とある科学の領域支配《テリトリー》   作:竜野 ニア

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3話 血濡れの灰被り姫

 

「あたまいたいです……」

 

 久しぶりに寝起きうるさい以外のセリフですね。全く嬉しくありません。というか……

 

「です?」

 

 わたしこんなしゃべりかたでしたっけ? いや、そういえば昔はそんな感じだった気がしますけど……。

 

「あら、起きたのね」

 

 あ、この声はおかあさんですね。どういうことか説明してもらいますよ?

 

「ちょっとおかあさん、これはどういう──わわっ!?」

 

 ……おそらく寝ていたところから落ちましたね。いたいです。

 

「はぁ、能力も起動せずに動いたの? ……思った以上に影響は出るのかもしれないわね……」

 

 見えませんけどおかあさんの呆れた視線がいたいです。まさか能力も起動せずに動くとは……我ながら寝ぼけてるのかあほなのか。とりあえず能力起動しますか。

 

 って、そんなことはどうでもいいです。そんなことより、

 

「お母さん、この口調どういうことですか!?」

 

「………? あぁ、口調にまで影響が出てるのね。大丈夫よ、能力制御に使う演算領域を広げただけだから。能力は格段に使いやすくなっているはずよ」

 

「それで私生活に影響が出たら意味ないじゃないですか」

 

 恨みがましく言ってみるも、答えは分かってます。

 

学園都市の科学者(わたしたち)がそんなこと気にするとでも?」

 

「ですよねー……」

 

 そんなこと気にする人なんて第7学区の病院のおじさんの医者くらいじゃないでしょうか? あの人は医者ですけど。

 

「はぁ……」

 

 まあいいです。命に関わるものじゃないですし、科学者という人種がこういうことを一切考慮しないのはこの身……というかこの目をもってよく知っています。

 

「……で? 今度の仕事(・・)はなんですか?」

 

「私をそんな子供が起きてすぐに仕事押し付けるような人間だと思わないでくれる?」

 

「違うんですか?」

 

「まあそうよ。今回も調整の実験がてらちょっと暴れてもらうわよ」

 

 そう言っておかあさんはなにか──おそらくタブレット──を見せてきますが、

 

「見えないんですけど?」

 

 そういえば言ってませんでしたね。なんとわたし、目が見えません!

 

 能力を使えば『空間把握』で物の形だけは分かるのですが、タブレットの画面や紙に書かれた文字や絵、あと鏡とかガラスもですね。そういったものに映ったものは視えません。光を捉えているのではなくあくまで物の形を捉えているのですから当然といえば当然ですね。

 

 というわけで、タブレットとか見せられてもわたしからすればただの石版と変わらないのですよ。石版ならせめて文字を彫ってください。そうすれば視えるんで。

 

「まったく、仕方ないわね」

 

 そうしておかあさんが読んだ内容によれば、とある倉庫でどっかの組織同士の取引があり、そいつらを無力化して来い、つーか殺っちゃえ。とのことらしいです。

 

 あと、ブツはその場で破壊、無理そうなら持ち帰って来いだそうで。誰に言ってるんですかね? こちとら斬れぬものなどあまり無い。あれ? ほんとに無いですね。な、破壊のプロですよ?

 

 不確定要素として第一位は多分斬れるので第二位の未現物資(ダークマター)くらいですかね? 多分斬れるとは思いますけどアレはよくわからないんですよね。

 

 まあ、斬れなくてもわたしには最終手段、全力逃走がありますからね。

 

 なにせわたしは学園都市逃走部門第一位!(自称)この街で一番鬼ごっこ(逃げる側)が得意な人間ですからね。それで実際に第一位と第二位からは逃げのびたので。

 

 まあ、さっさと勝負服(戦闘服)に着替えて行きますか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 というわけでさっさと着替えてやって来ました目的の倉庫です。

 

 ちなみに今着ている服は、膝上まである黒に近い灰色の袖が広いコートの下に黒いインナーを着て、同じく黒いショートパンツとタイツとブーツなのです。

 

 コートの中には普通の針やら毒針、ピックやらワイヤーやら他にも色々入ってます。

 

 この毒針とか特に便利で、保存の関係上あまり多くは持ち運べませんが、アポートで体内に直接打ち込んで、後で回収してしまえばどこから毒が侵入したのかバレませんし、毒を使い分ければ殺しちゃだめな依頼や誘拐の依頼でも使えるので気に入ってます。

 

 あ、ワイヤーは体内に直接転移させて後は適当な所につないでおけばいいので拘束に便利です。今回は皆殺しなので必要ないと思いますが。というか今回は道具使う必要ないですね。

 

 まあ、そんなことよりさっさと終わらせて帰りますか。

 

「お仕事開始! なのです♪」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 数分後、学園都市の一角にあるとある倉庫では、地獄絵図が繰り広げられていた。

 

 周りを見渡すもどこも血の海、そしてその中には変死体とその者達の物であったであろう銃が真っ二つになって転がっている。

 

 変死体というのも、銃と同じく真っ二つになっている者、頭だけ切断され、どこにもその頭が転がっていない者、身体の一部が食いちぎられたようになくなっている者、見たところ外傷は無いが、倒れている目の前にその者の物であろう心臓が転がっている者など様々だ。

 

 その地獄の中心で、一つの汚れも無く、静かにたたずんでいる灰色の少女がいた。

 

 返り血は少女の周りでまるで見えない壁にぶつかったかのように不自然に途切れている。

 

 心臓をくり抜かれた者は、その少女を見上げ、つぶやく。

 

「……は、はい……かぶり」

 

『灰被り』と。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「はぁ〜」

 

 やっと終わりましたよ。とりあえずあそこにいた人間皆殺しにしましたし言われてた物も消滅させましたしこれでお仕事完了ですね。

 

「帰って寝ますか」

 

 ……とか思ってたんですけど……なんですかね? アレ。

 

 家まで転移を繰り返していたわたしですが、現在視線の先にある(目は見えないので能力にて把握した)光景に首をかしげています。

 

「みさかと………上条?」

 

 どっちも見知った顔ですねぇ。こんな時間にギャーギャーバチバチビリビリと橋の上て騒ぐのはやめてほしいです。

 

 二人の話によれば自分の命を使ってシスターズの実験を止めようとしている御坂とそれを止めようとしている上条、ってな感じですか。

 

 上条(あいつ)のことですから今回もなんとかするんでしょうけど………たぶん時間が足りないですね。

 

 今把握した感じだとたしかにシスターズは救えるでしょうけどある程度の重症は負うでしょうね。

 

 ……どーしましょうかねぇ。

 

 ぶっちゃけわたしは部外者です。でもレベル6も見てみたいですし、シスターズにも少し思うところがあるんですよね。

 

 ただ、“上条当麻”という人間が動き出した以上、悲劇は必ず(・・)食い止められてしまいます。今回の場合はシスターズが(あと御坂も)救われますね。

 

 意味がわかりませんが、まあ、この世界にはわたしの能力含め『原石』や第二位の『未現物資(ダークマター)』みたいな理屈不明のものがありますから常識なんてあってないようなものですね。

 

 ああ、理屈不明の意味不明ならアレもありましたね。あの『天使』。まあ、わたしが勝手によんでるだけですけど。

 

 そもそもAIM拡散力場ってのがよくわかんないですよね。発展した科学は魔法と見分けがつかないって言いますけどその通りですよね。能力者に混じって魔法使いとかいても多分わたし気づきませんよ。

 

 話がそれましたけど、つまりはレベル6を見ることはできなくなってしまったわけですね。

 

「…………。…………………、…………………………」

 

 ……行きますか。よりおもしろそうな未来のために!

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