「玲さんそこ段差になってるから気をつけてね」
「は、はいっ…きゃっ!」
「おっ…と、言ってる側か…ら……」
履き慣れないヒールが仇になったのかすっ転びそうになった玲さんは、ステップを駆使してクルッと反転する。
その動きは見事なものだった、以前の反省からかヒールでも歩法を行える様に練習したと聞いている。
…が、高級ホテルの床と構造はヒールで行う武術のステップを想定していない。
結果としていつぞやのようににつまづいた玲さんは俺にしなだれかかって…身を預ける体制になったのだ。
「ひゃっ…………」
「…………あー、大丈夫?」
上品なフォーマルドレスを纏う玲さんに抱きつかれているこの状況は、腰の痛みでそれどころではなかった以前と比べて俺に余裕がある事もあり、非常に心臓に悪い。
(……柔らけーなー)
華奢なその肢体を直に感じると本当に玲さんはスタイルが良い事がわかる。
普段であれば同じ事があってもこんな感想は抱かなかっただろう。例えるならば、精緻な飴細工が飾られている。その飴細工が手元に転がり込んで来たら驚愕と不安しか覚えないだろう。
が、俺は普段から“斎賀 玲”または“サイガー0”という存在の頼もしさ、強さを肌で感じているのだ。
そしてこの格式高いパーティーにパートナーとして招待されるという品の良い非日常感はクソゲーでは決して味わえない物である。「クソ」と呼ばれる物らに品を期待する方が間違っているかも知れんが…。
「あばっ、あのそのえとっ!!」
離れようとしているのかもしれないが、パニック状態の玲さんはますます体重をこちらに預けてくる。スーツとドレス越しでも柔らかい玲さんの身体が預けられると…中々まずい。
「くっ……」
端的に言おう、今のシチュエーションは俺が玲さんを意識してしまうには十二分の破壊力を持っている。
「と、取り敢えず玲さん落ち着いて!大丈夫だから!焦らないで!」
そんな事を言う俺が一番大丈夫ではない。が、流石に人の目もあるし、斎賀の御令嬢に不埒な真似をしていると誤解されたくはない。兎にも角にも玲さんを正常に戻す!
「落ち着いて!…そうだ深呼吸!吸ってー吐いてー」
「はひゃ!……スー…ハー…」
混乱状態だからか、素直に深呼吸を始める玲さん。
…………玲さんの胸が上下するのが感触でわかる、わかってしまう。それも結構な体積を持つ装甲部分だ、当然他の箇所より強調されて伝わってくる。
(落ち着け……落ち着け……!玲さんが落ち着いたらゆっくり離れて…)
しかし、玲さんは一向に落ち着く様子を見せない。
(あ…楽郎君の匂い……って私は何を考えて!!!??)
くっ、玲さんが落ち着くまでこの体勢を強要されるのか…いや、離れられないなら姿勢を変えさせれば…ダメだ、動いてくれそうにない。
こうして周囲の視線を感じながらも、玲さんが我に返って離れるまで女性の柔らかさを堪能する事になるのだった。
…外道共には絶対に知られない様にしよう、煽られても言い返せなくなる。
軽率にボディタッチしていけ