今回から、本格的に物語が動き出します。
この小説を見て、少しでもゼロワンロスを紛らわすことが出来れは幸いです…(笑)。
”ギャラルホルン”。それは、カラフルな法螺貝の見た目をした完全聖遺物の名称である。
その世界に本来あるべき歴史。その歴史から零れ落ちた”もしも”の可能性。そこから生まれたIFの世界、所謂”並行世界”と本来の世界を繋げる役割を持つ。
並行世界側で異変が生じたときのみアラートの発生という形で異常を伝え、完全聖遺物でありながら一切の制御も干渉も受け付けない。
そんなギャラルホルンの本体が存在する世界。それこそが本来の歴史を紡いできた世界、言わば”原作世界”。1人の歌姫の誕生をきっかけに、何人もの歌姫達が手を取り合い、日本に迫る危機を救ってきた世界。
出会いや別れ、裏切り、衝突を繰り返し、強くなっていった7人の歌姫。彼女達が介入したことで救われた世界も少なからず存在する。
しかし、そんな彼女達に新たなる危機が迫ろうとしていた。
悪意に満ちた黒い影が、音もなく忍び寄る…。
◇◆◇◆◇
―数週間後、デイブレイクタウン―
今日も響はアークの力を使い、ライダーシステムの強化を行っていた。しかし今彼が作っているのは武器でもプログライズキーでもない。
(もしアークドライバーが使えなくなればノイズへの対抗戦力が無くなる。万が一を想定して予備のドライバーを作っておかないとな…)
パソコンのモニターには、アークドライバーよりも一回り小型なドライバーの設計図が写っていた。響はデータの構築を完了させると、Enterキーを押してドライバーの製作を開始する。
するとテーブルの上に、黒と銀色を基調にし黄色いレバーが付いたベルト”滅亡迅雷フォースライザー”が生み出された。響はフォースライザーを手に取ると、再びパソコンを操作する。
「このドライバーと相性がいいキーは全部で4つ…いや5つか?あのキーの上位互換であるコイツなら、もしかすれば…」
響の手には、銀色のグリップが装着された青い狼のプログライズキーが握られていた。
「出来ることならもう1つ作って置きたいが、流石にこれ以上ドライバーのデータは存在しない…待て、このデータは…!」
彼はアークの内部データストレージを調べていると、別のドライバーの設計図を発見した。
「名前は…”飛電ゼロワンドライバー”。成程、元々はアークで製作する予定だったが、アーク本体が消えたせいで設計図のまま内部データで眠っていた訳か。*1折角だ、これも作るとしよう」
そう言うと響は再びパソコンを操作し、ゼロワンドライバーの製作に取り掛かった。
◇◆◇◆◇
―同時刻、二課司令室―
二課の司令官である”風鳴 弦十郎”。彼はモニターを見て浮かない顔をしていた。
「………」
「まだあの件について悩んでいるの?」
「了子君か。ああ…その通りだ」
司令の助手にして天才科学者の”櫻井 了子”が風鳴司令に話しかけた。
「…ここ最近、謎のノイズの消滅現象が妙に増えてるわね。奏ちゃんを向かわせても、もぬけの殻になっているのが殆どだわ」
「まったくだ。被害者が最小限に抑えられているのはいいことだが、ここまでも続くと流石に不気味さの方が勝ってくる」
「その現象が起きる頃には、必ずと言っていいほどカメラへのハッキングが行われている…。余程自分の姿を知られたくないのでしょうね」
「もし善意でやっているのなら、是非とも我々と手を組んで欲しいものだが…ハッキング行為を見る限り、そうとは言い難いな」
その時、司令室の扉が開き2人の女性が入ってきた。長い銀色の髪を二つ結びにした女性は”雪音 クリス”。頭頂部を猫耳風に結んだピンク色の長髪の女性は”マリア・カデンツァヴナ・イヴ”。彼女達はギャラルホルンを通じて並行世界から来たシンフォギア装者である。
「よう、おっさん」
「ご無沙汰しています、風鳴司令」
「君達か、今回は何の用だ?」
「定期報告と、カルマノイズについての情報共有だ。こっちの世界のおっさんからUSBを預かってる」
「そうか、ありがとうな」
風鳴司令はクリスからUSBを受け取った。しかし彼の顔を見て、クリスは何気なく尋ねる。
「元気なさそうだな、大丈夫か?」
「何か悩み事があるのかしら?私達で良ければ、相談に乗るわ」
「しかし…これは我々の世界の問題だ。いくら君達に助けられているのは事実だが…」
「相談するだけなら大丈夫なんじゃない?彼女達の考えを聞くのも、私はいいと思うわよ」
「…そうだな。何度も頼りにするようで悪いが、君達にも話すとしよう」
風鳴司令は真面目な表情になって、2人を見る。
「我々の世界では、君達の世界と違って未だにノイズが出現している。それは分かるな?」
「ああ」
「そのノイズに何か問題が?」
「数週間前から、そのノイズが出現した直後に数分で消滅するという謎の現象が起きているのよ」
「何ですって!?」
「君達も知っているとは思うが、ノイズはそう短い時間で消滅することはない。だからこそ、二課以外の第三者がノイズを倒していると我々は踏んでいるのだが、中々その足取りが掴めないんだ…」
「ノイズ発生の警報が出て奏ちゃんに出動命令を出しても、着く前に全て消滅しているの。辺りを見ても倒したと思われる人物が誰一人としていないから、シンフォギア以外にどんな方法で倒したのかも一切分からないのよね」
風鳴司令と了子は互いに困った表情をする。
「そうは言ってもよ…近くに防犯カメラとかあるだろ。その映像を見れば全部分かるんじゃないのか?」
「一番の問題はそれなんだ…。その消滅現象が起きると同時に、ほぼ100%の確率でカメラが何者かによってハッキングされてしまっている」
「何だって!?」
風鳴司令の言葉に、2人は驚きを隠せなかった。
「ハッキングされてるってことはつまり…」
「そう、映像を写し出すことが出来ないのよ。念入りにも衛星カメラにまでハッキングが行われているせいで、相手の姿形が全て分からないの」
「姿を確認出来るとすれば、その相手がノイズを倒している瞬間にばったり会った時だ。だが相手もノイズも神出鬼没。いつどこで現れるかが分からないから、我々も手をあぐねていたんだ」
一連の話を聞いて、クリスとマリアも悩む。
「その相手は…どうしても司令のような人達に、自分のことを知られたくないのかしら?」
「ご丁寧にハッキングまでしてるってんならそうなんだろ。余程おっさん達を煙たがってる奴らしいな」
「我々二課は人々をノイズという特異災害から守る為に戦っている。相手も同じようにノイズと戦っているのなら、是非とも話がしたいと思っている。だが、それすらも許してはくれないようだ…」
「こんなにも、もどかしい気分になるのはいつ以来かしらね…」
「…そうか。一応あたし達も出来る限り協力はするよ」
「今回話してくれたことも、私達の世界の司令に話してみるわ。もし良かったら、その件に関するデータを私達にくれないかしら?此方の世界で調べれば何か分かるかもしれないし」
「君達を巻き込むことになってしまって申し訳ない…今からデータを用意するから、少し待っていてくれ」
大いなる悪意との戦い…それは、並行世界をも巻き込む程に大きくなりつつあった…。