男子一年会わざれば刮目して見よ   作:ローファイト

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大学2年生となった八幡がマッチョだったら?
というお話です。
意味と意義とかそう言う難しい事は考えてません。


大学日常生活

「はっちー、とべっち、遅れてごめん、待った?」

白のワンピースに水色の薄手のカーディガンを羽織った、清楚な夏らしいコーディネートに身を包んだ海老名姫菜。

彼女は首を傾げながら木陰のベンチで待つ若い男性二人に、微笑む。

高校までは彼女のアイデンティティの一つであった眼鏡はかけてはおらず、大学に入りコンタクトにかえていた。

目元が露わになり、大和撫子然とした目鼻立ちがより一層彼女を清純な美女に見せる。

その微笑みは木陰に刺す斜光で、一層眩しく映った。

 

「大丈夫よぉ、さっき来たばっかりだしィー」

待っていた一人の若者は、茶髪に染めた髪をかき上げながら立ち上がり、相変わらずの崩れた口調で手を振ってそれに答える。

今風でいえばチャラい服装も相まって、かなり軽い男に見える。

だが、彼はこう見えても同大学のサッカー部のレギュラーでエースストライカーだ。

彼の名は戸部翔、海老名姫菜とは高校からの同級生だ。

因みに、戸部は姫菜に数度告白したが、全てすげなく断られている。

それでも彼は、めげずに今も彼女に好意を寄せ続けていた。

 

「いいや、俺は元々ここの木陰で本を読むつもりだったから、問題ない」

もう一人の捻くれた返事を返す若者は読んでいた小説をパタリと閉じ、やる気が無さそうな双眸でベンチに座ったまま彼女を見上げ、静かに答えた。

彼の服装は上下共に水色のジャージ姿だが、彼から発する無気力そうな気配からとても運動部員に見えないため、違和感が拭えない。

彼の名は比企谷八幡、戸部と姫菜と高校からの同級生だ。

高校時代は2年、3年と同じクラスではあったが、それ程親しくはなかった。

大学に入り、何故だか戸部や姫菜の方から八幡に付きまとうようになり、今は誰が見ても友人関係であり、大学内でもこの3人が並んで過ごす姿はよく見られる光景だ。

 

因みに、彼女彼らは別の学部で、姫菜は芸術学部、戸部は教育学部、八幡は法学部だ。

それぞれのカリキュラムや部活動が終われば、こうやって週に数度顔を合わせている。

 

 

3人は並んで広々とした大学キャンパス内をゆっくり歩きだし、校門へと向かう。

「来週さ、隼人くんたちと海に行くんだけどさ、八幡もいかない?」

今は大学二年の夏季休暇前、夏休みの計画について戸部が話し出す。

 

「なぜわざわざそんな暑苦しい場所にいかなくてはならないんだ?」

 

「どうせ八幡はさ、暇っしょ?姫菜も結衣も来るしィー、」

 

「………俺も色々あんだよ」

 

「なになに?八幡なにブルーになってんのさ?」

 

「とべっち、はっちーはさ、去年に結衣と雪ノ下さんと約束したんだよ。この夏休みにはどちらかを選ぶって」

姫菜のこの話は、八幡の高校生時代にまで遡る。

彼が高校3年の夏休み、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣に正式に告白されたのだが、八幡は真剣に考え、今の自分には、二人の思いを受け取る事が出来ないという結論を伝えたのだ。

大学に入り一年の夏、再び雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣の告白に晒される八幡。

八幡は答えを出す事が出来ずに今年の夏まで答えを先延ばしにしたのだ。

告白の答えの延期を伝えられた二人は、八幡を振り向かせるべく女を磨くとかで、この一年八幡と直接会っていなかった。

Lineや電話は頻繁に交わしていたようだが……。

そして、8月8日……その期限が迫っていたのだ。

 

「いたたたたっ、そう言えばそんな話だった、でもでも羨ましすぎるべ、このモテ男っぷり、そんじゃ同時に2人と付き合っちゃえばいいんじゃない?」

 

「とべっち、最低」

姫菜の冷ややかな目が戸部に突き刺さる。

 

「えーっ!?まずった?」

 

「どうせ、はっちーの事だから、『俺なんかと付き合うべきじゃない』とか『俺なんかには2人は勿体ない』とか思ってるんでしょ?」

姫菜は戸部の事は余所に置き、八幡に温かい笑顔を向けていた。

 

「そんなんじゃねーよ」

八幡は姫菜に図星を突かれるが、動揺を隠しながら答える。

 

「はっちーは、自分の事を卑下し過ぎなんだよ。二人の事好きなのに……でも、二人の事が好きだからこそ選ぶのって大変だよね」

 

「そんなんじゃ……」

 

「それとも!愛しの隼人くんの告白を待ってるとかーーーーーっ!!八×隼来たーーーーっ!!」

さらに図星を突かれた八幡が姫菜の言葉を表面上は否定しようとしたのだが、姫菜は何故か突然興奮し、こんな事を絶叫する。

海老名姫菜、1週間後には20歳となるが、彼女の腐女子っぷりは相変わらずであった。

 

「違うからね。海老名少し落ち着こう」

八幡は内心呆れながらも、冷静に対処する。

高校時代は三浦優美子が姫菜の暴走を止める役目であったが、その役目は八幡に引き継がれていた。

 

「はぁ…じゃあ、結衣とだけ会うってのは不味いかぁ……そんじゃ、雪ノ下さんも呼んじゃえばいいんじゃない?」

戸部の空気を読んでるのか読んでいないのかよくわからない言動が飛ぶ。

 

「そう言うのは、はっちーと二人の話だから」

 

「でもさ、二人と会う本番前の予行演習みたいな?ワンクッション置いた方がいんじゃない?しかも外野が居たほうが気にし過ぎなくていいべ?」

 

「うーん。それはありかも………じゃあ、はっちーそう言う事で」

最初は戸部の意見に反対していた姫菜だが、戸部の説得に一理あると見て、戸部の意見の賛成側に回る。

 

「本人無視して、何勝手に話を進めてるんですかね?」

八幡は呆れた眼差しで、2人を見据えていた。

 

「大丈夫、大丈夫!俺もフォローしちゃうからさ」

戸部は八幡に軽い感じでウインクする。

その姿に不安を覚える八幡。

 

「一年ぶりの2人との再会を劇的なシチュエーションを用意してあげるよ」

姫菜もかなりノリノリだ。

 

だが……

 

「再会?サイカイ?……サイ、サイ、……」

八幡は海老名姫奈の会話の中に再会という言葉に、ピクリと反応を示し、何故か俯き加減に

ブツブツと何やら呟きだす。

 

「ちょ、は、八幡!?」

その八幡の様子に、戸部は焦りだし、海老名姫菜はニヤケ顔でポシェットからデジカメを取り出す。

 

「サイドチェストーーーっ!!」

突然雄叫びを上げる八幡。

その雄叫びと共に八幡が着ていた上下のジャージは爆発を起こした様に破裂し、その下からどう考えてもジャージに収まるはずが無い筋骨隆々の肉体が現れる。

どう見ても肉体は二回りどころか、圧倒的に膨れ上がっていた。

八幡は右手で左手首を掴み横向きにポージングを決め、肥大した大胸筋と丸太のような腕や足の筋肉がより一層強調され、見る物を圧倒させる。

 

「キターーーーー、サイドチェスト!!頂きましたわっ!!」

姫菜は、八幡のそのゴリマッチョなブーメランパンツ姿に、何故か眼鏡をわざわざ装着し、顔を蒸気させ興奮し、彼の周りを素早く動き周り、美女にあるまじきだらしない顔をさらけ出しながら、いろんな角度からデジカメを構えパシャパシャと写真を収めていく。

 

「………ないわーー」

戸部翔はそんな二人の様子を、ため息交じりに呆れて茫然と見ていた。

 

 

 

 

八幡に何があったか説明しよう。

去年の夏休み終盤。

戸部はサッカー部の監督にフィジカルを鍛えるようにと忠告され、とあるスポーツジムを紹介される。

1人で行くのが億劫な戸部は、体験コース無料キャンペーンのチラシを片手に、八幡をスポーツジムへと誘ったのだ。

それに、雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣二人に再び告白され思い悩む八幡を、普段と異なる環境に身を置かせ、運動させる事でストレスを発散させうようとする思いもあった。

「一人で行けよ。なぜわざわざ体力を消費しにいかにゃならんのだ」と、当然の如く八幡は断ったのだが、戸部はめげずにしつこく八幡を説得に掛かる。

それでも、首を縦に振らない八幡。

だが、丁度このタイミングで、高校の一つ下の後輩だった一色いろはから電話がかかって来る。

明日、総武高校に来てくれだのという頼み事だった。

生徒会の仕事やらの面倒な厄介事が待っているのだろう事を察した八幡は……

「すまんな一色、明日用事がある」

「バイトじゃないですよね。小町ちゃんから、明日はシフトが無いのは把握済みです。先輩の大学のスケジュールも午前中で終わりますよね」

一色は既に八幡が明日の午後からフリーであることを把握済みだった。

 

「せ、先約があるんだよ」

 

「先輩が先約とか、可笑しくないですか?それに、可愛い後輩の用事より大切な用事なんてないですよね先ー輩♪」

「戸部と約束していたんだ」

「本当ですか?」

「ああ、今、戸部と一緒に居る」

「戸部先輩ですか?どうせくだらない用事だから断ってください。というか代わってください。私が断って上げます」

八幡は戸部にジムに明日一緒に行くから一色を如何にかしてくれと頼み、戸部にスマホを渡す。

戸部は一色に罵られたり、蔑まれたりしながらも、何とか一色の攻勢を交わしきる。

まあ代償として、戸部は一色にそれだけの対価を払う事になるのだが……

 

 

翌日。

戸部と共に憂鬱そうにジムへ向かう八幡。

 

駅前のデカデカとマッチョのオブジェが聳え立つビルへと足を踏み入れる。

そのジムの名はシルバーマンジム。

 

そこで爽やかイケメンの名トレーナーと出会う。

 

最初は嫌がっていた八幡だが、トレーニングを黙々と行っている最中は、悩み等を忘れる事ができ、次第にはまっていく八幡。

何時しか、筋肉を鍛える事が八幡の日課となって行き、爽やかイケメン名トレーナーの元、たった1年間で強靭な肉体を手に入れるまでに至る。

 

 

 

そして………

 

「フロント・ラット・スプレッドーーーっ!!」

 

次々とポージングを決めていく八幡の元に、何時の間にか人だかりが出来ていた。

ほぼ八幡ファンクラブと化した女子漫画サークルや、写真部、造形電子サークル、ボディービル部などなど、写真をパシャパシャと撮っていたり、スケッチをしていたり、体をくねらし恍惚に八幡の肉体を鑑賞する女性に一部の男共が集まっていた。

この光景は今やこの大学の日常風景と化しつつあった。

 

「いいね!仕上がってるよ!はっちー!!」

姫菜は鼻血と涎を垂らしながら、八幡の肉体を写真に収めていく。

 

「………」

 

「はい!そこでとべっちがはっちーの二の腕を抱きしめるーーーっ!!」

 

「…………」

戸部にはそんな姫菜の雄たけびは耳に入っていない。

順応性が高いハズの戸部なのだが、こればかりは慣れる事が出来なかった。

 

「そこのボディービル男子!はっちーと肩を組む!!キターーーーっ!!いいーーっ!!」

 

 

「……………」

戸部はこの光景を見て思った。

夏休み、八幡を連れて海に遊びに行くのはまずいのではないかと。

しかも、由比ヶ浜結衣と雪ノ下雪乃と一緒に………。

 

 

 

 

 

 

 




うむ。
3話ぐらいで終わりたい。
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