比企谷八幡大学二年生。
彼は20歳の誕生日に高校からの友人である雪ノ下雪乃と由比ヶ浜由衣のどちらかを恋人に選ぶという約束をしていた。
彼の誕生日8月8日当日。
八幡は母校総武高校に向かう。
3人の原点である奉仕部部室にて、雪乃と由衣のどちらかを選ばなくてはならなかった。
しかし、八幡は既に覚悟を決め部室へと入る。
既に雪乃と由衣は奉仕部のいつもの席に座り、緊張気味に八幡を待ち構えていた。
「比企谷くん」
「ヒッキー……」
「俺は……」
いざ告白をしようとする八幡。
だが……
「「その告白ちょっと待った!」」
そこに乱入者が現れる。
しかも何故か二人も。
話は変わり、2か月前の6月初旬。
八幡の高校の後輩、今年大学生となった一色いろはは、とある知る人ぞ知る人気喫茶店に友人の鈴木鈴音に連れられ入っていた。
「ちょっと鈴音、ここって本当に喫茶店なの?なんかバーみたいなのがあるんだけど、私、まだお酒飲むつもりはないわよ」
「そんな男受けするような恰好して、いろはは意外とガード堅いんだから、まあ、安心して、ここ本当に喫茶店だから、あのバーは演出みたいなもので、あそこでオリジナルオーダードリンクが注文できるのよ。それにほら、客はほとんど女性よ。それにあそこの女の子達なんてどう見ても高校生でしょ?」
鈴木鈴音とは一色いろはが生徒会長二期目を務めていた際に関東高校交流会で知り合い友人となった人物で、同じ大学に入学し、いつも一緒につるんでいる。
知り合った当時の鈴音は女子高の生徒会書記で、長身で見た目は中性的な美女でどこかあっけらかんとした性格をし、いろはとは真逆で女子にモテる女子だった。
だが、そんな真逆な境遇が逆にウマが合い、お互い本音で話せる数少ない友人となったのだった。
「ほんと人気店なの?私のリサーチに全く入ってないし、しかもなんか店員さんってむさ苦しい男ばっかりなんですけど、しかも短パンTシャツって……」
「気にしない気にしない」
確かに店の中央にバーがあったり、小さな舞台のようなものがあったりと喫茶店としてはちょっと変わったつくりはしているが、この店は喫茶店であることは間違いない。
「はぁ、…メニューは意外とまともそうね。ふーん、結構ケーキやドリンクメニューも充実してるわね。ちょっとネーミングセンスはアレだけど」
「いろは、おすすめがあるから私が頼んでいい?」
「好きにしていいわよ」
「OK~」
鈴音はタッチパネルを手慣れた手つきで操作し、次々とオーダーを通す。
「ところでいろは、また男を振ったんだって?」
「またその話?」
「前野先輩だっけ、大学で1、2番のイケメンって噂の人じゃない」
「なんか違うのよね」
「またそれ?何が違うのよ。いろは、今まで付き合った男悉く2、3日で振ってるじゃない。それだったら最初っから付き合わなければいいんじゃない?」
「まあ、告白してくるし、一応イケメンだったし、でも、なんか違うのよね」
「身体の相性が悪いって事?」
「何言ってんのよ!!違うわよ!!」
「ごめん、ごめん、いろははそんななりして処女だったわね」
「鈴音もね」
「私はまだいいの。それに大学のひょろ男共に興味ないし~」
「はぁ……」
「まあ、実際いろはって、まだ高校の先輩の、えーっと、葉山先輩だっけ?忘れられないだけじゃない?」
「そうなのかな、踏ん切りは付けたハズなんだけどな~」
いろははサッカー部の一つ上の先輩である葉山に、葉山の学年の卒業式の日に二度目の告白をし、見事振られたのだ。
その後、高校時代にも何人かと付き合ってはみたものの、すべて2、3日で振っていた。
「もしかして、いろはの話によく出て来るインキャの先輩君が気になってるとか?」
「はぁ?何言ってんの鈴音!私が先輩を?あり得ないわよ!」
「へ~、なにムキになってるの?いろは~」
「違うって言ってるの!そもそも先輩は……」
いろははその言葉の続きを心の中でつぶやく。
そもそも先輩は私なんて眼中にないと。
先輩というのはもちろん八幡の事だ。
「お待たせいたしました。こちらチョモランママロンケーキとベリーマッスルソーダー、バプロテインバナナシェークになります」
Tシャツ短パンの色黒でガタイのいい店員が、注文の品を運んでくる。
「ありがとう、店員さん。スマイルとポーズをお願いします」
鈴音が注文の品を運んできたガタイのいい店員にこんな事を言った。
「かしこまりました。では……フンッ!!」
その店員はニカっとした暑苦しい笑顔と共に、右腕を突き出し力こぶをつくり、上腕二頭筋をアピールしだした。
「仕上がってますね~」
「どういたしまして、それではごゆっくり」
鈴音がそういって店員に賛辞をおくり、店員はお辞儀をして下がる。
いろはは何が起こったのかわからずに、ポカンと目を見開いて見ていたが店員さんが下がると……
「ちょ、ちょなななななに?今の?なんなの?鈴音!!」
いろはは鈴音に慌てて迫る。
「え?何って、サービスのスマイルとポージングを店員さんに頼んだだけよ」
鈴音はあっけらかんとこう返答する。
「サービス!?スマイルはまだいいわよ!ポージングって何!?」
「え~、ポージングしてもらって、いい筋肉を見せてもらってるのよ。今の店員さんなかなか仕上がってたわ。やっぱり男は筋肉よ」
「はぁああ!?」
いろはは混乱とも驚愕とも取れないような声を上げる。
そう、ここはマッスルカフェ。
店員はすべてガタイの良い男性のみで構成されている知る人ぞ知る筋肉の花園。
女性に圧倒的な支持を受けて人気急上昇中のカフェなのだ。
「いろは、ここね。指名料を払えば店員さんも指名できるのよ。ほら」
混乱冷めやらぬいろはに向かって、鈴音は嬉しそうにタッチパネルの画像を見せる。
そこには首から下のマッチョ共の写真が並んでいた。
「ちょ、どういうこと?」
「そして今日は水曜日!!この店ナンバー1アルバイターのはっちーさんがシフトに入ってるのよ!!指名はしたんだけど、待ち時間が15分って、いろは!今日はラッキーよ。いつもは1時間ぐらい待つんだから!!」
興奮した鈴音はいろはの声など聞こえてないかのように一方的に語る。
「だから!なんなのよ!ここは!指名って、どういうことよ!!」
「キターーーーーーッ!!」
いろはの声など鈴音の叫び声に掻き消える。
そして、テーブルの前にはナンバー1アルバイターのはっちーさんが現れる
「お待たせしました。ご指名ありがとうございます……ってアレ?」
「え?……え???ええええええええーーーーーーーーーっっ!?!!?!?!?」
ということで、いろはす