機動戦士ガンダム -プリンセス・オーケストラ- 作:オリーブドラブ
-セフィラ-
9歳。アテネ出身。かつてジオン軍に研究されていたニュータイプの少女であり、現在は民間人として平穏な日々を過ごしている。
※原案は赤い夢先生。
――昨年に起きた、ジオン独立戦争の渦中。戦火の中で家族とはぐれ、逃げ惑うしかなかった、かつてのアシューカ・クトゥルナ・ジャンファールは。
激しい市街地戦に伴う混乱の果てに、当時のジオン地上軍に保護されていた。連邦軍の管轄下である都市の住民だったこともあり、捕虜として扱われることになった彼女は、自分を取り囲むジオン兵達に怯えるしかなかったのである。
だが、彼女がその見目麗しさ故に不当な扱いを受けることはなかった。否、ある男がそれを許さなかったのだ。
常に物資の不足に喘ぎ、殺気立っている者も多いジオン地上軍の一員でありながら。その男――アドラス・セン少尉は南極条約に則り、あくまでアシューカを客人として扱ったのである。
どんな苦境の中であろうと、紳士たるその姿勢に軍人としての理想像を見たアシューカは。彼らと別れ、家族との再会を果たした後も、その想いを捨て切れずにいた。
連邦軍の士官候補生として袂を分かった今もなお、彼の生き様はアシューカの目標であり続けている。だからこそ彼女は、豊かな環境の中で和やかに過ごす同期達の存在が、許せなかったのだ。
彼女達の中心にいるリゼット・クラルティという存在が、何より気に食わなかったのだ。
(……どうやら、私が間違っていたらしい。彼女達は確かに、和やかな雰囲気を築いてはいるが……それは馴れ合いによるものではなく、切磋琢磨してきたからこその境地だったのだ。現に彼女は今、私の前に立ちはだかっている。あれほど勇ましく、格好良く……)
そんな過去の自分を諫め、アシューカは眼前に立ちはだかるジムトレーナーを、ただ真っ直ぐに見据えている。
第1回MS戦技会の最後を飾る、決勝戦。その最高の舞台にまで勝ち上がってきたリゼット・クラルティは、アシューカの攻撃全てを巧みに潜り抜け、互角の勝負をしていた。
「ヴィヴィアンヌ少尉。私……あなたみたいになりたくて、それだけでMSパイロットを目指していました。けど、今は何よりも、皆の想いに応えたい。アシューカさんに勝ちたいんです!」
「……それで良いのですよ、リゼット。あなたはそれで良いのです。自分のことより、誰かのためにと思えるあなたなら……きっと、彼女だって超えられますわ」
敬愛する師に背を押され、彼女が操るジムトレーナーは、最後の攻撃を仕掛けんとしている。そんな彼女の機体を見守る仲間達は、懸命にエールを送っていた。
「ここまで来たんだ、絶対に負けるな! リゼットッ!」
「リゼちゃあぁんっ! が、頑張ってぇぇえっ!」
ジャネット・ダルシアク、ミレイナ・オコーネル。
「オレ達を差し置いて決勝まで上がったんだろうがッ! だったら、自分の力を全部出し尽くしやがれッ!」
「リゼットさん、頑張って! あとほんの少しですっ!」
アンネリーゼ・フランソワ、ウズメ・トリシャ。
「ちょっとリゼットさん、何をなさっているのっ! この華麗にして優雅なわたくしに代わって、決勝戦の舞台まで勝ち上がったのでしょうっ!? ならば最後まで、諦めてはなりませんわっ!」
「……リゼット、頑張れ……!」
シエル・ヴァンクリーフ、パール・L・レムリアン。
「リゼ頑張れー! 勝ったらぶっといぶちゅーしてあげるーっ!」
「や、やめなさいサフィーニャ、はしたないっ! ……こほん。リゼット、頑張ってっ! ここまで勝ち上がった自分を信じなさいっ!」
サフィーニャ・ヒゴ、アナイス・ルヴェリエ。
「どちらが勝つと思います?」
「……リゼット」
「やはり、あなたとは気が合いますね。……私もです」
アーニャ・ザカエフ、リリア・ラチェーミロ。
「おぉっし、あともう少しだっ! 気張れリゼットッ! アシューカの奴に負けんなよッ!」
「リゼット、決して諦めるな……! ここまで勝ち抜いてきたお前の努力と実力は、紛れもなく本物! 恐れることなく、突き進めッ!」
ナタリア・ランパート、マリア・チヨメ・モチヅキ。
「リゼさん、もう少し、もう少しですっ!」
「ここまで来たらもう、優勝しかないよねっ! リゼットさん、やっちゃえーっ!」
ミエ・フユタ、リオ・ランドール・ウエシロ。
「ウチらも応援してっからねー、リゼっち! 負けんじゃないよぉーっ!」
「……勝て、リゼット!」
メル・フォルテ、リン・ヤトガミ。
「私に勝っておいて、優勝逃したりしたら承知しないよ。……頑張れ、リゼ」
「リゼット! アシューカ! あなた達の全力……この『女王』に見せてご覧なさいッ!」
エレイン・ヴァルプリス。ユリン・フロント。
オーケストラの如き彼女達の声援が、この地に立つリゼットの背を強く押し続けている。
さらに同時刻。パリ市内のとあるカフェでテレビを観ている1人の少女が、リゼットのパートナーを務めるヴィヴィアンヌにもエールを送っていた。
「ヴィヴィー、頑張れーっ! ねぇリュータ、あの子勝てるよねっ!」
「……あぁ、勝てるさ。ヴィヴィーが付いてるんだから」
その少女――セフィラの小さな体を膝に乗せている、保護者の青年も。優しげな眼差しで、決勝戦の舞台に立つ
熱く燃え滾るかの如き、紅い瞳で。
「……まさか、アドラスが面倒を見ていたあの子が士官候補生になっていたとはな。しかも決勝戦まで勝ち進んでいようとは……」
「放送はパリ市内でしかやってねぇようだし、少し停まってくか? 別に俺は構わねぇぜ、ガリウス」
「いや……このまま行ってくれ、カルマ。結果を知るのは、旅を終えてからでも遅くはあるまい」
「……そうかい、殊勝なこって。んじゃあ、俺達はクールに去るとしましょうかね」
パリ市外を走っていた、1台の軍用車の中でも。電波を拾って試合の様子を聞いていた銀髪の男が、感慨深げに息を漏らしている。
だが、先を急ぐ「旅」の途中であるため。彼は留まることをよしとせず、運転手の男にパリから去るよう願い出ていた。
「大丈夫ですよ。彼女ならきっと、今日を糧に立ち上がってくれるはずです。……今、あの子の友達が
『……そうだな。俺も、
「えぇ。……お願いします、ジャック大尉」
シャンゼリゼ通りを歩みながら、上官らしき相手と電話で話している黒髪の青年も。決勝戦の行方に想いを馳せ、希望に満ちた笑みを浮かべている。
「……こりゃあ、いよいよ分からなくなって来ましたぜ。デューク准尉、あんたはどっちに賭けるんです?」
「決まってるさ、
「ははっ、チャレンジャーだなァ。あっちに賭けてる奴なんて、あんたくらいですよ?」
「そう? じゃあ、僕の一人勝ちってわけだ。悪いね、デニス軍曹」
パリ基地の隊舎にあるテレビで、試合の推移を見つめていた、灰色掛かった黒髪の兵士も。からかうように笑う部下を、自信に溢れた眼差しで一瞥しながら――この「賭け」に勝てると、確信していた。
「感じる……感じるよ。ありがとう、みんなっ! リゼット・クラルティ、行っきまーすっ!」
そして。リゼットはこの大会に、この戦いに決着を付けるべく。自機のバーニアを噴かし、アシューカ機目掛けて猛進して行った。
「いいだろう……受けて立つぞ、
そんな彼女を真っ向から迎え撃つべく、アシューカ機も全速力で突撃していき――やがて、両者の激突音がこの演習場に轟く。
それは、この大会の覇者を決定し得る、必殺の一撃であった。
『し……試合終了ッ! パリ士官学校第1回MS戦技会、優勝は――』
◇
――宇宙世紀0080、9月。特別講師としての任期を終え、パリ士官学校を後にしたヴィヴィアンヌ・ル・ベーグは、古巣である「パリ防衛隊」へと帰還していた。
「ヴィヴィアンヌ・ル・ベーグ、ただいま戻りました」
「お疲れ様、ヴィヴィアンヌ。……どうだった? ひよっこ達のお守りは」
「とても有意義なものでしたわ、アリサ中尉。特に戦技会は、私まで胸が高鳴ってしまいました」
「それはシエル達の操縦が荒っぽかったからじゃないの? ほんとあの子達ったら、すぐに熱くなるんだから」
「ふふっ、そこが頼もしいのですよ。いつかきっと、私達を助けに来てくれますわ」
「……くすっ、そうだといいわね」
専用隊舎に帰ってきた彼女を出迎えるアリサ・ヴァンクリーフ中尉は、ヴィヴィアンヌが経験してきたであろう候補生達の戦い振りを想像し、苦笑する。共に司令官――パスカル・ネヴィル中佐の元へと向かう彼女達は、朗らかに談笑していた。
「……楽しかった?」
「えぇ……とっても」
その最中。懐から取り出した数枚の写真に視線を落とすヴィヴィアンヌに、アリサは優しげな微笑を向ける。
そこに映されていたのは、士官学校で触れ合った未来の
ジャネット・ダルシアク。
ウズメ・トリシャ。
アンネリーゼ・フランソワ。
シエル・ヴァンクリーフ。
パール・L・レムリアン。
アナイス・ルヴェリエ。
サフィーニャ・ヒゴ。
アーニャ・ザカエフ。
リリア・ラチェーミロ。
マリア・チヨメ・モチヅキ。
ナタリア・ランパート。
ミレイナ・オコーネル。
ミエ・フユタ。
リオ・ランドール・ウエシロ。
エレイン・ヴァルプリス。
ユリン・フロント。
アシューカ・クトゥルナ・ジャンファール。
――そして最後の1枚に映る、今大会の優勝者「リゼット・クラルティ」。彼女と共に戦い抜いたMS戦技会は、特別講師としての最高の思い出になっていた。
「とっても……素敵なひと時でしたわ」
その万感の思いを込めて。ヴィヴィアンヌは窓辺から残暑の青空を仰ぎ、満面の笑みを咲かせている――。
本作を最後まで読み進めて頂き、ありがとうございます! そして、本作のキャラ募集企画にご参加頂いた皆様、ご協力誠にありがとうございました!(*≧∀≦*)
おかげさまで、彼女達の頑張る姿を最後まで書き切ることが出来ました。いやー、楽しかった(о´∀`о)
本作は作者が手掛けた前作「烈火のジャブロー」の内容を引き継いだ、続編にして真の完結編でもあり。前作までの流れがあってこそのお話でした。
前作における第1部、第2部、第3部の登場人物達。彼らの後を引き継いだ次世代のパイロット達が、「戦争」ではなく「祭典」として競い合う。
そんな平和な時代ならではの一幕をラストに持ってくることで、少しでも希望に溢れた結末を描きたかった。この物語を華やかに締めたかった……というのが、作者の思いでした。
生徒同士の友情劇に重きを置き、勝敗を問わず当人達が笑顔になれるようなラストにする。それだけを考えながら書き続けた作品になりました(о´∀`о)
この先の宇宙世紀史ってほんとにもー、大変なことばかりですからね……。ちょっとの間だけでも、彼女達には幸せでいて欲しい限りであります_:(´ཀ`」 ∠):
前作と同様、キャラ募集ありきの読者参加型企画でしたが、参加者の皆様にも楽しんで頂けたのであれば何よりでございます。
作風の違いを理由に「烈火のジャブロー」とは分けた本作ですが、多分他のサイトで掲載する頃にはしれっと第4部扱いになってる気がしますねー(´Д` )
さてさて。これまで、リゼット達の奮闘を見守ってくださった皆様。改めて、最後まで見届けて頂き誠にありがとうございました。もし機会があれば、またどこか、別の作品でお会い出来ればと思っております(*´ω`*)
ではではっ、失礼致しました!٩( 'ω' )و
【挿絵表示】
Ps
できれば番外編もやりたいなぁー! リゼット達がキャッキャウフフな日常送ってるヤツ!(*゚∀゚*)