めーりんの休日ぶら飯グルメ   作:紗夜絶狼

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第1話 自分好みの天丼

「ん~、昨日は大変な目に遭いましたが、今日は霊夢さんに教えていただいた、人里で行列のできると噂の天丼屋さんに行くぞ」

 

 仕事の疲れを口に出しながら昼過ぎの人里を歩く美鈴。余程の激務だったのか、お腹の虫は食べ物を求めて音を鳴らす。

 

「ぐぬぬ、早く食べたいですがいくら歩いても霊夢さんの言っていた行列なんて見当たらないですね」

 

 人里を歩いてかなり経つが、目的の天丼屋が見当たらないどころか、目印になりそうな行列すらどこにもない。霊夢に騙されたのではないか?そう考えが脳裏を駆け巡る中、近くの路地からワイワイと賑わう「気」を感じ取った。

 その路地に向かうと、小さな店の前に数人の行列が出来ていた。私は列の最後尾の男性に聞いてみることにした。

 

「すいません。実は行列の出来ると噂の天丼屋さんを探していて、もしかしてこのお店ですかね?」

「あぁ、その噂の天丼屋ならここで間違いないぜ」

 

 どうやらここで間違いないないみたいだ。すぐさま列に並び順番を待つ。

 数十分後、「お待たせしました、お次のお客様どうぞ」と元気のいい女性店員の声が聞こえた。声に反応し店に入店する。

 かなり使い込まれているだろう赤い暖簾をくぐり中に入ると、少し広めの店内に、カウンター席と座敷席が2つあり、どちらもお客さんで埋まっている。そしてカウンター越しの厨房では、渋い感じの店主の男性が忙しなく天ぷらを揚げている。

 私はちょうど空いた一番壁寄りのカウンター席に案内され、着席してすぐにメニューを手に取り、吟味していく。スタンダードな海老天丼に始まり、野菜天丼、白魚や山菜など色々ある中、一つの丼に注目した。

 

「あなた好みの天ぷらを4つ選んで、オリジナルの天丼を作ろう!次の30種の中から選んでね」

 

 メニューの1ページにデカデカと書かれた宣伝文句に惹かれて、カスタム天丼の注文を決めた。そしてカスタムする天ぷらを選んでいく。

 

「悩みますね、海老もいいですが・・・、よし決めました」

「すいませーん、注文してもいいですか?」

 

 この声に反応した店員が注文を伺いに来る。そしてすぐさま注文する。

 

「このカスタム天丼を1つ。天ぷらは、卵、レンコン、鶏、タケノコでお願いします」

「かしこまりました。1つ1つ丁寧に揚げる為、少々お時間がかかりますのでお待ちくださいませ」

 

 私は隣に置いてあった文々。新聞を読みながら天丼を待つことにした。普段あまり読む機会が無いためか、思いの外集中して読み込んでしまう。その間にも耳に入ってくる天ぷらを揚げる音、聞いているだけで口の中が今にも洪水になりそうだ。

 新聞を半分ぐらい読み進めたところで、注文した天丼が店員により運ばれ、目の前に置いてくれた。

 

「お待たせいたしました、こちらカスタム天丼になります」

 

 抑えきれない食欲に抗いつつも、まずはカウンターにある箱から割り箸を取り出し、手を合わせ、食への感謝の合掌をし、自分だけの食事を楽しんでいく。

 まずは見た目を楽しむ。丼には黄金のような衣を羽織った天ぷらたち、下に敷き詰められた純白の白米との見事なコラボレーション。見た目を楽しみ、さっそく食べ進めていく。

 

「まずは卵からですね」

 

 卵を1口食べてみる。次の瞬間、私は驚かされた。

 

「この卵、半熟卵なんですか!?」

 

 てっきり固ゆでの卵かと予想していたのに、噛んだ瞬間に半熟で濃厚な黄身が口の中に流れ込む。すると私は反射的に白米を2口ほど頬張った。噛めば噛むほど白米と黄身が見事に調和、ゆっくりと飲み込むと思わず至福の笑みがこぼれた。

 

「はぁ~。こんな美味しいのは反則的ですぅ~。」

 

 あまりの美味しさに卵はすぐに無くなる。次に箸をつけたのは鶏天。丼からはみ出るぐらいの大きさに圧倒されつつも口に運ぶ。やはり美味しい。

 普通パサつきやすいことが多い鶏天なのに、絶妙な揚げ加減によりふっくらと柔らかジューシーに仕上がっている。これはご飯でなくともコシのあるうどんと一緒でも合うに違いない。そして鶏天もすぐに無くなる。

 すると店主の男性がカウンター越しから声をかけてきた、丁度天ぷらを揚げ終え休憩に入っているようだ。

 

「お嬢ちゃんいい食べっぷりだね、もう米もほとんど平らげたみたいだな」

 

 店主の言葉を聞き自分の丼に目を移すと、既に白米の貯蓄が底を尽きかけていた。内心ご飯を大盛りにすればよかったと残念がっていると。

 

「もうお客もアンタしか居ないみたいだし、特別に米のお替りしてやるよ」

 

 えっ!?周りを見渡すと、あれだけお客さんで埋まっていて賑わっていた店内は、今は私一人になってしまっていた。食べるのに夢中になり全く気付かなかった。

 

「なんか悪いですね、ご厚意でお替りまで」

「気にしなさんな、俺はこの天丼を最後まで楽しんで貰いたくてよ。ほら、新しい丼によそっといたぜ、ツユたっぷりでな」

「ありがとうございます!」

 笑顔の店主から渡された丼には、ツユが回しかけられていた。私は休めていた箸を再び手に取り、食事を再開した。

 次に食べるのはこれまた厚く切られているレンコン。口を大きく開け噛みしめていく、食べた瞬間に耳に木霊する「シャキ」「サクッ」がたまらなく最高である。試しにカウンターに備え付けられている塩を少々振りかけて食す。塩との相性も抜群だ。

 お替りでいただいた白米も、美鈴の口に掃除機のように吸い込まれていく。

 レンコンを片付け、最後はタケノコ天を頂く。こちらもレンコンに負けず劣らずの触感に、タケノコの香りが鼻を突き抜けていく感覚になる。最後にはツユに浸かっているご飯を豪快に掻き込んでいきそして。

 

「ご馳走様でした」

 

 店主とこのお店、そしてすべての食材への感謝を思いをこの9文字に込め合掌をした。

 合掌を済ませ、カウンター席を立ち、会計がある店の入り口へ向かう。果たしていくらになるのだろう?値段を予想しながら会計を待っていると、会計担当の女性が金額を告げる。

 

「カスタム丼がおひとつで、計500円になります」

「や、安い!あっ!」

 

 あまりの安さに思わず言葉が口に出てしまい、慌てて口を両手で覆った。私は少し恥ずかしくなり、頬を赤めた。店員にお気になさらなくてもという目線を送られつつも、咲夜お手製の財布から500円を取り出し、店員に渡し、感謝を述べてから赤い暖簾をくぐり私は店を出た。

 すると店から店主が出てきてこう言った。

 

「今日はありがとな。そういやお嬢ちゃんはあの紅魔の館の門番じゃないか?」

「はい、いかにも。今日は休日のため来店しました。あの天丼とても美味しかったです。また今度はお嬢様たちをお連れして来店しに来ますね」

 

 普通の人間の店ならば、レミリアお嬢様やフラン様の名を出したら大抵は入店を拒否される。理由は色々あるが、やはり吸血鬼というのが一番の原因です。だけど店主は笑顔でこう返した。

 

「おうよ。そん時は腕によりをかけて振舞うぜ」

 

 この返事に私は満面の笑みで返し、私は店を後にした。

 その後店の店主が、紅魔の門番が認めた味と新たな宣伝文句を里に流したことにより、あの天丼屋は以前よりも大盛況だと店主からの手紙が送られてきた。

 

「私は何もしてないんですがね・・・」

 

 そう思いながらも、店の繁盛を喜んでいた私だった。大きなあくびをし「さぁ~て、次の休みにはどんな飯屋に行こうかな~。あぁ~待ちきれないな~」

 

 と気を抜いていると後ろから殺気を感じた。

 

「仕事中に休日のことを思いながらサボってるなんていい度胸ね」

 

 正体は怒りに満ちた咲夜だった。

 

「ち、違うんですよ咲夜さん。これには深い訳が・・・」

「言い訳無用!目を覚まさせてあげる」

 

 門番の断末魔は、霧の湖の向こう側にまで響いていたらしい。

 

「ぎゃあああああああ!」

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