これは晴天の霹靂、とでも言うのであろうか。
第0部隊隊長のマリーからの思いもよらない命令にレインは耳を自身の耳を疑った。
「⋯⋯おいおい、何の冗談だ?俺に、教師⋯⋯?それに⋯⋯」
レインは赴任先の校名を見て、頭を抱えたくなった。
その名もヴィクトリア魔術学院。帝国最大にして、最優の学院と言われている。生徒のレベルは高く、もちろん教師を務める魔術師もA級魔術師──一流の魔術師ばかりだ。中にはS級、魔術師として最高位の者もいる。
そこの教師を務めると言うことは、すなわち魔術師としての期待は否応なく、勝手に上がっていくと言うことだ⋯⋯。
「冗談でも何でもないわ。それはれっきとした命令、任務よ。そこにも書いてあるでしょ?」
そういって命令書を指差すマリー。それを見えないように四つ折りにするレイン。
「折るな、現実見なさい」
無理やり戻される。
「まぁ、命令は了解した。⋯⋯だが妙だな。これ、本当に第0部隊──《
「まぁまぁ。これは王様直々の依頼よ、レインの名指しでね」
「んぁぁ、
王直々と聞いたレインはどこか懐かしむ様に視線を遠くへ投げた。
「それとこれ、詳しい資料ね。目を通しておいて」
マリーが資料の入った封筒をレインに渡す。
中からいくつか出し、ざっと目を通す。⋯⋯そして、怪しげな文面に目を細めた。いや怪しいと言うか、レインの魔術師としての勘が違和感を訴えていた。
「おい、マリー。この前任の教師、変じゃないか?⋯⋯『魔術実験中に事故死』だと?」
「さすがレイン。その通りよ」
レインの言葉にうなずくマリー。そして懐から新たな封筒──レインに渡した封筒とは色が違う、極めて秘匿性の高い物に使われる封筒だ──を出す。
レインは紅茶で喉を潤し、続ける。
「前任のコイツ⋯⋯バータ・ジガルドは火属性魔術を得意としていて、その関連で幾つも論文を出しているはずだ。属性魔術の研究は実験ではなく、ただひたすらに優れた魔術式の考案だ。死ぬ要素なんてほぼないはずだ」
「えぇ、だから彼は、錬金術系の実験で構築式をミス、致命的な
「なっている、だと?」
無言で追加の資料を差し出してくる。レインはそれを見て、驚愕した。
「魔術師バータ⋯⋯彼は、殺害されたわ」
「しかもただの殺害じゃない。⋯⋯これは惨殺だ」
バータはある日、自宅の書斎で死んでいるのを同じ学院の教師に発見された。
その様子は酷く、片目は潰れ、腕は焼けただれ、足には穿たれた跡がいくつもあった。
抵抗したのであろう、家の内部はどこも荒れていた。そして、書斎は棚も引き出しも全てがひっくり返されていた。
「彼を殺した犯人の狙いは、おそらく研究の成果ね。彼ほどの魔術師となれば、それは素晴らしい発見をしていたでしょう⋯⋯」
「あぁ、それは間違いない。それに、これをやった奴⋯⋯かなりの手練れだ」
「ヴィクトリア魔術学院に務める教師は一流。属性魔術の専門ともなれば、その戦闘力は軍にいても問題ないレベル⋯⋯。それを、ここまでボロボロにできるなんて、おそらく一方的に、嬲るように⋯⋯」
「なるほど⋯⋯それで、俺らか」
ならば納得がいく。帝国軍に隠されるように設置された第0部隊、通称《
マリーが威厳のある声色で告げる。
「No.6《創造》レイン・アルベール。ヴィクトリア魔術学院へ赴任し、魔術師バータ殺害について調査を進めなさい。⋯⋯この任務、絶対に裏に何かある。気をつけて」
──こうして、レインはこの任務を皮切りに、様々な事件へ巻き込まれてく。⋯⋯それが、世界の命運を握っているとも知らずに。
まぁ続くでしょう