男子一年会わざれば刮目して見よ   作:ローファイト

8 / 10
感想ありがとうございます。


八幡の告白

 

 

「比企谷!結婚してくれ!!」

「はぁーーー!?」

静の突然の告白に八幡は驚くというよりも、何言ってるんだと、呆れるような感じだった。

 

「あっ……す、すまん。急に……いや、そのだ。が、がまんが、その、感情の歯止めが効かなくてな」

静は顔を赤らめながら、しどろもどろに告白の釈明をし出す。

 

「はぁ」

 

「なんというか、君がいけないのだ!あ、あのいけすかない結婚式をぶち壊して、後輩の鼻をあかし、あまつさせ私をこのような形で連れだしてくれて……、それに、その体は何だ!!」

 

「なんか、黙々と鍛えていたらこんな感じに」

 

「その体は!私の理想そのものではないか!!捻くれている所はあるが、素の性格はいいし、私にさえ気を使ってくれる優しさ。それにお互い気心も知れているではないか!これ以上何がある!!」

 

「いや、色々と不味いのでは?」

 

「……君が真剣に雪ノ下と由比ヶ浜の事を考えている事は知っている」

 

「まあ、そうですが」

八幡が不味いと言ったのは、年齢的な問題や元教師と生徒の関係やらの事である。

 

「何故今になってこんな……」

静は項垂れる。

その瞳には涙が溜まっていた。

 

「……その、なんていいますか」

 

「すまない。こんなこと言っても君が困るだけだ。さっきの言動は忘れてくれ……、君は私の願いを聞いてくれた。約束は守ろう」

静はそう言って項垂れたまま、八幡から離れていくのであった。

 

 

八幡はそんな項垂れ肩を震わしながら離れていく静の背中を申し訳なさそうにしばらく眺めていた。

だが、静の背中が見えなくなり、そこで重要な事に気が付く。

自分の姿に。

蝶ネクタイとブーメランパンツ一丁のほぼ裸同然だったと。

ここからどうやって家に帰ろうか思案する八幡。

 

 

 

 

時を戻し、8月8日の総武高校奉仕部。

八幡が雪ノ下と由比ヶ浜のどちらかに告白しようとしたその時。

 

「「その告白ちょっと待った!」」

そこに現れた乱入者は、一色いろはと平塚静だった。

 

「えええっ!?いろはちゃんと先生!?」

「今取り込み中よ。要件は後で」

由比ヶ浜はその乱入者たちに驚き、雪ノ下は冷たい視線を送っていた。

 

「へ?一色と先生?……先生がここに居るのは分かるけど、このタイミングでなんですか?そんで一色もここで何をしてる?」

八幡も乱入者たちに驚きながらも、ここに現れた事を問う。

 

 

いろははすかさず八幡の右手を取り、目を潤ませ上目遣いでこんな事を言い出す。

「先輩は責任取ってくれるって言いましたよね」

「何の事だ?」

「私が生徒会長になるときに言ってくれました!」

「はぁ?それは随分前の事だろ?」

「約束に前も後もありませんよ」

「責任って生徒会の手伝いとか色々しただろ?」

「それじゃないです。私をマッチョ好きにした責任です!元々は細身のイケメンが好きだったのに!先輩のせいで!細身の連中がごぼうに見えて、もうダメなんです!それに中途半端な連中でもダメなんです!先輩じゃないと!!」

「ちょ、待て一色!何でそうなる!?」

いろはは心情に訴え、八幡の精神をここぞと責める。

 

 

次に静が八幡の前に仁王立ちをしこんな宣言をする。

「ふっ、私はここの教室を貸し出すという君との契約を果たした。ここからは私のターンだ!!」

「え?ターンって?」

「私は契約履行前に告白してしまったからな、フライングも良い所だ。そしてここに君との契約を果たしけじめをつけた。これで私は君に対しちゃんと出来る」

「ちゃんとって、何を?」

「告白をだ!改めて言おう。比企谷八幡!私と結婚してくれ!!」

「はぁ!?アレって撤回したんじゃ?」

「何を言う!!だから改めて告白したのだ!!」

静の言動は告白と言うよりもなんらかの勝負の宣言のような感じだ。

 

「待ちなさい!二人共!」

「ええええーーー!?いろはちゃん、責任って!?先生もヒッキーと結婚って!?」

2人の告白に雪乃は明らかに怒りに満ちた目で、結衣は突然の事に混乱気味に戸惑いながらも、八幡に迫るいろはと静の間に割って入った。

 

「私も先輩の恋人候補に立候補します。まだ先輩の告白前だから有効ですよね」

いろはは不敵な笑みを浮かべ、雪乃と結衣に明らかな宣戦布告を行う。

 

「熱い展開だ!恋のバトルロイヤル方式と行こうではないか諸君!」

何故かかなりハイテンションな静。

静は静でこれは宣戦布告なのだろうが、もはや恋愛事には聞こえない。

 

「世迷い事を……」

「ええ!?なんで!?そんなのおかしいよ!」

雪乃は怒りに震え、結衣は二人に抗議する。

 

八幡は一触即発な雰囲気に、雪乃と結衣の前に立ち、

「一色も先生も待ってくれ!何でそうなる!?」

いろはと静を止めようとする。

 

「待ってれば、先輩は私の思いに応えてくれるんですか?」

「ふふっ、先手必勝!今の私に待つという言葉は無いのだよ」

しかし、いろはと静の暴走は止まる様相はない。

 

 

だが、八幡はすっと真顔になり、いろはと静を見据え大きく息を吸う。

「一色に先生、好意はうれしいが……今の俺には雪ノ下と由比ヶ浜の事しか考えられない。だから、すまない」

そして、八幡は二人に深く頭を下げる。

 

「ヒッキー……」

「比企谷君……」

そんな八幡の誠実な対応に結衣はうれしそうに、雪乃は気恥ずかしそうに頭を下げる八幡の横顔を見つめる。

 

「はぁ、そうですよね。恋愛ベタな先輩に急に告白してもダメだって事は想定済みですよ。だからこうするんです」

いろははため息を吐き肩の力を抜いて、そんな誠実な対応をする八幡に微笑むが、直ぐにいつものあざとい笑顔を向ける。

 

「心が折れなければ負けは無いのだ。だがここはドローにさせてもらう!!」

静は静で暴走したままで、目をクワッと見開きこんな事を言う。

 

 

そして……。

 

「せーんぱい♡。最高ですよ。さ・い・こ・う!」

「危ない危ない。私としたことがついふら付いて。危ないな。ア・ブ・ナ・イ・な」

いろはは八幡をあざとい笑顔で褒めちぎり、静はよくわからないワザとらしい演技を……。

 

 

「う……サイコウ?ううう………アブナイ?」

何故か八幡は頭を抱え苦しみだす。

その様子にニヤリとするいろはと静。

そう、いろはと静の狙いは、八幡のマッスル筋肉暴走だ。

それで今日の告白を無しにする算段だったのだ。

 

「ヒッキー、大丈夫!?」

「比企谷君耐えるのよ……でも、そのちょっとぐらいなら」

八幡の様子に結衣は心配そうに、雪乃は二人の狙いを理解し、八幡に耐えるように言うが、雪乃も八幡の肉体が見たいがために本音がちょっと漏れる。

 

「サイ・アブ・サイ・アブ・サイ・アブ・サイ!!……アブドミナルッ!?アーーンドッ!!サイッ!!!!

案の定、八幡のジャージは爆発し吹き飛び、一気に風船を膨らましたかのように筋肉が隆起。

両手で後頭部を抱え腹筋と下半身を突き出し、ポージングを決める。

数倍に膨れ上がった肉体は見る物を圧倒する。

勿論八幡は笑顔だ。

 

「いい!すごくいい!先輩!」

「はぁ、はぁ、た、たまらない。もう、私はどうにかなってしまいそうだ」

「ああ、いいわ。見後に割れたシックスパック……」

いろは、静、それに筋肉フェチの雪乃も八幡のはち切れんばかりの肉体にデレデレである。

 

「ヒッキー待って!ヒッキーってば!」

だがこの場で結衣だけは、そんな八幡を止めようとする。

 

フロント・ラット・スプレッドッーーーッ!!

 

「先輩~、触っていいですか?」

「まて、一色、未成年にはまだ早い。私が先だ」

いろはと静は八幡の筋肉に触れようと迫る。

 

「わた……はっ、私は何を?」

雪乃も二人と同じく八幡へとフラフラと近づこうとするがここで、正気に戻る。

 

「ヒッキー!!」

結衣は八幡を止めるべく腕を思いっきり掴む。

 

「あ、アレ?し、しまったーーーっ!!」

結衣の行動で八幡は我に返り……。

 

「由比ヶ浜!雪ノ下!」

八幡は迫り来るいろはと静を避け、結衣と雪乃を片腕づつで抱き上げ、部室から逃走する。

 

「せんぱーーーい!」

「比企谷――――!」

追って来るいろはと静。

 

八幡は結衣と雪乃を抱えたまま屋上へと逃れ、二人を降ろし、そこにあった机などで屋上のドアの前に置きバリケードを作る。

 

「ふぅ……すまん。邪魔が入ったな」

八幡は結衣と雪乃を見据える。

 

「……ヒッキー」

「比企谷君……」

 

そして、八幡は結衣の方へ体を向ける。

「由比ヶ浜……すまん。俺は雪ノ下に告白をする。俺はお前の事は嫌いじゃないし、友達だと思ってる。いや、それ以上なのかもしれない……だが」

八幡は結衣を振ったのだ。

 

「知ってた……。ヒッキーがゆきのんの事が好きだって……でもね。あたしはヒッキーの事、本気で好きだから、だから諦められなかったの」

結衣は笑顔でそう言うが、声は震えていた。

 

「すまない」

 

「謝らないで……、でも今まで通り、友達でいていい?」

 

「ああ」

 

「ありがと、……あたしは大丈夫だから、ゆきのんへ……」

結衣は目に涙を溜め、後ろを向き、八幡から離れていく。

 

「すまない」

八幡はそんな由比ヶ浜の背中に頭を下げる。

 

 

そして……

「雪ノ下……」

「……はい」

 

「雪ノ下、俺と付き合ってくれ……」

「……うん、でも理由を聞きたいわ」

 

「理由か……最初は憧れだった。遠い存在だった。だが、奉仕部で活動している内に普通の女の子となんら変わらないじゃないかって……」

 

「失望した?」

 

「いいや、逆だ。手が届く場所にお前がいると……」

 

「そう……、それが理由?」

 

「守ってやりたいとも思ったが、そうじゃない。一緒に居たいと思ったからだ」

 

「そう……、私は貴方に憧れているわ。今も……」

 

「いや、俺はそんなんじゃないぞ」

 

「……訂正するわ。憧れだけでなく。羨望……そして、その……体は……理想……うふふふっ、比企谷君の大胸筋が私の物に……」

何故か雪乃の目がうっとりとしながらも怪しく八幡の肉体を捉えていた。

 

「へ?……雪ノ下?」

八幡はその雪乃の様子に、早まったのではと一瞬頭に過るが……。

 

 

「せんぱーーい!ここに居るのは分かってるんですよ!!」

「比企谷!君は包囲されている。今すぐここを開けたまえ!!」

いろはと静が屋上の扉をドンドンと叩き、こじ開けようとする。

 

「やばっ!?」

 

「あなた、ここは私に任せて、逃げた方がいいわ」

「あ、ああ、すまん……由比ヶ浜も………」

「……うん、ヒッキーまたね」

八幡は雪乃と結衣を残し、屋上から外壁の隙間などに指をかけロッククライミングのようにするすると降りていく。

 

 

こうして八幡は無事告白を終え、雪乃と付き合う事になったのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡が逃げた後、雪乃と結衣は……

「ゆきのん。……ヒッキーを幸せに出来なかったら、あたし、ヒッキーを奪っちゃうかもしれないから、だから……。ちゃんとヒッキーを大切にしてね」

「……そうならないよう努力はするわ……もし、私が彼に相応しくないのであれば、由比ヶ浜さん、あなたが強引に奪いなさい。来年……また、この場所で……」

「そうする……」

雪乃と結衣はこんな話し合いをしていたのだ。

 

 

その話は、いろはと静の耳にも勿論聞こえていた。

 

 

 

 





次の展開は……

次の展開はどれが良いでしょうか?

  • 八幡、雪ノ下家に行く
  • 川崎沙希は突然に
  • 鶴見留美は〇〇デレ
  • 比企谷小町の心情は
  • 結衣の思い
  • 材木座、戸塚の今
  • 葉山隼人は悩ましい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。