「に"ゃ~~~!!!!!!!」
「もっと静かに泳げないのかな?」
「騒ぎすぎですぞ~」
ざばざばと泳ぐトビウオの背に乗って激流を下るBTとメルセデス。
忘却の湖から流れ出した“エルダ”をたどる、水しぶき感覚。
トビウオの荒い泳ぎにメルセデスの長い髪が乱れる。
「ところで何でトビウオが喋るの?」
「魚だって喋りますぞ。だからこそ、トビウオも喋りますな」
「そうですに"ゃ~~~!!」
「……?」
忘却の湖から離れ、暖かな日差しが差し込む。
暗黒の魔法使いの元を目指すBTはトビウオに質問する。
「このまま一気に行けるのかに"ゃっあっ?」
「だめですな、“ムト”が道を塞いでおりますぞ」
「ムト?」
メルセデスの問いにトビウオは答える。
「絶対味覚、伝説の料理人を求めてますな」
「ふーん、ムトって?」
「んん! 貴殿らは料理できますかな?」
「にゃもしが料理するに"ゃ!」
「よろしいですな、さあ行きますぞー!」
(……ムトって何だろ)
…………。
ムトは外敵からこの地を守っていて、自分ばかり働くのはおかしい! と、見返りに料理を求めてますぞ。
“食べたことのない味”を求めているのだが、住民の料理は口に合わないので激おこですな。
ムトの体長はありえないほどクソデカく、簡単に道を塞ぐことができますな。
とにかく、力技でどうこうできる相手ではありませんぞ。料理に満足して退いてもらうしかありえない!
「んん着きましたぞ」
陸地に到着するBTとメルセデス。
「ちょっと、酔ったみたい……」
「にゃ! メルさん大丈夫ですかにゃ!?」
トビウオの激しい上下運動にメルセデスはクタクタだった。
「うぅ~ん……、トビウオさん」
「なんですかな?」
「ムトにお願いして通してもらえないのかな?」
「ズルはダメですぞ~」
乗り物酔いしたメルセデスを見たBTはトビウオに告げる。
「メルさんをお願いしますにゃ、にゃもしが食材集めるにゃ!」
大きなしっぽをぴこぴことさせるBT。
待って! と言いたいメルセデスだったが、酔いが覚めないので動けなかった。
「BTちゃんごめんなさい、気をつけて」
「まかせるにゃ! うにゃ~~~!」
走っていくBTを見送るメルセデス。
「一人で大丈夫かしら」
…………。
「ポポく~ん、どうですかにゃ~、お魚捕れますかにゃ~?」
「ライく~ん、エカ様も~。アルく~ん」
「あっ、ポポくん! せっかく捕まえたのに食べちゃダメにゃよ! こらー!」
「もーっ! アルくんも食べちゃだめー!」
BTは魚を捕まえるべく、ざぶんと川に飛び込んだ。
「にゃやや、お魚さん逃げちゃったにゃ……」
…………。
びちょびちょのBTは、しょんぼりとした様子で帰着する。
なんの成果も得られなかったことをトビウオに伝えた。
「飯抜き?」
「はいですにゃ……」
「あー、わかりましたぞ」
「いいですかにゃ?」
「うーむ」
トビウオがエラ呼吸して呟く。
「詰んでる、ってやつですかな?」
「はい、ですにゃ」
「しょうがないですな……」
なんとも言えない空気が食卓を包む。
「いいですぞ」
こうしてトビウオが犠牲になり、ムトはお腹を満たしたのだった。