episode1
ーーチュンチュン、チュンチュンー
僕が寝ているベッドに、夜は閉めている木製の窓の隙間から光が差す。
両親から独り立ちができるようにと与えられた、服の入ったタンスと遊びで使う木剣ぐらいしかない部屋。そんな閉鎖された世界を押し広げるように僕は窓を開いた。外の新鮮な空気が部屋の中に押し入ってくる。少し肌寒い空気を吸いながら伸びをした僕は、今日の一日は何をしようかを考えるのだった。
僕はとりあえずおなかを満たしに台所に行くことにした。おいしそうな匂いがしているからきっと母さんが朝食を作っているはずだ。
台所につくと僕と同じ黒髪黒目特徴を持つ母さんがいた。
母さんも足音で気がついたのかこちらを振り返る。食器などの準備をしているところだったようなので、手伝いながら今日の朝ご飯はなにか聞こう。
「母さんおはよ!手伝うよ」
「おはよう。じゃあこの食器を机に並べるのお願いするわね」
「うん。今日のご飯は何?」
「今日はいつものご飯にお隣さんからいただいた漬物だよ。お父さんたちを起こしてくるから先に顔洗ってきなさい」
「わかったー」
お隣さんの漬物かー…。嫌いじゃないんだけどちょっとだけ辛いんだよなぁ。そう思いながら外で顔を洗って戻ると、もうみんな揃って机についていた。
父さんとも朝の挨拶をしてからみんなで朝ご飯を食べる。朝食の時間は基本的に喋らないんだけど、時間がたつと一口の大きい父さんから食べ終わり会話が始まる。大体最初は今日何をするかについて母さんと話して、その後僕の予定、最後に近況についての雑談という流れだ。
ちなみに朝考えた僕の一日の予定が実行できるか決まる大事な瞬間だったりする。
「今日は特に人手がいる作業はないから、アルは母さんの言うことを聞くようにな?」
っ!!やった!今日はあたりの日だ。
「うん!母さんお手伝い終わらせたらみんなに会いに行って良い?」
「はいはい。いいからちゃんとお手伝いもしてね?」
「うん!!」
母さんは最近ずっと僕がこの調子なので、わかってますよと許可をくれた。極たまにだけど家でも人手が必要なときがあるので、今日がそうじゃなくて良かった。
「おぉ。なんだアル、今日はなにか友達と大事な約束でもあるのか?」
僕があまりにも喜んでいたからか父さんがそう僕に聞いてきた。……しまった、そんなに喜んでいただろうか?顔をムニムニして普通の顔にしてから何でもないと父さんに返事をする。父さんは不思議そうな顔をしてふふふと笑っている母さんを見る。母さんはその視線に気づいて……いや待って母さん!
「今年開墾の番だった家のエナリアちゃんが遊びに来るようになったのよね~アル?」
「あーなるほど、開墾作業が終わって手伝いがなくなったからまた顔を出すようになったんだな」
……顔が熱い…。
母さんもそんな言い方をしたらまるで僕がエナにだけ会いたいから喜んでるみたいじゃないか。僕はエナがいると、彼女が次々面白いことを思いついていつもより楽しいから彼女が来る日は参加したいだけだ。ちなみに村の子供は大体そうだからみんなエナに次はいつ来るのかって聞いてるんだぞ……。
まあ父さんは友達が久しぶりに参加してうれしいから喜んでる位にしか思わなかったのか、何も言ってこないのでいいけどこれで変な誤解をされたらたまらない。村は噂が回るのが早いのだ。エナとの関係が変になったらどうしてくれるのか。
「僕もう行くから!」
これ以上ここにいて変に勘ぐられてはたまらないと僕は撤退することにした。母さんに今日何をすれば良いのか聞いてないけど後で聞けばいいや。
僕は変に熱くなった顔が冷めるまで部屋でゆっくりするのだった。