機動戦士ガンダム -プリンセス・オーケストラ- 作:オリーブドラブ
-リゼット・クラルティ-
主人公。17歳。パリ出身。連邦軍のエースであるヴィヴィアンヌに憧れる、明るく元気な士官候補生。搭乗するジムトレーナーの色はデフォルトの黄色と白。
-ヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ
18歳。パリ出身。全世界にその名を知られている「パリ防衛隊」の一員であり、かつてMSパイロットとして一年戦争を戦い抜いたエース。リゼットと共にジムトレーナーに搭乗する。
――宇宙世紀0080、8月某日。
桃色の髪を靡かせる1人の少女が、黄色と白で彩られた巨人を仰いでいた。RGM-79T「ジムトレーナー」の巨躯を見上げる彼女――リゼット・クラルティの肩は、わなわなと震えている。
だが、その理由は緊張や恐怖といったネガティブなものではない。今にも全身が内側から弾け飛んでしまいそうなほどの、昂り。武者震いによるものであった。
「かなり緊張されているものと思っていたのですが……ふふっ、どうやら違っていたようですね」
「緊張ならしてます。でも……それ以上に嬉しいんですっ! 戦技会に出場できるのも、MSに乗れるのも……そして、あの『パリ防衛隊』のヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ少尉と一緒に戦えることもっ!」
そんな彼女の傍に寄り添い、優しく声を掛けていた茶髪の美女は。頼もしさすら覚える少女の溌剌とした眼差しに、かつての戦友達を重ねていた。
この娘となら、ペアを組んでも良いかも知れない。そんな自分の見込みは間違っていなかったのだと、確信を得ながら。
「まだ少尉が連邦軍に入隊される前……バレエ教室に通われていた時から、大ファンだったんです! 私も少尉みたいな人になりたくて、士官学校に入るまではバレエを続けてたんですよっ!」
「あら……ふふっ、そんなに前から私のことを知っていらしたのですね。では今度、ぜひあなたの演技も見せてくださいな」
「は……はいっ!」
リゼットの髪を指先で愛でながら、ヴィヴィアンヌもジムトレーナーの勇姿を眺めていた。パリ士官学校の特別講師を務めている彼女は今回、リゼットと共に「MS戦技会」に出場することになっている。
――パリ郊外に設けられた、広大な士官学校。その敷地内には、教習用MSが実技訓練を行うための演習場が用意されている。
そこは今、MSパイロットを育成する試みの一つとして、今年から試験的に開催された「MS戦技会」の会場として利用されているのだ。森と山という遮蔽物に満ちた環境の中で、より正確に相手を仕留められる次代のエースを育てるために。
その戦技会に使用されるのが、2人の前に聳え立つジムトレーナーなのだ。教官が同乗するために複座式となっているこの機体を使い、出場を認められた優秀な候補生達が、優勝を争うことになる。
だが、出場するには教官からパートナーに選ばれるほどの優秀なパイロットでなければならない。本来ならどの教官からも選ばれなかったリゼットは、出場できないはずであった。
そんな彼女に目を付け、パートナーの教官役に名乗りを上げたのが、臨時の特別講師として赴任していた連邦軍のエース――ヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ少尉だったのである。
彼女をはじめとする「パリ防衛隊」の活躍を描いたドキュメンタリー映画は2度も制作され、その両方が大ヒットを記録し、現在は第3弾の制作開始も噂されている。
そんな大スターが、スターになる前から憧れだった彼女が、自分をパートナーに選んでくれた。戦技会という大舞台に出場できるよう、便宜を図ってくれた。
「私……勝ちます。絶対に優勝しますっ! あのヴィヴィアンヌ少尉も一緒なら、どんな人にも負ける気がしませんっ!」
「私などより、優秀な教官やパイロットは大勢いますわ。……けれど、まずはその意気込みこそが大事。共に頑張りましょうね、リゼット」
「はいっ!」
その喜びと昂りは、今にも走り出してしまいそうなほどの情熱を、この元気だけが取り柄の少女に齎していたのである。
――教官に選ばれなかったとは言っても、決してリゼットがパイロットとして劣っているわけではない。彼女も教官の人数が足りてさえいれば、間違いなく最初から出場者に選ばれていたであろう、成績優秀者の1人なのだから。
『これより、第1回戦を行います。リゼット・クラルティ候補生は出撃準備を!』
「はいっ! ヴィヴィアンヌ少尉、行きましょう!」
「えぇ……期待させて頂きますわ、リゼット」
やがて、格納庫に響き渡るアナウンスに促され、2人はジムトレーナーに乗り込んでいく。すでにハッチは開かれており、その向こうには美しい森と山の絶景が広がっていた。
「リゼット・クラルティ! ジムトレーナー、行っきまーすっ!」
演習場各地に設置されたカメラから中継されている大会の様子を、パリの全市民がテレビを通じて見守る中。ペイント弾を装填した100mmマシンガンを手に、リゼット機が格納庫から大自然の演習場へと飛び出していく。
「おいっ! あの泣き虫リゼットの奴が、ついに試合だってよ! しかも組んでる相手は、あのヴィヴィアンヌ・ル・ベーグだって!」
「ウッソだろ!? あの何もないところですっ転んでは泣いてたリゼットがなぁ……立派になったもんだ!」
「リゼちゃあぁん! 頑張るんだよぉお!」
そのスラスターの輝きと、試合開始を察した視聴者達の歓声が、戦技会の始まりを彩っていた。幼い頃からリゼットを知っている顔馴染みの市民達も、テレビの前で大騒ぎしている。
『さぁ皆様、窓を開けて上空をご覧ください! 我が連邦軍が誇るエースパイロット達による、素晴らしきアクロバット飛行っ! 彼らがこの花の街の大空に軌跡を描く時――いよいよ記念すべき第1回「MS戦技会」が、幕開けとなるのですっ!』
連邦軍の美形エースパイロットとして度々メディアからも取り上げられている、ギーア・ギア准尉とシンジ・ミュラー軍曹、そしてミック・ゴートン少尉。彼らが駆る3機のコアファイターはパリの上空を華麗に舞い、スモークによる軌跡を描いていた。
その鮮やかな
そんな彼女達の叫びを尻目に翔ぶ3機の軌跡は、連邦軍のマークを大空に描き出しており。終戦からようやく半年を経たこの地上に、その威光を改めて誇示している――。
◇
後に、パリ士官学校の伝統行事として長い歴史を刻んでいくことになる、「MS戦技会」の記念すべき第1回。それは歴史上で唯一、男性が1人も出場者になれなかった大会であり。
MSの操縦に性別など関係ないという事実を、改めて人々に知らしめた伝説の祭典――「プリンセス・オーケストラ」として、後世に語り継がれている。
夏だー! お盆だー! ガンダムだー! というわけで何か明るくてお祭りっぽい感じのお話がやりたいなーと思いまして。前作「烈火のジャブロー」の流れも取り込みつつ、本作を始めさせて頂く運びとなりました。
また、あらすじにある通り、現在は作中に登場する女性キャラを募集していく企画を開催しております。
若き女士官候補生を募集したいなーと考えておりますので、詳しくは私の活動報告を参照! ですぞ(*´ω`*)
Ps
「新サクラ大戦とかガルパンみたいな可愛い女の子達の友情路線をガンダムでやりたかった(゚∀゚)」などと作者は供述しており(゚ω゚)