詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

42 / 45
遅くなって申し訳ありませんでした
活動報告に書いた理由に加えて少しスランプに
陥っていたことで間が空いてしまった次第です

熊谷実業との試合は中盤までは概ね現在漫画と
似た内容ですが新越谷の選手の打席での結果が
原作とは違う結果になっていたり真深の台詞が
入っているので宜しくお願い致します


第40話 県内最速投手

遂に始まった夏の埼玉大会の5回線

全8試合が行われ"ベスト8"が決定する

 

本来なら市営大宮球場と県営大宮球場で

2日に渡って2試合ずつ行われる予定が

雨天延期などの影響もあり2つの球場と

上尾を加えた3つの球場にて今日1日で

終わらせられることになった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【市営大宮球場】

 

 

1回線・熊谷実業 VS 新越谷

 

2回線・南栗橋 VS 椿峰

 

3回線・深谷東方 VS 東応第三

 

 

【県営大宮球場】

 

 

1回戦・越谷第二 VS 村神

 

2回戦・大宮大附設 VS 柳大川越

 

3回戦・咲桜 VS 聖大狭山

 

 

【上尾市民球場】

 

 

1回戦・美園学院 VS 川口青木

 

2回戦・浅間台 VS 川口電電

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

新越谷と熊谷実業との対戦となった5回戦は

市民大宮球場の第一試合に設定されたために

両チームとも早めにバスに乗り球場入りして

試合に備えてウォーミングアップを終えると

午前10時に試合が開始された

 

熊谷実業との試合が開始されると先発投手の

理沙は幸先良く"ツーアウト"を奪ったものの

次の3番打者にヒットを許しツーアウトから

ランナーを一塁に置くと打席には熊谷実業の

エースにして4番の久保田が打席に立った

 

 

そして……

 

 

グワキィィィィィィィィィィィィィン

 

 

「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」

 

 

久保田は理沙の速球を捉えると球場全体に豪快な

打撃音が響き渡り全員が打球の行方を目で追うと

久保田の打球はのスコアボードに直撃した

 

 

《入った、ホームランーー!!

4番、久保田の2ラン本塁打によって

熊谷実業が1回表に2点を先制しました!!》

 

 

「「「「やったーー!!」」」」

 

 

「「「「久保田さ~~ん!!」」」」

 

 

久保田の本塁打で熊谷実業が先制すると

一塁側の熊谷実業の応援席が盛り上がるなかで

久保田は笑みを浮かべて満足そうな様子で塁を回る

 

 

「……(未完成のパワー投手は好物だ!

ウチを相手に上杉と武田を温存したこと後悔しろ)」

 

 

真深と詠深との勝負を熱望していた久保田は

早めに主導権をつかみ新越谷に真深と詠深を

引きずり出させようと気合いを入れて打席に

立った上に理沙の投球スタイルが久保田には

得意なタイプだったこともありいつも以上に

納得のいくスイングで本塁打が打てたことと

先取点を奪えたことに満足だったらしい

 

しかし理沙は久保田に本塁打を打たれても

リズムを崩すことはなく続く5番打者には

直球を詰まらせて"内野ゴロ"で打ち取った

 

 

「ごめんなさい……いきなり、打たれちゃったわ」

 

 

ベンチに戻ってきた理沙が

本塁打を打たれたことをチームメイトに謝罪する

 

 

「ドンマイです、理沙先輩!

昨日も話した通りに今日の試合は

多少の失点は覚悟している試合なので

初回2失点は寧ろ少ないと見て大丈夫です」

 

 

そんな理沙に芳乃は他のチームメイトにも

目を向けながら明るく笑顔を向けて答える

 

そんな芳乃の姿を見て新越谷のメンバーは

昨日の練習の後に芳乃から熊谷実業との

試合の先発メンバーを伝えられた直後の

芳乃から伝えられた作戦内容を思い出す

 

 

 

 

 

ーーー 昨日、練習後(夕方)ーーー

 

 

 

 

 

芳乃と藤井先生により

熊谷実業との試合の打順の発表直後

 

 

「なっ、マジかよ!?」

 

 

「本気で、このスタメンでいくの!?」

 

 

「相手は、あの久保田さんなのよ!?」

 

 

発表されたスタメンと打順を見た稜と菫と

息吹は戸惑いながら間違いではないのかと

芳乃に確認する横で他の一部のメンバーも

3人と同じような表情になっている

 

チームの4番であり最大の得点源の真深と

三塁手で出場するとはいえエースの詠深も

先発投手ではないスタメンと打順の発表に

次の相手が県内最速の球を投げてくる上に

梁幽館の中田奈緒にも劣らぬ打撃力も持つ

久保田が率いる熊谷実業を相手には流石に

リスクが高いと思ったのだが……

 

 

「うん! 本気だよ!

みんなも思うことはあるだろうけど

ちゃんと考えがあってのことだから

私と藤井先生のことを信じてほしい」

 

 

しかし芳乃は力強い笑みを浮かべながら

メンバーに自分と藤井先生が話し合って

決断した判断を信じてほしいと嘆願する

 

そんな芳乃の表情を見て真深とチームの

主将の怜と熊谷実業との試合では4番を

任されることになった希が芳乃に信頼の

寄せた笑みを向ける

 

 

「作戦内容を聞いてもいいか?」

 

 

そして怜が笑みを向けながら作戦を尋ねる

 

 

「はい! まず久保田さんは確かに

県内最速の速球を投げてくる一方で変化球は

殆どと言っていいほど投げてこない投手です」

 

 

「そういえば久保田が変化球を

投げるのを、あまり見たことがない気がするな」

 

 

「確かに直球一本やりの力押しで来てる印象ね」

 

 

芳乃から久保田の投球の特徴を聞いた稜と菫が

テレビで熊谷実業の試合を見たことがあるのか

思い出したように呟いた

 

 

「加えて久保田さんは実は制球力が

あまり良くなくて四球をよく出している上に

熊谷実業は守備でもエラーの数が多いんだよ

もしかして守備はウチの方が安定してるかも」

 

 

「だから"ベスト16"までの試合でも

格下を相手に、そこそこ点を取られていたのね」

 

 

今回の夏大会のこれまでの熊谷実業の試合の

スコアを思い出した菫が納得したように呟く

 

 

「だから、そこを付けば

真深ちゃん無しでも点を取れるだろうし

久保田さんの動揺を誘ってウチに有利な

試合展開にできる可能性も高い思うんだ」

 

 

「久保田さんの動揺を誘う?」

 

 

「どういう意味だ?」

 

 

久保田の冷静さを低下させるという

芳乃の意図が見えないらしく息吹と

稜が首を傾げながら芳乃に訪ねる

 

 

「久保田さんは試合では

投手としても打者としても強い相手と

勝負することをモチベーションにして

試合に挑んでいるからウチとの試合も

真深ちゃんや詠深ちゃんと勝負することを

期待してるだろうから敢えて真深ちゃんを

スタメンからは外して詠深ちゃんも投手で

先発させないことで久保田さんを動揺させ

冷静さを無くすことで四球を多く出させて

リズムを崩すことが出来るかもしれないよ」

 

 

「なるほど……心理作戦ということか」

 

 

芳乃の説明を聞いた怜が顎に

右手を当てながら面白そうな表情をしている

 

 

「そういうことです!

真深ちゃんと詠深ちゃんを温存することで

久保田さんの動揺を誘うことでチャンスを

掴んで大量点を狙うことが今回の作戦です」

 

 

作戦の真意を伝えながら芳乃が楽しそうに

生き生きした表情で説明していたが直後に

挑戦的な笑みを浮かべながら話を続ける

 

 

「本当に真深なしで大丈夫かしら……?」

 

 

自信たっぷりに作戦とチームの得点力を

信じていることを話す芳乃に対し息吹が

少し不安そうな反応を見せるものの……

 

 

「大丈夫! 自信をもって!

梁幽館との試合以降みんな真深ちゃんと一緒に

今まで以上に打撃練習を頑張ってきてたんだし

現に馬宮との試合は試合序盤では真深ちゃんが

2打席連続で歩かされたけれど打線が繋がって

効率よく点を積み重ねられてたし試合終盤には

1イニングに4本の本塁打を記録して大量点を

取った今の皆の力なら大丈夫だと信じているし

県内最速とはいえ直球一本で来る投手を相手に

打ちあぐねてたらユイさんや園川さんみたいな

更にレベルの高い投手には太刀打ちできないよ」

 

 

「芳乃さんの言う通りです!

明日の試合は皆さんの今の持てる力を

存分に発揮して良い試合を見せてくださいね」

 

 

そう言って芳乃と藤井先生は馬宮との試合での

好プレイと真深のライバルのユイと美園学院の

エース園川の名前を引き合いにメンバー全員の

やる気と鼓舞して闘志を促そうとする

 

 

「そうだな……久保田にビビってたら

ウィラードから打つなんて夢のまた夢だよな」

 

 

「私達の目標は咲桜を倒して

全国大会の舞台に行くことだものね」

 

 

稜と菫がそう言うと他のメンバーも

次次にやる気になり試合が楽しみに

なり始めていた

 

最も主将の怜と芳乃から4番を任された

希は芳乃と藤井先生に鼓舞される前から

既に闘志に火が着いていたらしい

 

 

「それから守備についてだけど……」

 

 

芳乃はメンバーが久保田攻略に

意欲を見せたのを満足すると続いて

新越谷が守備の際の注意点を話し始めた

 

 

「熊谷実業は打撃ではバントとかの

小技とかは殆ど使わないで全員が強攻してきて

去年の秋大会以降は格下相手なら殆どの試合で

10点近く取っている強力打線で久保田さんの

投球よりもこっちの方が厄介なのかもしれない」

 

 

「現に今回の大会も3試合中2試合で

10点以上取ってコールドを決めています」

 

 

芳乃に続き藤井先生の口からも伝えられる

熊谷実業というチームの特徴の話から見て

打撃に力をいれてるチームであり久保田は

その中でも突出した選手であるという事も

芳乃と藤井先生から告げられる

 

 

「"攻撃は最大の防御"が信条なのかしら?」

 

 

「そうかもね……だから明日の試合は

多少の失点は覚悟してウチも攻撃の時には

相手よりも多く打ってやる気持ちで行こう」

 

 

「それなら、やっぱり私じゃなくて

詠深ちゃんを先発にした方が確実なんじゃ?」

 

 

真深と芳乃の指摘を聞いて

先発投手を任された理沙が熊谷実業が

守備が悪く打撃力が高いのなら詠深が

先発にした方が良いと思い提案をする

 

 

しかし……

 

 

「さっき言った通り詠深ちゃんが先発だと

久保田さんのモチベーションが上がってしまって

結果的に予想外の投手戦になるかもしれませんし

その可能性を抜きに考慮してでも私も藤井先生も

次の試合は絶対にこのスタメンで行きたいんです」

 

 

そう言いながら芳乃は爽やかながら

強い思いを感じさせる笑顔をメンバーに向ける

 

 

「梁幽館との試合では真深ちゃんと

詠深ちゃんの2人の力で勝つことができた上に

そのお陰でウチを応援してくれる観客も増えました

それでも馬宮との試合の途中にも言いましたけれど

私も藤井先生も新越谷は真深ちゃんと詠深ちゃんの

2人だけのチームじゃない事を知ってほしいんです」

 

 

「それと同時に梁幽館に劣らない打撃力を持つ

シード校を相手にして上杉さんと武田さん無しで

どこまでやれるか見てみたいという思いもあります」

 

 

「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」

 

 

芳乃と藤井先生の言葉に真深と詠深を除く

殆どのメンバーの目が見開き場の雰囲気が変わる

 

 

「多分だけど明日の試合……

久保田さんと2人の対決が見たいお客さんが

たくさん来ると思うから試合開始前の球場の

アナウンスで今回のスタメンが発表されたら

野次を飛ばしてくるかもしれないけれど逆に

それを力に久保田さんを攻略してみせようよ

ウチは全員が強いんだって証明してやろうよ」

 

 

芳乃は更に闘志を含みながらも

気合い一杯の笑みを向けながら熱く話すと

 

 

「そうだな……芳乃の言う通りだ!

皆! 明日は持てる力を存分にぶつけてやろう」

 

 

「芳乃ちゃんの期待に応えたいし

久保田さんとの勝負……凄く楽しみっちゃけん」

 

 

「そうね……最近、調子も良いしやって見せるわ」

 

 

怜が面々に激を飛ばすと

既にやる気に満ちていた希と

理沙が気合い十分な様子で答えると

他の1年生の面々も士気を高め始める

 

 

「うぅぅ……久保田さんと投げ合いたかったな」

 

 

「私も久保田さんと勝負してみたかったかも?」

 

 

一方で真深と詠深は芳乃と藤井先生の考えや

作戦を尊重していたが相手が久保田なだけに

詠深だけでなく珍しく真深も少し残念そうな

様子を見せていた

 

 

「2人とも、ゴメン!

でも明日はどうしても真深ちゃんと詠深ちゃんを

抜きでどこまでやれるか確かめたかったし試合の

終盤には出てもらう予定だからその時は宜しくね」

 

 

「本当!? よ~し、頑張るぞーー!!」

 

 

「いつでも出られるように準備して待ってるわ」

 

 

そう言って芳乃は苦笑いを浮かべ

両手を合わせながら真深は控えで

詠深は投手で先発ではないことを

改めて詫びたが出場機会があると

知らされると直ぐに笑顔になった

 

 

 

 

 

ーー そして時間は試合に戻る ーー

 

 

 

 

 

「今の本塁打は此方の作戦への

不満をぶつけてきた感じがしたから

次の守備でも此方は平常心を保って

落ち着いて対処できれば大丈夫だよ」

 

 

熊谷実業の打撃力は新越谷の面々の

予想以上だったらしく特に久保田の

打撃には衝撃を受けたらしかったが

直ぐに芳乃がフォローに入る

 

 

「さあ、次は此方の攻撃!

今までの練習の成果を存分にを見せよう!

昨日も言ったけど県内最速に臆さないようにね」

 

 

芳乃がそう言うと先発メンバー全員が

気合いと満ちた表情でしっかりと頷いて見せた

 

 

《1回裏、新越谷の攻撃は

1番、左翼手、川口息吹さん》

 

 

「……(久しぶりの1番打者……出塁するわよ)」

 

 

球場に名前がコールされると息吹が夏大会前の

最後の練習試合の守谷欅台との試合以来となる

1番打者起用に少し緊張した様子を見せつつも

しっかり気合いを入れて打席に向かう

 

 

すると……

 

 

「しまっていくぞーーー!!」

 

 

「「「「「「「おおぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」

 

 

「!?」

 

 

熊谷実業の捕手が球場全体に響き渡るかのような

大声を発すると熊谷実業の内野陣と外野陣に加え

 

 

「打たせていこうぜ!」

 

 

「打たせんな!」

 

 

「バッター、ビビってるぞーー!!」

 

 

「久保田、三振とれーー!!」

 

 

熊谷実業の応援席からも大勢の歓声が響き渡る

 

 

「ひぃぃぃっ!?

(スタンドと一体になっての歓声と圧が凄い!?)」

 

 

熊谷実業ナインの気迫と観客席の雰囲気に

息吹は思わず怯んで怖じけそうになりかけてしまう

 

 

しかし……

 

 

(ううん! 負けてられないわ!

折角、1番を打つんだから絶対に出て見せるわ!)

 

 

昨日と試合開始前の芳乃と藤井先生の言葉を

思い出して力に変えたのか気持ちを切り替え

マウンド上の久保田と対峙する

 

 

「ほう……(この雰囲気の中でなかなか

良い面構えじゃないか……なら遠慮はしないぞ)」

 

 

息吹の表情を見た久保田が

笑みを浮かべながら初球の球を息吹に投げた

 

 

「ボール!!」

 

 

「!?(やっ、やっぱり早い……けど)」

 

 

県内最速の実力は伊達じゃなく息吹には

今まで見たことのない豪速球が投じられ

目を見張ったものの

 

 

(なんでかしら……?

詠深の強直球よりはマシなような……?)

 

 

梁幽館に勝利した後の練習中で詠深の

コピー投球を習得をする為に見てきた

詠深の強直球と比べて見ると久保田の

直球は今の息吹は想像していたよりも

早くなく見えていた

 

 

ギィィィィィィン

 

 

「!?」

 

 

現に続く2球目の直球をカットしたので

息吹は更に冷静になることができて逆に

久保田はカットされて一瞬だが驚きの

表情を見せた

 

 

「ボールフォア!」

 

 

その結果、息吹は持ち前の選球眼の良さで

際どい球はカットして、ボール球は冷静に

見送り四球で出塁した

 

久保田が直球しか投げてこないことで

ストライクとボールの見極めが容易に

できていたのだ

 

 

「よしっ!(1番、息吹ちゃん作戦成功!)」

 

 

そして息吹が出塁したことで新越谷の

ベンチも盛り上がりを見せ始め芳乃は

ガッツポーズをする

 

直球しか投げない久保田が相手なら選球眼の

良い息吹が球を見極めながらヒットや四球で

出塁してくれると期待しての1番起用だった

 

そして息吹が出塁したことで新越谷の

ベンチも盛り上がりを見せ始め芳乃は

次のサインを送ると息吹は通常よりも

大きなリードを見せて久保田に向けて

揺さぶりをかけていく

 

これも久保田を攻略するために芳乃が

メンバーに向けて出した作戦であった

 

 

「チッ!(ちょこまかしやがって……)」

 

 

それによって久保田は芳乃の読み通りに

冷静さを失くし苛立ちを見せ始めている

 

 

「……(芳乃の言った通りね)」

 

 

芳乃の情報通りの久保田の状態と

試合展開に次の打者の菫も冷静に

打席に向かう

 

 

「……(例え県内最速でも

直球だったら今の私なら打てるはず!)」

 

 

梁幽館との試合以降に真深と打撃練習を

続けてきた今の菫は直球に対する自信を

大きくつけていたのだ

 

 

そして……

 

 

キィィィィィィィン

 

 

「なに!?」

 

 

菫は初球の直球を完璧に弾き返すと

完璧に打たれたことに久保田は動揺し

一塁の足の早い息吹が三塁にまで到達し

ノーアウト一塁・三塁とチャンスを広げる

 

 

「菫ちゃん、ナイバッチ!」

 

 

菫のヒットでチャンスが拡がると

ベンチから仲間が菫に声援を送る

 

 

《3番、捕手、山崎さん》

 

 

そして打席には珠姫が打席に立つと

珠姫は視線を熊谷実業の三塁手に向ける

 

 

「……(芳乃ちゃん情報では

熊谷実業はバント処理は苦手な上に

特に三塁手は守備自体が苦手だったよね)」

 

 

珠姫も頭の中で芳乃からの情報を

整理しながら打席に立ちバットを構えると

 

 

「「!?」」

 

 

珠姫がヒッティングの構えからバントの

構えに変えると三塁線にバントを転がし

スクイズを仕掛けた

 

 

「チッ!」

 

 

それに久保田と熊谷実業の三塁手の選手が

驚きの表情になり慌てて三塁手が珠姫の

転がした打球の処理し三塁の息吹の生還を

阻止しようとしたのだが……

 

 

「ヤバッ!?」

 

 

芳乃と珠姫の読み通りに三塁手の選手は

珠姫の打球を握り損ねて三塁から息吹が

悠々とホームに生還して新越谷が早くも

1点を返しスコアを"1-2"となり尚も

ノーアウト一塁・二塁とチャンスは続く

 

 

「「思った以上に守備悪いな……」」

 

 

今のプレイで相手にエラーが記録され

情報通りの守備の悪さに珠姫と息吹は

唖然としているが久保田は気にしてる

様子はない事から久保田はエラーより

四球で銚子を崩すタイプの投手らしい

 

 

「よしっ! ここからは打線に任せるよ!」

 

 

そんな久保田と対照的に

芳乃は作戦が成功して意気揚々としている

 

 

《4番、一塁手、中村さん》

 

 

そして打席には真深に代わり

4番を打つ希に打席が回ってきた

 

梁幽館との試合では4打数2安打で

1点リードされて迎えた9回表の攻撃では

ツーアウトから同点のタイムリーを放って

馬宮との試合では4打数4安打1本塁打と

猛打賞の活躍で今や新越谷で真深と詠深に

劣らぬ注目の選手の1人になり初めている

 

 

(希ちゃん! 思いっきり打って行ってね!)

 

 

そしてチャンスで希に回ったことで

芳乃も嬉しそうに期待を抱き希にサインを出す

 

 

(うん、任せて!

4番を任せてくれた期待に応えるっちゃ!)

 

 

芳乃からのサインに希も嬉しそうに頷いている

 

 

「……(県内最速……

対戦できる時を楽しみにしとったよ)」

 

 

同時に希は久保田との対戦も

楽しみにしていたらしくワクワクした表情だ

 

 

「中村か……(コイツとの勝負も

楽しみだった……思い切り行かせて貰うぞ)」

 

 

対する久保田もやはり希を意識していたようだ

 

 

そして……

 

 

キィィィィィィィン

 

 

希も初球の直球を捉えると希の打球は

右翼前に落ちるヒットとなり二塁から

菫がホームに生還し"2-2"と早くも

同点に追い付くことに成功して珠姫は

二塁に進んでノーアウト一塁・二塁と

チャンスは止まらない

 

 

《5番、中堅手、岡田さん》

 

 

ここで得点圏打率の高い主将の

怜に打席が回り怜も打つ気満々の様子だ

 

 

「……(念のために早めに振り抜くか)」

 

 

県内最速なので怜はいつもよりも早めに

バットを振ることを意識して打席に立つ

 

 

ところが……

 

 

「んっ!?」

 

 

久保田が怜に直球を投じた瞬間に

怜は意表を突かれて目を見開いた

 

久保田の直球が"ベンチ"や"ネクストサークル"で

見ていた球よりも少し球威と球速が上がったのだ

 

 

ゴキンッ

 

 

「くっ!?(急に早くなった!?)」

 

 

思わぬ直球に怜はタイミングこそ合わせたが

球威に押されて詰まらされてしまった打球は

二塁手の前に転がって4・6・3の併殺打を

打たされてツーアウトを取られてしまったが

二塁走者の珠姫を三塁に進めることはできて

新越谷はツーアウト三塁となる

 

 

「今の久保田さんの直球……」

 

 

「ええ……前の4人に

投げていた直球よりも早かったわね……」

 

 

「前の4人の打者に投げて

肩が暖まって本調子になったのでしょうか?」

 

 

怜に対して急に威力のある直球が

投げられたことにベンチでも芳乃と真深

そして藤井先生も気づいて深刻な表情で呟く

 

 

《6番、三塁手、藤原さん》

 

 

ここで馬宮との試合では

3打数3安打1本塁打を記録し打撃が

好調なことから稜と入れ替わり6番に

打順が上がった理沙にまで打順が回る

 

 

(この流れを止めない……絶対に繋ぐわ)

 

 

理沙も"ネクストサークル"で怜に

投げられた直球に気づいてはいたが

臆せずに打席に立ち久保田と対峙する

 

そして久保田は理沙にも

初球から直球が投じてきたのだが

 

 

「!?(さっきと変わりない……打てる!)」

 

 

理沙に投じられた直球は息吹たちに

投じられた直球と球威も球速も同じ

直球だったので理沙は驚きはしたが

瞬時に対応してバットを振り抜いた

 

 

キィィィィィィィン

 

 

理沙の打球は熊谷実業の三遊間を破ると

三塁から珠姫がホームに返り"3-2"と

2点を先制された直後に逆転に成功した

 

 

「逆転だ!!」

 

 

「ナイバッチ、理沙先輩!!」

 

 

理沙の逆転タイムリーに芳乃と詠深が

歓喜したことでベンチの他のメンバーも

理沙に向けて声援を送りながら盛り上がる

 

 

「今の直球は岡田さんの前の

4人投げていた直球とほぼ同じでしたね」

 

 

「ですね……」

 

 

そして盛り上がるメンバーの横で

再び久保田の直球の球威と球速が

先程までと同じ直球になったので

藤井先生と芳乃が首を傾げていた

 

 

一方……

 

 

「はぁ~~」

 

 

「今日もかよ……」

 

 

熊谷実業にとってはお馴染みの展開なのか

応援席からは溜め息が聞こえてきたものの

落胆した様子は全くなかったのだが

 

 

「……にしても、久保田さんの球

今日は初っぱなから、やけに打たれたな?」

 

 

「確かに、いつもは四球かエラーからの

自滅パターンなのに、いきなり3本も打たれたな」

 

 

「新越谷って上杉がいなくても

他の打者も打てて、打撃力の良いチームなんだな」

 

 

「まあ、前の試合でも

"1イニング4本塁打"を記録したりして

14点も取ったんだし、マジで強いってことだろ」

 

 

久保田の直球を菫、希、理沙の3人が

立て続けに安打にしたことに対して

動揺したような呟きが聞こえた

 

 

「♪ ♪ ♪」

 

 

そんな観客席からの声を聞いた芳乃が

嬉しそうに笑みを浮かべて嬉しそうな

様子になっていた

 

新越谷は真深と詠深だけのチームでは

無いことを早くも証明することができ

芳乃はこの上なく嬉しかったのだ

 

 

「どうしたの、芳乃ちゃん?」

 

 

「ううん。なんでもないよ♪」

 

 

そんな芳乃の様子に気づいた詠深が

尋ねるが芳乃は笑みを浮かべながら誤魔化した

 

 

《7番、遊撃手、川崎さん》

 

 

そしてツーアウト一塁となり打席には稜が立つ

 

 

「よっしゃ! 私も打つぜ!」

 

 

逆転した直後なので稜も流れに

乗ろうと気合いを入れて打席に立ったのだが

 

 

「ストライク、バッターアウト!」

 

 

「なっ!?」

 

 

稜に投じられた直球は怜に投げていたのと

同じ球速と球威の上がった直球だったので

稜は空振り三振に倒れた

 

 

「うぅぅ、何で私の打席で……?」

 

 

「いや、私の打席でも良い直球が来たぞ」

 

 

空振り三振にされ泣きべそをかきながら

ベンチに戻ってきた稜に怜がフォローを

しながら自分と稜の打席の時に久保田の

直球の球威と球速が上がっていたことを

ベンチでメンバーに指摘をすると真深が

静かに口を開いた

 

 

「久保田さんは制球力が

良くないことに加えて投げる度に

球威や球速も違ってムラがあるみたいね」

 

 

「なるほど……つまり私と稜の

打席の時は運悪く良い球が来たんだな」

 

 

「マジかよ……」

 

 

真深の言葉を聞いた怜が納得している横では

稜は不服そうな様子で苦い表情になっていた

 

 

「県内最速とはいえ、ほぼ直球一本で

相手打線を抑えてきたのは、そのムラに

相手が対応できなかったのかもしれませんね」

 

 

真深と怜と稜の言葉に

藤井先生も納得した様子で呟いた

 

 

「でも球筋は素直だから

ムラに気を付けてタイミングを

合わせていければ上手く打てそうだね」

 

 

「タマちゃんの言う通り

初回に3本もヒットを打てたし

この先まだまだチャンスは来ると思う」

 

 

「そうだね……

その為にも此方もできる限り

相手に点を取られないようにしないと」

 

 

初回に久保田から3安打を記録して

逆転に成功したことに珠姫と詠深は

試合に勝利する好感触を得ながらも

熊谷実業の打撃力を1回に久保田に

本塁打を打たれたこともあり珠姫は

改めて気を引き締めた

 

 

「確かに点は取られたくないけど

この回も理沙先輩は初回と変わらず

打たれても良いのでストライク先行で

テンポよく投げていっちゃってください」

 

 

「分かったわ」

 

 

芳乃は試合の序盤は無理せずプランを

変えずに進める意思を伝えると理沙が

笑顔で頷きながらマウンドへ向かうと

他のメンバーも理沙に声をかけながら

それぞれのポジションに向かっていく

 

 

「久保田さんに本塁打は打たれたけど

初回は芳乃ちゃんのプラン通りに行けたわね」

 

 

「うん! 特に息吹ちゃんを

先頭打者にしたり相手の守備や久保田さんの

投球の弱点をつけたのは、このデータのお陰だよ」

 

 

そう言いながら芳乃は手に持っていた

"マル秘"と書かれているノートに目を向けた

 

それは梁幽館との試合に勝利した後に中田と

会話をした時にマネージャーで現在は選手に

復帰した高橋から託された他校の選手たちの

データが細かく記載されたノートだった

 

熊谷実業との試合で真深と詠深を温存しつつ

打順や久保田の投球に序盤で対応でき相手の

守備の弱点をつくことができたのも高橋から

託されたノートのお陰だった

 

 

「中田さんや高橋さんの

想いに答える為にも絶対に勝とうね!」

 

 

「うん!」

 

 

真深と芳乃はそう言いながらベンチ内に

持ってきて吊るしていた千羽鶴に感謝の

気持ちを抱きながら目を向けていた

 

その千羽鶴はノートと共に中田と高橋に

全国大会出場の夢と共に託された大切な

千羽鶴であった

 

もちろん梁幽館から送られた千羽鶴は

真深や芳乃だけでなく新越谷の仲間の

全員にもモチベーションを与えていて

この試合に勝とうという気持ちを強く

抱かせていた

 

その後2回の攻防で熊谷実業と新越谷は

共にヒットを重ね互いに1点を取り合い

スコアは"4-3"となり回は中盤となる

3回に進むのであった

 

 




原作より新越谷の打線が久保田さんから
ヒットを打ってチーム打率と打力が原作より
上がっているので次回もそれなりに打つと思います

熊谷実業との試合は次回か
次の次の回で終わらす予定でして熊谷実業との
試合終了後は新越谷のメンバーが柳大川越の試合を
観戦した後にオリジナル展開が入る予定となります

具体的に柳大川越の試合を観戦した後に
もう1試合、観戦することをお知らせ致します

それでは次回まで失礼致します!!
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