機動戦士ガンダム -プリンセス・オーケストラ- 作:オリーブドラブ
――あれから、果てしなく長い年月を経て。地球を、そして宇宙を巻き込んだ苛烈な戦争が、過去のものとなった頃。
かつての平穏を取り戻したパリの街は、人々の笑顔と活気に溢れる花の街として栄えていた。
「いっくぞぉ、オズメ姉ちゃんの店まで競争だーっ!」
「あーっ、ずりぃ! リューセイ、待ちやがれぇー!」
「きゅ、急にそんな、卑怯ですよぉー! 待ちたまえリューセイくん、フータローくんっ!」
「リューにいちゃん、フーにいちゃん、ユーにいちゃーん! ま、まってよぉー!」
雲一つなく晴れ渡る青空。その輝きに照らされた街道を駆ける、元気に溢れた4人の少年――リューセイ・バーニング、フータロー・カブト、ユリウス・ブリゼイド、レド・カルマ。
はしゃぎながら馴染みの花屋へと駆け込んでいく彼らを待っていたのは、艶やかな金髪を靡かせる1人の美女だった。
「はぁ、はぁっ……よぉーし、おれがいっちばん! オズメ姉ちゃん、花束できてる!?」
「あらあら、そんなに慌てなくてもちゃんと出来ていますよ。……さぁ、どうぞ。転ばないように、気をつけてくださいね」
「オズメ姉ちゃん、ありがとー!」
「ありがとーございまーす!」
今日という日のために4人で貯めたお小遣いを使う彼らに、淑やかな微笑を向ける美女――オズメ・トリシャは。華やかに彩られた花束を少年達に差し出すと、彼らの背が見えなくなるまで、白く優美な手を振り続けていた。
「おーっ、名物ガキンチョ4兄弟じゃん。ちゃんとオズメから花束貰ってきたかい?」
「うんっ! ほらっ!」
「そうかい、じゃあちゃんと婆ちゃんに届けてやんなよ。あたしも『あの人』には、昔から世話になってたなぁ……」
「そーなの?」
「そ。だからあたしの分まで、その花でしっかり祝ってやんな」
「……わかった! エレン姉ちゃんもおめでとうって言ってたって、言っとくー!」
夜になれば扇情的な衣装を纏い、あらゆるステージで華麗に舞い、パリ中の男達を魅了する。
そんな世界的ダンサーであるエレオノーラ・ヒゴも、弟のように可愛がっている子供達の姿を目にすると。頬杖をつきながらも微笑を浮かべ、その行先を見守っていた。
「……優しい子達だな」
「でしょー? さぁーて、あたしもそろそろお暇……いだだだっ! シャルぅっ、襟掴むのやめてって言ったでしょ! これ結構高かったんですけどっ!?」
「男共に貢がせて買った服のことなんざ知るかっ! 今度こそツケは完済してもらうよ、エレンっ!」
「今夜の稼ぎでちゃんと払うって言ってんでしょっ! 四六時中そんなカリカリしてっから、いつまでも貰い手が来ないんでしょーがっ!」
「んだとぉーっ!?」
どうやらその一方で、街中のカフェやバーで
日常茶飯事となっている彼女の小言に、エレオノーラは今日
「あっ、ユリア先生ちわーっ!」
「こんちわーっ!」
「ちょっと、あなた達! ちゃんと前見て走らないと危ないわよっ! あと、今度こそ宿題はきちんと出しなさいよっ!?」
「覚えてたら出すー!」
「出すー!」
「覚えてたら……じゃ、なーいっ!」
子供達の通う小学校で教鞭を執っている、ユリア・チヨメ・モチヅキ。伝説的パイロットの血を引く、生真面目な新人教師である彼女は――自由奔放な教え子達に、日々手を焼いているらしい。
「軍人さん、こんちわーっ!」
「お疲れ様でぇーすっ!」
「ははは、そんなに飛ばしてたらまた転んじまうぞー。郊外の婆さんに渡すんだろう? 大事にしろよ」
「はーいっ!」
「……全く。あれで我が軍の誇る英雄達の血を引いてるだなんて、にわかには信じられんな。今時、あそこまで腕白なガキ共はなかなか見ないぞ」
「だからこそ、なのかもな。賭けてみるか? あいつらが、ご先祖達みたいな大物になるか」
「バカ言え、結果が出るまで何年待たせる気だよ」
やがて、地球連邦軍のMSが立ち並ぶ基地の前を横切っていく彼らは。顔馴染みの軍人達に手を振りながら、溌剌とした笑顔を咲かせて走り去っていく。
ルーク・ラングレイ大尉とジョージ・ダルシアク大尉をはじめとする大人達は、そんな4人を苦笑混じりに見届けながら――この平和なひと時を謳歌していた。
「……そうか、そういえば今日は
「ジェイデン中尉、そろそろ訓練の時間です。いつまで油を売っているおつもりですか」
「あぁ分かっている、今行くさ。……その堅物っぷり、一体誰に似たのやら」
「聞こえてますよ」
RGM-119「ジェムズガン」の巨躯に見下ろされた、ジェイデン・オコーネル中尉とダリア・スレイヴ少尉も、その1人である。
「……それに。堅物なくらいが、軍人としては相応しいのではないかと」
一方、パリ防衛隊最強と目されるダリアの手には。この地の士官学校が輩出した、伝説の女傑「アシューカ・クトゥルナ・ジャンファール」の自伝書が抱えられていた。
◇
――そして。子供達が街の喧騒を抜け、穏やかな自然に彩られた郊外へと辿り着く頃。
「あっ、お婆ちゃん! お婆ちゃんいたー!」
「おーい、お婆ちゃーんっ!」
その先にひっそりと建つ、小さなログハウス。その窓辺に佇んでいた1人の老婆は、自分を見つけた子供達の笑顔と呼び声に――まるで少女のような、柔らかな笑みを向けていた。
そんな彼女の手には、著名な軍事史家のレイン・ウォーミングが晩年に執筆したとされる最後の体験記、「烈火のジャブロー」の1冊がある。
激動の時代を生き延び、数多の命が連綿と紡いできた歴史を見つめながら。老婆は、その一端であるこのパリで、人々の営みを見守り続けてきたのだ。
そんな彼女の「これまで」に、感謝を込めて。勢いよく駆け寄ってきた子供達は、祝福の花束を差し出したのだった。
「お婆ちゃんっ! お誕生日、おめでとぉーっ!」
――宇宙世紀0163、8月某日。リゼット・クラルティはこの日、100歳の誕生日を迎えていた。
今回はザンスカール戦争からさらに10年後の、宇宙世紀0163という遠〜い未来のお話でした。これまでの主人公や応募キャラ達の子孫も登場させつつ、新世代へとバトンを渡していく内容となっております(о´∀`о)
「戦争という時代に翻弄された兄妹の救済」という物語としての大筋は前作の時点で完遂しているわけですが、さらにその先のハッピーエンドを書くとすれば、やっぱりこれかなーと思いまして(*´꒳`*)
本当、ここに来るまで宇宙世紀では大変なことばかりでしたからねー。せめてここから先は当分、穏やかな世界が続いていってほしいところでございます(´-ω-`)
もしかしたら今後も、何かネタを思い付いたら番外編として書き起こすこともあるかも知れませんが、あくまで物語の最後はこのお話になるかと思われます。ここまで読み進めて頂き、誠にありがとうございました!(*≧∀≦*)
ちなみにバーニング家の系譜は↓の通り。
リュータ・バーニング
宇宙世紀0059生まれ、一年戦争当時は20歳。陸戦型ガンダム及びガンタンクに搭乗。
↓
リュータ・バーニングJr.
宇宙世紀0084生まれ、マフティー動乱当時は21歳。ジェガン及びグスタフカールに搭乗。
↓
リューゴ・バーニング
宇宙世紀0106生まれ、コスモ・バビロニア戦争当時は17歳。ヘビーガン及びガンダムF90に搭乗。
↓
リューガ・バーニング
宇宙世紀0133生まれ、ザンスカール戦争当時は19歳。ジェムズガン及びVガンダムに搭乗。
↓
リューセイ・バーニング
宇宙世紀0155生まれ、完結編当時は8歳。←今ここ
全員がだいたい20代くらいのうちに嫁さん見つけてるイメージ。シャアの反乱が終わってから子宝に恵まれたカムナ・タチバナと比べれば、結構なハイペースなのかも知れませんな(´ω`)
ではでは。機会がありましたら、またお会いしましょう! 失礼しましたー!٩( 'ω' )و
Ps
この時代でもまだまだジェムズガンは現役!( ゚д゚)