狩人シャドウ   作:AQUA BLUE

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第3話

 ポッケ村の初心者狩人御用達であるマフモフシリーズから、つい昨日草食獣ガウシカの装備一色を揃えた――新米ハンターの彼は、雪山を往きながらも内心、新たな防具での出撃に浮かれていた。

 

 ついつい緩む自分の唇を、クエスト中だぞと言い聞かせてみるもまったくおさまらない。進んでは時々、ふっと低く喜色滲んだ息を漏らしてしまう。ベーシックな鉱石素材、『大地の結晶』をあとひとつ集めれば彼の背にある太刀を強化できる事実も彼の興奮に拍車をかけている。

 

 結果、この弾みはしばらくどうにもならないだろうと、有頂天な彼はどこかで甘ーく許容してしまっていた。

 

 

 

 ところが。拠点を出るより前からずっと遊んでいた彼の表情筋は、固まった。薄暗く外以上に冷えた、空洞を抜ければいよいよ雪山の上層だというところで。

 

 

 

 

 原因は目下に捉えた、負傷し地に伏すギアノス2頭。動きそこしないもののどちらも命に別状はなく(・・・・・・・)、ちゃんと息をしている。

 

 

誰か(別のハンター)がやったんだ』

 

 

 普段の彼ならば、瞬時にそう判断して気持ちを切り替えたであろう。まだまだ狩りに慣れぬ新参者といえど、「ギアノスが道に倒れていたくらい」で動揺するほどピュアではない。ゆえに軽かった足取りを止めたのは、ギアノスの状態から異常性を感じ取ったために他ならない。

 

 

 ――わざわざ生かされているのは? どうして体から何も剥ぎ取られていない? もしやモンスター同士の抗争? ……ありえない。普通捕食されているか、あるいはもっと残酷な傷を負っているはず。

 

 いくつもの想像を浮かべては、当てはまらないぞと思考の外側へと取っ払っていく。

 

 

 

 とうとう彼は納得のいく推論を立てるに至らなかった。と同時に、わかったこともあった。

 

 頭部から胴体までまばらにあるあざや打ち傷。ただ、狩猟武器のハンマーで殴ったものとは違って遥かに浅い。それ以前に肉の抉れが皆無、つまり攻撃方法が種類の武器にも該当しないということである。

 

 

 ……もっとも、それが一番妙な点ではあったのだが。

 

 

 答えの想像を諦める寸前、ひとつの可能性が彼の頭を掠める。

 

 

 

 ギアノスは人間の拳ひとつで行動不能に追い込まれた――?

 

 

 

「いやいや、非常識すぎるよ……」

 

 

 彼はひとり頷いて歩みを再開する。とてもではないが肯定しかねる仮説だった。否定すべく先に進み出したのだ。

 なによりも。ギアノスから向こうへ、空洞の出口へ点々と続く乾ききってない血痕を、見逃さなかったから。

 

 

 採取クエストの件もある。吹雪く山の明るみに出ていけば真実がわかるかもしれないと、思考を放棄したのだった。

 

 

 

 ――ゴオオオオオオオオオッッッ!!

 

 

 

 そして直後、つんざくような雄叫びに心臓を震わせた。

 

「こ、これはっ……!?」

 

 

 咆哮の主の心当たり、もとい確信が彼にはあった。

 元の所在地はおそろか数百メートル先までゆうに届く叫び。おそらくは大型モンスターの中でも巨大な、飛竜種によるもの。だが、自然環境が特に厳しい雪山にて確認されていた飛竜種など数年前までは(・・・・・・・)存在しなかった。だとすれば、つい最近になって発見された「あのモンスター」だと。実際目にしたことはなくとも、話に聞いた経験が生きていた。

 

 

 

 加えてひとつ、彼は気付く。凍った地面に血液を浸らせた者が去ったであろうルートが、ちょうど聴こえてきた方と被っていることに。

 

 

「っ!!」

 

 

 咄嗟に彼は走り出す。そこへ向かってしまった「誰か」を止めるべくして。危険な渦に人がいる可能性がある以上、見捨てる道理は彼の中になかったのである。

 

 万一それがモンスターだったり、現場に誰も居なかったりすれば良し。ターゲットと認知される前に引き返すだけ。到底かなう相手ではない以上、無謀な行動をせずに済む。

 ただ、わけもなく大型モンスターが叫ぶのは考えにくい。とかく最悪のパターンだけは勘弁だと願いつつ、彼は氷柱だらけの安全地帯を抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、白いフィールドに突入するなり愕然とした。極めて軽装な武器持たぬ男が、当のモンスター相手に立ち回っていたのだから。

 

 

 

 

 

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