その錬金術師は旅をする   作:のんびりマスター

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楽しんでいってね〜


第一話

風が程よく吹く春。長いコートと少しばかり大きい帽子を被った少女。周り一面、緑で覆われており人通りが殆ど無いような道。そこをただひたすらに歩く。

 

「……まだかかりそうだな」

 

その少女の名はキャロル・マールス・ディーンハイム。今は旅をしているしがない錬金術師だ。

 

「チッ……こんな事ならあの馬車に乗っておけば良かったな」

 

キャロルがここを歩く少し前に馬車が1台だけここを通り、乗ろうとしたが、硬貨を節約してしまい歩くことを選択してしまったのだ。

次の街までまだ遠い……あそこで乗っておけば少しは早く着いていただろう。

 

「錬金術を使うか……いや、それだと誰かに見られた時がまずいな……」

 

今、錬金術師や魔女狩りが頻繁行われている中、街に行くまでに誰かに見られた時に面倒な事になってしまう。

仕方ない……歩くか……

 

「それにしても……暑いな。コートにだけ術を掛けるか」

 

そう言ってキャロルは暑さを和らげる為に少しだけ軽い雪の錬金術をコートに付与する。

 

「ふぅ、少しはマシになったな」

 

「きゃあああああああ‼︎」

 

すると、急に遠くから女性の悲鳴らしきものが聞こえてくる。それを聞きつけ、悲鳴が聞こえる場所に向かってキャロルは風の錬金術を使い、飛ばす。

 

「あそこか‼︎」

 

そこには謎の怪物と横に倒れた馬車と横たわる少女の姿があった。あれは……‼︎

 

「錬金術の失敗作のようだな。近くに錬金術師がいるな。どこだ?」

 

いや、そんな事よりもまずはあの怪物をどうにかする必要がある。後処理は面倒だがやるしかないようだ。

 

「くたばれ‼︎」

 

氷の錬金術で怪物の動きを止め、土の錬金術を展開し、巨大な岩石の塊を作り出し、怪物に向けて突き刺す。

 

「グワァァァァァァァ⁉︎」

 

「これで終わりだ‼︎」

 

拳を握ると同時に岩石が光り出し、それと同時に爆発する。怪物は上半身は跡形もなく粉砕し、残った下半身も散りになり消滅する。すると、上から謎の黒い岩石がキャロルの元に落ちて来る。

 

「これは……あの怪物のコアか?それにしてもデカい」

 

キャロルの元に落ちてきたのはあの怪物のコアと呼ばれる物だ。そのコアを元にその錬金術師が何を作り出そうとしたかが分かる。

 

「あの怪物はなんとかなったな。問題は……」

 

怪物のコアをコートの中にしまうと、キャロルは馬車の近くで横倒れている少女に近づく。

 

「見られているか……それとも、見られていないか……どちらにせよこのままにしておくのも後味が悪い」

 

倒れた馬車を錬金術の力で持ち上げて、後ろの積荷に少女を乗せ、近くに誰も居ないことを確認すると、風の錬金術を使い、近くの街まで移動する。

 

「……やはり錬金術は便利だな。こんなものが奇跡だなど笑わせてくれる。覚えれば誰でも出来るものなんだがな」

 

まだ錬金術の事を知らない人が多い。故に人は錬金術(これ)に怯え、恐怖する。人類ではどうしようも無い災害のように。

 

「全く、いつの時代も生きにくいものだ」

 

すると、後ろの積荷に寝ていた少女が目を覚ます。この空を飛んでいる状態で。

 

「ん……あれ?私、何をしてたのかしら?」

 

「起きたか……面倒な時に起きやがって」

 

記憶を消すか?それとも……もう一度眠らせるというのもアリだな。

そんな事を考えていたその途端、少女はいきなりキャロルの横に飛び出して来る。あまりの行動にキャロルは動揺してしまう。

 

「うぉ⁉︎いきなり飛び出してくるな‼︎」

 

「風が凄い⁉︎もしかしてお空を飛んでるの⁉︎」

 

「何を言ってる。見れば分かるだろ?」

 

「え⁉︎本当に⁉︎あの青くて真っ白なお空を⁉︎」

 

「⁇そうだが……」

 

この娘は一体何を言っているんだ?空を飛んでいるなど見れば分かる。何故いちいち聞いてくるのだ。

あまりの会話の噛み合わなさにキャロルは違和感を感じ、少女の顔を見る。すると、少女の目には包帯が巻かれており、何も見えない状態でいた。

 

「‼︎お前もしかして目が見えないのか⁉︎」

 

「え?そうよ?私は見えないのよ。光は分かるわよ。でもその他はダメ、全然見えない。でも、今は風を感じてるから分かる‼︎空を飛んでるって事‼︎」

 

そう言って少女は手を大きく広げて、風を目一杯身体で感じ取る。目で見えない分、感覚で感じてその気分に浸るようだ。

なるほど…こいつは目が見えていないのか。なら都合が良い。記憶を消すのにも俺の労力が少しだけ減る。

 

「ねえ‼︎貴方はもしかして魔法使いさん⁉︎」

 

「魔法使い⁉︎ンなわけあるか‼︎俺は錬金術師だ‼︎あんな出まかせ野郎と一緒にするな‼︎」

 

「レンキンジュツ?何それ?変なの〜」

 

こいつ……錬金術師を知らないのか?世間知らずにも程があるだろ。

少女は笑いながらキャロルの身体を探す。目が見えないのでキャロルがどこに居るかを手探りで探すしか無いのだ。。

 

「ねえ錬金術師さん貴方は何処に居るの?」

 

「……はぁ、俺はここだ。あと数センチで俺のコートだ」

 

「あ、これね‼︎」

 

キャロルのアドバイスにより少女はキャロルのコートを掴むことに成功する。そして徐々に身体を引き寄せ、キャロルの横に座る。

 

「錬金術師さん……貴方ってもしかして子供?」

 

「見えないのに感が良いな。だが俺はお前よりも年上だ」

 

「そうなの?じゃあ錬金術師さん貴方のお名前を聞いても良いかしら?」

 

「……気が向いたらな」

 

「え〜‼︎私が名前教えてもダメ?」

 

「気が向いたらな」

 

その回答に少女は顔を膨らませながらキャロルを見る。本当に面倒な娘に捕まったものだ。全く勘弁してくれないか……

ここから街まで着くのにまだ時間がある。その間、キャロルは少女に質問攻めをくらうが、キャロルは無視をする。早く着かないかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャロルのあったら良いなストーリー開始です‼︎全てオリジナル展開‼︎

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