男子一年会わざれば刮目して見よ   作:ローファイト

10 / 10
感想ありがとうございます。

今回はかなりやってしまった感があるお話です。
ご了承を……。


雪ノ下家

8月8日

比企谷八幡と雪ノ下雪乃は晴れて恋人同士となった。

雪乃からすれば2年半越しの恋が実った形である。

 

その一週間後。

恋人となってから初めて顔を合わす二人。

八幡はいつものジャージ姿ではなく、こじゃれたカジュアルスーツ姿で、雪乃の方は清楚な白のワンピース姿だ。

雪乃の自宅マンションで待ち合わせをし、二人は出かける予定であったが、デートではない。

八幡は向かう先について、考えるだけで憂鬱だった。

「いきなり、実家って……、こういうのってもうちょっと付き合ってからとかじゃないのか?心の準備がまだというかなんていうか」

「ごめんなさい。母さんがあなたを連れてくるようにと何度も連絡があって、……でも、いきなりでもないでしょ?あなたは母とは何度も顔を合わせているのだし」

「はぁ、高校時代にやらかしてるからな、お前のかーちゃんに嫌われてるんじゃないか?」

「あなたは私の彼氏さんなのでしょ?大丈夫よ」

「期待に応えられるかどうかわからんが、何とかするしかないか」

これから雪乃の実家に向かうのだ。

デートやら何やらをすっ飛ばして、恋人同士となって初めてのイベントが恋人の実家への挨拶であった。

 

電車を乗り継ぎ、駅からタクシーで向かった先は、広大な敷地を持つ大邸宅の前だった。

寺の山門のような大きな門扉の前に八幡はつい身じろぎする。

「……か、帰ってもいいか?」

「ここまで来たのだから、覚悟を決めなさい」

「はぁ、憂鬱だ」

 

雪乃がインターフォンを鳴らし「雪乃です」と一言応えると、門扉がギギギと開き、その先には純和風の平屋の屋敷と洋館が二棟並んでいた。

因みに、純和風の屋敷は旧雪ノ下家邸宅で、現在は来賓を迎えるための用途となっており、洋館の方が実際の生活の場である母屋となっていた。

出迎えに現れた雪ノ下家の家政婦が「奥様は鳳の間でお待ちです」と純和風の屋敷へと二人を案内し始める。

 

長い廊下を家政婦の後ろに雪乃と八幡がついて行き、とある襖の前で「こちらでお待ちです」と家政婦は案内を終え、その場を静々と去る。

「母さん、入るわ」

「ええ、待っていたわ。雪乃」

雪乃が声をかけると、雪乃の母から返事が返って来る。

 

「失礼します、こんにちは」

雪乃が襖を開け、八幡が挨拶しながら部屋に入る。

十二畳の和室の中央には、木目調高級座卓の前に着物姿の雪乃の母親が座っており、その横には雪乃の姉の夏らしい涼し気なシャツを着こなす陽乃が座って待っていた。

「こんにちは、比企谷さん」

「やっほー、比企谷君」

雪乃の母と陽乃はそれぞれ挨拶を返す。

 

「姉さんはなぜここいるのかしら?」

雪乃は陽乃を軽く睨む。

どうやら雪乃は陽乃がこの場に居ることを聞かされていなかった様だ。

 

「妹の恋人が挨拶に来るのよ、それに私は雪ノ下家の長女として、家を継ぐ者として、この場に居なくてはならないわ」

陽乃はいつもの軽口ではなく、真剣な眼差しで言葉を返してきた。

 

「比企谷さん、そちらにお座りになって、雪乃も」

雪乃の母は娘のやり取りなど気にせずに、八幡に座卓を挟んだ前に座るように促す。

 

「失礼します。これつまらないものですが……」

八幡は座布団の上に座ると同時に、持ってきていた菓子折りを座卓の上に置く。

 

「ありがたく」

雪乃の母が、丁度お茶を出しに来た家政婦に視線を移し、アイコンタクトを取ると、家政婦が「預かります」と菓子折りを八幡から受け取る。

 

家政婦が4人の前に冷茶と和菓子をそれぞれだし、静々と退出した後。

八幡は意を決し、事前に準備していた言葉を口にする。

「こ、この度は雪乃さんとお付き合いさせて頂くことになりました」

 

「それは聞いています。比企谷さん。……雪乃にも困ったものね。相談もなく」

どうやら雪乃の母は、雪乃と八幡が付き合うことを良しをは思っていないようだ。

 

「私と彼が合意したのだから問題ないわ。そもそもこんな席を設ける必要も本来ないわ。母さんがどうしてもと言うから」

 

「はぁ、この子ったら……、比企谷さん。申し訳ないですが、雪乃と別れてもらえませんか?」

雪乃の母は雪乃を呆れ顔で見やってから、真剣な面持ちで八幡にこんなことを切り出した。

 

「ちょっと待ってください」

「何を言うの!母さん!」

これにはさすがの八幡も面を食らい、雪乃は激しく抗議する。

 

「前々からあれ程言っているのに、雪乃、あなたもわかっているわよね。比企谷さんが雪ノ下家に連なる者となる条件に合致しないのは……。例え、お付き合いしたとして、結婚は許可できないわ。それなのにあなたは強引に事を進めて……、ならば傷口が浅いうちに分かれた方が比企谷さんにとっても、あなたにとっても有意義というものよ」

 

「いいえ、母さん。彼は完璧よ」

 

「雪乃……比企谷さんは確かに頭も切れるし、度胸もある。それは認めます。大前提が合致しないのでは、結婚どころか、本来お付き合いも憚れる問題です」

雪乃の母は強い口調ではあるが、あきれ気味雪乃にはっきりと言う。

 

八幡は二人の話を聞き、雪乃の母に質問を投げかける。

「大前提って……、俺の家が何処にでもある一般の家だからですか?」

八幡がこう言うのも仕方がない。

雪ノ下家は代々千葉に根差している名家であり、さらに雪乃の父は現在千葉の県議会議員であり、次は国政にと噂される人物でもあった。

普通の一般家庭である比企谷家と家格を見ても釣り合わないのは明白であった。

 

「そうではありません。雪ノ下家が男性に求めるものは家格などと言った不確実なものではありません。その男性個人が持つ能力です。ですが、比企谷さんは雪ノ下家が求める大前提と言える能力条件を満たしているとはとても見えませんもの。残念ですが……」

雪ノ下家の当主は代々女性で、男性は入り婿だ。

その婿の選別はかなり厳格に行われていた。

その中でも最も婿としての資質を問われる大前提があった。

 

「大前提?母さんの目は節穴かしら?」

雪乃はここで余裕の笑みを浮かべる。

 

「何を言っているのです?陽乃も雪乃に何か言ってあげなさい」

雪乃の母は八幡をじっと見つめてから、今まで沈黙を守っていた陽乃に雪乃を諫めるように言う。

 

「だ、大前提は、だ、大事よ。はぁ、はぁ、そ、そうね。とても大事。だからここで審査しないと」

陽乃は何故か顔を赤くし息使いも先ほどから荒い。

その目は何故か八幡を怪しく捉えていた。

 

「陽乃?どうしたのです?」

そんな娘の状態に疑問顔を向ける雪乃の母。

 

「そんなに言うなら、良いわ。母さんのその目が節穴だったことを後悔させるわ、比企谷君立ってもらっていいかしら」

「雪ノ下?」

雪乃はすくっと立ち上がり、八幡にも立つように促す。

八幡は母娘のやり取りを疑問に思いながらも、雪乃に従い立ち上がる。

 

「雪乃、比企谷君に恥をかかせるつもり?おやめなさい」

母は雪乃に対し、厳しく叱責する。

 

だが……

雪乃は立ち上がった八幡の耳元に囁きだす。

「比企谷君、あなたは最高の彼氏よ。自信をもって、最高、そうサイコウ、サイコウなのよ」

 

「雪乃、見苦しいですよ」

そんな雪乃の行動に母の目はますます鋭くなる

 

そんな中八幡は、雪乃の囁く言葉を耳に入れて反応しだす。

「最高?サイコウ?サイコ…サイ…サイ……」

その様子に雪乃はニヤリとほくそ笑む。

 

そしてついに……

「サイサイサイッ!!ハイ!!サイドチェストーーーーーーーッ!!!!

八幡は腹の当たりの位置で右手首を左手でしっかり握り斜め横にびっしりとポージングを決めると、八幡が着ていたカジュアルスーツは風船が破裂するかのようにボンという音共に四散し、その下から何倍にも膨れ上がった鋼のような筋肉が飛び出した。

見るものを圧倒する全身の筋肉の塊。

解放された筋肉の喜びを表現するかのように、全身が脈動する。

勿論八幡は笑顔だ。

 

こんな状況で八幡はゴリマッチョボディにブーメランパンツ一丁というシュールな姿を思いっきり晒す。

 

「はわわわわわわわわわわ」

雪乃の母はその衝撃に、驚きのあまりその場で後ろにひっくり返る。

だが、八幡のはち切れんばかりの肉体からは目を離さない。

 

その横に座っていた陽乃は……。

「いい!すごくいい!はぁ、はぁ、はぁ、じゅるっ……はぁ、はぁ、も、もうダメ、これ以上は……」

興奮のあまり息が上がり、今にも卒倒しそうな勢いではあるが、その目は怪しく八幡の姿を捉えて離さず、とろける様な顔をさらし、よだれも垂れかけていた。

 

八幡の筋肉暴走を意図して促した雪乃は……。

「ああっ、いい!すごくいいわ大胸筋!……もういいでしょ?我慢できない!」

我慢ならないという感じでポージングを決める八幡の腕に抱きついた。

 

「はぁ、はぁ、ゆ、雪乃ちゃん、私もさ、触ってもいいわよね!?」

陽乃はゆらゆらと立ち上がり、八幡に迫りだす。

 

「ゆ、ゆゆゆ雪乃!!こ、こここれは!?はわわわわっ、な、なんて素晴らしい!丸太のような大腿四頭筋なのかしら!はわわわわわわっ」

雪ノ下母も畳を這うように、八幡に迫る。

 

「ダメに決まってるわ。これ(筋肉)は全部私の物よ!」

雪乃は八幡の前に出て、二人の前に立ち塞がる。

 

「はぁ、はぁ、独り占めは良くないわ雪乃ちゃん。雪乃ちゃんの物は私もの、雪乃ちゃんの彼氏の筋肉も私のもの……はぁ、はぁ」

なおも迫って来る陽乃。

 

「はわわわわ、認めます!ひ、比企谷君は雪ノ下家の婿として認めます!だから彼は雪ノ下家の共有財産よ!娘の物は母のもの、娘の婿の大腿四頭筋も母のもの……はわわわわわっ」

そう雪ノ下母も極度の筋肉フェチだった。

いや、雪ノ下家の女性は代々筋肉フェチなのだ。

雪ノ下家の婿の大前提は、マッチョであることなのだ。

そもそも強く丈夫な遺伝子を残すため、そもそもは男性は強く健康であるという大前提だったのだが、時代の流れと共にエスカレートし、さらにそれに興じて雪ノ下家の女性がマッチョを求めてやまない性癖とまで進化してしまった歴史があった。

 

モストッ!!マスキュラーーーッ!!

 

「はうううう!?だ、大胸筋が!?腹筋が!?花咲いている!?はううううう!?筋肉の花園があううううう!?」

雪乃の母は八幡のその姿に、興奮のあまり目を回し、その場に仰向けに倒れて小刻みに震えていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、上腕二頭筋も!?はぁ、はぁ、はぁ、も、もう我慢できない!!」

ゆらゆらと八幡に近づいていた陽乃は、八幡に襲い掛かる勢いで一気に迫ってきた。

 

「姉さんには渡さないわ。彼(筋肉)は私のものよ!!」

雪乃は八幡に迫る姉の陽乃を合気術でいなす。

 

「妹の物は私の物、比企谷君の筋肉も私の物よーーー!!」

「何を戯言を!」

ついには雪ノ下姉妹によるキャットファイトが勃発。

 

そんな中八幡は……。

フロント!!ラット!!スプレッドッッ!!

バッグッ!!ダブルバイセップス!!

暴走したまんまだった。

 

 

 

和室の中央ではゴリマッチョボディーの八幡が暑苦しい笑顔でポージングを叫びながら次々と繰り返すのみ!!

その周囲では、よく似た顔立ちの美人姉妹が何故か興奮しだらしない顔をさらしながらキャットファイトを!!

ちょっと離れたところで和服の清楚系美魔女が興奮のあまり仰向けに倒れ、息絶え絶えで痙攣していた!!

 

この空間にはまともな人間は存在せず、カオスと化したのだった。

 




誰が止めれるんだろうこの状況?

次の展開はどれが良いでしょうか?

  • 八幡、雪ノ下家に行く
  • 川崎沙希は突然に
  • 鶴見留美は〇〇デレ
  • 比企谷小町の心情は
  • 結衣の思い
  • 材木座、戸塚の今
  • 葉山隼人は悩ましい
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