男子一年会わざれば刮目して見よ   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

続きです。


夏の思い出(下)

マッチョ姿をさらした八幡だったが、予備のジャージに着替えると、何故だかスッと元の体のサイズに戻る。

 

「へ?……ヒッキー!?着痩せってレベルじゃない!?どうなってるの?」

「ああっ、鍛え抜かれた上腕二頭筋が……」

結衣はその変貌にまたしても驚き、雪乃はジャージで隠されてしまった筋肉に、惜しむかのような声を上げていた。

 

「ジム通ってるって前に話しただろ?……筋トレにハマって、鍛えまくってたら、いつの間にかこんな感じに」

 

「スゴ!?」

「たった一年で……素晴らしいわ」

 

「まだまだだ、あの人には遠く及ばない」

八幡は遠い目をしながら、誰かに向かって謙遜するかの様な言動をする。

その誰かとは、ジムの専属トレーナーにして、八幡が目標とする人物だった。

街雄鳴蔵、八幡の肉体をたった一年でここまで仕上げた伝説のトレーナーだった。

 

 

スイカを5個担いでビーチに戻る八幡。

そのジャージ姿の八幡にホッとする戸部。

しかし、八幡の後ろを歩く由依と雪乃の顔が若干赤らみを帯びており、行きと帰りでは八幡へと向ける視線が異なっていた。

その様子に姫菜は気が付き、一人ほくそ笑んでいた。

 

 

スイカ割りを楽しむ面々に、ジャージ姿の八幡も参加を促され、渋々という感じで参加。

スイカ割りの棒を持つと、棒を横に持ち、ついバーベルに見立てて持ち上げて、バーベル・デッドリフトをやってしまう八幡。

そんな八幡の奇怪な行動に葉山や三浦優美子は疑問顔を向け、戸部は慌てて突っ込みを入れる。

姫菜は今か今かとカメラを持ち待ち構えるが、八幡は苦笑気味に棒を縦に持ち直し、姫菜が望むマッチョ姿とはならなかった。

 

そんなこんなで、海の家で昼食をとる面々。

姫菜が昼食中の男連中に、とあるチラシを見せながらこんな事を言う。

「じゃん!葉山くん、とべっち、はっちーはこれに登録したから出場してね♡」

それはイケメンビーチコンテスト、要するに男子の水着コンテストの参加募集のチラシだった。

姫菜は何故か興奮気味で鼻息が荒い。

 

「え~、流石にこれはないわー」

「姫菜……」

「おい、海老名、なに勝手な事を、参加しないぞ俺は」

流石の戸部も葉山も、勿論八幡も拒否反応を示す。

 

「ええ~、せっかく来たんだし、皆で思い出作りと思って、ね」

「そ、そそう、隼人のかっこいい所みたいし」

姫菜はそんな3人の説得にかかり、三浦優美子も恥ずかしそうに援護する。

 

「ほらほら、結衣と雪ノ下さんも説得手伝って」

 

「あたしは、ちょっと見たいかも」

「私は別に……」

結衣は姫菜の提案に賛成したが、雪乃は特に興味が無い様だ。

 

姫菜はそんな雪ノ下の手を引っ張り、男連中から離れて、何やらコソコソと話す。

「雪ノ下さん、はっちーのマッチョボディ見たくない?はっちー嫌がってるけど、きっと壇上に上がったはっちーは我慢できずに次々とポージング取ってくれると思うのよ。あの筋肉が合法的に見れるんだよ」

姫菜はほくそ笑みながら雪乃を説得に掛かっていた。

 

「比企谷君の筋肉が合法的に見れる………」

そして、雪乃はまんまと姫菜の話に乗せられ、八幡の先ほどのマッチョボディを思い出し、ゴクリとつばを飲み込んでいた。

 

その様子に姫菜は満足げに頷き、男連中の元に戻り、

「雪ノ下さんも見たいって、はい、4対3で多数決で決定」

 

「え~、マジか~」

「はぁ、仕方がないか」

戸部と葉山は姫菜の強引な説得に渋々応じる。

 

「おい、なんで男連中だけなんだ?お前らはどうなんだ?」

八幡だけは抵抗するが。

 

「はっちーは雪ノ下さんと結衣の水着姿を不特定多数の男共のやらしい視線にさらしていいの?もしかして、はっちーってそう言う性癖なの?」

 

「そ、そんなわけ無いだろ。……俺は出ないからな。そもそも俺はジャージだ」

 

「ふーん。まあいいや、はっちーはジャージのままで、参加要項に水着って明確に書いていないし、ビーチが似合う人だったら誰でもいいみたいだし」

 

「いや……流石にジャージはビーチとミスマッチだろ」

 

「八幡~、ジャージだったら大丈夫じゃない?こうなったら出るしかないべ」

「比企谷諦めろ」

抵抗する八幡に、戸部と葉山は八幡の肩をポンと叩き、諦めて参加するように促す。

 

「はぁ、お前らな……ふぅ、仕方がないか」

どうやら八幡は抵抗を諦めたようだ。

 

 

 

 

そして……。

ビーチに設けられた会場には、ちゃんとした舞台も用意されていた。

審査委員も5人程見受けられる。

このビーチの組合代表、地元の町会議員、主催者の地元企業の人達が審査を行うようだ。

その審査委員の中に、地元企業の主催者の一人として、スーツ姿の年若い美女がにこやかな笑顔を湛えていた。

(暑いわね。地元交流のためとはいえ、こんな面白くもないコンテストに参加しないといけないのよ)

若い美女は笑顔とは裏腹に、内心悪態をついていた。

彼女の名は雪ノ下陽乃、雪ノ下建設の令嬢で現在は雪ノ下建設グループの広報課に勤務していた。雪ノ下雪乃の姉である。

 

既にコンテストは始まっており、今は女性の部が行われている。

(はぁ、暑いわ。早く終わらせて、家に帰りたいわ)

 

途中、女子高生4人組がコンテストの壇上でアピールタイムに何故か筋トレしだす場面があったが、つつがなく終わりを告げ、次は男性の部に入る。

 

(やっと半分ね。早く終わらないかしら……あら?雪乃ちゃんにガハマちゃん?)

陽乃は観客ブースの中に妹である雪乃とその友人の結衣の姿を見つける。

 

(ここのビーチに遊びにきていたのね。という事は比企谷君も居るのかしら?観客として見に来てるから、もしかして比企谷君が参加してるのかな?)

内心、まったくやる気がなかった陽乃だが、八幡が参加してる風景を思い浮かべると心の中での笑いが止まらなかった。

 

陽乃の元に参加者の名簿が回って来ると、やはり八幡の名前があり、さらに葉山隼人の名前もあった。

(ふふっ、本当に参加していたのね。面白いわ。これをネタに比企谷君と隼人をどうやっていじってやろうかしら)

 

 

 

そして、男性の部が始まる。

参加者は9名。

アピールタイムの順番は戸部が7番目で葉山が8番目、八幡が最後の9番目だった。

次々と水着姿の男性が壇上に現れ、ウインクしたり、軽めのポージングをしたり、はたまたダンスを披露しアピールしていく。

 

戸部はアピールタイムに、サッカーボールでリフティングを披露し、最後には観客ブースの姫菜に向かって投げキスの真似までして終了。

そして、先にアピールタイムを終えた男性陣と同じく、壇上の後ろに並んで待機し、次の参加者を待つ。

 

葉山はこう言うのは苦手なんだと言いつつ、2分程爽やかな笑顔でトークをしアピールを終わらすが、観客席の女性たちからは今日一番のざわめきが起こる。

葉山もアピールタイムを終え、壇上の後ろに下がり、戸部の隣に並んで立ち、次の参加者を待つ。

 

(隼人も鍛えてるんだけど、違うのよね。まだまだ貧相ね)

陽乃は葉山の水着姿を見て、こんな感想を漏らす。

葉山も大学でサッカー部に所属し、そこそこいい体つきはしているのだが、陽乃のお眼鏡には叶わなかったようだ。

 

 

そして、八幡の番だ。

ジャージ姿で壇上に現れる八幡。

 

(比企谷君それは何?ジャージって……まあ、どうせ貧相だし仕方がないわ。無様を晒さないだけましよね。どうせ無理矢理参加させられただけだろうし、それにしても雪乃ちゃんは何故比企谷君みたいな貧弱な男が好きなのかしら?)

陽乃はそんな感想を心に留めていた。

 

八幡はため息と共にマイクの前に立って何かを言おうとしたのだが、その時会場から大声で八幡に声援が飛ぶ。

 

「はっちーーーー、最高だよ!さ・い・こ・う!!」

勿論、その声は姫菜だ。

そんな姫菜の声援に、会場の誰もが苦笑するが……。

 

「最高……さいこう……さい…さい……」

壇上のマイクの前のジャージ姿の八幡は何かぶつぶつを呟きだす。

その姿をみて、姫菜は眼鏡を装着し、カメラを取り出し、顔を蒸気させスタンバイする。

 

そして……

 

「さい…サイ……サイドチェストーーーーーー!!!!

八幡は雄叫びを上げながら、右手で左手首を掴み横向きにポージングを決め、それと同時に体は膨張しジャージが爆発したかのように粉みじんにはじけ飛びブーメランパンツ一丁の姿に……。

そして、ジャージの下からは、先ほどまでとは打って変わって、筋骨隆々なマッチョボディが現れたのだ。

どう考えても先ほどのジャージ姿の人物と同じ人間には見えない、体の厚みや大きさが、二回りも三回りも大きくなっているのだ。

 

観客ブースでは驚きと戸惑いの声と黄色い声が同時に上がる。

 

「キマシタワーーーーーー!!!!サイドチェスト頂きました!!」

その中で姫菜が機敏な動きで、その八幡のマッチョボディをカメラに収めて行く。

 

同じく観客ブースの雪乃は……

「やはりいいわ、膨張しつつ引き締まった大胸筋。ああ、触らせてほしい……」

八幡の肥大した大胸筋にデレていた。

 

「ヒッキー、スゴ!こんど肩車してもらおうかな」

結衣は結衣でこんな事を口走っていた。

 

「……なにあれ?……ちょ、あれ何!?ヒキオ!?おかしくない!?縮尺おかしくない!?」

八幡のその姿に三浦優美子は狼狽しっぱなしだ。

まあ、それが普通の反応だろう。

 

壇上の後方では、マッチョボディを晒した八幡の後ろ姿に戸部は「あちゃー」と天を仰ぎ、葉山は目をひん剥き驚愕な表情を浮かべていたのだが……。

「す、すばらしい。なんて凄い肉体なんだ。比企谷!」

葉山は何故か八幡の肉体を褒めちぎる。

 

審査員席の陽乃は……

「いい!凄くいい!!あああ、大胸筋から下に向かって湧き出る腹筋が見事よ!シックスパックの形状も素晴らしい、均等に鍛えてる証拠だわ。そして、丸太のような大腿四頭筋……下半身の形状もいい!!良い仕上がり具合だわ!!ああ、なんて素晴らしいの比企谷君!!さ、触りたい……はぁ、はぁ、隠してたなんてズルいわ」

潤んだ目で八幡の肉体をなめるように見定め、はぁ、はぁ言い、涎まで垂れそうになっていた。

そう、彼女は極度の筋肉フェチで造形美を重視するタイプだった。

そして、八幡の肉体は彼女にとって理想的な肉体そのものだったのだ。

 

 

「ダブルバイセップスッ!フロントーーーーッ!!」

「サイドトライッ!セップスーーーーッ!!」

「モスト!マスキュラーーーー!!」

壇上では次々と笑顔でポージングを決めて行く八幡。

 

 

大盛況のまま、コンテストは終了したのだった。

 

 

 

マッチョボディを晒してしまった八幡。

雪乃や結衣だけでなく、陽乃や葉山との関係性まで変化していく事になるとは……この時は思いもしなかった。




ダンベル女子高生組はちょい役でw

一応、これで一旦完結です。
思いついたらなんか書けたら良いな~。
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