詠深の従姉妹はホームラン打者   作:たかと

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お久しぶりです……

3ヶ月以上も更新が遅れて申し訳ありませんでした
しかも今回で熊谷実業との試合は完結予定でしたが
新しいゲストキャラに登場して頂くなった事に加え
試合の終盤の展開を書くのに手こずったりしていて
時間が掛かってしまい、これ以上、更新を遅らせては
不味いと思い完結は次回に持ち越すことにしました

今回は息吹が主役の回となっています
久しぶりな上に短いかもしれませんが
原作にはない息吹を書けたと思うので
少しでも楽しんで頂けたら光栄です

それでは、ご覧ください


第42話 失敗は成功のもと

 

白菊と理沙の2人の3ラン本塁打などもあり

5回裏を終了時点で"10-5"と5点もの

リードを持って6回表の熊谷実業の攻撃を

迎えた新越谷であったが2イニング目となる

息吹が影森や馬宮との試合と比べで明らかに

調子が悪くヒットと四死球を連発して1点を

返されると尚も満塁で打席を迎えた久保田の

意表を突こうと影森との試合で投げた中山の

スーパークイック投球を試みたが久保田には

通じず同点満塁本塁打を許してしまったので

守備に出ている選手たちもベンチで見届ける

真深、芳乃、藤井先生も険しそうな表情となる

 

 

「よしっ! ここから一気に逆転するぞ!」

 

 

「「「「「オッシャーーーー!!」」」」」

 

 

それに対して熊谷実業の方は活気づいてしまい

流れも向こうに行った雰囲気が高くなると再び

マウンドの息吹の元に珠姫と内野陣が集まった

 

 

「ゴメン……自分から投げたいって

志願しておきながら……リードを守れなかった」

 

 

案の定、本塁打を打たれて、息吹は動揺していた

初めて打たれた本塁打であったことに加えて

5点のリードを追い付かれてしまい息吹なりに

打たれないよう策を立てて投げた球だったので

追い付かれた罪悪感も加わり息吹のショックは

かなり大きかったらしく表情は青ざめていた

 

 

「落ち込まないで、息吹ちゃん

打った瞬間に久保田さんが言ってたんだけど」

 

 

そう言って珠姫は久保田や熊谷実業が昨年の

夏に影森と対戦して中山を攻略していたこと

 

そして熊谷実業が息吹のコピー投球の情報を

得ていたことから息吹の投球が中山の投げる

フォームのコピーであることを瞬時に見抜き

対応してきたことを説明した

 

 

「そうだとしても本塁打だけは

打たれちゃいけない場面だったのに……」

 

 

「息吹ちゃん……」

 

 

「「「…………」」」

 

 

悔しさを見せる息吹に珠姫や

集まった内野陣の菫、稜、理沙も心配そうだ

 

 

しかし……

 

 

「大丈夫だよ、息吹ちゃん!」

 

 

「詠深?」

 

 

ただ1人……詠深だけが

明るい声と表情で息吹に声をかけてきた

 

 

「まだ逆転されたわけじゃないし

本塁打になって走者がいなくなったから

気持ちを切り替えてアウトを取っていこうよ」

 

 

「…………」

 

 

詠深の言葉に息吹の表情が少し和らいだ

 

確かに走者がいなくなったので走者を

背負って投げる重圧からは解放された

 

未だにノーアウトであることも考えれば

ここから改めて1つずつアウトを取れば

6回裏の新越谷の攻撃で巻き返して再び

勝ち越す可能性もあり6回裏でチームが

勝ち越せば最終回となる7回表は詠深が

クローザーで登板して相手打席を抑えて

勝利することができる

 

 

「だから、落ち込むのは、まだ早いよ」

 

 

投手である詠深の言葉ということで

説得力もあり暗いムードも和らいだ

 

 

「詠深ちゃんの言う通りだね

ここから1つずつアウトを取っていこう」

 

 

「わかったわ! ありがとう、詠深!」

 

 

「うん!」

 

 

そして詠深の言葉に珠姫も気持ちを

切り替えて息吹を励ますと息吹は珠姫に

頷いてから詠深にお礼の言葉を伝えると

その様子に内野陣も安堵してマウンドに

自分たちのポジションへと戻っていった

 

 

「……(やっぱり詠深ちゃんは凄い!

エースとしてだけじゃなくて前向きで

いつも皆を明るい雰囲気にしてくれて

チームを引っ張って行ってくれるから)」

 

 

ポジションに戻った珠姫は心の中で

呟きながら一塁の守備に戻る詠深に

静かに目を向け改めて詠深の存在を

心強く感じていた

 

 

「息吹ちゃんは、大丈夫そうね」

 

 

「うん……詠深ちゃんに感謝しないと」

 

 

流石に会話は聞こえなかったが

ベンチから見ても詠深が息吹を

元気付けていることはわかったので

真深が詠深の前向きで明るい性格を

誇らしく思い息吹を励ましてくれた

詠深に芳乃は感謝の念を抱いていた

 

 

「ですが流れが熊谷実業に

向いてしまっているのは確かです

息吹さんの投球も今までの試合と

比べて明らかに調子が悪いですし

再び走者を出してしまえば早めに

武田さんに代えざるを得ないです」

 

 

「そう、ですね……

もしまた得点圏に走者を出したら

その時は投手を詠深ちゃんに代えます」

 

 

藤井先生の監督としての言葉に芳乃は

一瞬だけ悲しそうな表情にはなったが

チームの勝利に導くために藤井先生の

言葉に肯定しながら頷いたのであった

 

 

「真深ちゃんも場合によっては

この回で出すことになるかもしれないから

いつでも出られるように準備しておいてね」

 

 

そして真深の方を向いて準備を促すと……

 

 

「大丈夫! いつでも行けるわ!」

 

 

既に真深はいつでも出られるように

スパイクの靴紐の結びの確認をして

左手にはグラブを装着していた

 

 

《5番、左翼手、豊村さん》

 

 

そして打席には5番の豊村が立つと

 

 

「オッシャー! 来い!」

 

 

久保田の同点満塁本塁打の効果で

アドレナリンが出まくってるのか

今日一番の気合いの入りようだ

 

 

すると……

 

 

キィィィィィィィン

 

 

「あっ!?」

 

 

初球を左翼前に弾き返されて

再びノーアウトで走者を出してしまうと

 

 

「ボールフォア!」

 

 

続く6番の今関には四球を出してしまい

ノーアウト一塁・二塁となり再び得点圏に

走者を置いて逆転のピンチを招いてしまう

 

この回の先頭打者であった9番の野口から

数えて7人連続での出塁を許してしまった

 

 

「くっ……(ダメだわ……

もう下半身と腕に力が入らない!?)」

 

 

息吹本人のやる気も虚しく体は

限界近くに達してしまっているようで

利き手の右腕が疲労で震えてしまっていた

 

 

「あっ……(そうか、分かった)」

 

 

すると息吹が四球を出した場面を見て

何かを悟った芳乃が心の中で声を発した

 

2戦目で梁幽館を敗り馬宮との試合は

投打に渡り相手を圧倒した上に今日の

試合は失点も多いものの大量点を奪い

チームが好調なので気づかなかったが

新越谷は控え選手がたった1人なので

夏の猛暑の中で長い連戦を続ける中で

選手を休ませられないのだ

 

梁幽館のような部員の数に恵まれる

強豪校であれば相手が格下であれば

レギュラーを休ませ控えメンバーで

試合に臨むことができたであろう

 

仮に梁幽館が新越谷に勝利し4回戦に

進出し馬宮と対戦していれば背番号が

1桁のレギュラー選手の半数を休ませ

背番号が2桁の控えのメンバー中心で

挑んでいたかもしれない

 

しかし……

 

控えの選手が1人しか居ない新越谷は

対戦相手のレベルに応じて主力選手を

休ませることができず真夏の猛暑の中

長い連戦を続けなければならないので

選手の疲労の蓄積は避けられないのだ

 

それが今の新越谷にとっての

1番とも言える弱点であった

 

そして息吹は野球センスがあり野球選手の

"ものまね"が得意でも高校に入学するまで

運動をしたことがないので昔から野球に

精通している他のメンバーに加えて息吹と

同じ初心者だが剣道により体を鍛えていた

白菊と比べて体力面で差があり梁幽館との

試合は完全オフとなったが馬宮との試合は

先発して好投した後に左翼手の守備につき

序盤から打ち合いとなった今日の試合では

1番打者として先発し出塁すれば久保田を

翻弄するために塁上で揺さぶりをかけたり

打撃力のある熊谷実業が相手なので守備の

時間も長くなった回もあったことなどから

体力の限界が来てしまったのだ

 

 

更に……

 

 

「……(息吹ちゃんだけじゃない

さっき希ちゃんが久保田さんの直球を

ヒットにしながらも詰まらされたのも

久保田さんや熊谷実業が強いだけじゃなく

真夏の猛暑による疲労も影響していたんだ)」

 

 

芳乃は5回裏の3打席目の希の打席で

久保田の直球とはいえ直球に強い希が

ヒットにはなったものの詰まらされた

原因が疲労によるものだと気づいた

 

どうやら息吹以外のメンバーも

僅かながら疲労が蓄積されているらしい

 

猛暑の中では普通に歩いているだけで

普段より体力を消費するので増してや

炎天下の中で野球の試合をしていれば

疲れが貯まらない筈がない

 

そんなことを考えているとマウンド上の

息吹が右手を上げてタイムを要請すると

主審が両手を上げてタイムをコールする

 

そして主審のタイムのコールを確認して

芳乃がベンチからマウンドに駆け寄ると

珠姫と内野陣もマウンドに集まってくる

 

 

「息吹ちゃん、大丈夫?」

 

 

そして芳乃とマウンドに集まった

メンバーが心配そうに息吹の表情を伺うと

息吹は息を上がらせながら静かに言葉を発した

 

 

「ハァ、ハァ……ゴメン、みんな……

この回だけでも投げきりたかったんだけど

もう両腕も下半身も限界……1個もアウトを

取れなくて悔しいけど、私の我が儘でチームに

これ以上、迷惑はかけられないわ……交代して」

 

 

そう言って息吹は悔しい気持ちと本当は

まだ投げたい気持ちを必死に抑えて自ら

降板を要求したのであった

 

力投も実らず6回表のマウンドでは

ワンアウトを取ることができなかった上に

同点の満塁本塁打を打たれたことで交代を

志願した息吹の表情は悔しさに満ちていた

 

 

「わかった……

限界を越えてまで投げてくれて、ありがとう」

 

 

「ナイピだったわよ、息吹」

 

 

「カッコ良かったぜ」

 

 

「お疲れ様」

 

 

そんな息吹に芳乃、菫、稜、理沙が

決してお世辞などではなく本心で

惜しみ無く息吹の投球を称賛した

 

 

「あとは頼んだわよ、詠深」

 

 

「任せて、息吹ちゃん!

息吹ちゃんの頑張りを無駄にはしないよ!」

 

 

そして仲間たちから労いの言葉を

贈られた息吹は精一杯の笑顔を作りながら

ボールを詠深に渡して、後のマウンドを託すと

詠深は力強い笑みを向けながらボールを受け取り

同時に芳乃が藤井先生に向け交代のサインを出した

 

 

「上杉さん! 予定より少し速いですが

息吹さんと交代です! 準備は宜しいですか?」

 

 

「はい!」

 

 

「では、行って下さい!

武田さんをマウンドに上げて

中村さんを一塁手に戻しますので

そのまま左翼手に入ってください」

 

 

「はい!」

 

 

そう言って藤井先生は真深を

グラウンドに送り出すと主審の元に行き

選手の交代と選手の守備の変更を伝えた

 

 

《新越谷高校、選手の交代

並びにシフトの変更をお知らせします。

左翼手の中村さんが一塁手に……、一塁手の

武田さんが投手に……投手の川口息吹さんが

左翼手に……左翼手に入った川口息吹さんに

代わりまして、上杉さん……左翼手、上杉さん》

 

 

「上杉だ!!」

 

 

「待ってましたーー!!」

 

 

「遅せえぞーー!!」

 

 

詠深がマウンドに上がり息吹との交代で

真深が左翼手の守備に付くと観客席から

割れんばかりの大歓声が上がった

 

 

「やっと出てきたな!!」

 

 

そして熊谷実業のベンチでは久保田や

他の熊谷実業の選手たちが漸く本気の

新越谷と試合ができると笑みを浮かべ

先程よりも、やる気が漲り初めていた

 

対して無念の交代となった息吹は芳乃に

連れ添われながらベンチに戻ってくると

クラスメイトを初めとする今日の試合の

応援に駆けつけて来てくれた観客からの

拍手と声援に出迎えられながらベンチに

座ると芳乃から渡されたペットボトルを

無言のまま勢いよく飲み始めると息吹は

ペットボトルの中の水をアッと言う間に

飲み干してしまった

 

 

「息吹さん……

熱中症の危険もありますから

念のために、もう一本飲んでおきましょう」

 

 

「はい……」

 

 

息吹は藤井先生から水の入ったペットボトルを

もう一本、受け取ると、再び勢いよく飲み始めた

 

 

すると……

 

 

「芳乃、ゴメン……」

 

 

「息吹ちゃん……?」

 

 

2本目のペットボトルを飲み干すと

不意に息吹が芳乃に謝罪をしてきた

 

 

「自分から"この回だけは最後まで

投げさせてほしい"って、志願しておきながら

ワンアウトも取れなかった上に久保田さんに

満塁本塁打を打たれて同点にされるだなんて

今日ほど自分を情けなく思ったことはないわ」

 

 

「息吹ちゃん……」

 

 

今までに見たことのない息吹の悔しそうな

表情と言葉に芳乃は慰めの言葉が浮かばず

どうやって励まそうかと考えていた

 

 

すると……

 

 

「それでいいんです」

 

 

「「えっ?」」

 

 

藤井先生から掛けられた言葉に息吹と芳乃が

意外そうな表情になって藤井先生の顔を見る

 

 

「【失敗は成功のもと】という

"ことわざ"があるように人が成長するのは

成功した時より失敗したり挫折をするなど

苦境に立たされた時です……今日の登板で

悔しい思いをしたなら今回の経験はきっと

今後の息吹さんの成長に繋がる筈ですから

少なくとも私は良い機会だったと思います」

 

 

「はい……もし次に投げる機会が

与えられたら次は絶対に抑えたいですから

もっと投球練習を頑張りたいと思いました」

 

 

「息吹ちゃん……」

 

 

悔しそうだが決して挫折していない

息吹の姿に芳乃も少しだけ笑みを浮かべる

 

 

「良い心がけですね!

恐らく今日の息吹さんのように

チームの皆さんも今までに何度も失敗や

挫折を経験してきて今があるのだと思いますよ」

 

 

「「!!」」

 

 

藤井先生の言葉に息吹と芳乃はハッとした。

怜と理沙は上級生による理不尽な暴力行為を

真深はアメリカのガールズでプレイした頃に

同年代のチームメイトから嫌がらせを受けて

詠深は勝利に恵まれない環境でも努力を続け

難易度の高い変化球を習得したにも関わらず

チームメイトに煙たがられて孤立してしまい

最近では希が得点圏で打てない事に悩んだり

中学の頃までの打撃スタイルが高校野球では

通じず苦悩していたが誰1人として諦めずに

野球を続けてきて改善したり苦境を乗り越え

今に至っているし他のメンバーも何かしらの

失敗や挫折を経験して今に至っているだろう

 

 

「ですから今の息吹さんの悔しい思いは

必ず息吹さんを成長させ、強くしてくれると

私は信じています……ですから、これからも

期待していますし、頼りにさせて貰いますね」

 

 

「はい! 頑張ります!」

 

 

こうして投手としてレベルアップしようと

新たな決意と目標を持った息吹であったが

久保田に打たれた今回の満塁本塁打に加え

数時間後に出会う投手の投球を見ることで

投手として成長する切っ掛けを掴むことを

この時の息吹には知るよしもなかった

 




悔しさをバネに息吹がレベルアップを決意する話しでした
そして次の更新でこそ熊谷実業編は完結させるつもりです

真深と久保田さんの対決をお楽しみに!

そして、お知らせがあります!

この度【銅英雄】さんと
【コンスタンチノープル】さんに続き
新たに【kuma】さんともコラボが決まりました

次回の更新で【kuma】さんの球詠の小説
【無口な天才打者は全国を目指す】から
【小瀬青葉】さんが"姫宮"の選手として
ゲスト出演して頂くことになっています

そして、次の次の更新では
タグに【クロスオーバー】を追加して
椿峰の選手として、とあるゲームのキャラと
【銅英雄】さんの小説に登場する三森三姉妹が
登場することになっていますので新たに物語に
登場するキャラ達の活躍も見守って欲しいです

そして既にゲスト出演している
【二宮瑞希】さんと【金原いずみ】さんに続き
【三森朝海】さん【三森夕香】さん【三森夜子】さんの
【三森三姉妹】の出演の許可を下さった【銅英雄】さん

そしてコラボの、お誘いをくださった【kuma】さん

この度は誠に、ありがとうございました!\(^o^)/

それでは次回の投稿まで失礼致します!
そして次回の投稿は早く投稿できるように頑張ります(>_<)
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