷実業だよ」

 

 

「あちらも"15-5"の

5回コールドゲームを決めての勝利みたいです」

 

 

「15点!? エグッ……」

 

 

「県内最速投手の久保田のチームだな……

というかウチも1イニング4本の本塁打とかで

14点とって5回コールドを決めたんだけどな」

 

 

「そっ、そうよね……」

 

 

芳乃と藤井先生から次の対戦相手と

4回戦のスコアを聞いて唖然とする菫に対して

稜は自分たちもコールドで勝利を掴んだことを

指摘して比較的に落ち着いた反応を見せていた

 

 

「稜ちゃんの言う通り得点力なら

ウチだって熊谷実業にも負けていないし

ウチが無失点だったのに対して熊谷実業は

5点も取られてるから勝算は十分にあるよ」

 

 

新越谷が"14-0"と無失点で

勝利したのに対して熊谷実業は"15-5"と

5失点したことを指摘して新越谷にも十分に

勝機があることを告げてメンバーを鼓舞する

 

 

「だから学校に戻ったら

早速ミーティングをして試合に備えようね!」

 

 

「ベスト16進出といっても

まだ半分も来ていないことだし次も勝つぞ!」

 

 

「「「「「「「おおーーーっ!!」」」」」」」

 

 

最後に芳乃と怜が閉めてから言葉に全員が

気合いを入れた大声で答えるとバスに乗り

学校への帰路についたのであった

 




ご覧の通りに今回の馬宮との試合で、新越谷打線が
4回に真深、理沙、白菊、希の4人が本塁打を打って
1イニング4本の本塁打の記録を達成しましたが
実際の高校野球の1イニングの最多本塁打数って
何本なのでしょうね?

日本のプロ野球では西武が記録した
1イニングに6本の本塁打という記録が
最高みたいですが高校野球はどうなのでしょう?

次回は熊谷実業との試合前のミーティングの
話になる予定なので短く簡単な内容になると
思いますが次回の更新も楽しみに待っていて
くださると幸いです

皆さんもコロナには十分に
気をつけて健康にお過ごし下さい
それでは次回まで失礼いたします
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