ポケットモンスター BanG Dream!   作:フユニャン

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なっがいこと考えとったクロスオーバーが遂に実現したー!!!!!(その前に他の連載小説の続き書けや)
これは絶対に続けて行きたいなぁ。この小説を通して、ポケモンとバンドリ!両方の魅力を知って貰えたらええなぁ。
さて、こんな下らん話もここまでにして小説を読んで貰おうか。

それじゃあ、楽しんでってなー。


第1章「めざせ夢へ!走り始めたばかりの冒険者たち」
#1「キラキラドキドキ!キミに決めた!」


 午前5時59分。

 長針が一つ進んで鳴ろうとした瞬間、バンと音を立てて止められた。

 

 「よし、勝った!」

 

 少女は誇らしげにそう言うと、ベッドから立ち上がり着替え始めた。

 

 

 

 「おはようおかーさーん!お腹空いた!」

 

 「はいはい、おはよう。もう用意してあるわよ」

 

 「やったぁ!」

 

 「でもまさか本当に起きて来るなんて……学校行ってた時でもこんなに早くなかったでしょ」

 

 「だってだって、遂にこの日が来たんだよ!楽しみで早く起きちゃうよ!」

 

 この少女、戸山香澄(とやまかすみ)はそう言いながら、朝食のトーストを食べ始める。

 香澄が朝からこんなにも興奮している理由、それは……

 

 「早くポケモン欲しいなー!どの子にしようかなー?」

 

 そう、今日は最初のポケモンを貰う日なのである。

 この世界では10歳になった次の年度になると、トレーナーとしての資格が与えられポケモンを持てるようになる。

 多くの新人トレーナーは最初のポケモンをその地方の博士から貰い、旅に出ることになる。

 

 「ごちそうさま!」

 

 香澄は朝食を食べ終えると、準備をしに部屋へ戻って行った。

 

 「相変わらず慌ただしいわね……大丈夫かしら。ねぇ、あなた」

 

 母親はフォトフレームの中にある写真の男に向かって、少し心配そうにそう告げた。

 

 

 一方その頃、香澄はリュックの中身の最終確認をしていた。

 

 「えーっと、当分の食料と、タウンマップと、着替えと……あとボールも」

 

 念入りに持ち物を確認し、全部あるのが分かると満足気にチャックを閉めた。

 

 「うん、大丈夫!準備万端!」

 

 ふと机を見ると、長方形の如何にも重要そうな封筒が置いてあるのに気付く。

 

 「あっ!トレーナーカード忘れてた!危ない危ない」

 

 トレーナーカードとは、この世界におけるトレーナーの身分証明書のようなもので、4月1日時点で10歳の子供全員に配布される。

 特にトレーナーはこれがないと様々な場面で困ってしまうので、忘れてはならない重要な物なのだ。

 

 「よしっ!財布に入れたからもう大丈夫!本当に忘れ物がないかもう一度確認しなきゃ!」

 

 香澄は部屋を見渡し、リュックを開けて中身を確認し、漸く本当にチェックが終わった。

 

 「さて、時間はまだまだあるし何しよっかなぁ」

 

 研究所への集合時間は8時。現在の時刻は6時半であと1時間半もあり、研究所への距離を考えると家を出るまでに1時間ある。

 

 「ギター弾きながら、リーグの試合でも見返そうかな」

 

 そう言って、香澄はギターケースからアコースティックギターを取り出し、DVDプレイヤーにディスクを入れるとテレビの電源を付けた。

 そして1時間、彼女は楽しそうにギターを弾きながら過去のポケモンリーグの映像を見返すのだった。

 

 

 

 

 

 時間になったのでギターを直してリュックを背負い、ギターケースを持って降りる。リビングに入るとそこにはパジャマ姿の妹・明日香(あすか)が居た。

 

 「あっちゃんおはよう!」

 

 「おはようお姉ちゃん。もう行くの?」

 

 「うん!早くポケモン欲しいからね!」

 

 「お姉ちゃんは本当にポケモン好きだよね」

 

 「だってカッコいいし、強いし、凄くてキラキラドキドキするんだもん!」

 

 「はいはい、それ何度も聞いた。ほら、早く行きなよ。ポケモン欲しいんでしょ」

 

 「うん!じゃあ行って来ます、あっちゃん!お母さん!」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 「怪我しないように気を付けるのよ。それとこれ、お昼に食べてね」

 

 「はーい!ありがとう!」

 

 香澄は元気良く返事をし、意気揚々とドアを開けて出て行った。

 

 「……頑張ってね、お姉ちゃん」

 

 「それ、出る前に言ってあげれば良かったのに」

 

 「恥ずかしいからいいの」

 

 

 

 最初は歩いていた香澄だが、徐々に早歩きになり遂には走り始めていた。

 

 「楽しみだなぁ!待っててねヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネー!」

 

 そう言いながら走っていた為、通行人からは温かい目で見られるが香澄は気にしない。

 走り続けること10分、集合時間より20分早く研究所に辿り着いた。

 

 「着いたー!けど、結構早めに来ちゃったなぁ」

 

 時計はなくとも、香澄は何となく早く着いてしまったのが静かな雰囲気で分かったようだった。

 一応ドアを引いてみると、開いたのでそのままに入ることにした。

 

 「ごめんくださーい、ポケモン貰いに来ましたー!」

 

 大声で元気良くそう言うと、バタバタと足音が聞こえて来た。

 出迎えてくれたのは、ここ「月島研究所(つきしまけんきゅうじょ)」の所長兼博士の月島真紀子(つきしままきこ)博士だ。

 

 「香澄ちゃんおはよう!君が一番乗りだよ」

 

 「まきちゃんおはよう!そうなんだ!」

 

 「一応ドア開けといて良かったよー。香澄ちゃんならもしかしたら早く来るかなぁと思って開けといたけど、正解だったね」

 

 「えへへ、待ち切れなくて思ったより早く来ちゃった!」

 

 「あはは、香澄ちゃんらしいね。それじゃあ早速だけどポケモンを選んでもらおうか。付いて来て」

 

 「はい!」

 

 真紀子に連れられて廊下を歩いて行くと、大きな扉の前で真紀子は立ち止まり右側だけ開けた。

 入ると、そこでは数人の研究者達がパソコンや機械と向き合いながら研究をしているようだった。

 

 「ちょっとここで待っててね、ポケモンを呼んでくるから」

 

 「うん、分かった!」

 

 香澄は元気よくそう返事したのに真紀子は微笑み、また大きな扉を開けてポケモンがいる部屋へと向かった。

 

 「早くポケモン達に会いたいなぁ……!」

 

 

 

 

 

 場所は変わり、ここは月島研究所の二階にある一室。

 ここでは、とある一匹のポケモンが住んでいた。そのポケモンの名は「ヒトカゲ」。カントー地方で貰える最初の三匹の内の一匹で、炎タイプを持つ。

 ポケモン一匹が住むにしては広いこの部屋で、何故ヒトカゲが一匹だけでいるのか。それは、ヒトカゲの「ある特徴」が関係していた。その特徴と言うのは……。

 

 「今日はトレーナーが来る日かぁ……。どんな子なのか気になる……けど」

 

 そう、彼は人間の言葉を話せるのだ。この特徴の所為で彼は何度か危険な目に遭い、その時に真紀子に助けられたのだった。

 表に出てしまえばまた狙われる可能性があった為、彼は特別に部屋を一室与えられ、基本外には出ずにこの部屋か他のポケモンがいる部屋に行っていた。

 

 「ボクは特別だから……きっと驚いちゃうだろうなぁ」

 

 悲しさと寂しさが入り混じった表情でそう、ぽつりと呟いたその時。

 

 「……あれ、何か聞こえる?……音?いや、これは……鼓動?」

 

 鼓動の様な音を感じ取ったヒトカゲは、何故だか体が震えていた。

 

 「何だろう……この熱くなる感じ……。それに、何かに呼ばれている気がする」

 

 ヒトカゲはベッドから下りると、ドアを見据えて何かを決意したようだった。

 

 「……行かなくちゃ。何かが呼んでいる」

 

 ヒトカゲはドアの下に作られた専用のドアを潜ると、音がする方へ走って行った。

 

 「あれっ、ヒトカゲ!?どこ行くの!?」

 

 呼びに来た真紀子からすれ違いざまに声を掛けられても、彼は気にする様子もなくそのまま廊下を走り、階段を駆け下りて行った。

 

 「待ってよヒトカゲー!」

 

 

 

 「音がするのは……ここか」

 

 一階の大きな扉の前に立つと、ヒトカゲはジャンプして取っ手を掴み、下に引き下げて扉を開けた。十分に開けてから飛び降りると、突然来たことに驚いて見ている研究員達を他所に、ヒトカゲは音の元を探す。

 すると、こちらを見ている少女に気が付いた。香澄だ。彼女を見れば音は訴えかける様に激しく鳴り響いていた。

 

 「(間違いない……あの子だ!)」

 

 確信したヒトカゲは、無言でトコトコと歩いて香澄に近付く。

 ソファに座っている香澄の足元に辿り着くと、ヒトカゲはジャンプして膝の上に飛び乗り、香澄の心臓部分に手を当てた。一方の香澄は、そこそこ重さのあるヒトカゲに飛び乗られた反動で驚いて動けずにいた。

 ヒトカゲが香澄の胸に手を当てると、香澄の胸の鼓動とずっと聞こえていた鼓動が一致した。

 胸から手を離すと、ヒトカゲは見上げて香澄の目を真っ直ぐに見つめる。

 

 「音は……キミからだったんだね」

 

 ヒトカゲがそう言葉を発すると、香澄は目を丸くして驚いた。

 

 「……へ?しゃべ……った?」

 

 

 

 「ヒトカゲーどうしたのーって……ヒトカゲ?」

 

 そこにヒトカゲを追い掛けて来た真紀子が研究室に入ると、香澄の膝の上に乗っているという光景を目にし、驚いて駆け寄った。

 

 「ヒ、ヒトカゲ!?何で香澄ちゃんの上に……!?」

 

 「真紀子、ボク聞こえたんだ。この子から「鼓動」を」

 

 「鼓動?」

 

 「鼓動……こどう……。もしかして、ホシノコドウ?」

 

 香澄は突然出て来た「鼓動」という単語に反応し「鼓動」と2回呟くと、謎の単語を発した。

 

 「ホシノコドウ?」

 

 「うん、ホシノコドウ。君が聞いたのはきっと、ホシノコドウだよ」

 

 「なぁにそれ?」

 

 「えーっとね、キラキラで、ドキドキした音のことだよ!」

 

 香澄の抽象的な説明に真紀子は苦笑いになるが、ヒトカゲは違った。

 擬音語しか言っていないにも関わらず、何故かスッとその言葉が入って来て、本能的に理解した。

 理解した瞬間、彼は目を輝かせて香澄に抱き着いた。

 

 「うわっ、と。どうしたの?」

 

 「きっとそれだよ!ボクはホシノコドウに導かれたんだ!」

 

 「導かれた?ホシノコドウに?」

 

 「うん!部屋にいたらね、「ドクドク」って心臓の鼓動みたいな音がして、呼ばれてる気がしたからここに来たんだ。それでキミを見たら、「ドクッドクッ」って大きくなって、キミの胸に手を当てたら音と鼓動が合わさって一つになったんだ!」

 

 「私のコドウが、キミを呼んだってこと……?」

 

 「多分そうなんだと思う。きっとボク達、運命って奴で結ばれてるんだよ!」

 

 「運命……か。うん、そうだよ。きっとそうなんだよ!私達は運命で結ばれてるんだ!」

 

 互いが運命で結ばれていることに喜んでいる二人に、蚊帳の外だった真紀子は声を掛ける。

 

 「喜んでるとこ申し訳ないけど、色々と説明して良いかな?」

 

 「あっ、まきちゃんごめん。すっかり忘れてた」

 

 「あはは……やっぱり忘れられてたんだね……」

 

 

 

 「実はその子、1年前に私が保護した子なんだ」

 

 「保護?」

 

 「うん。ポケモンハンターからね」

 

 「ポケモンハンター……」

 

 その言葉を聞いて、少し顔が険しくなる香澄。それもその筈、ポケモンハンターとはポケモンを強引な手段で捕獲し、高値で売りつけることを生業とする者のことで、ポケモン保護法に反する違反行為故に、多くの人々から忌み嫌われる存在なのだ。

 

 「まぁ、そのハンターはちゃんと逮捕されたけどね。それで、この子はどうやら生まれつき人間の言葉を理解して話せるみたいで、珍しいからって私が保護するまでずっと色んな人達に狙われてたんだって。ヒトカゲはまた一人でどこかに行こうとしてたんだけど、これ以上危険な目に遭わせるのも可哀想だから、保護することにしたんだ」

 

 「最初はボクも断ったんだけどね、ずっと人間に狙われる生活を送って来たから。でも、真紀子が真剣に目を見て話してくれてるのを見て、信じても良いかなって思ったから、ボクはここに来ることにしたんだ」

 

 「そうなんだ……」

 

 「それでも最初は警戒してたけどね。一ヶ月程経ってから漸く心を開いてくれたんだ」

 

 「そりゃそうだよ。いくら信じたとはいえ、最初は賭けみたいなものだったからね」

 

 「あはは……だよね。私がヒトカゲでも同じこと思うよ……」

 

 ヒトカゲが真紀子を睨みながらそう言うと、真紀子は苦笑いでそう言った。

 

 「話を元に戻すけど、ヒトカゲが心を開いて直ぐに、香織ちゃんにヒトカゲの存在を打ち明けたんだよね」

 

 「え、お母さんに?」

 

 「香織ちゃんなら大丈夫かなって漸く思えて言ったんだよね。まぁ、香織ちゃんは「何でもっと早く言ってくれなかったの?」って拗ねてたけど」

 

 「そういえば、前にちょっと機嫌が悪い様な、嬉しい様な顔で仕事から帰って来てたなぁ……それだったのかぁ」

 

 1年程前の母の帰宅後の様子を思い返し、納得して頷いた。

 

 「あはは……そっか。で、私は打ち明けたと同時に、ある提案をしたんだ」

 

 「提案?」

 

 「香澄ちゃんがスクールを卒業したら、この子を託したいって言ったんだよ」

 

 「私にヒトカゲを?」

 

 「うん。香澄ちゃんなら、ヒトカゲを任せても大丈夫な気がして。でも、香澄ちゃんとヒトカゲの意思もあるから、結局今日決めて貰うことにしたんだ」

 

 「驚いたよ。前日に「明日一緒に旅に出るかもしれない子と会わせる」って言い出してさ。もうちょっと早く言ったって良かったんじゃないの?」

 

 「ごめんごめん。忙しくて言うの忘れてた」

 

 「はぁ……。全く、研究熱心なのは良いけど他が疎かになっちゃダメだよ」

 

 ヒトカゲに溜息を吐かれながら注意されると、真紀子は「何にも言い返せないや」と苦笑いで答えた。

 その様子を見た香澄は「ポケモンに注意されてるって何だか変な感じ」と思った。

 

 「そして今日が来て、さっきヒトカゲを呼びに行ったんだけど、部屋に辿り着く前に急に飛び出して研究室に行っちゃうから驚いたなぁ」

 

 「あの時、ホシノコドウがボクを呼んでいたんだ。聞いてたら、居ても立っても居られなくなっちゃってさ。行かなきゃって思ったんだ」

 

 「ホシノコドウ……か。香澄ちゃん、昔からその話聞かせてくれたよね」

 

 「そうだね。もう何回話したのか分かんない位聞かせたなぁ」

 

 「昨日ので100回目だったよ」

 

 「え、まきちゃん数えてたの!?」

 

 「話を聞いた日は日記に「ホシノコドウの話を聞いた」って書いてたから、試しに昨日数えてみたんだよね。そしたら丁度昨日聞いたので100回目だったんだ」

 

 「そうだったんだ……そんなに話してたんだね」

 

 思ったより自分が同じ話を何回もしていたことに驚きを隠せない様子の香澄は、途端に申し訳なくなった。自分の話を100回も聞いて、嫌になったのではないかと。

 

 「まきちゃん、嫌じゃなかった?」

 

 「嫌ではなかったよ。香澄ちゃん、いつも瞳を輝かせて話してくれるから、その目を見ながら聞くの好きだったんだ。だから帰って来たらまた聞かせてよ」

 

 「そっか……うん!良いよ!」

 

 真紀子の思いを聞いてほっとした香澄は、眩しい笑顔で快く受け入れた。

 

 「ボクもその話聞きたいな」

 

 「ちょっと長くなるかもだから、後でね」

 

 「うん。……え、後で?」

 

 「ここを出て、夜になったら聞かせてあげるよ」

 

 「それって……」

 

 ヒトカゲは期待の眼差しで香澄を見つめる。

 

 「君と一緒に冒険したくなっちゃった!だから、キミに決めた!一緒に行こ、ヒトカゲ!」

 

 「……!」

 

 

 『キミに決めた!』

 

 

 こうやって選ばれることを、どれ程待ちわびていたことか。

 そこで、ヒトカゲは自分が誰かと冒険したかったことを自覚した。今まで押し込めていた気持ちに、選ばれたことで気付いたのだ。

 

 「(ああ、そうか。ボクは誰かと一緒に旅をしたかったんだ。でも特別なボクじゃ、気味悪がられるしボクのことを真っ直ぐ見てくれないから、いつの間にか諦めてた……)」

 

 「ヒトカゲ?」

 

 俯いてしまったヒトカゲを心配して香澄が顔を覗き込もうとすると、ヒトカゲはばっと顔を上げた。

 その目には、涙が浮かんでいた。

 

 「何で泣いてるの……?もしかして嫌だった……?」

 

 「違うよ……その反対。嬉しいんだよ。ボク、ずっとこの研究所で暮らすんだと思ってたから、嬉しくて……」

 

 「そっか……よしよし。これから一緒に沢山の景色を見ようね」

 

 「……うん」

 

 向かい側に座るヒトカゲの傍に行くと、香澄は頭を撫でてそっとヒトカゲを抱き締めた。

 

 「良かったね、ヒトカゲ」

 

 「うん。今まで有難う、真紀子。ボクを守ってくれて」

 

 「ポケモンを愛する者として、当然のことをしたまでだよ。こっちこそ、いつも抜けてるとこ注意してくれてありがとね」

 

 「どういたしまして」

 

 ヒトカゲは真紀子に抱き着いて離れると、笑顔でそう言った。

 

 「さてと、もうそろそろ他の子達が来ちゃうし、その前にやるべきことを済ませちゃおう」

 

 「そうだね……って、やるべきこと?」

 

 「色々渡さなきゃいけない物があるからね」

 

 「あ、そっか!」

 

 「やっぱり忘れてたんだ……。まぁいいや、じゃ今から渡すよ」

 

 

 

 

 

 「まずはこれ、ヒトカゲのボールだよ」

 

 「ありがとう!」

 

 最初に受け取ったのはヒトカゲのモンスターボール。上の赤い方の中央部には炎のシールが貼られており、一目見ただけで炎タイプが入っていることが分かる。

 

 「これってシール?何で貼ってるの?」

 

 「前にヒトカゲに研究をちょっと手伝って貰ったことがあってね。ご褒美あげるって言ったら、このシールが良いって言ったから、どこに貼ろうかなって思ったらそこが良いって言ったんだよ」

 

 「へー、そうなんだ」

 

 「そのシール格好良いでしょ?ボクのお気に入りなんだ」

 

 「うん、かっこいい!大事にするね」

 

 「あ、ありがと……」

 

 たった今自分の物になったばかりなのに「大事にする」宣言をされて、ヒトカゲは驚いたのだった。

 

 「次はこれ、ボールだよ。買ってるかもしれないけど、一応5個渡しておくね」

 

 「ありがとう!」

 

 次にモンスターボール。最初に貰える1匹を抜いて、上限分の6匹までゲット出来るように5個渡されるのだ。尤も、香澄は既に買っているが沢山あって損はない。何故なら捕獲に失敗した場合、ボールが壊されて使えなくなるからだ。

 

 「最後はこれだよ。出て来て、ロトム」

 

 真紀子が奥の部屋に呼び掛けると、オレンジ色のポケモンが素早く出て来た。

 

 「わぁ、ロトムだぁ!」

 

 「香澄ちゃん、スマホを出して」

 

 「うん!」

 

 香澄は何をするか分かったのか、嬉しそうに指示通りスマホを出す。

 すると、ロトムがスマホに入り込みスマホの上下からにゅっと何かが出て来たのだ。

 

 「スマホロトムになった!凄い凄い!」

 

 「スマホロトムって結構便利だからね、今年から希望者にロトムを配布することにしたんだ」

 

 「そうなんだ、それにしても本当に凄いなぁ……。配布ってことは、ロトムをくれるの?」

 

 「うん、あげるよ。手持ち扱いにはならないから安心してね。はい、ロトム専用のボール」

 

 「ありがとうまきちゃん!」

 

 香澄は真紀子からスマホ用ロトム専用のボールを受け取った。

 

 「これで全部かな……」

 

 「全部だよ」

 

 「そっか、良かった」

 

 不安そうにキョロキョロと見回す真紀子に、ヒトカゲはそう返した。

 

 「ところで、今更なんだけどポケモンが話せることに抵抗とかないの?」

 

 「あったら一緒に旅に出ようなんて言わないよー。テレパシーを使えるポケモンだっているみたいだから、話せるポケモンが居たって不思議じゃないしね」

 

 「そっか……良かった」

 

 香澄の返答に、この心配は杞憂だったと思い知る。

 香澄は昔から誰に対しても分け隔てなく接していた。それは自分も例外ではなく、いつもその真っ直ぐ正直な所に助けられていた。その香澄が、ポケモンが人間の言葉を喋った位で嫌う筈があるまい。

 

 「ねぇヒトカゲ、これから一緒に旅をするのにヒトカゲも余所余所しいし、あだ名付けても良いかな?」

 

 「あだ名かぁ、良いね。確かにずっと種族名で呼ぶのもあれだから、良いんじゃないかな」

 

 「良いよ。良い名前付けてね」

 

 「ありがと!それじゃあ……」

 

 香澄はふと、ヒトカゲの尻尾を見た。ゆらゆらと揺らめきながら燃える命の炎。その揺らめきを見て、香澄は閃いた。

 

 「カゲロウ!今日から君はカゲロウだよ!」

 

 「カゲロウ?」

 

 「うん、カゲロウ!尻尾の陽炎がとても綺麗だったから!どう?」

 

 「カゲロウ……。うん、良いね。気に入った!」

 

 「やったぁ!あ、私の名前言ってなかったね。私は戸山香澄!よろしくね、カゲロウ!」

 

 「さっきから真紀子に呼ばれてたから、知ってたけどね……。宜しく!香澄!」

 

 「(良かったね、ヒトカゲ……いや、カゲロウ。香澄ちゃんと出会えて……)カゲロウ」

 

 「何、真紀子?」

 

 「カゲロウ、行ってらっしゃい!そして香澄ちゃん、カゲロウを宜しくね」

 

 「うん!任せてよ!」

 

 こうして、香澄とカゲロウは共に旅立つことになったのだった。

 

 

 

 

 

 「じゃあ、行ってらっしゃい。二人共」

 

 「行って来ます!」

 

 「行って来ます」

 

 香澄とカゲロウは真紀子に挨拶をして、外の世界へと一歩踏み出した。

 一応人目を避ける為、裏口から表門に回ることにした。

 

 「外の空気は美味しいなぁ」

 

 「ここを出たらもっと美味しいとこあると思うよ!」

 

 「そうなんだ、楽しみだなぁ。ところで、これからどこに行くの?」

 

 「まずはハナダシティから!ジム戦楽しみだなぁ」

 

 「ジム戦……聞いたことはあるけど見たことないなぁ。ってことは、ボクが戦うの?」

 

 「そうだよ!バトルは大丈夫?」

 

 「ここ1年バトルらしいバトルをしてないけど……多分何とかなるよ」

 

 「そっか、それだったら挑む前に少し特訓しようか。いきなりじゃ思うようにいかないかもだし」

 

 「そうだね」

 

 これから始まる旅の予定を楽しく語り合いながら、二人は5番道路に続くゲートへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 ゲートを抜け、5番道路に突入した二人は変わらず語り合いながら歩いていた。

 

 「さっきまでいた町も凄かったけど、ここはずっと道が続いてて凄いな……」

 

 「ヤマブキシティはこの国の首都だからねー。建物が一杯建ってて確かに凄いけど、町から一歩出れば結構景色が変わるんだよ」

 

 「人が多くてちょっと怖かったな……香澄はいつもあの人混みの中を歩いていたの?」

 

 「そうだねー。大体どこ行っても人多かったから、人混みは多少慣れてるけどね」

 

 「そうなんだ。香澄は凄いなぁ」

 

 「都会で生活してる人はあれが当たり前だから、嫌でも慣れるんだよ」

 

 カゲロウは久々に外に出た為、見るもの全てが新鮮に見えてずっとキョロキョロと香澄の肩から見回していた。

 

 「ねぇ、香澄。ボク肩に乗っちゃってるけど、重くない?」

 

 「最初はちょっとずしっと来たけど、今は平気かな。カゲロウこそ、ボールの中じゃなくて良いの?」

 

 「今までずっと外に出てたのに、今更ボールに入るのもなぁ……。それに、香澄とずっと一緒に居たいし」

 

 「そっか。じゃあずっと一緒にいよっ」

 

 「うん」

 

 

 

 

 

 歩くこと3時間。昼になり腹が減った香澄とカゲロウは、少し休憩して昼食を取ることにした。

 香澄は座るのに丁度良い岩を見つけると、リュックから今朝香織に持たされたおにぎりを取り出した。

 

 「何味が入ってるんだろう?楽しみだなぁ」

 

 「……」

 

 「ふふっ、カゲロウにもあげるよ。はい」

 

 「ありがとう」

 

 興味津々にじっと見ていたカゲロウに一つ渡し、香澄は食べ始めた。そんな香澄に倣ってカゲロウも食べ始める。

 

 「うーん、美味しい!鮭だー!」

 

 「はむっ……酸っぱいな」

 

 「それは梅だね。どう?美味しい?」

 

 「美味しい!ボク、これ好きだな」

 

 「そっかー、じゃあハナダに着いたらもっと美味しい物食べさせてあげる!」

 

 「他にも美味しい物あるんだ……楽しみだな」

 

 そうして楽しく話しながらおにぎりを全て食べ終え、少しゆっくりしていた。

 

 「ふー、お腹一杯。やっぱりお母さんのご飯は美味しいなぁ」

 

 「香澄のママは、料理上手なの?」

 

 「そうだよ!毎日仕事から帰って来て直ぐに作ってくれてたんだけど、疲れてる筈なのにいつも美味しくて凄いんだぁ」

 

 「へぇ、そうなんだ」

 

 談笑していると、ふと何かの気配を感じたカゲロウ。耳を澄ますと、ガサガサと微かに音が聞こえた。

 

 「香澄、何かいる」

 

 「へ、何かって?」

 

 「分かんない、でも何か音が聞こえるんだ。こっちだよ」

 

 「あ、待ってよカゲロウ!」

 

 香澄は慌ててリュックとギターケースを持って、突然走り出したカゲロウを追い掛けて行った。

 

 

 

 「はぁ……はぁ……急にどうしたの……」

 

 「香澄、あれ」

 

 暫く走ってカゲロウが止まったことでやっと追い付いた香澄は、カゲロウに促されて茂みの方を見る。

 そこには小鳥ポケモンのオニスズメがいた。

 

 「あれは……オニスズメ」

 

 香澄はスマホを取り出し、カメラをオニスズメに向ける。

 

 【オニスズメ、小鳥ポケモン。高く飛ぶのは苦手。縄張りを守る為に猛スピードで飛び回っている】

 

 すると、勝手に図鑑アプリが開き、説明が読み上げられた。

 

 「やっぱりそうだ。これがオニスズメかぁ……本で見たことあるけど、本物は見たことなかったよ。町はポッポで一杯だし」

 

 「本物を見るのも久し振りだなぁ……」

 

 「そっか、カゲロウは元々野生のポケモンだったもんね」

 

 「うん。それに研究所でも沢山本を読んだから、ある程度知識はあるよ」

 

 「賢いんだねぇ」

 

 「まぁ、そこら辺のポケモンよりかはね。それでどうする?ゲットする?」

 

 「もちろん、ゲットするよ!カゲロウ、やれる?」

 

 「早く感覚を取り戻したいからやるよ」

 

 「よしっ!じゃあ行くよ!」

 

 香澄とカゲロウはゲットすることを決めると、更にオニスズメに近付いた。

 

 「そういえば、何使えるか知らないや。カゲロウ、技は何出せるの?」

 

 「鳴き声・煙幕・引っ掻く・乱れ引っ掻き・火の粉。この五つだよ」

 

 「それだったら大丈夫だね。じゃあ早速やるよ!」

 

 「いつでもどうぞ」

 

 使える技を確認し終え、カゲロウは戦おうと構える。

 

 「カゲロウ、火の粉!」

 

 そして香澄が初めての技の指示をすると、カゲロウは勢い良く火の玉を吐き出した。

 火の粉はオニスズメに命中し、煙が少し上がった。

 

 「やったぁ!」

 

 「……」

 

 喜ぶ香澄に対し、煙を睨んだまま構えているカゲロウ。野生時代の経験がある故に、気が抜けないのだ。

 

 「……あっ。香澄!まだ勝負はついてないよ!」

 

 「えっ?」

 

 カゲロウにそう声を掛けられてオニスズメの方を見ると、オニスズメは多少焦げながらもまだ立っていた。しかも、攻撃をされて怒っているようだ。

 

 「まだ立ってられるんだ……」

 

 「ぼーっとしてないで、早く指示してよ」

 

 「あっ、うん!」

 

 カゲロウが香澄に指示を仰ぐと、香澄は次の指示を出そうとする。

 すると、オニスズメが急に鳴き出した。

 

 「な、何?」

 

 「これって……っ!?不味い……」

 

 「え、どういうこと?」

 

 「あれだよ!」

 

 カゲロウが向いた方と同じ方を向くと、自分達が走って来た道の方からオニスズメの大群が飛んで来たのだ。

 

 「うわぁ!何あれ!?」

 

 「あのオニスズメが仲間を呼んだんだ!」

 

 「えっ!?ど、どうしよう!?」

 

 「逃げよう!」

 

 「あ、待ってってば!」

 

 自分達が不利になると判断したカゲロウは、先へと走って行ってしまう。

 想定外のことに混乱している香澄もカゲロウを追って走り出す。

 だが、オニスズメ達は思ったより飛ぶ速度が速く、二人を追い抜いてしまう。

 

 「うわぁ!」

 

 「カゲロウ!!」

 

 カゲロウの前に出たかと思うと、一気にカゲロウに群がり突き始めたのだ。

 

 「い、痛い!痛い!やめろ!」

 

 「やめてオニスズメ!」

 

 香澄は躊躇することなくオニスズメの群れの中に入り、カゲロウに覆い被さるようにして庇う。そして抱き抱えると立ち上がって、また走り出した。

 

 「大丈夫、カゲロウ!?」

 

 「うぅ……痛い……」

 

 一気に突かれた所為で酷く傷付いており、カゲロウはぐったりとしていた。この様子では戦えそうにはない。

 そんな香澄達に追い打ちを掛けるようにして空が灰色になり、雷が鳴り始め、そして遂に雨が降り出した。

 

 「雨が……!このままじゃカゲロウが更に弱っちゃう!」

 

 炎タイプは水に濡れると弱ってしまうことを知っていた香澄は、せめて尻尾だけでもと尻尾を上着の中に入れた。

 

 「この炎だけは絶やしちゃいけないんだ……!」

 

 ヒトカゲの炎は基本的に水に付けても消えはしないが、弱っている状態ではどうなるか分からない。もし消えてしまったら、カゲロウは死んでしまう。

 

 「うわぁあ!」

 

 走り続けていると、どうやら段差になっていたらしく気付かず走っていた香澄は、足を踏み外したことでバランスを崩し思い切りこけてしまった。

 

 「いってて……。カゲロウ!大丈夫?」

 

 派手にこけてしまった所為で両腕両足、更には顔にも擦り傷が付いてしまっているにも拘らず、自分よりこけた拍子に離してしまったカゲロウを心配をし、声を掛ける。かなり飛んでしまったようで、香澄から少し離れた所にある木の傍で蹲っていた。

 

 「キミこそ……大丈夫なの……?」

 

 「私は平気!それより逃げないと……っ」

 

 思ったより傷が痛むようで、立ち上がろうとすると痛みが走って膝を付いてしまった。

 そうしていると、遂にオニスズメに追い付かれてしまう。

 痛みが走る体に鞭打って、香澄は立ち上がり帽子のつばを後ろ向きにすると、カゲロウの前にボールを置いて守るようにして立ち塞がった。

 

 「カゲロウ、この中に入ってて」

 

 「え……?」

 

 「オニスズメ!狙うんだったら私を狙って!カゲロウはもうボロボロなんだよ!」

 

 「香澄……無茶しないで……。キミだってボロボロじゃないか……」

 

 「大丈夫!私はそんな簡単に倒れたりしないから!」

 

 「何で……そんな無茶を……」

 

 

 

 

 「だって、私はカゲロウのトレーナーで、友達だから!」

 

 

 

 

 「……!香澄……」

 

 記憶に残る父の背中が、香澄の背中と一つになって見えた気がした。

 そして、カゲロウの中の心の灯火が、炎になるのを感じた。

 

 「守らなくちゃ……。ボクが、香澄を守らないと……」

 

 カゲロウは頑張って立ち上がろうとする。

 しかし、立ち上がった瞬間。カゲロウの後ろの木に落雷が命中し、燃えながらカゲロウに倒れて来た。

 

 「カゲロウ!!!!!」

 

 音に気付いた香澄は直ぐ様カゲロウを助けようと走るが、間に合いそうにない。

 そして……木は無情にも、カゲロウの上に倒れてしまった。

 

 「そんな……カゲロウ!カゲロウ!」

 

 目の前で起きたことを受け入れられず、ただカゲロウの名前を呼ぶしかない香澄。

 すると、倒れた木が動いたかと思うと次の瞬間、猛烈な炎で燃えて灰になったのだ。

 

 「な、何……?何が起きてるの?」

 

 突然木が灰になったことに驚きを隠せない香澄は、ただただ動揺するばかりだった。

 煙が消えた先に見えたのは、炎を纏ったカゲロウだった。

 

 「カゲロウ……!生きてたんだね!良かったぁ……」

 

 「力が……漲って来てる……!今なら何でも出来そうな気がする!」

 

 特性の猛火と、落雷で燃えた木の炎を纏ったことにより、カゲロウの力は増していたのだ。

 そしてカゲロウはオニスズメの大群を見据えると、思い切り息を吸い、炎を一直線に吐き出した。

 炎の力で新たに習得した、火炎放射だ。

 

 「あれは……火炎放射!?テレビで見たのより凄い火力……」

 

 通常より勢いが増している火炎放射に驚いている香澄は、ただただ真っ赤な炎を見て圧倒されていた。

 炎はオニスズメの大群に命中し、オニスズメ達はたちまち焼け焦げてしまった。

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……。やった、のか……」

 

 「凄いよカゲロウ!」

 

 「うわぁ!」

 

 香澄はカゲロウを抱き上げると腕を伸ばして天高く上げ、くるくると回って嬉しさを体で表現する。

 

 「さっきの火炎放射凄かったよ!キラキラドキドキした!」

 

 「キラキラドキドキ……か。火炎放射でもキラキラドキドキするものなんだね」

 

 「うん!炎がキラキラってしてて、見ててドキドキしちゃった!」

 

 興奮気味に話す香澄を、カゲロウは優しい笑顔で見ていた。

 

 「ボクも……さっきは自分の中でキラキラと炎が燃えて、ドキドキしながら熱が上がって行ったような、そんな感覚があったんだ」

 

 「そうなんだ……。じゃあ一緒だね!」

 

 「そうだね」

 

 二人で笑い合っていると、カゲロウはいつの間にか晴れていることに気付く。

 

 「あれ、いつの間にか晴れてる……」

 

 「ほんとだ……」

 

 「……あっ!香澄、あれ!」

 

 「何々……って、わぁ……!」

 

 カゲロウが指差す先を見ると、綺麗な七色の虹が架っていた。

 二人して虹に見惚れていると、カゲロウは上空に何かいることに気付く。

 

 「あ、あれは……!」

 

 「どうしたのカゲロウ……ん?あれは……」

 

 カゲロウが上空を見ているのに気付き、香澄も空を見上げると金色に輝く大きな鳥ポケモンがを空を駆けて行った。

 

 「確かあれは……ホウオウ」

 

 「本で見たことある……確か、心正しき者の前に姿を現すんだ……」

 

 「心正しき者……」

 

 「多分、キミのことだよ。ホウオウは見てたんじゃないかな、さっきの」

 

 「わ、私!?そんな大したことやってない気がするんだけど……」

 

 「たった一人で、オニスズメの大群に立ち向かった奴が何を言うか……」

 

 「あはは……。でも、そっか。ホウオウは見てくれてたんだね」

 

 遥か彼方の上空で飛ぶホウオウを見ていると、上から何かが落ちて来た。

 香澄は自然と手を伸ばして、その何かを取った。

 

 「これは……羽根?綺麗だなぁ……」

 

 「これ……虹色の羽根じゃないかな?」

 

 「虹色の羽根?」

 

 聞きなれない言葉がカゲロウの口から出て来たことで、頭に疑問符が浮かぶ香澄。

 

 「前に真紀子が写真とか色々見せてくれたんだ。これはホウオウが、自分が認めたトレーナーにだけ落としていくと言われていて、ホウオウが降り立つ地に導いてくれると言われているんだよ」

 

 「ってことは私、ホウオウに認められたの?」

 

 「そういうことになるね」

 

 「何だか不思議な気持ち……旅立って最初の日にこんなの貰うなんて……」

 

 「普通に考えて、凄く運が良いよね」

 

 「そうだね……」

 

 七色に輝く羽根を太陽に翳し、香澄は何かを決めたような顔になる。

 

 「……決めた。私、いつかホウオウに会いに行く!旅して強くなって、いつかホウオウとバトルする!」

 

 「香澄……。ボクも……ホウオウに会ってみたい!いつか行こう!」

 

 「カゲロウ……。うん、絶対に行こうね!ホウオウの所に!」

 

 香澄とカゲロウは、互いの拳を突き合わせ共に笑い合う。

 こうして二人は強い絆で結ばれ、一つ目標が出来たのだった。

 

 

 

 

 「(見つけた……香澄ちゃん)」

 

 楽しげにカゲロウを抱えながら歩いて行く香澄の後ろから、ローブを着た謎の女が後をつけていた。

 女の手には長方形の長いケースの様な物があり、それに一度目をやると女は香澄の方へと走り出した。

 

 「ねぇ、そこの君」

 

 後から突然声を掛けられた香澄は、驚いた様子で振り向く。

 

 「私?」

 

 「君しかいないよ」

 

 「そうだよね……。えっと、あなたは?」

 

 「私は通りすがりのしがないトレーナー。突然だけど、君に頼みたいことがあるんだ」

 

 「頼みたいこと?」

 

 女は更に近付くと、香澄に向かってケースの様な物を突き出す。

 

 「これを、君に託したいんだ」

 

 「これは?」

 

 「これは、世界を簡単に動かすことの出来る幻の楽器。ランダムスターだよ」

 

 「幻の……楽器?」

 

 「そう。今これはとある組織に狙われてて、私が手に渡らないように守ってたんだけど、こういうのは持つべき人間に託した方が良いと思ってね」

 

 いきなり現実味のない壮大な話をされて、戸惑う香澄。抱えられているカゲロウは、女をじっと真剣な眼差しで見つめていた。

 

 「(この人から、香澄と似た様なコドウが聴こえる……。でも、似ているってだけで結構違うな)」

 

 コドウを聴いたカゲロウは、何となくだが目の前の人間が悪人ではないことを感じ取った。

 

 「(取り敢えず、悪い人ではなさそうなのは分かったけど、幻の楽器って……)」

 

 女への疑いがなくなった次に、カゲロウは楽器について疑問に思うのだった。

 そんなカゲロウの様子に気付くことなく、香澄は戸惑いながらも問い掛けた。

 

 「それが本当なら、何でそんな大事な物を私に渡すの?私はそこまで大した人間ではないと思うんだけど……」

 

 「色々あるんだよ、でも今はまだ知らなくて良い。その内また教えるから」

 

 「は、はぁ……」

 

 「それじゃあこれ、宜しくね」

 

 「え?ちょ、ちょっと!」

 

 女は香澄の前にケースを置くと、ボールからリザードンを出して背中に飛び乗る。

 

 「ヒート、次の場所まで連れてって」

 

 「ウォウ《了解》」

 

 リザードンにそう指示した女は、あっという間に空の彼方へと飛んで行ってしまった。

 

 「行っちゃった……」

 

 「あの人、悪い人ではないみたいだったな」

 

 「何で分かるの?」

 

 「コドウを聴いたんだ。香澄のコドウとは違ったものだったけど、悪い気配とかは感じなかった。だから多分、良い人……なんだと思う」

 

 「うーん……まぁ、カゲロウがそう言うならきっと大丈夫だよね。それにしても、これ楽器って言ってたけど、何が入ってるんだろう。形的にギターかベース辺りかな?」

 

 ケースを見ながら中身を推理する香澄は、しゃがみ込んでカゲロウを置いてからケースを倒し、開けることにした。

 

 「中を見たら分かるよね。よいしょっと」

 

 ケースを開けてみると、そこには赤い不思議な形をした楽器があった。

 

 「わぁ、ほんとに星形だ。えっと、弦が1、2、3、4、5……6と。6本あるからギターだね」

 

 「何でギターだって分かるの?」

 

 「似た楽器でベースってあるんだけど、ベースは弦が4本でギターは6本なんだよね。ほら、6本張ってあるでしょ?」

 

 「ほんとだ……。偶にテレビで聞いたことはあっても、詳しくは知らなかったな。香澄は楽器に詳しいんだね」

 

 「まぁ、一応楽器弾いてるからね。ある程度は知ってるよ」

 

 ほら、と背中に掛けていたギターケースを見せる。

 

 「あっ!さっき雨降ってたけど大丈夫かな、これ?」

 

 「何か問題でもあるの?」

 

 「湿気でダメになっちゃうかもしれないから、雨の日は気を付けないといけないんだけど……逃げるのに夢中で気にしてなかったよ……」

 

 「うーん、詳しくないから何とも言えないけど、多分大丈夫だよ。そんな気がする」

 

 「カゲロウ……。そう言われたら、大丈夫な気がしてきた!」

 

 ギターが心配で少し顔が曇った香澄だったが、カゲロウの言葉でまた笑顔になった。

 

 「よし、行こう!早くしないと日が暮れちゃう!」

 

 「そうだね。ボク、今日はもうくたくただよ……」

 

 「あはは。まぁ、色々あったからね」

 

 「歩けないから香澄、運んで」

 

 「りょーかい!」

 

 香澄はケースの蓋を閉め、右手でカゲロウを抱えてから左手でギターケースを持った。

 そして二人は、ハナダシティへと向かう為また歩き始めるのだった。

 

 彼らの冒険の幕開けは波乱に満ちたものだったが、それでも二人は、これから様々な出来事を通じて絆を深めていくだろう。

 そしてこれから二人は、沢山の仲間と出会い、強大な敵に立ち向かっていくこととなるが、この時はまだ知る由もなかった……。

 

 

 

 




第1話、どうやったかな?
おもろかった?それともつまらんかった?俺としてはおもろかった!って思ってくれてたら嬉しいなぁ。
それじゃ、また次回!
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