振り返ってみれば荒波、というかどうも長かった。
マット打ちを始めて1年半した頃、お父さんが還ってこなくなった。討伐クエスト中でのトラブル、大型モンスターとの対峙。よくあることだ。あの人はハンターらしい一種の宿命に散ったんだ。
さらに半年して、今度はお母さんが逝った。原因は感電によるショック。どんなモンスターがやったかはたまたま知っていたから想像がついたし、号泣もしたけど恨みはしなかった。ハンターである以上仕方ないって、無理やり割り切るのが上達していたおかげかもしれない。ただ何故か……もっと力が欲しくなった。
俺は隠居していた自分のじいちゃんに引き取られ、雪山はずれの小屋へと住居を移した。環境をいいことにモンスターたちを相手取るようになっていったのはこのあたりだった。
幸いにもじいちゃんは俺のスタイルを許容できるタイプの人で、毎日がすごく楽しかった。でも二年くらいして、彼は安らかな眠りについた。老衰だった。
血縁者がいなくなって、いよいよ俺は自給自足の生活に突入した。小屋を拠点に雪山へ毎日出向き、時たまポッケ村に寄るの繰り返し。
打って、打って、打って、打って、打った。
雪の塊も、木も、皮も、角も、躯も。
自然物からスタートして。やがてポポ、ガウシカ、その他草食獣へと。最初は雪山の過酷さに戸惑ったし、時には大ケガもした。
収穫は二つあった。体、特に拳が丈夫になったこと。モンスターに慣れたこと……。
――で、気が付いたら十二年。
鍛えてやっと
物心ついた頃からしばらく夢見た、公式のハンターにはなんだかんだでなっていない。ハンターズギルドには余裕ができた時、酒場の客として行くだけだ。雪山で過ごすうちに半ばどうでもよくなってしまったのが大きい。
さて。
「安心しろ、もーいいから」
横たわりながらも何か訴えるようにうめくギアノス二匹に俺は応える。わざわざ命を奪ったりはしない。ハナから実践相手(天然モノ)として倒されてもらうだけのつもりだったから。
薬草を二枚ぎゅぎゅう詰めのポーチから取り出して、整理の意味も兼ね奴らのもとへ置く。生肉じゃないだけに好かないだろうが、人間より遥かに生存本能の強い「モンスター」だ。最終的にはイヤでも喰らってくれるだろう。
「悪かったな。……殴っといてなんだけど、ほどほどに生きろよ?」
通じもしない言葉をもひとつ残して、俺は光漏れる洞穴の出口へ足を踏み出す。伴って痛む、赤黒くなった部分。……今日はわりと噛まれちまったな。帰りにまた薬草を調達しないと足りなくなりそうだ。
(まーいっか)
――武器を持つことすらできない俺には、これくらいがちょうどいい。
もっともっと磨きあげるんだ。