「にゃやっ!? ここはどこにゃ……」
砂の海で目を覚ましたBTは困惑していた。
「あなたも忘れてしまったのですね。自分の名前は覚えていますか?」
目の前に現れたのは案内人を名乗る少女“リノ”だった。
「にゃもしはBTですにゃ……」
「そうですか」
淡々とした態度でリノは言葉を続ける。
「こちらです、記憶を失った方を案内しています」
「こんな小さい子が案内できるのかにゃ……」
「あなたとそう背丈は変わりませんが?」
「うぅ……」
「それにしても――」
リノはBTの頭の上に視線を向ける。
「大きな耳ですね」
「リノちゃんはフードの下に無いのかにゃ?」
「ありませんよ」
「にゃもしは生まれたときからあるにゃ、あとしっぽも」
BTは大きな耳としっぽをピクピクと動かせて見せた。
「変な方ですね」
リノは興味がなさそうに、BTとしばらく会話を続けて歩く。
「着きましたよ」
目の前には大きな湖が広がっていた。
その傍らに、炎をまとった鳥がいる。リノが上に乗れるくらいの大きさだった。
「この炎鳥に乗っていただきます」
「にゃ!? 熱くないのかにゃ?」
ぼうぼうと燃える炎鳥を前に、BTは当然の疑問を呈した。
「大丈夫ですよ。早く乗ってください」
「怖いにゃあ……」
炎鳥の背にBTを乗せたあと、リノも同じ炎鳥に飛び乗った。
「私が前です、ちゃんと掴まってくださいね」
湖上にゆっくりと昇っていく炎鳥。
果てしない空、翼広げて羽ばたく。
(炎鳥さんは飛べるし、エカ様に似てるにゃあ……)
「下にあるのが忘却の湖。あなたが記憶を失ったのは、この湖が原因です」
「……にゃ? 聞いてなかったにゃ」
「はぁ……」
リノは、やれやれといった様子でため息をつく。
「まあいいです。もう必要ないので」
次の瞬間リノは立ち上があり、ドン! とBTを炎鳥から突き落とした。
「にゃ、落ちるにゃ! エカ様たすけて!」
叫びながら落ちていくBTを下に、炎鳥から見下ろすリノは嘲笑う。
「あはは! 誰も来ない! 餌になっちゃえ!」
飛ぶことの出来ないBTは、そのまま一直線に落下していった。
…………。
膝の上で目を覚ましたBTは困惑していた。
「間に合ったわね」
「にゃ!?」
「怖がらなくてもいい。私の名前はメルセデス」
現れたのは金色の髪の耳の長い、エルフの王を名乗る女性だった。
「炎鳥に乗ってた少女は……、消えてしまったわ」
「にゃ!?」
「あなた大丈夫? 随分疲れてるけど……」
「記憶が無いのですにゃ……」
BTは目覚めたらここにいた事、リノに案内されて落とされたこと。
そして、自分がこれから何をするのか分からないことを話した。
「私は“暗黒の魔法使い”討伐に向かう途中なの、迷子だけどね……」
「にゃ!? それ聞いたことあるにゃ!」
「記憶が戻ったのかしら?」
「にゃもしは村のみんなを助けるんだったにゃ! 思い出したにゃ!」
「そう、よかった。じゃあ私と目的地は同じね」
「みんなも同じにゃ!」
「……?」
目的を思い出したBTはメルセデスと共に、暗黒の魔法使い討伐に向かうのだった。