今回、いよいよアークが降臨します!
―原典世界、S.O.N.G.司令室―
奏の世界から帰ってきたクリスとマリア。彼女達は奏の世界で起こっていた怪しい事件について、司令官である弦十郎に伝えていた。
「以上が、あちらの世界で起きていた出来事についての詳細です」
「ノイズが出現してから短時間で消滅する…か。確かに、俺が知る限りでもそれは有り得ないことだ」
「それと、クリスさんとマリアさんが持ってきたUSBに記録されていたデータを調べてみた結果、分かったことがあります」
マリアと弦十郎の話に、小さな体躯に白衣を着た黄色い髪の錬金術師”エルフナイン”が入る。
「エルフナインくん、それは一体?」
「今回の異変の大元を詳しく知る為に、防犯カメラと衛星カメラに行われていたハッキングについて調べたのですが…」
「何か問題でもあったのか?」
クリスがエルフナインに尋ねる。
「どうやら聖遺物や錬金術とも違って、僕達の世界にも存在していない未知のテクノロジーによってハッキングされていたようなんです」
「何だと!?」
「その証拠に、こちらの映像を見て下さい」
彼等が所存する組織”S.O.N.G.”の拠点である潜水艦。その司令室の大きなモニターに、映像が映し出される。
「これって…!」
最初にモニターに映っていたのは、カメラがノイズの出現を捉えていた映像だった。すると突然、映像の下からおびただしい数の黒と赤い文字が現れるとカメラの映像を瞬く間に覆い尽くしてしまい、やがて砂嵐となってしまった。
「念の為、映像を巻き戻します」
エルフナインが映像を操作すると、砂嵐になる直前で映像が一時停止される。その映像には「悪」「凶」「殺」「怨」「痛」「恨」「憎」「滅」等の、人間の負の感情を連想させるような漢字が散りばめられていた。
「う、うわぁ…」
「何とも嫌な映像デスね…」
薄い茶髪の少女”立花 響”と金髪に×の髪飾りを付けた少女”暁 切歌”が率直な感想を述べる。
「僕もこの映像を元に、関連していそうな聖遺物を探してみたのですが…見つかりませんでした…」
「…これに関しては、我々の世界だけで解決できる問題ではなさそうだな」
エルフナインの言葉に、弦十郎も困ったような顔をする。
「ところでマリア。あちらの世界の櫻井女史から、先程の映像についてもっと詳しい事は聞いてないのか?」
「そこまでは聞いてなかったわね。私も、あの映像を見るのは今が初めてだから…」
「それについてなのですが…」
青い長髪をサイドテールに結んだ女性”風鳴 翼”がマリアに話しかけると、続けてエルフナインが入ってくる。
「実はデータの一部分にだけ、最初はとてつもなく強固なセキュリティロックが掛けられていました。どうやら櫻井さんの技術でも途中までしかロックを解除出来なかったようで…僕がなんとか完全に解除して、あの映像に辿り着けたんです」
「そうだったのか…」
「つまりは…これは意図的に、他人の手でハッキングされたってことだよね?」
「恐らくはそうなります」
黒髪をツインテールに結んだ少女”月読 調”の言葉に、エルフナインが同意する。
「兎に角、この世界に存在しない技術で今回の事件が引き起こされたのならば、我々では完全に対処しきれない。この先は、あちらの世界に任せる必要がありそうだ」
「だけど、あの映像に辿り着いただけでも大きな前進だと思います。一度このデータを、あちらの世界に返してきてもいいでしょうか?」
「そうだな。奏くんの世界には、引き続きクリスくんとマリアくんの2人で行って貰おう。何かあったらまた報告を頼む」
「分かった、またちょっくら行って来るな」
そしてクリスとマリアは再び奏のいる世界に向かった。
◇◆◇◆◇
―片翼世界、二課司令室―
「まさか…こんな映像があったとはな」
風鳴司令がモニターを見てそう呟く。視線の先には、クリス達が見た大量の負の感情を示す漢字の映像が映っていた。
「データの一箇所にロックが掛かっていたから何があるのかと思ったら…犯人は随分と不気味な趣味をしているのね」
「私達の世界では、これ以上のことは分からなかったわ。何か、そちらの世界にしかないテクノロジーに心当たりはないかしら?」
「そうは言ってもな…我々も聖遺物以外のこととなると専門外だからあまりないぞ…」
「…どんなに些細なことでもいいの?」
「何か知ってるのですか!?」
了子の発言にマリアは強く聞き返す。
「今となっては、知る人はあまりいないけどね…あれは2007年のことよ…」
~了子語り~
以前、私達の世界には”飛電インテリジェンス”という大企業が存在していたの。その会社では主に人工知能を取り扱った事業に取り組んでいて、それを元に彼等は”ヒューマギア”と呼ばれる人々の仕事を手伝う人工知能搭載人型ロボットを普及させようとしていたわ。
そしてヒューマギアを制御する目的で、飛電が宇宙に打ち上げようとしていたのが、”通信衛星アーク”。けど飛電の人達は何を思ったのか、突然として打ち上げを中止しようとしたの。
だけど無理矢理に中断させた所為か、衛星アークは大爆発。その爆発で街一つが廃墟と化す大災害となって、人間にも多くの犠牲を出したわ。この事件は”デイブレイク”という名目で語られているわね。これが切っ掛けでヒューマギア普及計画は中止、今の飛電はAIを搭載した小型ユニット*1で事業を進めているの。
けど一説では、その場にいた鋼鉄の仮面と鎧を纏った人物が衛星アークを破壊したことが原因とも言われてるらしいけど…真相は今も不明よ。
~語り終了~
「私としては、最後に話した仮面と鎧の人物…彼の持つ技術が、今回の事件に関係してると思うのよね」
「けどよ、それって実際にいたのかも分からない奴なんだろ?それをどうやって探すってんだ?」
「その本人が持っていなくても、技術が何らかの方法で横流しされてるって事もないんじゃない?どっちにしろ探すのは容易じゃないけど」
了子の意見に、クリスとマリアは思い思いの感想を述べる。そしてそこで風鳴司令が口を開く。
「取り敢えず今は、その人物と技術に関する情報がないか調べてみよう。2人は少しの間、ゆっくりしてもらっても―」
ウゥーーーーーーー!!
突然司令室内にサイレンが鳴り響いた。ノイズの襲来を知らせる警報である。
「市街地を中心にノイズが出現しました!」
「場所を転送します!」
「すまないが2人とも、ノイズの対処に向かってくれ!奏にも連絡してそちらに向かわせる!」
「了解!」
「言われなくても!」
◇◆◇◆◇
―市街地中心―
ノイズが出現したことで民間人が誰もいない中、クリスとマリアはそれぞれのシンフォギアである”イチイバル”と”アガートラーム”を纏って戦っていた。
「そこ!」
「おらぁ!」
マリアは短剣を蛇腹状に変化させてノイズを大量に切り裂き、クリスはアームドギアをガトリングガンに変形させて周囲のノイズを片っ端から撃ち抜いていく。
「今回はやけに数が多いな!」
「私達2人だけじゃ難しそうね!」
『今そっちに奏が向かっている!もう少しの間持ち堪えてくれ!』
「分かってるけどよ!」
「!クリス後ろ!」
大群に紛れて2体のノイズがクリスの背後から飛びかかろうとしていた。マリアの言葉でクリスは存在に気付くも、至近距離では銃撃も間に合わない。
「しまっ…!」
クリスは危機を感じた。
とその時!
『カバンシュート!』
何処からか紫色の矢が飛んで来てノイズを貫いた。2人は矢が放たれた先に目を向ける。そこにはアタッシュケースを変形させたような弓を構えて、フードを被った1人の少年がいた。
「やれやれ…牛乳を買いに来ただけで何でノイズに巻き込まれなきゃいけないんだか…」
少年はそう言うと、静かにフードを取る。
「お前…その顔は…!」
クリスは少年の顔を見て驚くしかなかった。
ベージュ色に近い茶髪を肩の辺りまで伸ばし、髪の両端には赤いヘアピンが付いている。中性的な顔つきに少しつり上がった赤い目は、目先にいるノイズを睨みつけていた。しかし、クリスが驚いたのはそれではない。
その面影が、自分が知る
「物分りの悪い奴等には、お仕置きが必要なようだな…」
その少年…この世界の”立花 響”は懐から、中央が赤く光る黒と灰色のベルト”アークドライバーゼロ”を取り出して腰に当てる。
『アークドライバー!』
そして響はドライバーの上部にある”アークローダー”に手を添えると、小さく呟く。
「…変身」
『アークライズ!』
響がアークローダーを押すとバックルの中央から赤い光が出現し、人々の悲鳴のような音と同時に周囲に3つのトゲトゲした黒い物体が現れる。黒い物体は液体状に溶けると、様々な動物を模した姿となってたちまち響の身体に黒い鎧として装着され、周囲に赤い稲妻が迸ると響の姿は変わっていた。
白いラインが入った黒いアンダースーツ。上半身には黒いアーマーが装着されているが、左半身は胸部装甲を貫くように銀色のパイプが伸び、配線や内部パーツが剥き出しになっている等痛々しい外見になっている。
顔面にはバッタを模したようなマスクを付けているが、触覚を模したアンテナは片方しか無く、左側の無理矢理剥がされたような仮面の下からは、禍々しく光る赤い瞳が此方を覗いている。
『オール・ゼロ…』
祝え。この世界に…
悪意の化身が舞い降りた瞬間を…
最後は祝うべき場面じゃないですよね…(小並感)
感想で指摘されたので補足しておきますが、この世界のアークゼロは人間でも変身出来ますし、アークワンにも本編であったような副作用はありません。