おかしな審神者と刀剣男士《ライドウ×刀剣乱舞》 作:アズマケイ
近侍について歌仙やソハヤノツルキといった連中と一悶着あったことを聞きつけたのか、主はすぐに話を聞きに来てくれた。
それぞれの要望を鑑みたのか、翌週の朝礼で近侍について大幅な変更が告知された。検非違使放免の襲撃については完全に潜伏先が鎮圧され、当面の安全性が確保されたということで、有事の時にはただちに一番隊長が近侍をやることは変わらないものの、平時は希望者で週ごとに交代することになった。
当然ながら手を上げる者はそれなりにいて、厳正なあみだくじの結果、今週は僭越ながら俺が近侍を拝命している。次からは何ヶ月後になるかわからないが仕方ないだろう。今の俺は極に到達出来るほど強さに限界を感じてはいないし、一番隊長になるだけの実力を伴っていないのだから。今はただ精進するだけだ。
「主、そろそろ休憩されてはいかがですか。お体に障りますよ」
「ああ、長谷部か?ありがとう。もうそんな時間か」
主が執務室の障子をあけてくださったので、俺は一礼して入室した。燭台切に頼んでいれてもらったお茶とお茶請けを傍らにおき、主は休憩してくれるようだ。主はこちらが注意を向けていないと何時間でも働きになるため休憩を促すのも大切な仕事なのだ。
「長谷部も食うか?」
「よろしいので?」
「話し相手がいないと仕事しちまうもんでな」
「それでは休憩になりませんね。わかりました、ありがとうございます」
燭台切も初めからそのつもりのようで湯飲み茶碗はふたつなのだ。
机にはパソコンが置いてある。なにかのデータが表示されていた。計画書の作成中らしい。主が特に気にすることもなく入れてくださったので、俺が見ても問題ない類のものなのだろう。
「ああ、これか?来週から始まる大阪城への出陣日程の調整表だ」
「大阪城?初めて聞く出陣先ですね。以前の戦力拡充計画や夜花奪還作戦のような類の任務ですか?」
「ああ、いくら出陣しても検非違使が出ない特別任務だ。82振りもいるとみんなの練度を均一にはどうしても上げずらくてな。また参加してはどうかとこんのすけに言われたんだ」
「なるほど。どのような任務なのですか?」
「大阪城といってはいるが、実際はいくら上がってもひたすら続く無限回廊だ。99階まである」
「......?仰る意味がよくわかりませんが」
「だろうな、いってみればすぐにわかるんだが」
主はそういって端末を見せてくださった。
通算21回目となるこの任務は、この国が長らく時間遡行軍との戦いの中で生まれた副産物を活用しているようだ。
大阪城内部に突入すると延々と続く階層、そして時間遡行軍が待ち受けている。階層を踏破するにつれて敵は強くなっていき、それに応じた報酬もある。
ボスの時間遡行軍を倒すと奴らの持っている刀剣からレアな刀剣男士を顕現できることがある。
「以前のように賞与はないんですね」
「大阪城はそういう任務だしな」
「なるほど」
10Fボス:博多藤四郎
20Fボス:後藤藤四郎
30Fボス:信濃藤四郎
40Fボス:包丁藤四郎
50Fボス:毛利藤四郎
51F〜99Fボス:10F降りるごとに「白山吉光」を入手しやすくなる
「博多藤四郎と信濃藤四郎以外はまだいない。一期一振あたりが喜びそうですね」
「稀にだけどな」
「稀にですか」
「そうなんだよ。俺のくずうんじゃ出た試しがない。あんまり期待するなとはいっとくさ。あ、そうだ。なあ、長谷部」
「はい、なにか」
「たしかお前の練度って池田屋は余裕で踏破できるレベルだよな」
「はい、散歩までとはいきませんが周回はできるようになりました」
「よし、ならいけるか。さっき一番隊から連絡があってな、延享は攻略に時間がかかりそうなんだ。同時並行して戦力強化を優先しようと思う」
「いつものように1番隊には出陣させずに、ですか」
「そういうことだ。残りの3部隊で慎重に力量を測りながら進めるぞ。大太刀と太刀部隊、打刀と薙刀部隊、短刀部隊を編成するからそのつもりでいてくれ」
「わかりました。拝命いたしましょう」
「いや、今回の打刀の部隊長はお前に任せる」
「......お、俺にッ............?!」
「お前に、ってなんでそんな驚いてんだ、お前」
「あー......いや、なんでもありません。なんでも。問題ありません。失礼しました」
「ははっ」
「失礼しました」
「顔がすでに笑ってるからな、長谷部」
「失礼しました」
「まあいいけど」
「それはもういいでしょう、主。それより本当ですか?練度が高い連中なら他にもいますが」
「前々から考えてはいたんだ、タイミングが今になっただけで。お前を隊長にしたいって要望書が結構出てきていてな」
「要望書......ああ、ありましたね、そういうのも」
「全部に丸つけるだけじゃなくて、もっとなんか書けよ。なんのための要望書だぞ。わざわざチェックリストまでつけたってのに」
「選り好みするのは違うと思うんですがね。主命とあらばなんだってしますよ、俺は」
「ほんとに有言実行なのはさすがだけどな」
「ありがとうございます」
「で、あとやってないのは隊長だけって話になる訳だ。ほかの連中からも指定されてるし、受けてくれるか」
「わかりました。主の思うままに」
「こうなるとあれだな、近侍も任務によって変えた方がいいかもしれんな。しばらくはお試しだから1週間になってるが大阪城の進行具合によっては前後するかもしれん。遠征や演武は一日のノルマとしてやらなきゃならんからな」
「承知しました。大阪城はどのように進行いたしますか?」
「とりあえずは60階を目標に頑張ろう。それでだ、要望書何件かあるんだよ。お前どれがいい?せっかくだから色々試してみたいんだよ。みんな強くなってきたからな」
「拝見しても?」
「ああ、端末貸してくれ。データ送っておくから、希望に沿うように編成を考えてくれて構わん。今の本丸はそろそろそういう時期だからな」
「編成......」
「今いるのは......物吉か、巴形か、あるいは岩融あたりだな。隊長がどういうことをしてるか聞いとくといい。だいたいの仕事は今から説明するが、隊員には隊長から説明しに行くのが慣例だからな」
「わかりました、お任せ下さい」
「おう。締切はそうだな、木曜日あたりでよろしく。計画書の提出期限が月曜なんでな、金曜日には完成させたい」
「朝礼もありますしね」
「そういうことだ。じゃあ、具体的な内容についてだが......」
主からもらった要望書をみて俺は目を丸くした。
「みんな見てんだよ、よかったな」
俺より先に顕現していて練度が高い打刀連中が揃って俺を推薦するとは思わなかったのだ。これは編成にいれるやつはほとんど決まったようなものじゃないだろうか。主は笑っている。お見通しのようだ。