機動戦士ガンダム -プリンセス・オーケストラ-   作:オリーブドラブ

3 / 17
-第3話からの登場人物-

-ウズメ・トリシャ-
 16歳。ヨーク出身。礼儀正しく穏やかな一方、男性恐怖症でもある士官候補生。搭乗するジムトレーナーの色は灰色をベースにしたグラデーションカラー。
 ※原案は魚介(改)先生。

-アンネリーゼ・フランソワ-
 19歳。リヨン出身。名家の令嬢という出自に反した、豪放かつ粗暴な振る舞いが目立つ士官候補生。搭乗するジムトレーナーの色は赤とオレンジ。
 ※原案はカイン大佐先生。



第3話 豪放の暴姫 -アンネリーゼ・フランソワ-

 アシューカ・クトゥルナ・ジャンファール。彼女の圧倒的な強さによって、第2試合が1分も経たずに終了した後。格納庫で次の試合を待つリゼットは、ドリンクを手にジャネットと談笑していた。

 

「もうすっごくすごかったですよね、アシューカさんの戦い振りっ! バシューって飛んでバババッてバーンしてビシャビシャーで終わっちゃったんですからっ!」

「うむ、控えめに言って知性のかけらも感じられぬ講評だな。……が、確かにあの苛烈な攻勢は筆舌に尽くし難い。噂には聞いていたが、まさかあれほどの腕だったとはな……」

 

 他の出場者や生徒達と共に、アシューカの試合を中継カメラで観ていた2人は、揃って彼女の強さに圧倒されていた。そんな中、噂の張本人であるアシューカの姿がリゼットの視界に入り込んで来る。

 

「あっ! アシューカさーんっ!」

「お、おいリゼット!」

 

 試合を終えて間もない彼女を激励しようと、溌剌とした笑みを浮かべて駆け寄っていくリゼットは、ジャネットの制止も聞かずにアシューカの前に立つ。一方のアシューカは、きらきらした眼差しで自分を見つめるリゼットに、忌々しげな視線を送っていた。

 

「アシューカさんっ、2回戦進出おめでとうございますっ! さっきはすっごい試合でしたね! 私もう、どきどきしちゃいましたっ!」

「……リゼット・クラルティ候補生、さっきの無様な試合はなんだ? あんなまぐれ当たり、次は絶対に通用しない。恥をかく前にさっさと棄権することだな」

「えっ……?」

「なんだと……!? アシューカ、貴様ッ!」

「……私はこれで失礼する。少しでも勝ちたいのなら、他の連中の試合も観ておくのだな」

 

 自身の辛辣な発言にリゼットが呆気にとられ、ジャネットが憤るのも意に介さず。彼女は不遜に鼻を鳴らしながら、ドリンクを取りに立ち去っていくのだった。

 そんな彼女の背を暫し睨み、やがてジャネットは心配げな眼差しでリゼットを見遣る。

 

「……リゼット、気にするな。奴は前々から、ああいう鼻持ちならない言動が絶えない奴で……」

「アシューカさん、私の試合観てくれてたんだぁ! いやぁはは、嬉しいやらちょっと恥ずかしいやら……」

「ズコッ!」

「ズココッ!」

「へ?」

 

 その直後に炸裂した天然に、ジャネットだけでなく、背中越しに聞いていたアシューカまでもがズッコケていたのだが。当の本人は、そんな彼女達の反応にキョトンとしていたのだった。

 

 ◇

 

 それから間も無く始まった、1回戦第3試合。その内容もアシューカの時と同様に、一方的なものとなっていた。

 

『オラァッ! どうしたウズメ、そんなもんかァア!?』

『く、うぅッ……! こ、このまま終わるわけにはッ……!』

 

 灰色をベースにしたグラデーションカラーに彩られた、ウズメ・トリシャのジムトレーナー。そんな彼女の機体を追い詰めている、アンネリーゼ・フランソワの乗機には――赤とオレンジという、攻撃的なカラーリングが施されている。

 アンネリーゼ機の連射をシールドで辛うじて防ぎながらも、徐々に場外へと追い込まれていくウズメ機は、絶体絶命の窮地に立たされていた。

 

『いい加減諦めて、白旗上げたらどうだい? 模擬戦だからって無茶してると、今に大怪我しちまうぜ!』

『そういうわけには参りません……! ここまで来て、簡単に負けるわけにはっ……!』

 

 操縦桿を握る手を震わせ、なおも抗おうとするウズメ。そんな彼女を最も苦しめていたのは――実は、アンネリーゼの猛攻ではなかったのである。

 

『……さてはお前、また同期のクソ野郎共に何か言われたな? 女のくせにだとか枠を譲れだとか。違うか?』

『……っ!』

 

 本来なら自分以上の技量を持っているはずのウズメが、一方的に攻められている。その真の理由に、アンネリーゼはすでに辿り着いていた。

 

 今大会の出場者は全員女性となっているが、別にパリ士官学校が男子禁制というわけではない。ただ単に実力を重視して選定した結果、そうなったというだけのことだ。

 しかしそれを認めない男子生徒も多く、中には「女のくせに」「俺達に枠を譲れ」などと迫る者もいたのだという。そんな連中の多くは、すぐに教官や出場者本人に黙らされたのだが。

 今度は「俺達を追いやっておいて、情けない試合なんかしたら許さねえ」という無言の圧力を掛けるようになっていたのだ。せめて少しでも、戦技会に出られなかった自分達の株が落ちないようにと。

 

 控えめで大人しい気質と男性恐怖症もあって、そんな連中のプレッシャーを誰よりも敏感に感じていたウズメは、過度に緊張してしまい本来の実力を発揮できずにいたのである。

 彼女の真の技量を知る友人として、アンネリーゼはそれを見過ごすことができなかった。

 

『……ウズメッ! お前は今、誰を見てる! 誰と戦ってる! 実力もねぇくせして女々しいことウダウダ抜かしてたクソ野郎共か!? 女のくせにとMSに乗ることすら否定しに掛かる、クソッタレな世間様か!?』

『アンネ……!?』

『ちげぇだろッ! お前が今見てるのは、戦ってるのは、このオレ……アンネリーゼ・フランソワだろうがッ! だったらお前の全力で、完膚なきまでオレを叩きのめして見せろッ! お前の強さを、恐ろしさを、この試合を見てるクソ野郎共全員に思い知らせて見せろよッ!』

『……ッ!』

 

 それは、不器用な彼女なりの発破であった。そんな親友の無骨な献身に、心を打たれたのか――操縦桿を握る手から震えが消え、その眼に光が灯る。

 

『……分かりました。このウズメ・トリシャ、改めて……参りますッ!』

『おう! アンネリーゼ・フランソワ……改めて、受けて立つぜッ!』

 

 その変化を感じ取ったアンネリーゼもまた、獰猛に口元を吊り上げ。やがて同時に、遮蔽物から飛び出した両者が、早撃ち対決の如くペイント弾を放ち――この戦いに、終止符が打たれた。

 

『試合終了! ウズメ・トリシャ候補生、2回戦進出ッ!』

 

 刹那の如き一瞬。その行く末を告げるアナウンスが、演習場に響き渡った時。

 

『……やっと、お前らしく戦ってくれたな……ウズメ』

『えぇ。……あなたのおかげです、アンネ』

 

 アンネリーゼはそれまでの粗暴な貌から一転し、女性的な優しい微笑を浮かべるのだった。まるで、この勝利にはにかむウズメと同じ、嫋やかな淑女であるかのように――。

 




 活動報告にある通り、キャラ募集企画は8月23日00:00まで続いております。機会がありましたらお気軽にどうぞー(о´∀`о)


Ps
 前作「烈火のジャブロー」のキャラも出てることですし、実質第4部ですねこれは……(´ω`)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。