機動戦士ガンダム -プリンセス・オーケストラ-   作:オリーブドラブ

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-第10話からの登場人物-

-リン・ヤトガミ-
 15歳。茨城出身。生まれながらにして天性の感覚と頭脳を持つ、寡黙な士官候補生。搭乗するジムトレーナーの色はアッシュグレー。
 ※原案は蹴翠 雛兎先生。

-メル・フォルテ-
 19歳。ダカール出身。回避能力に特化した、温厚な士官候補生。搭乗するジムトレーナーの色は金。
 ※原案はヘイトリッド先生。



第10話 平凡の矜恃 -メル・フォルテ-

 それからも、第2回戦の試合内容は熾烈を極めていき――ついに、3回戦進出を決める最後の試合が始まった。

 メル・フォルテとリン・ヤトガミ。2回戦最後の試合ということもあり、観客も彼女達の対決には特に注目している。

 

『ちょ、ちょっと……これ、さすがにちょっとヤバイかもっ! ウチ、もしかして2回戦落ちっ!?』

『……仕留める』

 

 遮蔽物に事欠かない森林地帯に身を隠しながら、アッシュグレーに塗装されたリン機が背後からペイント弾を撃ち放ってくる。それを咄嗟に察知したメル機は、反射神経だけを頼りに、辛うじてその一撃をかわし続けていた。

 金色に塗装されたメル機の全身には、すでにかなりのペイントが撃ち込まれている。まだ試合終了とは見做されていない程度だが、このままでは敗北は必至。

 

 対してリン機は現在に至るまで、メル機のペイント弾には掠ってもいない。森の中から隙を窺い、好機と見れば全速力の一撃離脱戦法で翻弄する。それはまさしく、暗闇の狩人であった。

 

『……諦めろ、メル。お前の腕では私には勝てん』

『へへっ……そりゃあ、ウチは別にリンっちや皆みたいな腕はないしさぁ。出場できたのが不思議なくらいに平凡なのは、分かってるよ』

 

 実力の差は歴然。その上でメルは不敵に笑い、真っ向から(・・・・・)迫り来るリン機を捕捉する。それは、森に潜む彼女の動向が見えていなければ、為し得ない芸当であった。

 

『なにッ……!?』

『……けどさぁ! 平凡なウチがここまで来ちゃったからには……他の皆を差し置いて、この舞台に立っちゃったからにはさぁ! 何にもできないまま終わるなんて、申し訳が立たないって思わないっ!?』

 

 回避能力を除けば、全ての分野において平凡。そんな評価を受けながらも、腐らず今日まで努力を重ねてきた、凡人としての矜持。それが今、メル・フォルテを突き動かしている。

 度重なる攻撃に耐え忍ぶ中で、相手の行動パターンを分析してきた彼女は。ついに、暗闇から牙を剥く狩人の影を、見つけ出したのだ。

 

『……味な真似をぉおぉッ!』

『でえぇえぇーいっ!』

 

 ついに相対した両者は、有効射程圏内で100mmマシンガンを向け合い。互いに声を張り上げ、ペイント弾を撃ち合う。

 両機の全身を塗り替えるほどの量が覆い被さったのは、その直後であった。

 

『試合終了! リン・ヤトガミ候補生、3回戦進出!』

 

 アナウンスが告げたのは、リンの勝利。被弾率の差は僅かなものだったが、最後の撃ち合いまでに重ねていたダメージが功を奏したらしい。

 メルも健闘はしたが、それでもリン機を捉えるまでに負ったダメージの差を、埋め切れるほどではなかったのだ。

 

 だが、リン自身は浮かない顔で視線を落としている。最終的には僅差だったということは、最後の撃ち合いにおいては自分が完全に負けていたことを意味しているからだ。

 もし、あとほんの少し早く、メルがリン機の行動パターンを読み終えていたら。今頃は圧倒的な差で、逆転されていたに違いない。

 

『せっかく勝ったのに、なーにしょげてんの、リンっち。ウチなんかに苦戦しちゃったのがそんなに悔しい?』

『……私には課題が山積みだ。それを今、思い知らされた』

『ふーん? でもまぁ、せっかく勝ったんだし今は喜ぼうよー。そんなに難しいカオして、戻らなくなっても知らないぞー』

 

 そのように思い詰めるリンの様子を、放って置けなかったのか。自らの胸中に渦巻く悔しさを押し殺し、メルは悪戯っぽい笑顔を咲かせて勝者にエールを送る。

 そんな彼女の本音が見抜けないリンではない。が、平凡というには余りにも出来た人間である彼女の厚意を汲み。敢えて、その優しさに心を委ねるように――微笑を浮かべる。

 

『全く……お前のような、平凡がいるか』

 

 罵倒のようにも聞こえる、その言葉は。素直になれない彼女なりの、精一杯の賛辞であった。

 




 活動報告にある通り、キャラ募集企画は明日の8月23日00:00まで続いております。まだまだ募集は続いておりますので、機会がありましたらお気軽にどうぞー(о´∀`о)
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